モリコメンド 一本釣り  vol. 154

Column

Friday Night Plans 不思議なエキゾチズム、快楽的なグルーヴでワールドワイドな活躍へ

Friday Night Plans 不思議なエキゾチズム、快楽的なグルーヴでワールドワイドな活躍へ

世界的なスーパースターであるフランク・オーシャン、ザ・ウィークエンド、ポスト・マローンを筆頭に、ここ数年、オルタナR&Bとダンスミュージック(とヒップホップ)を融合させた音楽が大きな潮流となっている。ここ日本でもRIRI、SIRUP、iri、向井太一など、この流れを感じさせるアーティストが続々と登場。和製R&Bという既存の呼び方が陳腐に聴こえてしまうほど、グローバルなトレンドと同期しながら、独創的な楽曲を提示し続けている。SNSやYouTube、ストリーミングサービスの普及を背景にして、日本のアーティストにも、ワールドワイドに活躍できる条件は十分に揃っていると言っていいだろう。Friday Night Plansも、大きな可能性を備えたアーティストの一人。日本人の父親、フィリピン人の母親を持ち、東京をベースに活動するボーカリスト・Masumiを主体とした音楽プロジェクトだ。

2018年に活動をスタートさせたFriday Night Plansは、オルタナR&B、エレクトロ、ベースミュージックを巧みに融合させた音楽性、ふくよかな倍音と心地よい浮遊感を共存させたボーカルによって、Spotify、Apple Musicなどのストリーミングサービスを中心に、瞬く間に音楽ファンの心を掴んだ。昨年11月にリリースされた2nd EP『Complex』がiTunes R&B/ソウルランキングで1位を獲得するなど、ブレイク直前の状況となっている。

このプロジェクトの特性は、おそらく活動をスタートさせた時点から“海外”を視野を入れていることだ。ベーシックとなる音楽性は、前述した通り、オルタナR&Bを中心としたグローバル・ポップの流れ。ほとんどすべての楽曲が英語の歌詞で歌われ、どこかエキゾチックな雰囲気を感じさせるビジュアルを含め、海外のリスナーを意識していることは明らかだ。そのコンセプトは早々に効果を発揮し、『Complex』のリード曲「All The Dots」がUK版「iD MAGAZINE」のプレイリストに選出、「Decoy」のミュージックビデオがアメリカのポップカルチャー・メディア「FADER」でプレミア公開をされるなど、欧米でも大きな話題を集めている。さらに知名度を上げるきっかけとなったのが、竹内まりやの「Plastic Love」のカバー。海外における日本のシティポップの流行、そして、韓国、日本、台湾、アメリカ、カナダなどから選出された多国籍グループ・NCTのメンバーがダンス動画のBGMに使ったことで、Friday Night Plans版の「Plastic Love」は全世界に波及し、ワールドワイドな活動への扉を開いた。

昨年12月にリリースされた9th 配信 Single「HONDA」は“Honda「VEZEL」CMソング(夜篇)”に起用された。80年代ファンク~ディスコをさらに進化させたサウンドメイク、煌びやかな雰囲気とアンニュイな憂いを自然に共存させたボーカルは、洋楽のポップファンからJ-POPユーザーまで幅広い層のリスナーに訴求。“So far So cool We good このままいこう”というラインに象徴される、英語と日本語のハイブリッドによるリリック、さりげなくジャズやヒップホップの要素を取り入れたアレンジなど、まさに全方位的な楽曲と言っていいだろう。

「HONDA」のMVはPERIMETRON(アーティストMVをはじめ、ファッションブランドのコレクションムービーからプロダクト、ジャケットのデザイン、音楽制作などを手がけるクリエイター・チーム)が制作。ミュージシャンで俳優のHIMIが出演し、雨の東京を舞台に“体調が悪くなった友人を車で病院に連れて行く”プロセスをワンカットの長回しで撮影している。映像のクオリティ、ストーリー性を含め、このMVも世界標準と言っても過言ではないだろう。

トラックメイク、アートワーク、MVを含めて、きわめて精度の高いクリエイションを実現しているFriday Night Plans。その中心的な役割を担っているのはもちろん、Masumiのボーカルだ。洗練されたビートをナチュラルに乗りこなし、自分自身の感情を押し付けるのではなく、抑制された表現とともに、気持ちいいグルーヴとフロウを描き出す。そのスタイルは(どうしても情緒的な歌い方に寄りがちな)既存の日本のアーティストとは一線を画している。単に洋楽志向というわけではなく、不思議なエキゾチズムを感じさせるところも、このシンガーの大きな魅力だ。

宇多田ヒカル、MISIAなど、海外のR&B、ソウルミュージック、ヒップホップをルーツに持つシンガーの登場により、日本の音楽シーンが大きく変化した90年代終わりから20年以上。2020年代のポップシーンは再び大きなチェンジの時期を迎えようとしている。そのなかでFriday Night Palansがどのような役割を果たすのか、彼女が生み出す快楽的なグルーヴに実を任せながら、しっかりと注視していたいと思う。

文 / 森朋之

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