モリコメンド 一本釣り  vol. 155

Column

Pulse Factory 1stアルバム『ULTRANOVA』から伝わるJ-ROCKの伝統と濃密なバンドサウンド

Pulse Factory 1stアルバム『ULTRANOVA』から伝わるJ-ROCKの伝統と濃密なバンドサウンド

ストリーミングサービスやSNSの普及、アジア圏のアーティストに対する注目度の高まりなどによって、海外での活動を視野に入れたアーティストが増えている。そうなると当然、海外のリスナーを意識した楽曲作り、サウンドメイクになるわけだが、そのなかには正直「確かに海外アーティストっぽい音になっているし、クオリティも高いけど、単なる模倣で終わってないか?」と感じてしまうこともある。レコーディング、音作りに関する情報を簡単に得られ、それを実現できる機材も比較的安価で揃えられる状況のなか、大事なのはグローバル・ポップのトレンドに乗ると同時に、そのアーティストが育ってきた環境、生活している場所のアイデンティティをしっかり持ちつつ、それをローカライズ(“地域化”。ある国を対象に作られた製品、コンテンツなどを他の国でも通用するように、使用する国の言語に対応させること)なのではないか、と。……すいません、なんだか大袈裟な書き出しになってしまったが、要は「どういう人生を送ってきて、どういう音楽を聴いてきて、どんな場所で生活しているかがわかる音楽は魅力的だ」ということ。そんなことを考えたのは、今回紹介するPulse Factoryの1stアルバム『ULTRANOVA』がきっかけだった。

“大阪発ド真ん中のロックバンド”としてシーンの注目を集めているPulse Factoryは、大阪の音楽専門学校で出会った4人(Nobu/Vo、Yussan/G、Masaki/G、Katsutoshi/B)により結成、地元のライブハウスを中心に活動を続けてきた。これまで共演したバンドは、KNOCK OUT MONKEY、PENGUIN RESEARCH、ベッド・イン、LOCAL CONNECT、Novelbrightなど完全にジャンルレス。2018年には『イナズマロック フェス』に出演、2019年に開催した梅田クアトロでのワンマンライブも超満員となるなど、確実に活動の規模を拡大している。フェスや対バンライブで初めて彼らのライブを観た(存在自体を知った)観客を惹きつける求心力こそが、このバンドの武器。それを支えているのは、日本人の琴線に触れるJ-ROCKの遺伝子がしっかりと刻まれた楽曲だ。

メンバーの音楽的ルーツは、日本のロック、ポップスが中心。WANDS、B’z、BUMP OF CHICKEN、Mr.Childrenといったアーティストから受けた影響をもとにしながら、“ライブハウスで盛り上がれる、歌える”ことに意識を置いた楽曲は、まったく難解なところがなく、初めて聴いた瞬間から素直に楽しむことができる。中心にあるのはキャッチーでドラマティックなメロディ、そして、アグレッシブなロックにダンスの要素を合わせたサウンド。耳なじみがよく、自然に身体を揺らしているうちに、バンドそのものに興味を持ち、引き込まれていくーーそういう現象が各地のライブハウスで起こっているのだと思う。メンバー4人のうち3人が作曲を手がけることで生まれる音楽的な幅の広さ、関西出身ならではの(?)“かっこよくて、面白い”ステージングもこのバンドの魅力だろう。

J-ROCKの伝統をアップデートさせ続けるPulse Factoryのオリジナリティはもちろん、1stアルバム『ULTRANOVA』にも強く反映されている。EDM系のサウンドと4つ打ちのビートを打ち流すオープニングSE「ULTRANOVA」から始まる本作。エモコア直系の骨太サウンドと美しいピアノのフレーズ、心地よい解放感に溢れメロディが一つになった「風に鳴れ」、鋭利なギターロックとまるでユーロビートのようなダンストラックが混ざり合う「BRITOM」、和の要素を感じさせる旋律のなかで、前向きなメッセージを含んだ歌を高らかに響かせる「希」(読み:ヒカリ)など、ハイブリッドな楽曲が並ぶ。様々な音楽のテイストを混ぜ合わせ、独自のバンドサウンドに結びつけるスタイルもまた、これまでの日本のバンド/アーティストの伝統につながっている。高い表現力、演奏力を求められる楽曲ばかりだが、音源を聴くだけでも、ミュージシャンとしての力量を感じてもらえるはず。特に印象的なのはNobuの歌。濃密なバンドサウンドをしっかりと乗りこなし、起伏に富んだメロディとともに日本語の歌詞を明確に届けるボーカルは、間違いなく、このバンドの核になっていると思う。

2020年2月には東京・渋谷にてバンド主催のサーキットイベント「Pulse Factory presents 【TOKYO ROCK CLASSIX 2020】」を開催。さらに2月から4月にかけて、アルバムを引っ提げた全国ツアーも行われる。1stアルバム『ULTRANOVA』をきっかけに、Pulse Factoryの存在は関西から全国区へと発展するはず。将来的にはぜひ、“日本発のロックバンド”としてアジアや世界に向けて発信してほしい。

文 / 森朋之

その他のPulse Factoryの作品はこちらへ。

オフィシャルサイト
https://pulsefactory.jp

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