佐藤剛の「会った、聴いた、読んだ」  vol. 127

Column

浜田真理子の「リリー・マルレーン」がほんとうに素晴らしくて…。

浜田真理子の「リリー・マルレーン」がほんとうに素晴らしくて…。

3月25日に世田谷パブリックシアターで行われる舞台『マイ・ラスト・ソング』の打ち合わせの場で、上京してきた浜田真理子さんにお会いしたのは1月23日の夕方である。

その席で話題になったのが、久世光彦さんが演出したテレビドラマのTBS水曜劇場『寺内貫太郎一家』で、「リリー・マルレーン」という歌そのものがテーマになっていた第18話が、最近では“神回”と呼ばれていることだった。

ぼくはこの連載の47回で、“西城秀樹が番組の最後のほうに瓦屋根の上で、ギターを抱えて日本語で歌うシーンがとても良かった”と記したと思う。

西城秀樹が『寺内貫太郎一家』で歌った名曲「リリー・マルレーン」を聴く

西城秀樹が『寺内貫太郎一家』で歌った名曲「リリー・マルレーン」を聴く

2018.06.05

選曲についての打ち合わせが終わってから、浜田さんに新しいアルバムのCDを頂いたので、一昨日と昨日は何度かじっくり聴いてみた。

そして今日も夜明け前から耳をかたむけながら、この原稿を書いている。

アルバム『MARIKO HAMADA LIVE 2017~2019 vol.2』は昨年の11月に出たライブ盤シリーズの第2作で、浜田さんの地元である松江市の島根県民会館やBillboard Live TOKYOなど、数カ所のホールやライブハウスにおける録音をプロデューサーの久保田麻琴氏がまとめてMIXしたものだ。

3年間の活動で録音されたライブ音源から、選りすぐりの11曲が収められたアルバムを聴いていると、音楽の神様の微笑みが感じられる瞬間になんども出会えた。

なかでもマレーネ・ディートリッヒの「リリー・マルレーン」をカヴァーした歌と演奏が、ぼくにはとりわけ素晴らしいものに思えた。

そこで、いつの録音だったのか、共演者は誰だったのかを調べてみたら、資料のなかで「M-6: めぐろパーシモン大ホール 2018/7/7」という文字を見つけた。

そこをたどると「ジャズ・ワールドビート2018」のホームページに行き着いた。

第3回を迎え夏の風物詩としてすっかり定着してきた「ジャズ・ワールドビート」が、今年は七夕の日に開催されました。今年も多くのミュージシャンが参加し、1日中ジャズの要素を取り入れた様々なジャンルの音楽がホールに鳴り響いていました。

http://www.plankton.co.jp/jazz2018/report.html

プランクトンの川島恵子さんが主催しているこのイベントは、行きたいと思っていながら都合がつかなくて行けなかったものだった。

ところがその時にライブで披露された「リリー・マルレーン」が、新しいアルバムに収録されていたヴァージョンだったのである。

バイオリンが喜多直毅、ピアノが黒田京子。

そしてイベントのHPでは、その日のライブを体験した気持ちを表すことばとして、“神憑って”と、“心が揺さぶられて”が使われていた。

「奇跡の声」と言われるシンガー・ソングライター。一時期ジャズ・ピアニストを目指してたそうで、彼女の歌には、ジャズやブルースを感じます。ピアノ・ソロの弾き語りと自身のトリオ(ベース、アコーディオン)で素敵な歌を披露しましたが、ゲスト出演した喜多直毅さん&黒田京子さんとのトリオで歌った「リリー・マルレーン」は神憑っていて、心揺さぶられました!

http://www.plankton.co.jp/jazz2018/report.html

これぞ最高の褒め言葉だと思った。

そして今しがた、そのコンサートでピアノを弾いていた黒田京子さんが、ご自分のブログにこんなコメントを書いていることを知った。

浜田さんのうたはほんとうにすばらしいです。うまく言えませんが、とても不思議な魅力にあふれています。

http://www.ortopera.com/topics/2020.html

これもまた実にすなおなことばで心にしみた。

そういえばレーベルからの資料にも、わざわざ“黒田京子、喜多直毅との「リリーマルレーン」は白眉”だと明記してあった。

なるほど、ほんとうに素晴らしい音楽はこのように人の心を揺さぶり、人のことばを介して、心にしみ入るように伝わっていくものなのだなぁと、あらためて思い知らされたところである。

著者プロフィール:佐藤剛

1952年岩手県盛岡市生まれ、宮城県仙台市育ち。明治大学卒業後、音楽業界誌『ミュージック・ラボ』の編集と営業に携わる。
シンコー・ミュージックを経て、プロデューサーとして独立。数多くのアーティストの作品やコンサートをてがける。
久世光彦のエッセイを舞台化した「マイ・ラスト・ソング」では、構成と演出を担当。
2015年、NPO法人ミュージックソムリエ協会会長。現在は顧問。
著書にはノンフィクション『上を向いて歩こう』(岩波書店、小学館文庫)、『黄昏のビギンの物語』(小学館新書)、『美輪明宏と「ヨイトマケの唄」~天才たちはいかにして出会ったのか』(文藝春秋)、『ウェルカム!ビートルズ』(リットーミュージック)

ウェルカム!ビートルズ 1966年の武道館公演を実現させたビジネスマンたち

著者:佐藤剛
ボイジャー

ビートルズ来日をめぐる人間ドラマを丹念に描く感動のノンフィクション。

1966年のビートルズ来日公演、それは今になってみれば、奇跡的といえるものだった。いったい誰が、どのようにしてビートルズを日本に呼ぶ計画を立てて、それを極秘裏に進めて成功に導いたのだろうか? これは日本の経済復興の象徴だったリーディング・カンパニーの東芝電気と、その小さな子会社として生まれた東芝レコードにまつわる、歌と音楽とビジネスをめぐる物語である。

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