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鈴木勝秀×る・ひまわり第3弾「ウエアハウス-double-」「る・ぽえ」。人の心の深淵に迫る2作品が新国立劇場にて上演中!

鈴木勝秀×る・ひまわり第3弾「ウエアハウス-double-」「る・ぽえ」。人の心の深淵に迫る2作品が新国立劇場にて上演中!

演出家・鈴木勝秀が長年ライフワークとして取り組んでいる実験的シリーズの最新作、二人芝居「ウエアハウス-double-」と、大正~昭和にかけて活躍した3人の詩人にスポットを当てたオムニバス作品「る・ぽえ」の2作品が2020年1月25日(土)より東京・新国立劇場 小劇場で開幕した。実力派の役者たちが描く濃厚な人間ドラマ……そのゲネプロの模様をレポートする。

取材・文・撮影 / 近藤明子


いつの時代も変わらない、“人の心の闇”を描く問題作

新国立劇場 小劇場にて「ウエアハウス-double-」「る・ぽえ」が絶賛上演中だ。 同時期に同じ舞台を使い、異なる2作品を上演するという実験的な試みに、平野 良、小林且弥、碓井将大、辻本祐樹、木ノ本嶺浩、林 剛史、加藤 啓が挑んだ。

ウエアハウス-double- エンタメステーションレポート

「ウエアハウス-double-」は、二人芝居で見せる濃密な密室会話劇

「ウエアハウス-double-」は、アメリカの劇作家エドワード・オールビーが1958年に発表した戯曲『動物園物語』をベースにした、二人芝居で見せる濃密な密室会話劇。

ウエアハウス-double- エンタメステーションレポート

閉鎖された教会の地下にある“憩いの部屋”で、暗唱サークルで発表するためにアレン・ギンズバーグの長編詩「吠える」の練習をしていたヒガシヤマ(平野 良)。そんな彼の前に謎の男・ルイケ(小林且弥)がフラリと現れるところから物語がスタートする。

何気ない世間話を始めるふたりだったが、次第に狂気をはらんだ重い空気が場を支配し、恐怖の時間が流れていく。

ウエアハウス-double- エンタメステーションレポート

平凡なサラリーマンのヒガシヤマを演じる平野の芝居はナチュラルで、観客は親しみを持って彼に自分自身を重ね感情移入していくだろう。 対してルイケを演じる小林の芝居には、背筋に冷たいものが走る感覚に襲われ、ストーリーが進むにつれて、ヒガシヤマと噛み合わなくなる会話に恐怖すら覚える。

「家庭内で妻や娘に顧みられない」「マンションを購入したが、ローンがまだまだ残っている」と、やや自虐的に自身のことを語るヒガシヤマだが、それでも言葉の端々からは幸せな家族の絵が浮かんでくる。一方、ルイケはそんなヒガシヤマの言葉の揚げ足をとるように細部まで根掘り葉掘り彼の個人情報を聞き出そうとする。その執拗さには、彼の心の闇を感じずにはいられない。

ウエアハウス-double- エンタメステーションレポート

物語の中には、いくつも分岐点があった。
ルイケが訪れたときに、なぜヒガシヤマはその場を立ち去らなかったのか。
なぜ会話にのってしまったのか。
なぜ冗談めかしてとはいえ、家族に対する不満を口にしてしまったのか。
ひとつひとつは取るに足らない小さな違和感だったが、目に見えない糸にからめとられるように、ヒガシヤマはルイケの狂気に追い詰められていく。

ウエアハウス-double- エンタメステーションレポート

所詮は他人同士、わかり合うことはできないものだと頭では理解していても、人は交流を求め、そのなかで承認欲求を満たして欲しいと願ってしまう。しかし、そこにわずかでも相容れないものを感じれば攻撃に転じ、時に力を持ってねじ伏せようとする者もいる。
危うい均衡を破り、最後に彼らが迎える結末は──。

