Interview

高橋一生×蒼井 優「無理なく夫婦に」。互いに全幅の信頼を置くふたりが『ロマンスドール』で描く、夫婦が “本当の愛”を見つけるまでの10年間

高橋一生×蒼井 優「無理なく夫婦に」。互いに全幅の信頼を置くふたりが『ロマンスドール』で描く、夫婦が “本当の愛”を見つけるまでの10年間

2009年に発表されたタナダユキ初のオリジナル小説を、タナダ自らが脚本・監督した映画『ロマンスドール』が1月24日(金)に公開される。主演には、演じるうえで絶対条件だった「演技力」と「手先の器用さ」をあわせもつ高橋一生をキャスティング。ひと目惚れして結婚した妻と幸せな日々を送りながらも、自分がラブドール職人であること言い出せずにいる哲雄を演じる。ヒロインは原作ファンであり、タナダとは『百万円と苦虫女』(08)以来のタッグとなる蒼井 優。演じるのは、気立てがよく夫に理解のある妻でありながら、胸の中に大きな秘密を抱えている園子。円満にスタートした夫婦生活だったが、次第にすれ違いが増えていき、いよいよ危機だという時に園子が秘密を打ち明けたところから、物語が一気に動き出す。

今回、岩井俊二監督の映画『リリィ・シュシュのすべて』(01)以来、ひさしぶりの映画共演を果たした高橋と蒼井に、本作をどのようにつくりあげていったのか、また本作に絡めて、嘘や夫婦というテーマでも語ってもらった。

取材・文 / 上條真由美 撮影 / 斎藤大嗣


人との出会い方に「普通」なんてない。いつだって「変」で、恋に落ちる瞬間も突然やってくる。

最初に脚本を読んだ時、どのような感想を抱きましたか?

高橋 口語的なセリフが多い脚本だからか、すんなりと自分の中に入ってきました。その時点ですでに僕の中では映像も浮かんでいました。

蒼井 私は原作の小説が出た時に読んでいたのですが、文章を読んでいるのに、人と人が同じ角度ですれ違っていく様子がわかるというのがすごく面白い体験で。映像化してもそうだろうと思ったので、タナダさんに「映画化されないんですか?」と聞いたんです。その時は何も決まっていないようでしたが、月日が流れて自分にこのお話をいただけたことにびっくりしました。「今の私が園子を演じていいんだ」って嬉しくなりましたね。

おふたりは、映画では実に19年ぶりの共演です。夫婦役を演じると聞いていかがでしたか?

蒼井 その間に一度ドラマでご一緒しましたが、同じシーンはほとんどなかったんです。でも、高橋さんですから! なんの心配もありませんでした。ラブストーリーの場合はいつも相手役の方の出方を探るんですが、その必要もなくて。無理なく哲雄と園子になれました。

高橋 夫婦の日常的なやりとりなど、会話を重ねていくお芝居が多かったので、「優ちゃんとやったらどんな風になるんだろう」と楽しみでした。現場の雰囲気もよかったですし、なにより自然体でいられました。

ロマンスドール 高橋一生 エンタメステーションインタビュー

ひさしぶりの共演で、何か新たな発見はありましたか?

蒼井 1つだけ、「意外だな」と思ったことがありました。

高橋 え、なに?

蒼井 ジャンクフード好きだよね。毎日のようにハンバーガーを食べてた(笑)!

高橋 もともと好きだけど、「哲雄は妻がいない間にジャンクフードを食べるタイプだろう」と思って、ちょっと体重も増やしたの。

蒼井 あえて、そうしてたんですね。

ロマンスドール 蒼井 優 エンタメステーションインタビュー

ラブドール職人が一目で恋に落ちた女性と結婚。面白い設定とストーリーですよね。

蒼井 そうですね。でも、人との出会いっていつだって変な気がするんです。私も長く続いている友人とはだいたい変な出会い方です(笑)。

高橋 出会い方に関して「普通」ってない気がします。恋に落ちる瞬間も、いろんなものを度外視にして、「なんかよくわからないけれど好き!」ってなるものだと思うので。哲雄は出会いから告白までがとても早かったけれど、僕にはそれも自然なことに思えるんです。タナダさんの脚本や撮り方がそう見せているのかもしれません。

ラブドールづくりは想像以上に職人の世界。楽しくてカットがかかっても手が止まらなかった(高橋)

高橋さんは、撮影前にラブドール職人の方から研修を受けられたそうですね。

高橋 はい。とても勉強になりましたし、楽しかったです。曲線の描き方や触り心地、いかに女性の体を美しく見せられるかなどを日夜研究し、トライアンドエラーを繰り返しているのを見て、想像以上に職人の世界で驚きました。もはや芸術の一歩手前のような。それほどリアルにつくったものに愛情も注ぐわけですから、ドールが生物にしか見えてこないんです。存在感もすごく強くて…限りなく人間に近いんです。

実際のラブドール職人の中にも、哲雄のように奥さんに自分の職業を隠している方はいるのでしょうか?

