劇場版『新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』特集  vol. 2

Interview

TVシリーズ放送延長の舞台裏も…『新幹線変形ロボ シンカリオン』おもちゃ開発陣が振り返る4年間、プラレール最新作「シンカリオン ALFA-X」への挑戦

TVシリーズ放送延長の舞台裏も…『新幹線変形ロボ シンカリオン』おもちゃ開発陣が振り返る4年間、プラレール最新作「シンカリオン ALFA-X」への挑戦

実在の新幹線が巨大ロボットに変形して戦う! その、シンプルながら子どもたちのハートをつかむコンセプトで人気の『新幹線変形ロボ シンカリオン』。2018年1月にスタートしたTVアニメは1年半(6クール)・全76話におよぶ長期シリーズとなって大好評、そして2019年12月27日からは続編、かつ完全新作となる劇場版『新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X(アルファエックス)』が公開となる。

この劇場版に初登場する「シンカリオン ALFA-X」は、JR 東日本が次世代の新幹線開発を進めるための新幹線試験車両「ALFA-X」が変形するという未知の新機体だ。今回はそんな「シンカリオン ALFA-X」誕生秘話を徹底取材。おもちゃのマーケティング担当者として、約4年間『シンカリオン』に携わるタカラトミーの長沼 豪氏、そして商品開発を担当する同社の奥津正道氏のふたりに話を聞いた。

シリーズの集大成的な機体となった「シンカリオン ALFA-X」を解き明かすため、インタビューではTVアニメ化以前から現在に至るまでの『シンカリオン』ヒストリーもおさらい。TVアニメに登場する機体とおもちゃが並行して作られていく過程を詳しく教えてもらった。

取材・文 / 柳 雄大


TVアニメになる前から存在した『シンカリオン』。「ALFA-X」に至る長い道のり

劇場版の公開に先がけて「シンカリオン ALFA-X」のおもちゃが11月に発売となりました。まず、こちらの評判はいかがですか?

長沼 おかげさまで、売れ行きはすごくよくて。(これまでに発売されたDXSシリーズの)総数量ではなく初週の販売スピードを見ていくと、過去1位だったのは「ブラックシンカリオン」、2位が「E5はやぶさ MkⅡ」でした。これらはどちらも即売り切れ状態になったのですが、今回「ALFA-X」が2位に食い込んできました。販売スピードでは「E5はやぶさ MkⅡ」を抜く勢いです。

それはすごいですね! TVアニメの新作も放送されていないタイミングで。

長沼 「E5はやぶさ MkⅡ」のときは4月、「ALFA-X」はクリスマス商戦期という違いも大きいかと思いますが……。11月下旬時点で大きく上がってくれたのはすばらしいです。

さて、最新商品の「ALFA-X」について詳しくお聞きする前に……『シンカリオン』は、TVアニメ化に先がけてプラレールのおもちゃが展開されてきたシリーズでしたが、今回はこれまでの経緯をざっくりと振り返っていただければと思います。

長沼 はい。もともとはjeki(ジェイアール東日本企画)さんと、小プロ(小学館集英社プロダクション)さんが、『のりスタ!』という子ども向けのTV番組を作っていたことがきっかけでした。そこで小プロさんからjekiさんに「新幹線をロボットにしたらカッコイイのでは?」という提案があったんですよ。

その頃、JRさんでは新幹線を擬人化やキャラクター化するということは基本的に行っていませんでした。でも「試しに、絵を作るので見てみてください」と小プロさんが提出した絵がカッコよくて……「これはビジネス的にもアリではないか?」という話が持ち上がり、『シンカリオン』の原型となった「Project E5」が生まれました。

ふむふむ。

長沼 そこからコンテンツとして確立するためには商品化が必要という話になり、プラレール関連でjekiさんと付き合いがあった弊社に話をいただきました。弊社としても、プラレールのフォーマットを使用しロボットを作れるということもありまして、企画に賛同し、3社が原案となり『シンカリオン』というコンテンツが生まれました。JRさんも、最初はJR東日本さんだけでしたが、次にJR北海道さん、JR西日本さん、JR九州さん、JR東海さんと、新幹線が走っている各社からの許諾も順次いただくことができました。

プラレール60周年記念展『プラレール博物館~昭和・平成・そして令和へ プラレールの歴史~』より

長沼 そうして、おもちゃの商品化が進んでいた頃、時を同じくして弊社が『カミワザ・ワンダ』という子ども向けTVアニメ(TBS系列にて2016年4月~17年3月放送)のおもちゃを作っていました。そこでTBSさんと「次のタイトルをどうするか?」という話をしていたときに、弊社にいくつかあるタイトルの中で、「『シンカリオン』がすごくいいと思う!」と言われて、マッチングしたんです。そこからTBSさんが加わって、TVシリーズの座組みが始まったという……ざっくりですが、ここまでがTVアニメ化までの経緯ですね。

つまり、最初はシンカリオンというキャラクターをみなさんで考えて、それをTVアニメ化した、というような順番になるんですね。TVアニメ化が決まって以降の動きはいかがでしたか?

長沼 そこからは、作品が好調で放送延長になったことが大きいですね。のちに映画化が決まったことなども、常に走りながら「次はどうする?」と考えながらやっていたので、そこは特殊だったと思います。

ファンを喜ばせたTVシリーズ放送延長、その舞台裏

ではその経緯を踏まえて、TVシリーズ放送延長が決まったときのことについてお伺いします。主人公のハヤトが「E5はやぶさ MkⅡ」に乗り換えて、新しいストーリーが始まるというのは、視聴者はもちろん、商品開発のみなさんにとってもインパクト大だったと思うんですが。

長沼 もともとTVアニメが放送される期間の中でしかプランを組んでいなかったところで、急遽延長する流れになりました。そのため、流れを組み直すときはやはり大変でした。

当初の予定から組み直すのに、どのぐらい時間があったんでしょうか?

