ソムリエ推薦! アニメ原作マンガ  vol. 2

Review

2020冬クールアニメの原作マンガを読む! 「好き」を突き詰める3作品

2020冬クールアニメの原作マンガを読む! 「好き」を突き詰める3作品

今クールのアニメ放送が始まって3週間ほど。お気に入りの作品には出会えましたか?
マンガからアニメ化された作品は、原作と行き来することでより楽しみが広がります。
今回は「好き」を突き詰めるキャラクターの姿が印象的な作品をテーマに、3作品をご紹介。
これを読めば必ず、アニメと原作、両方に触れてみたくなるはず!

文 / 兎来栄寿


推す者と推される者、その苦難と喜び

©平尾アウリ/徳間書店

『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(作:平尾アウリ)

フランスの詩人、ジャン・コクトーは「誰の中にも天使が住んでいる。我々は天使の保護者でなければならない」と語りました。本作、通称『推し武道』は推す者と推される者の物語です。推しとは正に現人神であり内在する天使、保護すべき対象であると言えるのではないでしょうか。
推しは不条理な人生を生きる人間の心の支えとなるもの。私も人生を賭して推し続けている存在がいるので、推す者として極めて高い次元にあり「推しが生きていることが自分へのファンサ」という主人公・えりぴよへの共感がノンストップで押し寄せてきます。

この作品をアニメ化するに当たっては何と言ってもえりぴよ役の演技が肝だと思っていたのですが、『ダンベル何キロ持てる?』で主人公・紗倉ひびきを演じたファイルーズあいさんの熱演が光っていました。EDで「桃色片想い」※を彼女に歌わせたのも、非常にセンスが良くハマっていると感じます。
今後も安心して楽しみに観ることができそうです。

原作はとにかく平尾アウリ先生のかわいいキャラクター、特に繊細な線で描かれる表情が非常に良い一方で、アニメではライブシーンが映えます。
また2話の「短冊」のシーンは原作以上に切なる推しへの願いが増えており、それが音読され美しい岡山の夜景と重なることでより印象的な場面となっていました。

『推し武道』では推す側のみならず、推される側の気持ちが非常に丁寧に細かく描写されているのも美点です。
それぞれ絶妙に推し方の哲学が異なるくまさや基、あるいは舞菜が所属する「ChamJam」の他のメンバーたちサブキャラクターの存在によって、更に奥行きが深く立体的な物語になっています。

たとえアイドルや芸能人ではなくとも、自分の仕事や活動を好意的に応援してくれる人の存在によって、人間は頑張れる生き物。実際に『推し武道』を観て「こんな風に自分を推してくれているファンのために頑張ろう!」と鼓舞されている方も散見されました。
多くの方に本作に満ちた明るく前向きなエネルギーを感じて欲しいです。

※「桃色片想い」の正式表記は、両端にハートマークが付きます。

アニメ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』オフィシャルサイト
https://oshibudo.com/

試し読みはこちら(COMICリュウ)
https://comic-ryu.jp/_oshi/

夢を諦めない少女と少年の消せない魂の焔熱

©猪ノ谷言葉/講談社

『ランウェイで笑って』(作:猪ノ谷言葉)

「週刊少年マガジン」の連載の中でも毎週特に楽しみにしている作品の一つが『ランウェイで笑って』です。
少年誌で正面からファッション&モデルを扱うというのは挑戦的でありつつも面白い試みですし、何より連載開始時の一話目があまりにも完璧過ぎました。これだけ完璧な第一話は少年マンガ誌全体で見ても数年に一作くらいだろうというクオリティです。

ヒロインの千雪は伸び悩む身長が理由で父親のブランド・ミルネージュをクビになり、パリコレなどで世界的に活躍するという夢に引導を渡されてしまっていました。自分の意志とは関係のない事情で好きな道を諦めねばならない辛さは、誰もが直面する理想と現実のギャップを感じさせます。
そして、彼女と似た状況に立たされていたのがもう一人の主人公である育人。彼は服を作るのが大好きで、本当はデザイナーになりたいという夢を抱きながらも家庭の事情で諦めようとしていました。
この二人が出逢うことで特大の化学反応が起こり、両輪が回り出す物語は非常に熱く面白いものです。

彼らはどんな現実に突き当たっても決して諦めません。どれだけ困難な道でも、周りの人間にどう思われても、がむしゃらに前だけを向いて最善の努力を尽くす姿に心が震え、勇気を貰えます。
ミルネージュというフランス語の意味を父親から解説されるシーンは、アニメで改めて観ても目頭が熱くなりました。また、育人の三人の妹の内、末妹であるいち花の動きがとても可愛かったのが印象的です。
今後出てくるであろうランウェイでのウォーキングシーンの描き方・演出なども楽しみにしたいところです。

主演の花江夏樹さんは連載を追っているため、敢えて序盤は育人を幼さが残る感じで演じているとのことで、徐々に成長していく彼を見守りながら、最後にまた1話に戻ってどう変化したか比べてみるのも面白そうです。
「こんなに泣けるマンガはない」とまで花江さんに評された原作は最新部分まで非常に面白いので、アニメで観て気に入ったらぜひ触れてみて下さい。

アニメ『ランウェイで笑って』オフィシャルサイト
https://runway-anime.com/

試し読みはこちら(講談社 マガジンポケット)
https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175

少女たちはその小さな手で世界を創り出す

©大童澄瞳/小学館

『映像研には手を出すな!』(作:大童澄瞳)

『映像研には手を出すな!』がアニメ化・実写化されると聞いた時は、あの世界をどう映像化するのかという興味と共に、他の媒体でどう表現するのだろうという不安も同時に来ました。
しかし、その後私も大好きな『四畳半神話大系』や『ピンポン THE ANIMATION』など素晴らしい作品を手掛けてきた湯浅政明さんがアニメ版の監督を務めると聞いて、これは事件だと直感。実際にアニメを3話まで視聴して、その想いは揺るぎなき確信へと変わりました。
イメージボード・設定画のような背景の中で、躍動する浅草たち映像研の面々。従来のアニメにはない独特の画作りに、世界を創造していくワクワク感が重なって非常に素晴らしいアニメーションとなっていました。

原作も原作で、アニメを創るという内容をマンガというメディアの特性を最大限に生かした演出で、今までにない読み味を実現させています。フキダシやオノマトペ、カメラワークなどなどアニメ版ともまた違った形で縦横無尽に発揮される表現力は、一度は堪能して欲しいです。
担当編集者が「最近上がってくる原稿が、明らかにステージが二段階くらいブチ上がってる」と評している最新部分は特に注目です。
アニメでは一瞬で流れてしまう設定画や設計図を、じっくり自分のペースで心ゆくまで眺められるのもマンガならでは。
初夏に公開が予定されている実写版も含めて、それぞれの媒体の特性を活かしそれぞれが補完し合うような形となっていく、非常に幸せな作品となっていきそうです。

好きなこと、好きなものを突き詰めてやりたいようにやる。
ただ、それには現実的な制約もあるため、それを突破する能力を持った人と組んで障害を一つずつ乗り越えて、チームでモノ創りを行う。
その情熱。その楽しさ。
何かしらの創作に携わったことのある人ならば、原初に覚えた衝撃と衝動を想起させられモチベーションをフルチャージして貰えるような絶大なパワーがあります。
今期のアニメ作品の中でも現段階では最も推せる作品です。

アニメ『映像研には手を出すな!』オフィシャルサイト
http://eizouken-anime.com/

試し読みはこちら(小学館eコミックストア)
https://csbs.shogakukan.co.jp/book?book_group_id=12078

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