LIVE SHUTTLE  vol. 389

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和田唱 個人の音楽愛や心境が赤裸々に表現されたソロツアー。ステージから届いたのは、力強く、さらに優しくなった彼の姿。

和田唱 個人の音楽愛や心境が赤裸々に表現されたソロツアー。ステージから届いたのは、力強く、さらに優しくなった彼の姿。

和田唱 2nd SOLO TOUR 一人宇宙旅行~アイ ココロ 経由編 特別公演~
2019年12月30日 マイナビBLITZ赤坂

和田唱が2018年にリリースした初のソロアルバム『地球 東京 僕の部屋』は、大いに話題を呼んだ。一人で全部の楽器を演奏し、歌い、コーラスも付ける。その演奏の精度の高さと、サウンドの完成度は群を抜いていた。そしてなにより、和田の所属バンドである“TRICERATOPS”とは一線を画するソングライティングに注目が集まった。特にリリックに関しては、和田のプライベート色が濃く、40才を過ぎた一人の男としての思いが誠実に描かれていた。

和田唱 エンタメステーション ライブレポート

和田はこのアルバムのツアーも行ない、それも評判を呼んだ。アルバム・レコーディングと同じく、ライブもたった一人で敢行したのである。ギターやピアノの弾き語りはもちろん、ルーパーといわれるマシンを駆使して、何人分もの音を一人で作り出していた。ルーパーはループペダルとも言い、一度弾いたフレーズを何度も繰り返すことが出来る。ギターのボディを叩いてドラムの音を作って繰り返したり、コーラスを何重にも重ねたりすることが可能だ。この演奏スタイルはエド・シーランなどで有名で、日本ではオリジナル・ラブの田島貴男と和田がその双璧だろう。

2019年の暮れ、和田が再びソロ・ツアーに出るという。新しいソロアルバムを発表したわけではないので、どんなライブになるのか興味しんしんで会場のマイナビBLITZ赤坂に行ってみた。

和田唱 エンタメステーション ライブレポート

最初に目を引いたのは、ステージ上にオーディエンスが座っていることだった。フロアに椅子が置いてあるのは当然だが、ステージの上にも椅子がある。和田の演奏するステージはどこにあるのかというと、通常のステージの前、つまりフロアに設置されていて、その周りをグルリとオーディエンスが囲む形になっている。和田のプレイを間近で見ることのできる人が多くなる仕組みになっている。このステージの作りは前回のツアーではなかったことで、新しいトライということになる。

暗転になり、和田が客席を通って登場。特設ステージに上がる。和田は周囲をぐるりと見回してから、アコースティック・ギターを抱えると、ぺこりとお辞儀をする。すぐにギターを弾きながら「ココロ」を歌い始めた。和田は美しいメロディを繊細なアルペジオに乗せて歌う。オーディエンスはしーんと聴き入る。続く「Going To The Moon」は弦を一本ずつポロンと弾くアルペジオから一転して、力強いコード・ストロークでオーディエンスを引っ張っていく。会場からはこのTRICERATOPSのナンバーに、早くもハンドクラップが起こる。和田は身体をくねらせながらギターを弾き、グルーヴをアピールする。最後にジャカジャーンとギターを鳴らして、右手を頭上高く上げたのだった。

和田唱 エンタメステーション ライブレポート

「オッケー、赤坂。みなさん、ようこそ“一人宇宙旅行”へ。デビューして20数年が経つんですけど、去年、初めてソロアルバムを出して、ソロツアーをやりました。たまにイベントで一人でやることはあったんですけど、ワンマンではやってなかった。そうなると目標が見えてきて、今年またソロツアーをやってます。今日はその最終公演です。(後ろの“ステージ席”を振り返って)ここにいる人たちは、普段のライブで俺が見てるのと同じ景色を見ることになる。今日は最後まで一人です。なので、ハンドクラップなど、みなさん、協力してください。踊っちゃってもいいですよ。コーラスもして欲しい。早速、練習してみましょう」と和田は言って、「Harajuku-Crossroads」のコーラスを男女別で開始。そのまま歌に入っていく。オーディエンスの協力を得て、大いに盛り上がる。和田は「素晴らしい。ありがとう」と感謝を述べて、絶好のスタートとなった。