高橋 そういう方もいたという話は聞きました。

蒼井 私は、リリー(リリー・フランキー)さんのおかげでラブドールが身近な存在で。リリーさんに「リリカ」という名前のラブドールの彼女がいるんですが、リリーさんの家に集まってみんなでお酒をいただく時もいつも一緒だし、自分の洋服をあげたこともあるので、今回もラブドールやラブドール職人という職業について、すんなりと受け入れられました。

ロマンスドール 蒼井 優 エンタメステーションインタビュー

蒼井さんは、園子を演じる上でどのようなことを意識されていましたか?

蒼井 この映画は哲雄の10年間の回想なので、ずっと哲雄目線なんです。告白された時の園子の反応もそうですが、哲雄から見た園子には美化されている部分がいっぱいあると思うんですね。

高橋 たしかに。

蒼井 だから、あまり血を通わせすぎるのもよくなくて。人間味と美化された部分とのバランスを取りながら楽しんで演じていました。

幸せな瞬間もあればすれ違いもあり、夫婦生活って難しいなと思ったのですが、哲雄と園子という夫婦について、どのような印象を持ちましたか?

蒼井 当たり前のことですが、夫婦の数だけ夫婦像があるんだなと思いました。欲深くなく、でもちゃんと欲がある。なんともいえず好きなふたりでしたね。

高橋 優ちゃんがさっき言った「人と人が同じ角度ですれ違っていく」というのは、どうしようもなく存在しうることだと思います。哲雄も園子も、お互いのことを見ているようで目線が合っていなかった。ひとりよりもふたりでいる方が孤独だった。僕は結婚していませんが、その感覚を擬似体験させていただけて、役者冥利に尽きます。

危機もありましたが、そこでラブドールが夫婦にとって重要な存在となりました。園子のドールをつくるシーンは、命が宿っていく感じがして見入ってしまいました。

高橋 後半はドールがふたりの鎹(かすがい)になってくれていたように思います。おかげでもう一度心を通わせられるようになった。園子のドールをつくっている時は、純粋に園子の肉体を丁寧に確かめているだけで、その先のことにまでは思考がいっていなかったと思います。園子を移していく作業だとも、この時点では考えていなかった気がします。

蒼井 園子も自分を残すという悲しみはなく、ただただ幸せな時間でした。

髪の毛を植えていくシーンが特に美しかったです。

高橋 髪の毛を植える作業は僕も好きで、カットがかかってもずっとやっていました(笑)。縦に入れると抜けやすくなるからダメなんです。ななめに入れてちょっとえぐる。人の髪の毛ってななめに生えていて、向きや流れもあるんです。優ちゃんと話している時に生え際をよく見ておいて、思い出しながらやっていました。

蒼井 そんなに生え際を見られてたんだ(笑)。たしかに、人によって髪の毛やヒゲの生え方って全然違いますもんね。

高橋 難しかったのは肌の調色。塗料は固まるのが早いし、本当に微妙なさじ加減で色が変わってしまうんです。人間ってものすごい確率でこの肌の色になっているんだということがよくわかりました。

ロマンスドール 高橋一生 蒼井 優 エンタメステーションインタビュー

大胆かつ美しいベッドシーンも本作のひとつの魅力である気がします。撮影で細かい演出などはあったのでしょうか?

高橋 角度やどうしたら自然に見えるかは考えましたが、それ以外は自由でした。

蒼井 タナダさんは撮り方や照明にすごくこだわられていました。個人的には耳を噛むのが思ったより難しかったな(笑)。

うちの夫婦はどちらもよく喋る。このままずっと会話を楽しみ続けていきたい(蒼井)

ロマンスドール 高橋一生 蒼井 優 エンタメステーションインタビュー

哲雄は園子に対して長い間嘘をついていましたが、ご自身が同じ立場だったら嘘をつき続けられると思いますか?

高橋 嘘をつき通せると思いますし、バレないと思います!

蒼井 うん、バレなそう(笑)。私はすぐバレそうでしょ?

