月曜の朝を待ちわびて。~「週刊少年ジャンプ」時評~  vol. 1

Column

いま、ジャンプに歴史的変化が起きている!? 2019年振り返りと2020年大予想

いま、ジャンプに歴史的変化が起きている!? 2019年振り返りと2020年大予想

とかく悪く言われがちな月曜日。休みが終わって仕事や学校が始まることを思い、憂鬱な気分になってしまうのも無理のないことです。しかし筆者は、そんな月曜日を全力で擁護したいと考えています。それはなぜかと問われれば、答えはシンプル。「週刊少年ジャンプ」(以下ジャンプ)が発売される曜日だからです。

筆者は20年以上、ほぼ休まずジャンプ本誌を追いかけてきました。「私とジャンプ」にまつわる記憶をたぐり寄せると、高校の修学旅行中に買ったジャンプに載っていた『HUNTER×HUNTER』のことが真っ先に思い浮かびます。尾行がばれたゴンとキルアが幻影旅団の前に姿を現す回で、旅行先の神戸の街とヨークシンシティを重ねてみたのです(ちなみに、他の修学旅行中のできごとは全然思い出せませんでした)。

そんな風に、日常の中でこぼれ落ちてしまいそうな記憶とジャンプを結び付けて、丁寧に編んでいくような連載にしたいと思っています。サブタイトルには「週刊少年ジャンプ時評」とありますので、うまくバランスもとりつつ。

前置きはこのくらいにしましょう。今回は初回ということで「時評」成分を多めに、ジャンプの現状を整理しました。

文 / おしこまん
イラスト / かずお


『鬼滅の刃』大ブレイク

ジャンプにおける2019年最大のトピックといえば、やはり『鬼滅の刃』の大ブレイクでしょう。連載が始まったのは2016年11号。4年目を迎えた今まさに物語はクライマックス。開始当初は独特な空気感やセリフまわしに戸惑いつつも、それは他の作品にはない魅力があることの裏返しでもあり。実際にじわじわと人気を集め、連載から約3年でアニメ放送がスタートしました。

アニメは第1話から期待を裏切らない出来栄えでしたが、現在の人気のきっかけとなったのは、主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)が絶望的な状況から活路を見出し反撃に成功した第19話「ヒノカミ」でしょう。SNSなどでも、ふだんはあまり漫画やアニメの話をしないような人たちの感想が増えていった印象があります。

そうして少しずつ高まっていった熱気はテレビアニメ第2期や劇場版の制作が発表された2019年秋にピークを迎えます。単行本の累計発行部数はあっという間に2,500万部を突破。アニメ化前の段階では400万部ほどであると考えると、人気の急上昇ぶりがよくわかります。機会があれば書店の漫画コーナーを覗いてみてください。もし大きな空白があったら、きっとそこはかつて『鬼滅の刃』が積まれていた場所です。

『鬼滅の刃』だけじゃない

『鬼滅の刃』の他にも、最近のジャンプ作品はよくアニメ化されています。2020年1月現在、ジャンプ連載作品のアニメ化にまつわる状況は以下の通りです。

アニメ放送中:
『ハイキュー!!』
『ブラッククローバー』
『僕のヒーローアカデミア』
『ONE PIECE』

アニメ化済:
『Dr.STONE』
『ぼくたちは勉強ができない』
『約束のネバーランド』
『ゆらぎ荘の幽奈さん』

昨年11月にアニメ化が発表された『呪術廻戦』もここに加えると、18ある連載作品中、9作品がアニメ化されていることになります。完結作品や兄弟誌へ移籍したものも含めると、枚挙に暇がありません。昨年末の『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』再アニメ化の発表には筆者も驚かされました。

どうしてジャンプからは、アニメ化するほどのヒット作がコンスタントに生まれるのでしょうか。その問いは、「ジャンプにはなぜ昔も今も面白い作品が集まり続けるのか」と言い換えることができます。

