Interview

早くもアニメ2期決定の話題作『BEASTARS』、その独特すぎる収録現場。主演の2人が「思わず赤面した」衝撃シーンとは?【対談:小林親弘×千本木彩花】

早くもアニメ2期決定の話題作『BEASTARS』、その独特すぎる収録現場。主演の2人が「思わず赤面した」衝撃シーンとは?【対談:小林親弘×千本木彩花】

肉食獣と草食獣が共存する世界。食肉が重罪とされるなか、全寮制の名門高校・チェリートン学園では生徒が食い殺される“食殺事件”が起きる。不安の渦巻く校内で、演劇部の変わり者・ハイイロオオカミのレゴシは『大きい身体』と『鋭い牙』とは裏腹に静かに生活していた。しかし小さなうさぎの女子生徒・ハルとの出会いが、そんなレゴシの心を揺り動かす。「彼女を求める気持ちは、恋なのか? 食欲なのか?」彼が本当に出会ったもの、それは自分自身の本能だった――。
(TVアニメ『BEASTARS』イントロダクションより)

繊細なキャラクター描写とメッセージ性の強い物語で人気の原作コミックを、その魅力を損なうことなく3DCGという形で映像化。TVアニメ『BEASTARS』は、原作ファンのみならず、広くアニメファンに支持される作品となった。全12話の放送を終え、第2期の放送も決定! そんななか今回はレゴシ役・小林親弘、ハル役・千本木彩花という主演キャスト2名に、第1期を終えた手応えと、第2期に臨む心境を語ってもらった。

取材・文 / 山下達也(ジアスワークス) 構成 / 柳 雄大


「マイクを意識せず、相手の顔、表情を見ながら演技する」独特な収録現場

TVアニメ『BEASTARS』における声の収録は、映像の説得力や臨場感を高めるため、セリフ音声を先録りし、それに合わせて映像を作り込んでいくプレスコという手法がとられている。

その際、独自の工夫として音声の録音機材にガンマイクを使用。それぞれの声優がマイクスタンドの前で発した音声を分けて収録するのではなく、録音ブースをまるで舞台のように使って、声優陣が全身で演技している音をブース前方に配置したガンマイクで収録している。前代未聞のこの試み、実際に演じた声優陣はどのように感じているのだろうか? 

ガンマイクは複数台配置されているが、あえてその直前に立つということはなく、前方の空間でマイクを意識せずに演技を行う。

レゴシ役の小林さんは今作がプレスコ初挑戦とのことですが、プレスコで演じてみた感想はいかがでしたか?

小林親弘 アフレコの場合、事前に台本とボールド(セリフボールド)と呼ばれるセリフのタイミングを示した映像をいただけるので、それを元にあらかじめ自分の中でテンポやリズムを固めていくことができます。プレスコの場合は、ボールドはもちろんあるんですが、きっちり合わせる必要がないのでとても自由度が高い。そこが難しさでもあり、楽しさでもあると感じました。

ハルを演じている千本木さんはいかがでしょうか?

千本木彩花 私は過去に何度かやったことがあります。ただ、その時はマイクなどの収録機材は一般的なアフレコと同じで、感覚的にはドラマCDの収録に近いものでした。今回の『BEASTARS』はガンマイクを使って音声を収録していることを始め、以前やったプレスコとは全く違っています。

どんな違いがあるのか、もう少し詳しく教えてください。

千本木 一般的なプレスコでは、役者はスタンドマイクに顔を向けて喋るのですが、ガンマイクを使う『BEASTARS』の場合は、マイクを意識せず、相手の顔、表情を見ながら演技することになります。身振り手振りで演技をしたり、相手との間を詰めたりといった動きもあるので、最終的にどういう演技をするのかが、皆が持ち寄ったものを合わせてみるまで分からないんです。それだけに、予想通りじゃないものが出てくるとすごく面白いですね。

小林 第1期では、何度も良い意味で予想を裏切られました。皆さんの予想外の演技に「こうくるかああっ!」って、うれしくなることばっかりでしたよ。

それぞれの役者が持ち寄った演技を現場で合わせる際、事前に演技プランをすり合わせたりはしていましたか?

