Interview

家入レオ 新作「未完成」。つかみ取れない愛、理解しきれない愛も“正解”として、歌う、その理由とは?

家入レオ 新作「未完成」。つかみ取れない愛、理解しきれない愛も“正解”として、歌う、その理由とは?

今さら言うことでもないのだろうが、愛は人を幸せにもするけれど、不幸の種にもなる。いまだなくならない世界のどこかで起きている争いも、元を正せば愛が理由だったりする。心から信仰するものが踏みにじられたから、大切な人の命を奪われたから、生まれ育った故郷を追われたから……。愛が冒されたとき、人は、その愛を何倍もの怒りと憎しみに変える。
そんな強い明暗を持つ愛というものを、この「未完成」は丸ごと歌っているような気がした。本当に大事なものは、そう簡単にはつかみ取れない。だからこそ聴くほどに次から次へと自分のなかにある大小様々、形も様々な愛に気づかされる「未完成」。なんとも受け止めがいのある、家入レオ、16枚目のシングルである。

取材・文 / 前原雅子


ドラマの脚本をもう一度読み直したら、最初に読んだときにも感じたことだったんですけれど、「自分と同じように愛に振り回されてる人たちの物語だ……。書ける」と思って

「未完成」はドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』の主題歌ですが。このドラマの主題歌を手がけるのは2回目ですね。

そうです。お話しをいただいて書き下ろしました。でも2回目と言っても登場人物たちも変わっているし、ストーリーの伏線もまったく違うので。自分のなかでは引き続き主題歌を担当させていただける喜びがありつつ、「これなら「もし君を許せたら」(前回の主題歌)でよかったじゃないか」と言われてしまわないように別物としてとらえていましたね。

制作はスムースでした?

制作は夏頃からスタートしていて。『DUO』のツアーの最中にはもう取りかかっていたので……。

ゆっくり時間かけて作っていった。

かけてというより、かかっちゃったんですけど。気づいたら季節が変わってた(笑)。……でも、もしドラマの主題歌がもっと早く完成していたら、この「未完成」は……作り得なかったと思います。

どういうことですか。

タイミングの問題で。この曲作りに取り組んでいるときに、一つ大きなターニングポイントがあって。今渦巻いてるこれを、どうにか作品にしたいと思ったんですね。で、そこでドラマの脚本をもう一度読み直したら、最初に読んだときにも感じたことだったんですけれど、「自分と同じように愛に振り回されてる人たちの物語だ……。書ける」と思って。そこからこの「未完成」を作っていきました。

そうなると、それまで曲が決まらなかったことが。

逆によかったなって。当初は「うわ~決まらない、決まらない」って苦しかったけれど、偶然の産物というか。……決まらなくよかったです、結局この曲に辿り着けたから。このタイミングじゃなくても絶対に曲にはなってたと思うんですけど、リリースはこんなにリアルタイムではなかったでしょうから。

曲作りはどんな感じで進めていったのですか。

ドラマのテーマと私の想いを受け取った久保田(真悟、Jazzin’park)さんが曲を書いてくれて、それをOkajima(Kanata)さんともより深く共有して、一緒に歌詞を詰めていきました。

歌詞を共作されたOkajimaさんは初顔合わせですよね。

はい、久保田さんのご紹介で。限られた時間のなかでの作詞だったし、初めての方だったので、これはもう裸でいくしかないなと思って。こういうことがあって、こういう気持ちで、こういうことを伝えたいと思ってるんですっていうことをガーってお手紙みたいに、まず会う前に書き起こして。それを会ったときに読んで。読んでいくと、そこでまた深い気持ちが出てくるから、それも伝えて。「なるほど、そういうことが書きたいんだね」っていう。それを2人で1行1行に凝縮していくみたいな感じでした。

ドラマの主題歌ってテーマをはじめ制約があるじゃないですか。そうすると不思議なもので自分がやりたいことがよりわかるんですよね

ドラマのことも頭に置きつつ。

ドラマの主題歌ってテーマをはじめ制約があるじゃないですか。そうすると不思議なもので自分がやりたいことがよりわかるんですよね。何もない真っ白な状態で「自分の言いたいことを言っていいよ」って言われると、う~ん……って思っちゃうこともあるんだけど。“こういうもの”っていう具体的なものがあがっていると、「いや、私はこう思うんだけど」って自分を知ることができたりするから。なんかボタンを押してもらえるっていうか、特に今回はそういう感じでした。

