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サルを進化に導く意欲作『Ancestors』人類祖先のサバイバル生活を始めよう

サルを進化に導く意欲作『Ancestors』人類祖先のサバイバル生活を始めよう

2019年8月にPCでリリースされた『Ancestors: The Humankind Odyssey』が、PlayStation®4とXbox Oneで登場。本作は『アサシン クリード』シリーズの開発に携わったPatrice Desilets氏が手がけたことで注目を集めた作品だ。「1000万年まえの人類の歴史を体験できる」とうたわれているが、はたしてどのような作品に仕上がっているのだろうか。そのプレイレビューをお届けしよう。

文 / 板東篤


見て、聞いて、触って、調べて何なのかを知る!

本作の舞台は1000万年まえ、人類誕生以前である新第三紀のアフリカ。プレイヤーは人類の祖先と言えるヒト科のサル(アバター)となって、種を発展させていくことが目的だ。そのためには世界を生き抜きつつ探索し、さまざまな物を発見し、多彩な行動を学び、少しずつ進化していくことが重要になる。ゲームジャンル的には、オープンワールドのサバイバルアクションアドベンチャーと言えるだろう。
ゲームには、我々の祖先であるサルたちの氏族(群れ)が登場する。プレイヤーはこの氏族に属しているどれかのサルをアバターとし、操作していくことになる。氏族に属しているほかのサルへとアバターを切り替えることができ、アバターのサルが死んだときには自動的に近くにいる氏族のサルへとアバターが切り替わる。氏族が全滅してしまったら、ゲームオーバーという仕組みだ。

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▲ゲームを開始すると、スタート時の環境やUIの有無などを設定できる。“サバイバー”を選ぶと味方となる氏族が存在せず、自分ひとりだけの状態で始まる

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▲ゲームモードを“初めて”でスタートした場合、サルが親子で出かけるシーンから始まる。親ザルが巨大な鳥に襲われて命を落としてしまい、危険な状況から逃げ出す子ザルとなって生き延びることになる

舞台となるアフリカのジャングルにはさまざまな木や草などの植物、石や鉱石などの鉱物、そして動物たちが存在している。アバターは“知性”、“聞く”、“嗅ぐ”といったアクションで、周囲に何があるのかを調べていく。しかし、何かを発見しても我々プレイヤーとは異なり、アバターはそれが何なのかをまったく知らない。そこでアイテムを手に取って調べ、それが何なのかをひとつずつ解明していくワケだ。たとえば木の実を調べるとそれが“ミラクルフルーツ”だと判明し、食料になることがわかる。以降はミラクルフルーツを食べて、空腹を満たすことが可能となる。何かの草を調べた場合はそれが“オオバシダソテツ”という植物だと判明し、何かに使える道具となる。こうして周囲にある物を探索し、それがいったい何なのか、何に使えるのかを調べていくのが本作の基本的なセオリーとなる。

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▲対応のボタンを押すと、“知性”を使って周囲に何があるのか調べられる。画面上には、アイテムがある場所がアイコンで表示される

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▲アイテムを手に取って調べるとそれが何なのかが判明し、以降はそのアイテムを利用できるようになる

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▲“知性”と同様に“嗅ぐ”を使うと匂いを出すものが、“聞く”を使うと音を出す物の場所がわかる。白や黄色でモヤモヤしている場所は何かがあるということを表している

ニューロンパワーでサルからヒトに近づいていく

アバターは、氏族にいるサルの子どもを連れて歩くことができる。子どもと同行しているときに発見する、調べるなどさまざまな行動を行うことでニューロンエネルギーが貯まっていき、ニューロンを発達させることが可能となる。このニューロンの発達によって、アバターは新しいアクションが行えるようになる。例えば、最初はアイテムを右手に取って調べることしかできない。しかし、ニューロンを発達させるとアイテムを左手に持てるようになり、同時にふたつのアイテムを持ち運べるようになる。こうした成長を繰り返すことで、できることがどんどん増えていくのが本作のとても楽しいポイント。木の枝を加工して棒にしたり、新しいものが食べられるようになったり……と、どんどん人間に近づいていくワケだ。

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▲ニューロンを発達させるため、子どもを連れ歩くのが本作の基本。子どもは背中やお腹に張り付き、大人の行動を見て学ぶ

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▲ニューロンはスキルツリーのようなもの。貯めたエネルギーを使ってニューロンを成長させると、新たなアクションが解禁される

しかし、こうしたニューロンの発達は残念ながらその世代にのみ有効。時間が経過して子どもの世代となった場合は、また最初から成長させていく必要がある。大変厳しい仕様だが、じつはニューロンを定着させることで、次の世代は定着したニューロンが発達した状態でゲームを続けられる。ニューロンの定着は氏族にいる子どもの数だけ行える。つまり、どんどん子どもを増やすことが進化の近道と言える。

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▲世代交代のとき、氏族の子どもの数だけニューロンを定着させることができる。定着したニューロンは以降の世代に引き継がれ、最初から発達した状態になる。世代交代は好きなタイミングで行うこともできるが、15年ほど時間が経過してしまう

この子作りも自分で行う必要がある。まずは、アバターとカップルにしたい氏族の異性のサルを見つけ出そう。このサルを毛づくろいすると仲良くなり、好感度が最大になるとカップルになる。その後、睡眠場所でカップルの相手を呼び、“番(つが)う”ことで子どもが生まれるのだ。ただし、子どもを生むことで1年半ほど時間が経過する。これを繰り返すことで、子孫を繁栄させていく。

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▲毛づくろいやアイテムの加工などはミニゲーム形式で行う。対象のボタンを押しっぱなしにして、音が鳴った瞬間にボタンを離す。タイミングが正しければ成功となる。このため、本作では音を聞くことも重要