次の「矛盾」で、初めてルーパーが登場。まずはギターのリフを重ねていく。続いてギターを叩いてドラムパートを録音。「そろそろ手拍子していいですよ」と和田からキューが出たところで、オーディエンスもハンドクラップでトラック作りに参加する。その後、ベースとコーラスを入れてトラックが完成。ここで和田の曲作りの特長が活きる。代表曲「Raspberry」を初め、和田の曲はAメロとサビが同じコード進行の場合が多い。だからその部分のループを作ると、曲のほとんどのパートのバッキングをカバーできることになる。表裏のある自分の矛盾した性格というTRICERATOPSではあり得ないテーマを、ポップなメロディに乗せて歌う。これぞ和田のソロの真骨頂だ。最後はルーパーを止めて、アカペラで♪君を笑顔にしたいだけなのさ♪と歌って終わった。

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続く「スターライト スターライト」でもルーパーを駆使。「そろそろ立っちゃったりする?」と和田が呼びかけると、オーディエンスは一斉に立ち上がってクラップしながら踊り出す。いよいよ場内の雰囲気がリラックスしてきたところで、次の「1975」は、自分の生まれた1975年にタイムトリップする歌で、『地球 東京 僕の部屋』の核となるミディアム・バラードだ。一度、立ち上がったオーディエンスは、再び座って耳を傾ける。

ここからライブは大きく舵を切る。ザ・コーデッツというアメリカの1950年代の女性グループのヒット曲「Mr.Sandman」と、ミュージカル『オリバー』からの「Where Is Love」を、ギター1本のインスト演奏で聴かせる。シブい選曲と、それに負けないシブいギタープレイに、会場はうっとりする。和田のソロ活動のひとつの特徴は、彼のルーツ・ミュージックを惜しげもなく聴かせてくれることだ。

TRICERATOPSの「僕らの一歩」をピアノの弾き語りで歌った後も、そうした特徴が出る。「ソロツアーではカバー曲もやってます。前回のツアーではディズニーの曲をやりました。ロック・ミュージシャンがやらないような曲で、俺らしくっていうと、ロックに夢中になる以前の曲になる。今回は“クリスマスの約束”で小田和正さんとやってる映画音楽メドレーから、いいとこ取りして編集してみました。“ムーヴィーメドレー一人宇宙旅行バージョン”、ちょっと長いけど聴いてください」。

和田唱 エンタメステーション ライブレポート

『マイ・フェア・レディ』の「I Could Have Danced All Night」から始まったメドレーは、非常に豊かなものだった。特に『サウンド・オブ・ミュージック』からの「My Favorite Things」は見事だった。歌うというよりも語るようなパフォーマンスは、ミュージカルの一場面を見るようで、和田のルーツ・ミュージックに寄せる愛情の深さが充分に伝わってきた。

続いては和田が最近、NegiccoのKaedeに提供した「ただいまの魔法」のセルフカバー。このブルーアイド・ソウルのテイストのあるポップチューンを歌い終わった和田が語り出す。

「この曲の歌詞は、Kaedeちゃんの気持ちになって書いたけど、実は俺の気持ちだったのかもしれない。いつまでもオヤジと一緒にいられるわけじゃないと思った時、ずっとそこにいて欲しいと思った。でも、そうじゃないのかもしれない。肉体的には去ってしまったけど、今は近くにいてくれてるんじゃないかと思うようになった。そこに愛があれば、さよならじゃない。うちのオヤジは天国に旅立ちました。新曲を心を込めて歌います」。そう言って、ピアノ弾き語りで歌ったのは「さよならじゃなかった」だった。この曲は、和田の父親への想いが描かれている。