制約みたいなものが、いいきっかけになったというか。

はい。でもその制約を越えようとしないものは本物じゃないと思うから。制約があるなかで自分の気持ちとどう向き合っていくか、逆に制約を広げてみたりした感じなのかもしれない。最初から「制約、やだな」じゃなくてドラマのプロデューサーの方にも家族がいて友達がいて、プロデューサーじゃない一面があってと考えると、ちゃんと話してみればいいのかもと改めて思うようになったんですよね。そういうコミュニケーションをとることで周りも巻き込んでいくというか。

前回の制作時もそうでしたか。

前回はちょっと違ったと思います。作詞も杉山(勝彦)さんに預けていましたし。だけど今回は自分の心ありきで制作が動いてるから。あと今は曲を作るうえで、曲以外のところをどれだけその人と共有できるかっていうのを大事にしていて。だからOkajimaさんとも、お互い今までどういうふうに生きてきたかっていうことをすごくちゃんと話したし。そのときに「未完成」ってワードが出てきたのでそこからさらに自分のなかを掘っていったりして。

そこまでさらけ出して歌詞を作っていくことは。

今までなかったですね。それも含めてOkajimaさんには感謝してます。私がどういうことを書きたいのかっていうところに、一緒に深く潜ってくださったので。

24歳から25歳までの1年間は、いろんな角度から「あなたはあなたのままで生きなさい」っていうメッセージが込められた出来事がめちゃくちゃ起きて

結果、手応えもひとしおの楽曲になった。

なりました。2019年が自分にとってとても大きな1年だったんですけど。「25歳になる前に一つターニングポイントが来るよ」って、いろんな人から言われてて。実際、24歳から25歳までの1年間は、いろんな角度から「あなたはあなたのままで生きなさい」っていうメッセージが込められた出来事がめちゃくちゃ起きて。そういうなかで「自分は自分でしか生きていけないんだなぁ……」って腹が決まって。自分の毒々しいとことか真っ直ぐなとことか……、裸になることが怖くなくなりました。

ということは、以前は怖かった?

怖かった。そのときは「裸……だよ」って思ってたし、そう言ってたんだけど。今思うといろいろ着てた。当時も裸だって思い込んでる私に「ね、裸じゃないよ。ほんとはさ、その鎧の下にもっと柔らかいあなたがいるんじゃない?」って最大限の愛や優しさから言われてたことが、その時の私には痛さでしかなくて、怖さでしかないから、「違うの! これが私なの! 本当の自分なの!」って言ってて。そうやって泣きながら怖がりながら、鎧を1個ずつ外せたのが2019年だったと思います。いっぱい傷ついたけど……、でもすごくよかったと思う。

いったい以前はどれだけ着ていたんでしょうね。

ねっ。なんか歌のなかでは脱げてたんですよ。というか歌のなかでしか脱げてなかった。上手に言えないんだけれど、でも歌のなかって守られてるじゃないですか。

個人としてのリアルな自分とは、ちょっと違うから。

そう。だから実生活で脱げてなかったんだと思う。

脱いでみた今、どうです? 楽ですか。

………うん。必要以上に誰かにお礼を言ったり、謝ることをしなくなった、かな。自分に対にして謙虚になりました。

もう少し具体的に聞かせてもらえますか。

今は恥ずかしいことなんてないんだなって思う。10代半ばで社会に入って、激流のなかで1人で踏ん張って立ってて。瞬発力で生きてきてたんですよね、10代は。これをやるかやらないか判断することで、日常が回っていくから、常に本能で「これ、やる!」「これはちょっとどうだろ…、やらない」って決めて。いつも時間がクルクル回ってて。それが20歳すぎて落ち着いてきて、自分では徐々に変わってきたなと思っていたんだけど、今度は自分が当たり前と思ってることが当たり前じゃないことに気づいて、それがショックで。やっとその場で決めなくてもいいんだ、じっくり考えたいから時間をくださいって言ってもいいんだって思えるようになったんですよね。だから変に一人で頑張らなくなりました。