ゲーム中ではこうしたニューロンや定着といった難しい単語で解説されているので、少々わかりやすい言葉に置き換えておさらいしておこう。要は、子どもを連れて行動すると対応したスキルの経験値が貯まり、いっぱいになると新たなスキルを獲得できる。獲得したスキルは世代交代でリセットされてしまうが、自分のグループに子どもがいるとその数だけロックして最初から習得している状態にできる、という感じだ。

未開の地域は即死もあり得る危険地帯

氏族メンバーが居住している定住地は安全だが、それ以外の地域は大変危険だ。ヘビやトラ、猛禽類の祖先など肉食獣が徘徊しており狙われることも多い。襲われた場合はケガで済んだらいいほうで、一撃で倒されてしまうこともある。しかし、新たなアイテムを発見するためにはこうした未開の地域に旅立つ必要がある。
とはいえ未開の地域の探索は大変に恐怖を感じる。一歩足を踏み入れた途端に画面が暗くなり、ときどき危険生物が牙を剥くエフェクトが入る。また、アバターはこうした恐怖を感じるとドーパミンが徐々に減少していき、やがてパニック状態となってほとんど制御不能の状態になってしまう。こんな状態で敵に襲われるとひとたまりもないため、早めに安全な場所に戻る必要がある。

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▲未開の地は画面が暗く、獣が牙を剥くようなエフェクトも表示される。この未知なる物への恐怖を表す演出は、プレイしているとかなり怖い

さて、今回はさまざまなシステムを解説してきたが、じつはゲーム中に提示されるヒントが少なく、初見プレイの場合はこれらを理解するまでに相当な時間がかかると思う。最初の操作こそ表示されるが、初期の目標である“寝床を作る”にはどうしたらいいのかがわからず、筆者はとても四苦八苦した。アレコレ試した結果、複数の“オオバシダソテツ”を同じ場所に落とすとまとめることができ、一定以上の数をまとめると“建築”のコマンドが出現する、という操作にたどり着いた。プレイ録画を見返してみると、“アイテムを同じ場所に置くとまとめられる”というヒントが短い時間だけ表示されていたのだが、筆者はこれを見逃したか、見てもすぐに忘れてしまっていたのだ。

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▲ゲームの進行に応じてこのようなヘルプが表示される。筆者は備蓄に関するこの情報を見逃してしまっていた

ゲーム中のHUD(ヘッドアップディスプレイ)もこうした感じでちょっとだけ解説が表示されるが、直感的にわかりやすい仕様ではない。メニューからヘルプを見ることもできるが、前述のニューロンをはじめわかりにくい単語が多く使われており、かなり難解だ。
こうして悪戦苦闘しながらプレイを続けた筆者は、ふと気がついた。筆者が感じている“どうすればいいのかわからない”、“なにができるのかわからない”という思いは、このアバターの気持ちを再現しているのではないか、と。1000万年まえの我々の祖先は、そもそも“アイテムを組み合わせて新しい何かを作り出す”といった発想はないはず。何かを武器にできることも知らないし、そもそも武器という概念すら持ち合わせていないだろう。そう、本作は1000万年まえの我々の祖先が体験した日々の生活を追体験できる、アドベンチャーゲームなのだ。そこに現代人として持っているプレイヤーの知識をほんの少し干渉させて、進化を促すことを喜びと感じるゲームなのだ、と。
まとめると、本作はゲーム内の情報や行えることを意図的にわかりにくくし、プレイヤーの試行錯誤で発見することを主体とした作品だ。マップなんてものは存在しないし、目的地までの道筋も表示されない。ケガをしても治しかたを自分で見つけなければならないし、わからない場合は死んでしまう。こうした逆境でのサバイバルを楽しめる人には、ぜひおすすめしたい作品といえる。逆に昨今の親切設計なゲームに慣れた人は、その魅力に気づくまえに投げ出す可能性が高い、大変に尖った作品といえる。本稿で興味を持たれた人は、ぜひ覚悟を持って挑んで頂きたい。

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▲筆者はまだ未体験だが、条件を満たすと進化そのものも行える模様。次回では進化したい……

さて、筆者はと言うと何人かのアバターを失いながらも、これまで解説してきたシステムをなんとか理解。氏族の独身で唯一残っていた牝のサルをアバターにし、子どもをふたり産んで、未開の地を探索していたときのこと。ヘビ、トラと危険生物に連続で襲われてしまい、アバターは命を落としてしまった。すぐさま連れていた子どもへとアバターが切り変わったが、逃げる最中にイノシシに襲われてこちらも死亡。残ったもうひとりの子どもがアバターになったが、こちらもイノシシに襲われて倒され、すっかり心が折れてしまった。ジャングル、怖い。

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▲トラに襲われてしまい、命を落とした筆者のアバター。正確にはゴールデン・マカイロドゥスというサーベルタイガーの一種らしい

これはもうダメだ、とゲーム進行を諦めた筆者はいったんゲームを終了し、新たな氏族を作って最初からプレイし直すことにした。本作の基本システムは理解したと思うので、初回プレイよりは上手に進めるだろう。というわけで、次回は筆者の新たな氏族がどのように進化していったのかを述べていきたい。

フォトギャラリー
Ancestors ロゴ

■タイトル:Ancestors: The Humankind Odyssey
■発売元:プライベート ディビジョン
■対応ハード:PlayStation®4、Xbox One
■ジャンル:サバイバル・オープンワールド
■対象年齢:15歳以上
■発売日:発売中(2019年12月6日)
■価格:通常版(ダウンロード版) 4,000円+税


『Ancestors: The Humankind Odyssey』オフィシャルサイト

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