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ここまでライブを観ていて気付いたことがあった。前回のツアーではルーパーを使った演奏が中心の印象だったが、今回はそれよりもソロとしての内容を重視して組み立てられている。自分のロック以前のルーツや、提供曲への思い、そして父親のことなど、和田個人の音楽愛や心境が赤裸々に表現される。そこには「僕のことをもっとわかって欲しい」というストレートな思いと、「もっと音楽を好きになると楽しいよ」という和田の本来のメッセージが込められていて、和田の音楽家としての成長と、人間的な深まりが感じられ感動的だった。

ライブは佳境へと入っていく。新曲「アイ」、再びルーパーを使ったTRICERATOPSナンバーの「I GO WILD」、「Raspberry」で一気に盛り上がる。

「このツアーの合い間を縫って次のアルバムのレコーディングしています。11曲をベストな形にしようと頑張ってます。それを春までには出したいな。次の曲は、人それぞれに役割があるっていう歌。ありのままの自分に自信を持ってください」。最後は、これも新曲の「笑顔でいるのが僕の役割り」。アコギのアルペジオがリリカルに響く美メロ曲だった。

和田唱 エンタメステーション ライブレポート

アンコールは、ファースト・アルバムのタイトル曲「地球 東京 僕の部屋」。♪僕は宇宙を巡りめぐって 目的地を君に決めたんだ♪と歌う。このツアーのアンコールにぴったりの曲だ。

「今年もあとちょっと。楽しく新年を迎えてね。そして来年、また会いましょう。この客席にサンドイッチされてる感じ、あったかくていいね(笑)。宇宙旅行からそろそろお家に帰ろう」とピアノで「HOME」。ラストはツアーのテーマ「一人宇宙旅行-ending-」を静かに歌って幕を閉じた。

和田は自分のすべてをさらけ出すことで、力強く、さらに優しくなった。ソロ活動は彼のアーティスト性を確実に高めている。2020年、和田にはさらなる飛躍が待っていることだろう。天才でありながら、努力を惜しまず、音楽愛に忠実な和田にずっと注目していきたいと思う。

文 / 平山雄一 撮影 / 山本倫子

和田唱 2nd SOLO TOUR 一人宇宙旅行~アイ ココロ 経由編 特別公演~
2019年12月30日 マイナビBLITZ赤坂

SET LIST

1 ココロ
2 Going To The Moon
3 Harajuku-Crossroads
4 矛盾
5 スターライト スターライト
6 1975
7 Mr.Sandman
8 Where Is Love
9 僕らの一歩
10 Movie Medley~
 ・I Could Have Danced All Night
 ・Moon River
 ・Cheek To Cheek
 ・Singin’In The Rain
 ・My Favorite Things
 ・The way we where
 ・Over The Rainbow
11 ただいまの魔法
12 さよならじゃなかった
13 アイ
14 I GO WILD
15 Raspberry
16 笑顔でいるのが僕の役割り
<ENCORE>
17 地球 東京 僕の部屋
18 Home
19 一人宇宙旅行-ending-

ライブ情報

【和田唱2nd ALBUM リリースツアー決定】

2020年6月5日(金)  名古屋 BOTTOM LINE
2020年6月12日(金) 大阪 梅田CLUB QUATTRO
2020年6月20日(土) 東京 日本橋三井ホール

*詳細はオフィシャルサイトにて

和田唱

1975年東京生まれ。トライセラトップスのボーカル、ギター、作詞作曲も担当。
ポジティブなリリックとリフを基調とした楽曲、良質なメロディセンスとライブで培った圧倒的な演奏力が、幅広い層から大きな評価を集める。
アーティストからのリスペクトも多数。SMAP、藤井フミヤ、松たか子、Kis-My-Ft2、SCANDALなどへの作品提供も多い。2018年からソロ活動も開始。

オフィシャルサイト
http://triceratops.net

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