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アトラス×ファイアーエムブレムの奇跡『幻影異聞録♯FE Encore』予想を超えた完成度とは

アトラス×ファイアーエムブレムの奇跡『幻影異聞録♯FE Encore』予想を超えた完成度とは

Wii Uで『幻影異聞録♯FE』を遊んだとき、これはとてつもないゲームだと感じた。良質なRPGメーカーとしてのアトラスが『ファイアーエムブレム』とコラボすることで生まれたこの作品はなんと、”芸能界”に関わる若者たちの姿を描き、そのうえ、”芸能の力が主人公たちの戦う力となる”というハジけた設定のものだった。シリアスなシーンもあるが、ゲームは楽しいエンターテインメントに満ち溢れていて、プレイフィールは爽快そのもの。avexが制作した楽曲や、楽曲に伴うアニメさながらのPVなども素晴らしく、RPGってこんなことができるのだと驚いたものだ。
その素晴らしい作品がこのたびNintendo Switch用ソフトとしてパワーアップし、『幻影異聞録♯FE Encore』となって帰ってきた。今回の記事ではひとりでも多くの方にこのオンリーワンの魅力を持つRPGを遊んでもらうべく、その素晴らしさを語っていく。

文 / 浅葉たいが


今までにないRPG体験をもたらす芸能×バトルの妙

物語の舞台は現代の東京。芸能が栄えるこの街に異世界からの侵略者”ミラージュ”が現れるところから物語は始まる。人間の持つ”パフォーマ”というエネルギーを求めてやってきた侵略者によって、世界に魔の手が迫っていく。そんなミラージュに対抗できるのは、芸能界という華やかな世界に関わるエネルギッシュな若者たち。彼らは”ミラージュマスター”として、『ファイアーエムブレム』の英雄たちの力を借りてミラージュに立ち向かい世界を救う道を探す。

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▲主人公の蒼井樹。幼馴染の織部つばさが所属することになった芸能事務所 “フォルトナエンタテイメント”に強引に引き込まれる

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▲樹に力を貸す異世界の英雄クロム。『ファイアーエムブレム』シリーズをプレイしている人なら、ピンとくる名前だろう

アトラスと『ファイアーエムブレム』のコラボという座組からはなかなか想像できない、ポップで熱くてときどき切なくなる本作のストーリーは、プレイヤーの心をなんらかの形で震わせるはず。筆者の場合はプレイを始めたばかりの頃、『真・女神転生』などで培ってきた重厚なアトラス作品のイメージが強すぎたことと、若者らしい喜びや悩みを一大事と考える主人公たちの姿を見て、ちょっと対象年齢を間違えたかなと思ったのだが、最初から最後まで”やめられない”疾走感のようなものがプレイを止めることを許さなかった。しかも青臭いとさえ思っていた主人公たちが、途中から憧れの存在のように感じてきて”芸能人を応援する気持ち”のようなものが湧いてくるのだから不思議なものだ。結果、ボーカル曲が収録されたCDも購入したし、本作の声優陣が出演するライブにも行った。ライブには年の近い友だちと一緒に行ったのだが、ふたりともライブ後に訪れた焼肉店でその日の興奮を熱く語ったものだ。

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▲作中でもキャラクターの歌唱シーンは表現豊かな3D、ときにはアニメーションで描かれる。本作の歌はどれもキャラクターの魅力をばっちりと捉えた傑作ばかり。興味の湧いた方は、1月17日に発売となったCD『幻影異聞録#FE Encore ベストサウンドコレクション』をチェックしてみよう

RPGとしてのプレイフィールは、アトラス製RPGの良いところを受け継ぎつつも”芸能”要素を活かした華やかなものになっている。遊びやすいコマンド選択式RPGでありながら、敵の弱点を突くことで味方が追撃を行う”セッション”というシステムがあることで、戦略の幅が非常に広い。敵の弱点を探り出すように戦い、弱点が判明するや否や猛攻をかけられるというこのシステムは“いろいろと試し、答えを見つける“楽しみに満ちている。アトラスの『真・女神転生』シリーズ、『ペルソナ』シリーズなどでも弱点を突くことでメリットが得られるシステムは採用されていたが、あの爽快なプレイフィールが新しいフィールドで味わえると考えてもらえればいいだろう。もちろん、初プレイの方には丁寧なチュートリアルや説明が用意されているし、理解すれば非常に簡単な戦闘システムとなっているので安心してプレイしてもらいたい。

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▲戦闘画面もとにかく華やか。戦闘システム自体は、わかりやすいコマンド選択式RPGとなっている

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▲戦闘では、アトラス製RPGでおなじみのスキルも多数登場する。『真・女神転生』シリーズや『ペルソナ』シリーズを遊んでいるならすぐに馴染むだろう

必殺技的な扱いの”スペシャルパフォーマンス”、セッション中に繰り出せる”デュオアーツ”という大技は威力もさることながら、ダイナミックな演出が見られるのが大きな特徴。演出面の良さを強調するとテンポ面が心配になる方がいるかもしれないが、戦闘に関しては実にテンポよく進むので安心してほしい。さらにWii U版唯一の惜しい点と言ってもいい戦闘まえの長めのロードが、Nintendo Switch版では大幅に短縮。さらにテンポアップを望む人のために新機能“Quick Session”モードまで追加されてしまい、重箱の隅をつつくように粗さがしをしてもほとんど見つからない神ゲーとなってしまった。

幻影異聞録♯FE

▲敵の弱点を突くと、仲間が追撃をしかけるセッションが発生。始動攻撃によっては2人目、3人目とセッションがつながっていく

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▲芸能の力を戦う力に変えるという設定をバトルにもしっかりと活かし、キャラクターたちがライブさながらのパフォーマンスをすることも