ジャンプ作家を主人公とした『バクマン。』に「マンガは面白ければいいんだ 面白いものは連載される 当たり前だ」という編集長の発言があります。
それはただ面白い作家が現れるのを待っているということではありません。何より編集部が、過去の栄光にしがみつくことなく面白い作品を生み出すために必要なことを考えてチャレンジしています。その姿勢があるからこそ、ジャンプは今でも漫画界の王者でいられるのだと筆者は考えています。

もう10週で終わらない

ジャンプをジャンプたらしめている最大の要素は、読者がおもしろかった作品3つに投票する、アンケートシステムです。

この結果が掲載順位や連載の続行・終了に影響を与えていることは、毎週のようにジャンプ本誌を追いかけていれば自然と実感されてくることでしょう。支持を集められなかった作品は、初連載の新人作家の作品もヒット作を持つベテランの作品も平等に、最短10週前後で最終回を迎えてきたのです。

「編集部は作品をもっと長い目でみたほうがよいのでは」という意見も根強くありますが、それだけ新人・新作にチャレンジの機会が与えられているということでもあります。ジャンプは後者を選び、大きすぎる成果を残してきました。

ところがここ数年、最短でも20~30週程度は連載が続くケースが増えています。これは、まさに編集部が作品を「長い目でみる」のを試しているということではないでしょうか。

この試みが成功したかどうか、今はまだ結論を出す段階ではありませんが、これからも見守っていきたいと思います。

もう引き伸ばさない

ジャンプには、アンケートシステムによる作品の入れ替えがある一方で、人気作については大胆なテコ入れを行ってでも連載を続行する、いわゆる「引き伸ばし」があるとされてきました。以前には、『ドラゴンボール』の初代担当編集者・鳥嶋和彦氏がとあるテレビ番組内で「フリーザ編で終わらせるべきだった」と振り返ったことが大きな話題となったこともありました。

しかし、この状況も変わってきています。先鞭をつけたのは『暗殺教室』でしょう。中学3年生の主人公たちが卒業する3月に原作とアニメが完結し、卒業編の映画が公開されるという手際のよさには驚くばかりでした。

現在、『鬼滅の刃』をはじめとして、「終章」と銘打ち毎週のようにTwitterを賑わせている『ハイキュー!!』や、『約束のネバーランド』『僕たちは勉強ができない』といった人気作品が佳境を迎えています。リアルタイムで連載を追っている読者であれば、これらの作品が引き延ばされることはないと自然に思えるのではないでしょうか。
思えば2010年代半ば以降、『NARUTO』『BLEACH』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』『銀魂』などの長期連載作品が次々と完結したことも印象的でした。

私たちは今、ジャンプが変わろうとしている歴史的瞬間に立ち会っているのかも知れません。

2020年のジャンプを大胆予想

そんなジャンプにとって2020年はいったいどんな年になるのでしょうか。

まず、たくさんの人気作品が完結を迎えそうです。終わりがあれば始まりもあるのが、世の、そしてジャンプの常。どのような結末が描かれるのかというのと同じくらい、そのあとにどんな新連載が始まるのかも楽しみです。人気作品が相次いで完結していくとしたら、新たにジャンプを牽引しうる作品が必要になるのではないでしょうか。そこでヒット作を持ったベテラン作家の力を借りたい……ということで、『暗殺教室』の松井優征、または『BLEACH』の久保帯人の新連載が始まると予想します! また、そろそろ『HUNTER×HUNTER』の続きを読みたいです。

現在連載中の作品については、筆者は『呪術廻戦』と同じくらい『チェンソーマン』を推しているので、アニメになったらうれしいですね。次のアニメ化作品は『チェンソーマン』か『アクタージュact-age』のどちらかだと予想します。

他には、連載開始から面白さをキープしている『AGRAVITY BOYS』に注目しています。長い間空席になっている「ギャグ・コメディ」枠に定着できるのでしょうか。テコ入れ・路線変更もできそうな世界観なので、読者の反応によってはまったく違った内容になっていくかも知れません。どう転がっていくのか楽しみです。

さて、こんなところでしょうか。一読者としての素朴な(そして無責任な)想像でしかありませんが、1年後、ここで答え合わせができたら最高ですね。

次回は約1ヶ月後の予定です。どうぞお楽しみに!

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