小林 そういうことはあまりしなかったと思います。

千本木 テストで一回やってみて、それでお互いのやりたいことが何となく伝わってくるんですよ。

小林 その上で、テストで起きたことをなぞろうとはせず、本番は本番で起きたことに合わせていって……その方が絶対に面白くなるんです。

千本木 だから、1回1回やることが違うんですよね。

服を脱がせる、押し倒す、取っ組み合いになる……印象的なシーンの数々はどうやって録っている?

そのように芝居を作り込んでいく中で、特に印象に残っていることはありますか?

小林 いっぱいありますね。ただ、やはり一番印象に残っているのは、第1話の収録時の小野友樹さんかな。第1話には小野さん演じるルイが、セリフを覚えてこなかったゾーイの顎を掴んで締め上げるシーンがあるんですが、このシーンでは実際に小野さんが、ゾーイ役の室 元気君の顎を掴みながら演じてるんですよ(笑)。確か、それが初めて「役者がほかの役者に触れて行なった」演技でした。それを見て、皆、「あ、ここまでやるんだな」ってわかったんです。

千本木 実は私たち、『BEASTARS』がプレスコだってことは、現場に来るまで知らされていなかったんですよ。しかも収録方法もこれまでと全然違いますし。松見(真一)監督には「何をしてもいい」と言われていたんですが、実際、どこまでやっていいのかなと悩んでいたところに、小野さんがやって見せてくれました。

小林 そこからは挑戦の連続で、本当にいろいろ試しました。例えば、第9話でルイとレゴシが殴り合うシーンでは、迫力を出そうと実際に小野さんと殺陣のように動きをつけて演じてみたのですが、それだと音が散っちゃって、かえって迫力がなくなってしまうんです。だから、それ以降は格闘シーンでは過度に動かないようにしています。

あと、第2話ラストなどのハルとの距離が近くなるシーンでは、やっぱり同じマイクに入った方が、その距離感をリアルに感じられることがわかったので、実際に千本木さんの近くで、向き合って演じるようにしています。

千本木 実はあのシーンが、初めてレゴシ君と会話するシーンだったので、ものすごく緊張しました(笑)。でもあの時はハルも緊張していたはずなので、そのリンクはあってもいいんじゃないかなって。

あそこはかなり色っぽいシーンだったと思うんですが、実際に現場ではどれくらいやっていたんですか?

千本木 もちろん服は脱いでません(笑)。でも服は掴みました。突然服を掴まれたらビクッとしますよね。その反応があればよくて、脱ぐ必要はないんです。

小林 あそこは、「ああ、僕は童貞なんだな」って気持ちで演じました(笑)。

千本木さんはどのシーンが印象に残っていますか?

千本木 私が個人的に印象に残っているのは第8話のジュノがルイを押し倒すシーンですね。あれはジュノ役の種﨑敦美さんが、実際に小野さんを押し倒すような体勢で声を録っていたんですよ。ほかにも、いろんなシーンでしゃがんだり、寝っ転がったり……普通の収録では絶対にやらないような録り方をしていました。

今回、インタビュー前に収録の様子を拝見させていただいたんですが、下を向いて喋ったり、ブース内を走り回ったり、本当に今まで見たことがないような収録風景でした。

小林 ビルと取っ組み合いになるところ(第4話)では、本当にビル役の虎島貴明君と半ば抱きあうような体勢で演技しましたよ。

千本木 第7話のハルがレゴシの後ろに隠れて「やっほー」っていうシーンも、実際に小林さんの後ろに回って演技してました(笑)。

ブース内を広く使って演技をするようなシーンでは、中央にVRコンテンツの制作時などに使われるVRマイクを採用。中央に配置して位置関係も含めて記録している。

このシーンはどうやって録ったんだろうって想像しながら観ると、また別の楽しみ方ができそうですね。

小林 マイクの前ではなく、その空間の中で演技ができていればいいということなんです。僕はこのやり方、好きです。楽しんでいますよ。どこかアナログ的なんですけど、これまでになかった新しさがありますよね。

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