Nintendo Switch版で新たに追加された要素は、Wii U版を遊んだプレイヤーが気になる要素だろう。ボリュームとしてはそれほど多くないものの新しく追加されたEXストーリーを進めると、いくつかのカバー曲のほか、つばさ&Kiriaの新曲などが追加される。Wii U版では語られなかったエピソードには、主人公たちのパーソナリティをより深く描いたものも存在するので、時間のある人はじっくりとこのパートも進めてみてほしい。

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▲つばさとKiriaの新曲は、新規ムービーも流れる。Wii U版を200時間ほどプレイした筆者だが、この1曲のために本作を買った価値さえあったと思っている

EXストーリーをクリアしていくと、バトルに参加しない舞子、チキ、バリィのセッションスキルが追加されるのも嬉しいところ。個人的には、『ファイアーエムブレム』の世界設定を強く思い出すチキが戦闘で顔を出すシーンが増えたのは非常に嬉しい。

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▲チキたちがセッションをサポートしてくれることでより戦闘がにぎやかに

また、Wii U版の良さだと思っていたWii U GamePadを使った2画面プレイは、Nintendo Switch作品なので当然ながら1画面へと変更。Wii U版はWii U GamePadを使っての2画面プレイを前提とした作りだったので、そこはちょっと物足りなくなるのかなと思っていたのだが、操作のレスポンス向上やボタンの割り振りが変化したことで、プレイしてみると“1画面でも気にならない”ところに着地している。昔、Wii U版の魅力を語る際には熱く、「Wii Uならではの2画面がまたいいんですよ」といったことを強調したものだが、Nintendo Switch版のプレイを経てその発言を撤回させていただく。2画面は大きな個性だったが、それを見事にNintendo Switchに落とし込んだアトラスの手腕により、1画面でも遜色ないプレイ体験を提供するゲームとなったのだ。

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▲Wii U版では“TOPIC”という、主人公たちが使うメッセージツールが2画面を活かした形で楽しめたが、Nintendo Switch版では快適なUI(+ボタン)で呼び出せるようになった。2画面の良さが損なわれたと思えないのは、環境に合わせた丁寧な移植の賜だろう

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▲キャラクター別のコスチュームも充実。なんとNintendo Switch版では、『ファイアーエムブレム 風花雪月』とのコラボコスチュームも登場する

芸能の力を戦う力に変えるというポップな設定ではあるものの、物語はときにシリアスな面を見せて進んでいく。主人公の若者たちはエネルギッシュに世界を守るために戦うが、本作に登場する敵は生半可ではない存在だ。死闘であることは間違いないのだが、それを成長や絆、そして若者たちの内側にある勇者のような前向きな心で乗り越えていく。物語の後半で、英雄のように頼もしい彼らを見ることができてとても嬉しかった。
月並みな言葉だが、本作は本当に面白いRPGだ。筆者は勝手に、このゲームは作り手側が楽しみながら組み立てたからこそ生まれた傑作なのではないかと想像している。そうじゃなければ、プレイ後にこんなにハッピーな気持ちになれるRPGは生まれないと思うのだ。しかも、ただ勢いだけで作った作品ではないところがまた素晴らしい。
芸能界の華やかな力が悪や闇を祓う力になる、というアクセルを踏み切った設定をうわべだけでは終わらせないように、バトルにもプレイヤーの心をつかむ要素をふんだんに盛りこんでいる。用意した数々の楽曲を戦いのなかでライブのように披露させる大胆な作りに冗長さを感じないのは、ストレスを生まない配慮が行き届いているからだ。
通常、要素を詰め込みすぎた作品や新しいものにチャレンジしすぎた作品は、どこかで破綻していることが多い。伝えたいテーマやコンセプトは強烈にアピールしてくるものの、いざプレイしてみるとテンポが悪かったり、ゲームバランスが悪かったりする作品を山のように見てきた。本作のWii U版を遊び始めたときは、要素が渋滞してストレスを生むのではと心配したものだ。しかし、本作はWii U版の時点でとてつもない完成度であり、プレイヤーを作品のなかに引き込んできた。当時プレイした人の感想が概ねポジティブなのは、この作品のなかに制作陣の本気を見た人が多かったからだと考えている。芸能×RPGというテーマ選びが斬新というだけではなく、RPGとして戦闘の歯ごたえやキャラクターの育成などが純粋に面白く、手触りもいい。アトラスの培ってきた良質なRPG体験が傷つくことなく、むしろ輝きを増して作品に潜んでいる。Wii U版の1周目を徹夜明けの早朝にクリアしたあと、すぐに難度を上げた2周目にとりかかってしまうほど筆者を夢中にさせてくれたのも良い思い出だ。本作は通常の難度で遊べば適度に歯ごたえのあるRPGだが、難度を上げるとかなりスリルのある冒険を楽しめる。
アトラス作品を愛する方はもちろん、すべてのRPGファンに絶対に遊んでもらいたい一本として筆者はこの作品を挙げる。アトラスファンで集まると『真・女神転生』派か、『ペルソナ』派か、そして『ペルソナ』派としたらどの時期の作品が好きなのかという話題になったりするが、僕はここ数年「一番好きなアトラス作品は『幻影異聞録♯FE』」と発言している。そろそろ新情報が出てきそうな『真・女神転生Ⅴ』もすこぶる楽しみだが、この作品もなにとぞシリーズ化してほしい。

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幻影異聞録♯FE Encore ロゴ

■タイトル:幻影異聞録♯FE Encore
■発売元:任天堂
■対応ハード:Nintendo Switch™
■ジャンル:RPG
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2020年1月17日)
■価格:パッケージ版・ダウンロード版 各6,700円+税


『幻影異聞録♯FE Encore』オフィシャルサイト

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