高橋 そうだね(笑)。

蒼井 全部顔に出ちゃうんですよ。サプライズもまったくダメ。以前、先輩との食事会を忘れてしまったことがあったんですが、嘘はよくないと思って「すみません、忘れていました」と言ったら、「なんでも正直に言えばいいってもんじゃない」って注意されました。「そこは嘘をついていいところ」って(笑)。

あははは(笑)。では園子のように秘密を抱えているのも無理そうですね。ふたりがテーブルを挟んで隠しごとを打ち明け合うシーンも強く印象に残っています。会話がとても自然だったのですが、アドリブですか?

蒼井 脚本通りです。タナダさんの脚本って、「難しいんだけど言いやすい」という矛盾をはらんでいて。集中していれば自然に出てくる言葉っていうのかな。セリフを言うだけでなんだかワクワクするんです。

高橋 あのシーンは僕も楽しかったです。よく「会話はキャッチボール」っていいますが、僕はジャグリングなんじゃないかと思うんです。お互いにいくつものボールを投げ続けていて、予想外のボールが飛んでくることもあれば、言葉以外に目というボールを投げることもある。日常的にやっていることではあるけれど、あの長いシーンを体験して、あらためて会話って面白いなと思いました。

ロマンスドール 高橋一生 エンタメステーションインタビュー

そこで理想の夫婦像を言い合っていましたが、おふたりにとって理想の夫婦とはどのようなものでしょうか?

高橋 お互いの時間を尊重し干渉しすぎず、「今は話しかけない方がいいな」などと空気で察し合えるようになれたらいいなと思います。夫婦生活はどれだけ相手の嫌なところを許容できるかが重要な気がするので、いい意味で「しょうがないな」ってなれたらベストなんじゃないでしょうか。

蒼井 私は思いやりを持ち合えればいいなって思います。うちはお互い本当によく喋るので…。

高橋 ずっと喋っているの? 楽しそう!

蒼井 そうなんです。何を毎日こんなに話すことがあるんだろうってくらいずっと喋ってる(笑)。なので、このまま会話を楽しみ続けていればいいのかなと。よく「夫婦の会話がなくなる」っていうじゃないですか? そうなってしまった時に大事なのが、思いやりなんじゃないかなと思います。

フォトギャラリー

高橋一生

1980年、東京都生まれ。映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍。近年の主な出演作に、映画『億男』(18)『九月の恋と出会うまで』(19)『引っ越し大名!』(19)、ドラマ『凪のお暇』(19/TBS)などがある。現在、スナフキンの声を務めるアニメ『ムーミン谷のなかまたち』(NHK BS4K)のシーズン2が放送中のほか、2月より舞台『天保十二年のシェイクスピア』に出演する。

オフィシャルサイト
http://www.my-pro.co.jp/aa/takahashi.html

蒼井 優

1985年、福岡県生まれ。14歳のときにミュージカル『アニー』でデビュー。以降、映画、舞台、ドラマなど幅広く活躍。近年の主な出演作に、映画『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)『東京喰種トーキョーグール』(17)『長いお別れ』(18)『宮本から君へ』(19)、舞台『アンチゴーヌ』(18)『スカイライト』(18)などがある。2020年は主演ドラマ『スパイの妻』(NHK)が放送予定。

オフィシャルサイト
https://www.itoh-c.com/aoi/

映画『ロマンスドール』

2020年1月24日(金)全国ロードショー

【STORY】
一目惚れをして結婚した園子(蒼井 優)と幸せな日常を送りながら、ラブドール職人であることを隠し続けている哲雄(高橋一生)。仕事にのめりこむうちに家庭を顧みなくなった哲雄は、恋焦がれて夫婦になったはずの園子と次第にセックスレスになっていく。いよいよ夫婦の危機が訪れそうになった時、園子は胸の中に抱えていた秘密を打ち明ける…。
10年の、嘘と秘密と、ほんとの愛。変わりゆく男女の感情をリアルに映し出す、美しく儚い、大人のラブストーリー。

出演:高橋一生 蒼井 優/浜野謙太 三浦透子 大倉孝ニ ピエール 瀧 きたろう 渡辺えり
脚本・監督:タナダユキ
原作:タナダユキ「ロマンスドール」(KADOKAWA刊)
音楽:世武裕子
主題歌:never young beach「やさしいままで」(SPEEDSTAR RECORDS/Victor Entertainment)
配給:KADOKAWA

©2019「ロマンスドール」製作委員会

オフィシャルサイト
https://romancedoll.jp/