歌ってても、愛してるのか憎んでるのか、許したいのか許したくないのかわからなくて。でもそのわからないものを表現したいんだから、「未完成」はこれでいいんだって

それにしても「未完成」はいろんなことを感じる楽曲ですね。すごくシリアスでデリケートだけれど、とても開放的というか。

自分っていうパレットに赤と青と黄色と緑とって、あらゆる原色の絵の具を出して筆でかき回して何色かわからないようになってる感じがする。だから歌ってても、愛してるのか憎んでるのか、許したいのか許したくないのかわからなくて。でもそのわからないものを表現したいんだから、「未完成」はこれでいいんだって歌詞を書きながら思ったし。 “「会えて良かった」と君が笑う”っていう1行に辿り着くまでには、すごい汚いものを通らないといけなくて。好きだったよ、我慢してたし悲しかったし怒ってるよ、自分に対しての後悔もいっぱいあるよって。3秒ごとに人格が変わっちゃうような感じだった。だから「未完成」はどこか一部分だけ抜粋できないんですよね、怒りも全部ひっくるめてるから。……でも、根底に流れているものは愛だと思うんです。

最初に聴いたときは誰かに向けた気持ちを歌ってるように感じたけれども、何度か聴くうちに、気持ちを向けている対象がどこなのか、だんだんわからなくなってきました。

そうなんですよ、その通りなの! 私も今は、この曲は愛っていうすごい大きなものに立ち向かった曲なんだと思ってて。書き始めたときは一人と一人で二人だったかもしれないけど、一人と一人で二人じゃない域のところも含んじゃってたんだなぁって。ここには、今まで私が愛した人全員が入ってると思うんです。たとえば“不必要に君は 傷つけてくるけど 僕の愛でしか寂しさ満たせないよ”っていう歌詞を書いたときに、母と父に向けて言ってるのかもと思ったり。恋する相手は一人じゃないけど、親子は代えがきかないから、どっかで今でも父を求めてたり、母を求めてたり。それは向こうもそうなんだろうし。その愛って、親子ということでしか満たせないもので、悪くすると愛なのか憎しみなのかわからなくなったりもして。そういうすべてに対して、これまで裸になって好きだよって言えなかったのかもしれないなぁって。

この曲、ある意味、物語としては破綻してるんだけど、破綻してるっていうリアリティがある曲だと思います。でも人生って、そういうものだとも思うんです

だからだと思うんですけど、歌詞の“君”と”僕”が何を指しているのかも、わからなくなってきますね。“もう自由だよ”も相手を自由にしてあげたのか、自分が自由になってるのか、すべての立ち位置が変わっていくと言ったらいいのか。

そうそう。歌ってるときに、自分が“君”側に回ってることもあるから。この曲、ある意味、物語としては破綻してるんだけど、破綻してるっていうリアリティがある曲だと思います。でも人生って、そういうものだとも思うんですよね。

ボーカルもこれまでにない感じですね。

心の叫びを歌うときって、今までは歌いながらどこかちょっと俯瞰してる自分がいたんですね。でもいなかった、今回は。しかも何を伝えたいのかよくわかってないで歌ってて。だけどこの曲に関しては、それが正解だと思ったからそのままにしました。

そんな歌い方を今までしたこと、ありました?

ないです。明確に何が伝えたいのかわかって歌ってたから。「Silly」も何が欲しいのかわからないけれど、何かを欲した気持ちを歌ってたし。とにかく「未完成」は全部ぐちゃぐちゃなんですよね。

まさに未完成(笑)。

未完成すぎて(笑)。でもそういう歌があってもいいと思ったので。

2曲目は「Unchain」。歌詞はHANAEさんとの共作なんですね。

もともとHANAEさんの書く歌詞が好きで。事務所を出られたあとも(家入レオが所属する研音にHANAEも2018年3月まで所属)、友達として会ってたんです。で、今回のカップリング曲を考えていたときHANAEさんと一緒に書きたいなと思って。というのも20代後半から30代にかけて、自分はなんのために生まれてきたんだろうって自問する現象をクオーターライフ・クライシスって言うらしいんですけど、そういうことを書こうって決めていて。そういえばHANAEさんともそういう話をしてたので、これは一緒に書くのがいいのかもと思って。

楽しかったです、この作詞は。今まで同世代の女性と密にコンタクトを取りながら歌詞を書くことがなかったので

クオーターライフ・クライシスは気になるテーマだった?

