山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 75

Column

40th Tourを終えて

40th Tourを終えて

世界規模で自然災害が猛威をふるい、国際情勢が緊迫する中で明けた2020年。
ここ半世紀、人間の経済活動が地球とそこに住む生きものたちに強いてきた痛みと軋み、そのレジリエンス。
その大きな流れの傍で、滾々と湧き出す清浄な泉を穢さず絶やさず汲み続け、届け、味わい、真摯に護り続けてきたのもまた人間の営みだ。
「音楽」という見えない波動に突き動かされて40年。変わりゆく時代を見つめながら、変わることなく育んできたもの、育まれてきたもの……。
山口洋から新年最初のメッセージ。


2019年の大晦日にこれを書いている。

バンドを結成して40年。まさか、この歳まで続けられるとは思っていなかった。支えてくれたファンへ感謝を伝えるツアーを、12月22日に日本橋の三井ホールで終え、もうすぐ2020年を迎える。

旅の中途で感じたことを、感謝をこめて記しておきたい。

大きな会場に豪華なゲストを呼んでイベントを開催することも考えたけれど、すぐにもう一人の自分がそれを打ち消した。笑。誰かの周年イベントに参加するのは嫌いじゃないけれど、自分がそれをやるとなると、照れくさくて耐えられそうにない。

どうやったら感謝を伝えられるだろう?

バンドのメンバー3人だけでやり切ること。未だ進化を目指していることを伝えること。混迷の時代を共に生きて、新しい曲を書き、旅の中で磨き、アルバムにしてファンに届けること。

大都市だけではなく、これまで声援を送ってくれた地方都市もできるだけツアーに組み込むこと。

ライヴの始まりと終わりは新曲を演奏して、オーディエンスが来年に希望を持てるようなライヴをやること。

合計6本のライヴが組まれた。高松、長野、仙台、福岡、大阪、東京。どの公演も町の人たちと時間をかけて、たいせつに音楽の苗を育ててきた。ようやく、花を咲かせるときが来た。

それぞれのライヴについて記す野暮はやめておく。いろんなことがプレシャスすぎて、うまく書けそうにないのだ。

ステージに上がったとき。それぞれの町の期待感と高揚感を受け取った。総じて、拍手はいつもより長かった。しだれ柳のようにほんとうに長かった。

最終日。演奏を終えて、メンバーと楽屋で乾杯していたら、スタッフが飛んできて「拍手が止みません」と。嬉しかった。もう楽器も片付けられていたので、その日使ったハープを投げ入れ、感謝を伝えて、ツアーは終わる。

それぞれのステージから見た光景はGIFT以外のなにものでもなかった。はちきれんばかりの笑顔、泣き顔、いろんな表情がそこにあって、画一的でなかったのが嬉しかった。

前半の3本にアルバムの完成が間に合わなかった。初日の高松公演の2日前に「予約販売をしてほしい」とファンからメールが来て、スタッフと急遽対応することにした。まだ形もなかったアルバムをたくさんの人々が買ってくれた。

そのことが嬉しくて、申し訳なくて、予約してくれたすべての人に僕自身が送付することにした。ネットでプチプチ封筒を大量に購入。ひとりひとりに宛名を書き、アルバムと手紙を入れ、江ノ島の郵便局から送った。竜宮からアルバムが届くってアイデアが悪くないと思ったから。

一本のライヴにこれだけいろんな場所から人が来てくれていることを僕は知らなかった。ひとりひとりのオーディエンスにそれぞれの親御さんが愛をもって名前をつけたこと、身をもって理解した。

真ん中に音楽があって、それがいろんな人をつないでいることも。

そういえば、アマチュアの頃。オーディエンスを増やすためにダイレクトメールを書き送っていたっけなぁ。1周して、大きくなって、そこに戻ってきたような気持ちだった。

歌いたいことがあるから、歌を書く。聞いてほしいからバンドで演奏する。それを聞きたい人たちがいてくれる。ほんとうはたったそれだけのこと。シンプルなんだ。

40年経って、また原点に戻る。

僕は音楽が好きだ。聞くのも、演奏するのも、たまらなく好きだ。ただ、それだけのこと。

結局、伝えたいことは「ありがとう!」だけだった。それ以上の言葉が湧いてくるはずもなかった。

40年間支えてくれて、ほんとうにありがとう。オーディエンスとスタッフとバンドのメンバーにそれが伝えられて、ほんとうによかった。

僕はほんとうに幸福な男。行けるところまで行きます。

感謝を込めて、今を生きる。

photo by Mariko Miura

著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。90年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』に収録された「満月の夕」は阪神・淡路大震災後に作られた楽曲で、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。“ミュージシャンズ・ミュージシャン”としてその名を挙げるアーティストも多く、近年は野外フェスやR&Rイベントへの出演も多い。バンド結成40周年となる2019年は、40thツアーとして全国6ヵ所を廻り、スタジオ・アルバムとしては2年ぶりとなる新作『Blink』をリリースした(オフィシャルサイト、レコード店、大手通販サイト、配信などにて販売中)。1月28日浜松 窓枠から古市コータロー(ザ・コレクターズ)とのユニット“50/50”のfirst tour 2020『俺たちの場所』が、2月16日青森県弘前市 Robbin’s Nest (ロビンズネスト)から山口洋(HEATWAVE) solo tour『Blink 40』が、それぞれスタートする。2月8日には佐野元春の名盤『Café Bohemia』を複数のミュージシャンで演奏するイベントにも出演。

オフィシャルサイト
http://no-regrets.jp/index.html

ライブ情報

50/50 (山口洋&古市コータロー) first tour 2020『俺たちの場所』

1月28日(火) 浜松 窓枠
2月4日(火) 神戸 VARIT. *SOLD OUT
2月14日(金) 仙台 CLUB JUNK BOX *SOLD OUT
2月19日(水) いわき club SONIC iwaki
3月5日(木) 吉祥寺 STAR PINE’S CAFÉ *SOLD OUT
詳細はこちら

新日本製薬 presents SONGS&FRIENDS 佐野元春『Café Bohemia』*イベント出演

2月8日(土)LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
【出演】佐野元春
GLIM SPANKY、小坂忠、田中和将(GRAPEVINE)、堂島孝平、中村一義、山口洋(HEATWAVE)、山中さわお(the pillows)、RHYMESTER、LOVE PSYCHEDELICO ※五十音順
THE HOBO KING BAND <古田たかし(Dr)、井上富雄(B)、Dr.kyOn(Key)、長田進(G)、山本拓夫(Sax)>
詳細はこちら

山口洋 (HEATWAVE) solo tour『Blink 40』

2月16日(日) 青森県弘前市 Robbin’s Nest (ロビンズネスト)
2月24日(月・祝) 千葉県千葉市 Live House ANGA (アンガ)
2月27日(木) 静岡県静岡市 LIVE HOUSE UHU(ウーフー)
2月29日(土) 岡山県岡山市 BLUE BLUES (ブルーブルース)
3月3日(火) 愛知県名古屋市 TOKUZO
3月14日(土) 茨城県水戸市 Jazz Bar Bluemoods (ブルームーズ)
3月26日(木) 京都府京都市 coffee house 拾得 (Jittoku)
3月28日(土) 高知県高知市 シャララ
3月30日(月) 香川県高松市 Music&Live RUFFHOUSE (ラフハウス)
4月1日(水) 大阪府大阪市 南堀江 knave(ネイブ)
4月3日(金) 愛知県豊橋市 HOUSE of CRAZY (ハウスオブクレイジー)
詳細はこちら

HEATWAVE OFFICIAL SHOP

vol.74
vol.75
vol.76