「る・ぽえ」は、日本を代表する詩人の“詩”を引用して物語を紡いでいく

「る・ぽえ」は日本を代表する3人の詩人、高村光太郎、萩原朔太郎、中原中也の実際にあったエピソードをベースに、彼らの“詩”を引用して物語を紡いでいく。

る・ぽえ エンタメステーションレポート

「智恵子抄」をモチーフにした夫婦の話では、高村光太郎 役の辻本祐樹が妻・智恵子への愛を繊細に演じてみせた。次第に精神を病んでいく愛しい人、その変化に気づけなかった自責の念、そして亡くなった智恵子への憐憫の情が言葉の端々に溢れ出て、見る者の涙を誘う。

る・ぽえ エンタメステーションレポート

萩原朔太郎の「月に吠える」をメインにしたパートでは、彼の奇想天外な話が描かれる。教科書にも出てくる有名詩人だが“マジックが好き”“ミステリー好き”といった情報は本作で初めて知り驚いた。萩原朔太郎のチャーミングでつかみどころのないキャラクターを木ノ本嶺浩が表情豊かに、時に想定外の動きでエキセントリックな人物像を生き生きと描き出していた。

る・ぽえ エンタメステーションレポート

そして、もう一本の物語では、碓井将大が演じる中原中也が、愛した女を奪った親友への怒りを吐き捨てるような言葉の羅列を歌にのせて絶叫する。碓井は怒りを身体全体で表現し、絶望と悲しみの物語の中で魂を開放してみせた。

る・ぽえ エンタメステーションレポート

オムニバス形式の物語の中で、彼らを取り巻く詩人、文豪などを演じた林 剛史と加藤 啓も、それぞれの主人公に寄り添い、物語を担う男のひとりとして無限のエネルギーを注ぎ込んでいた。

る・ぽえ エンタメステーションレポート

360度客席に囲まれた舞台で上演される2作品。
余計なものは何もない舞台上で、言葉の持つ力と感情を爆発させた役者陣のパワーもさることながら、演出家・鈴木勝秀が26年にわたってつねに新たな試みに挑戦し続ける並々ならぬ探求心とエンターテインメントを愛するピュアな想いがストレートに響いてきた。
発信する側と受け止める側、双方のエネルギーを必要とする衝撃的な舞台だった。

裸の俳優の姿が浮かび上がる。ピュアな魂が充満している。

初日の開幕を前に、キャスト陣と演出の鈴木勝秀からコメントが届いた。


「ウエアハウス-double-」

平野 良
鈴木勝秀さん作の「ウエアハウス」。30年近く形を変えながらも上演されているこの作品を、小林且弥さんという尊敬する先輩と二人芝居という濃密で贅沢な空間で演じることができてとても幸せに感じます。
今この時期に新国立劇場で二人芝居をさせていただける“る・ひま”さんにも感謝しかございません。
初めての二人芝居なので、台詞量はもちろんのこと挑戦することは多くありましたが、お芝居を始めたときの純粋な“芝居が好きだ”を体現できる場所だと思います。何気ない会話からどんどん展開していく物語をぜひとも目撃していただけたら幸いです。

平野 良 エンタメステーションレポート

小林且弥
この30年近い時の流れの中で、少しずつその有様を変えながらずっと生き続けてきた戯曲「ウエアハウス」。その変遷の中で、今この瞬間に僕らふたりがこの物語に挑む意味。その答えを必死に、真摯に探し続けたいと思います。ふたりでしか生まれない、その瞬間を目撃していただければこれ幸いです。

小林且弥 エンタメステーションレポート

演出:鈴木勝秀
「ウエアハウス」シリーズを個人的に27年、四半世紀以上も続けている。それも芝居という形式だけではなく、リーディング・ライヴ、CD、美術展など、様々に展開してきた。はっきり言って、僕自身のためにやっている。だから俳優にも、個人的な表現としてやってもらいたいとお願いしている。そうすることによって、そのときそのときの「ウエアハウス」が立ち上がる。そしてそこには、演技という衣を脱ぎ捨てた生身の、裸の俳優の姿が浮かび上がる。今回も素晴らしい俳優を見ることができた。ありがとう。


「る・ぽえ」

碓井将大
日本の文学史に残るような詩人が書いた美しい言葉を、その時代に生きていない僕たちの肉体を通して皆様にお伝えできるのが楽しみです。僕は中原中也を演じますが、日常生活を送るなかでは、なかなか味わえないような悔しさや悲しさなどの喜怒哀楽を、皆様がスカッとするくらい舞台で発散できるように、一公演だけで魂が抜けるくらいの熱量を持って演じたいと思っています。
3篇のそして3人の詩人の物語から成るので、1回といわず、2回3回とそれぞれの詩人の立場になって見てもらえればと思います。

