今、知っておくべき注目声優を解説します!  vol. 1

Column

年間アニメ出演数およそ25本の存在感。声優「津田健次郎」唯一無二の声質と“捉えどころのない”魅力

年間アニメ出演数およそ25本の存在感。声優「津田健次郎」唯一無二の声質と“捉えどころのない”魅力

この人の声を知っておけばアニメがもっと楽しくなる(はず)! 今、旬を迎えている声優の魅力をクローズアップする連載コラム。今回は、現在放送中の『僕のヒーローアカデミア』(TVアニメ第4期)、『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』、『魔術士オーフェンはぐれ旅』をはじめ、数多くの作品で活躍中の津田健次郎さんを徹底解説します。


独特の低音ボイスで、知的なキャラから変態チックなおネエまで演じきる!

様々な役柄を演じきる役者という職業にとって、“捉えどころのない人”というのは、じつは最上級の褒め言葉なのではないだろうか。セクシーで影のある男、得体の知れないミステリアスな男、狂気に満ちたぶっとんだ男、魅惑的なおネエキャラ、はたまた人間の枠を超えた謎の動物……と、戦隊ヒーローでいうところのブルーもイエローもグリーンもパープルもブラックも(ときにピンクも!)……と、個性的なキャラを演じさせたらこの人の右に出る人はいないのでは? と思わせてくれる人物。そんな、今最も“捉えどころのない”演技派声優が、津田健次郎だ。

“ツダケン”の愛称で知られる彼は、彼にしか出せない独特の声質がまず魅力的だ。全体的に鼻にかかった低音ボイスが特徴だと言われている彼の声は、いわゆる“ソフトな低音”という表現だけに納まらない、ちょっとプレッシャーのかかった金属的な響きが根底にあるのが個性的。低音域の抑えた演技は知的で冷静な印象を与えるが、感情が高ぶった演技で、張りを込めた高音域に声が向かうと少しずつメタリックな感触が増加し、“上から目線”な感覚が増していく。津田が声優として注目されるきっかけとなった代表作のひとつ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』(2000年~)の海馬瀬人役や『テニスの王子様』(2001年~)の乾 貞治役(どちらも頭脳派の知的プレイヤーだ!)は、その好例かも知れない。

唯一無二の個性的な声質と演技力の高さは、ぶっ飛んだキャラクターにも良く似合う。それを代表するのは『TIGER & BUNNY(タイガー&バニー)』のファイヤーエンブレム/ネイサン・シーモア役だろうか。ふだんはセクシーなオネエ言葉で話す“女子”だが、いざというときの男口調とのギャップにやられてしまう個性派キャラクター像は、女性にも大人気を博した。変態チックなおネエ像を確立したといえば、『東京喰種トーキョーグール』のニコも見逃せない。女性人気を高めたという点では、『薄桜鬼』の風間千景役や『Free!』の御子柴清十郎もインパクトのあるキャラクターだ。

演じるキャラの幅はどんどん広がって……

津田の魅力を語る上で声質とともに外せないのが、その演技力だ。明治大学文学部演劇専攻出身で、学生時代はアートシアター系映画にもハマったガチガチの映画青年だった彼は、もともと映画製作者志望だったという。そこから、大学に在籍しながら新劇を志し、俳優・橋爪 功や声優・朴 璐美も在籍していた演劇集団円の養成所に通い、その後は『身毒丸』など蜷川幸雄作品などのアンサンブルを経て、数々の舞台で活躍。舞台系の芸能事務所所属時に、アニメ『H2』の声優オーディションをたまたま受けて合格し、顔出しの役者と声優の仕事を両立させながら、アニメ声優としての出演作もどんどん増えていった経歴を持つ。だからこそ、本格的な舞台演劇で培われたナチュラル志向の演技が、高い演技力が要求されるギャップの大きな役や複雑な背景を持つ難しいキャラクターを生き生きと演じきってくれる。

演技力の高さをアニメファンに知らしめた作品の中でも、ファンの間では『GANGSTA.』のニコラス・ブラウン役の印象深さを挙げる人は多いだろう。先天性全聾(耳が聴こえない)であるニコラス・ブラウンを演じる津田の、健常者とはまったく違う、朴訥としたリアルな発語には、誰しも驚嘆するはずだ。

ナチュラルな芝居のリアリズムは、無気力だが内に高い熱を秘めた『K』の周防尊役でも存分に発揮されている。息を多めに込めた中音~低音域では、ソフトな響きを残しながらクールでミステリアスな存在感を大いに示し、演じ分けるキャラクターの幅もどんどん広がっている。

彼にしかできない“何か裏がありそう”感、一筋縄ではいかないキャラクター

津田の光る演技がいかに魅力的であるかは、彼が声優活動を始めて10年強のキャリアを経た2015年前後から、アニメ作品への出演数が格段に増加した事実からも図り知れる。TVシリーズだけでも2014年、2015年に年間10数本だった出演作が2016年には20本を超えた。アニメやゲームだけでなく、海外ドラマや洋画の吹き替え(アダム・ドライバー、コリン・ファレルなどを担当)でも大活躍中だ。

とくに2018年、2019年のアニメTVシリーズでの活躍(=年間25本近くに出演)では、より幅広い役柄を演じる機会が多くなった。冷酷無比な『ルパン三世 PART5』アルベール・ダンドレジー、まさに掴み所のない男『ゴールデンカムイ』の尾形百之助、ファンの哀しみを誘った『バキ』のシコルスキーなど多数のキャラクターを演じているが、筆者がとくに心惹かれたのは、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』のキリンや『ナカノヒトゲノム【実況中】』のパカのような、人間(型)ではない、存在自体がまったくもってミステリアスなキャラクターたちだ。最初に述べた津田健次郎の“捉えどころのなさ”が、最も魅力的に表現されていくのは、人ならざるものなのかも?

そしてもうひとつ、彼の持ち前の捉えどころのなさが大いに発揮されるのが、『警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-』のカリスマ刑事・一ノ瀬 栞のように、ふだんは飄々とコミカルな雰囲気漂う昼行灯(ひるあんどん)的だが、洞察力が強く、いざというときに頼れる男に変貌するオヤジキャラクターだ。津田の芝居とフックの強い声質が、ただ“飄々”ではない、何か裏がありそうな厚みのある人物像を実現してくれる。

現在放送中の2020年冬アニメでは、個性派ミステリー作家・舞城王太郎の脚本/シリーズ構成による『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』で、津田は主役の名探偵・酒井戸/鳴瓢 秋人役を演じている。こちらもどうやら一筋縄ではいかない作品&キャラクターの香りがプンプンする。主役から脇役まで、津田健次郎にしかできない役、津田健次郎にしかできない芝居が、今後もどんどん増えていくことに期待したい。

文 / 阿部美香

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