ですね。私も25歳になって、新しい役割を欲してるんだなって思うことが多くなったので。わかりやすく言うと結婚する同級生がいたり、お母さんになる同級生がいたり。就職して3~4年経って仕事にもちょっとなれて落ち着いてくると、「じゃ、自分って本当は何がしたいんだろう……」っていうことが、よリダイレクトに問われてくるというか。その答え探しの鬱屈とした気持ちを曲にしたいなぁと思ったんです。それで書きたいことをHANAEさんに送って、会って詰めていって。楽しかったです、この作詞は。今まで同世代の女性と密にコンタクトを取りながら歌詞を書くことがなかったので。

音数の少ない感じでやってみようということで、みんなで一発録りしました

そして3曲目はガラッと感じが変わった「Every Single Day」のセルフカバー。

リアレンジしました。この曲、ずっともう一回収録したいなと思ってたんです。いろんな経験をした今のほうが、よりこの気持ちをお届けできる気がすると思って。あと今年のファンクラブイベントでチェロとアコギとパーカッションの編成でやったライブがすごい好評だったので、これもちょっと音数の少ない感じでやってみようということで、みんなで一発録りしました。

歌も一発録り?

歌もです。でもチェロってすごいですね。音に深みが出るというか。こういう低い音って必要不可欠だし、安心しますよね。歌ってても、すごく気持ちよかったです。

私はただ歌を歌っていく人になりたい

ところでターニングポイントだった2019年を経て、2020年はどんな年にしたいですか。

自分が大事にしたいものが2019年に改めてわかったので、どういうふうに生きていきたいのかをちゃんと意識する1年にしたいです。「未完成」でひとつストッパーが取れたようなところもあるので。一生懸命生きたいですね、今まで以上に。……なんだろ、今さらですけど、私はただ歌を歌っていく人になりたいので、一人の人間として主張すべきことは当たり前に言っていきたいし、もっとのびのび生きようって思ってます。

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家入レオ

福岡出身。13歳で音楽塾ヴォイスの門を叩き、青春期ならではの叫び・葛藤を爆発させた「サブリナ」を完成させた15の時、音楽の道で生きていくことを決意。翌年単身上京。都内の高校へ通いながら、2012年2月メジャー・デビューを果たし、1stアルバム『LEO』がオリコン2週連続2位を記録。第54回日本レコード大賞最優秀新人賞他数多くの新人賞を受賞。翌1月より開催の初ワンマンツアーは全公演即日完売に。翌2013年春高校を卒業。以降数多くのドラマ主題歌やCMソングなどを担当。
2017年2月にはデビュー5周年を記念し初のベストアルバム『5th Anniversary Best』を発売。4月には同じく初の日本武道館公演「5th Anniversary Live at 日本武道館」を開催し、チケットは即時完売・大成功に収める。
2019年は1月に初の映画タイアップとなる『コードギアス 復活のルルーシュ』オープニング主題歌「この世界で」をリリースし、2月には7周年を記念して”家入レオ 7th Anniversary Live at 大阪城ホール ~Premium Symphonic Night~”を開催。5月10日からは最新オリジナル・アルバム『DUO』(2019.4.17リリース)をひっさげて”家入レオ 7th Live Tour 2019”(全20公演)を開催、ファイナルを初のワンマンとなる幕張メッセ国際展示場9.10ホールにて大成功に収める。12月11日には、その日の模様を収めた最新映像ライブ映像作品『DUO ~7th Live Tour~』をリリース。
2020年1月29日には自身16枚目となるニューシングル「未完成」(フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』主題歌)をリリースする。

オフィシャルサイト
https://leo-ieiri.com