長沼 そこはアニメの制作的にも逆算できるスケジュールだったと思います。1年ぐらいですかね。

あっ、逆に、それはけっこう時間をかけられているものなんですね、僕らがTVシリーズの前半を楽しく観ている頃、すでに裏側では……。

長沼 はい。商品として1年ぐらいは開発期間が必要になるので、僕らとしては「放送延長します」と確定する前から動いていました。「延びるかも?」という話が聞こえ始めた時点で、見切り発車というわけではありませんが、延長がある前提で動き、「なかったらなかったで割り切るしかない」と商品開発は始めていました。(TVアニメの)シナリオの方もそういう感じで……だから、「いつ決まるの?」と、関係者は言っていました(笑)

『DXS01 シンカリオン E5はやぶさ』、『DXS02 シンカリオン E6こまち』

なるほど、ハラハラしながら心の準備をしていたんですね。結果、晴れて放送延長が決定になりました。

長沼 「シンカリオン ドクターイエロー」(2018年秋に登場)までは、2017年12月28日にDXSシリーズ最初の商品として「E5はやぶさ」、「E6こまち」を発売した時点で合体機構もすべて決まっていました。そこに2年目が決まった。でも、またそこから新しくロボットを全部新規に作ろうとするとコストがかかりすぎる。

……となったときに、おもちゃ的には「今ある商品を、新商品で盛り上げる」というのが、一番やりたいプランでした。これまでに出てきたシンカリオンたちと合体できる「E5はやぶさ MkⅡ」(2019年4月)の「オーバークロス合体」という機構はまさにそれで。「E5はやぶさ MkⅡ」で遊んでくれたお子さんは、今までに出たシンカリオンも欲しくなってくれるかなと。

『DXS11 シンカリオン ドクターイエロー』

おもちゃ開発と同時進行で進められるシンカリオンのデザイン

「E5はやぶさ MkⅡ」で採用された「オーバークロス合体」は画期的な発明だったと思います。開発を手がけられた奥津さんは、これをどうやって考えたんでしょうか?

奥津 これまではリンク合体(2つの車両の上・下の組み合わせを変えた合体)とクロス合体(「ドクターイエロー」など、車両の数が多いシンカリオンと組み合わせて行う大型合体)という2つをやっていたので、その次の合体案はなかなか決まりませんでした。現在の「オーバークロス合体」になるまでは何パターンも提出しました……。リンク合体は、「車両の連結」をイメージした合体でしたが、今回は車両を中に収納する、取り込むというのと、「車両がプラットホームに入ってくる」ようなイメージになっています。

あぁ! 言われてみれば、確かにそんな感じがします。

奥津 胴体が割れて、その中に車両が入ってくるっていう機構が難しくて。当初のアイデアでは、(体が)左右バラバラになって、1両が中に入ってから挟むサンドイッチ状とか、頭部が90度横方向に外れてからまた閉じるとか、そういう機構も考えていました。

僕もそういう合体になるとイメージしていたんですが、実際はもっとすごいものだったので驚きました。ちなみに「車両の連結」や「プラットホームに入る」といったコンセプトがあるのは重要なことだと思いましたが、TVアニメ側のスタッフさんにも、そういう言葉を使って説明されているんですか?

奥津 そうですね。なるべく、そういった情報をいろいろお話しするほうが、より演出の中でも再現していただけるので。そのときにやはり電車や、電車に関係するモチーフのほうが演出しやすいですから、ただ単に合体するのではなく、電車に関連するような合体というのをいろいろと模索しました。

なるほど。いわゆる「メカニックデザイン」とおもちゃのデザインが渾然一体になっているように思いますが、『シンカリオン』では、どういう順番でロボットができていくんでしょうか。

長沼 機体によって進め方はバラバラではあるのですが、基本的にはプラレールで変形できる機構を(奥津さんを指し)考えてもらって、それをアニメのスタッフさんたちに、「こういう機構で変形する、この車両を作りたいんです」と話し合ってOKをもらう。それが一番最初のコンセプトになります。そうして各機体のアイデンティティ的な部分を決めてから、最終的にCGになるデザインは細かに進めていくという形です。

実を言うと、プラレールそのものが車両をデフォルメしているため、おもちゃのシンカリオンと、TVアニメに登場するCGのシンカリオンはデザインが違います。

「E5はやぶさ MkⅡ」のおもちゃ(上)と、TVアニメに登場する3DCGのモデル(下)

シンカリオンの場合は、胸の先頭車両のところが本当は複雑に段々に変形しますもんね。

長沼 はい。そういう意味では特殊なデザインの進め方ではあると思います。

奥津 ただ、おもちゃとCGで違うといえば違いますが、最終的にやはり見た目のイメージが違いすぎないようには計算して作ってもらっています。

長沼 「それはCGではできないよ~」なんて言われてしまうことはよくあるんですけど。そこは話し合いながら、極力近づけていくという作業が多かったですね。

そうしてシンカリオンの機体が増えて、最新作の「ALFA-X」まで到達しました。客観的にこれを見せていただいて……あの「E5はやぶさ MkⅡ」が生まれる苦労に比べたら、「もはや余裕って感じかな?」と正直、思ってしまった部分があるのですが。

奥津 いやいや(笑)。そこはけっこう大変だったんですよ。

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