碓井将大 エンタメステーションレポート

辻本祐樹
演出のスズカツさんとは3度目のお仕事です。とても繊細な演出をなさってくださるので、役づくりはひと筋縄ではいかないのですが、実験的な稽古がとても楽しく、詩人それぞれの演出の変化にワクワクしながらつい見入り、ドキドキしながら稽古しました。高村光太郎、萩原朔太郎、中原中也の3人の繊細な世界観の違いを楽しんでいただける作品となっています。高村光太郎「智恵子抄」は、僕自身初めての演じ方で、毎日新鮮に舞台上に立っています。じっくりお楽しみください。

辻本祐樹 エンタメステーションレポート

木ノ本嶺浩
少し前の時代の詩人を演じるわけで、時代が変われば言葉も多少変化する。
現代のそれより過去のそれの方が重く感じる。詩となれば尚更。
詩と詩人について考える日々(そこにはもれなく音楽もある)はとても楽しく、スズカツさんと共に演劇をつくれる喜びは一入(ひとしお)。
動く、踊る、叫ぶ、暗唱する。いろいろやります。
僕たちが考えた詩人はこうなりました。そんな詩人たちをお楽しみくださいませ。

木ノ本嶺浩 エンタメステーションレポート

林 剛史
稽古を重ね、不安が少なくなってきて楽しさの方が増してきました!
この作品がお客様にどう伝わるのかひとりひとり見え方が本当に違う作品なのではと思います。
今回、このような作品を僕がやるのは初めてなので、緊張から始まり、不安に変わり、楽しみに変わって、本番ではどんな気持ちになるのかワクワクしてます!
少しでもたくさんのお客様にこの作品を見てもらえたら嬉しいです。
新しい僕の一面が出てるのではと思ってます!
劇場にて、心よりお待ちしております。

林 剛史 エンタメステーションレポート

加藤 啓
僕たちが演じるのは、詩人、文豪の書きつけた言葉の断片です。
萩原朔太郎の陰陽のリズム、中原中也と小林秀雄のすさまじい関係、そして高村光太郎の別れ。
その断片的なイメージが重なり合って、詩人たちの掘り出した言葉が、鮮烈に立ち上がってくることを目指します。
本番がとても愉しみです。
劇場でお待ちしております。

加藤 啓 エンタメステーションレポート

演出:鈴木勝秀
年月を経ても生き残った“言葉”は強靭である。その“言葉”に挑むには、生半可なパワーでは撃破されてしまう。全力で挑んで、初めて勝負になる。だから今回俳優は、全力で“言葉”に挑んでいる。真っ向勝負。小手先で覚えたテクニックはすべて投げ捨て、豪速球をど真ん中に投げ込み続ける。とても荒っぽい。ザラザラしてる。ヒリヒリしている。だがその姿は、鮮烈で、愛おしく、胸を打つ。舞台上にはピュアな魂が充満している。


「ウエアハウス-double-」「る・ぽえ」は2月2日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて上演。

鈴木勝秀×る・ひまわり第3弾
「ウエアハウス-double-」
「る・ぽえ」

2020年1月25日(土)~2月2日(日)新国立劇場 小劇場

「ウエアハウス-double-」
上演台本・演出:鈴木勝秀
出演:平野良、小林且弥

1月25日(土)19:00
1月26日(日)12:00
1月27日(月)19:00
1月28日(火)休演日
1月29日(水)15:00
1月30日(木)休演日
1月31日(金)19:00
2月1日(土) 13:00
2月2日(日) 16:00

オフィシャルサイト

「る・ぽえ」
上演台本・演出:鈴木勝秀
出演:碓井将大、辻本祐樹、木ノ本嶺浩、林 剛史、加藤 啓

1月25日(土)15:00
1月26日(日)16:00
1月27日(月)休演日
1月28日(火)19:00
1月29日(水)19:00
1月30日(木)19:00
1月31日(金)15:00
2月1日(土) 18:00
2月2日(日) 12:00

オフィシャルサイト