esゲーム記事執筆陣が令和元年にハマったゲーム3選  vol. 2

Review

「発売されてよかった!」と心から思った個人的神ゲー3選

「発売されてよかった!」と心から思った個人的神ゲー3選

2019年は僕にとって、”発売されてよかった”と思う作品が複数あった。待ち望んだ待望の続編もあれば、ゼロから開発チームを立ち上げて開発に挑んだ作品もある。”これで最後”と言われていたのに奇跡の復活を遂げたものまで出てきた。発売直前は期待のあまりそわそわしていたし、ある作品では久々にゲームのための休暇を取ることにした。
ただ、それだけ楽しみにしている作品になると、プレイしはじめた頃はいろいろなものに目を光らせている。期待が高まりすぎて“本当にちゃんとしたゲームになっているのだろうか”という疑念が最初にあるからだ。好きすぎて粗探しを始めてしまうのだからおかしなものだ。実際、発売にこぎつけるまで苦労しているゲーム、特殊な開発体制で作られたことが明かされたゲームでは、遊んでみて肩透かしをくらうことも珍しくない。
しかし、ここに挙げた3本は僕のそんな心配を軽く吹き飛ばす、想像を超えた傑作ばかりだ。プレイしていて「ありがとう」と感謝の念さえ湧き、熱くなって時間を忘れるようにプレイした。ここではその3本のゲームが発売されるまでの経緯と、作品の魅力について語る。

文 / 浅葉たいが


画面内の何もかもが気になる『シェンムーIII』

Deep Silver / PlayStation®4、PC / アクションアドベンチャー

オフィシャルサイト

今年、発売されてよかったと切に思ったのは『シェンムーIII』だ。2015年のE3で突如とした発表されたこの作品は、十数年まえのセガの傑作『シェンムー』シリーズの最新作である。シリーズのキーマンである鈴木裕氏がセガを離れ、これだけの時が経ってこの作品が再始動するというニュースは多くのゲーマーに衝撃をもたらしたはず。ドリームキャストという挑戦的なプラットフォームで、のちの多くのゲームに影響を与えるFREE(Full reactive eyes entertainment)という自由度に満ちた、オープンワールドの走りのようなことをやってのけた“未完”のドラマが、10年以上の時を経て蘇るというのだ。その続編のために鈴木裕氏が選んだ方法はクラウドファンディング。多くのファンが飛びつき、ビデオゲーム部門のKickstarter史上最高額を集め、制作がスタートされることとなった。

ただ、ひねくれた目線かもしれないが、クラウドファンディングという形式を経て作られるゲームは”本当に出来上がるのか”と心配してしまうようなケースを多く見てきた。大物クリエイターの作品かつ資金がほどほどにあっても、“ゼロからチームを立ち上げ作品を作る”というのは容易ではないのだ。しかも『シェンムー』ファンは「ただのゲームであってくれるなよ」と思ってさえいるわけだから、中途半端な作品が出たらすぐに気づく。

シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲物語は『シェンムーII』のラスト直後から始まる。親の仇を探して旅を続ける芭月涼は、手掛かりにつながる女性“莎花”とともに白鹿村に降り立つ

シェンムーIII エンタメステーションレビュー
シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲『シェンムー』シリーズを遊んでいないという人のために、過去作を回想するゲームモードもついている。PlayStation®4では『シェンムー』の1作目と2作目を遊べるリメイク版がセガから発売されているので、のんびり進めたい人はこちらを遊んでみよう

実際に発売された『シェンムーIII』は、僕たちの待っていた『シェンムー』の流れを汲む素晴らしいタイトルだった。白鹿村というのどかな村から始まる葉月涼の新たな冒険譚に胸を躍らせる。一刻も早くこの物語を堪能したいという感情と同じかそれ以上に、のんびりとこの世界を探索したいという仕掛けが序盤から目白押しだ。かつて夢中になったガチャのコンプリート、意味はなくても出会う人に話しかけてしまう会話の楽しさ、いろいろなものを”調べるもの”として設計された世界。ついつい無駄なことをしてみて、それに対してゲーム側でレスポンスが用意されていることに驚くこともある。村や町に歩く一人ひとりが、じんわりとしたドラマを持っている。ゆったりとプレイすることで味が増す、稀有な作品である。筆者もひととおりストーリーを見終えるという意味では“クリア”することはできた。随分ゆっくりとプレイしたつもりだが、まだまだこの世界でできることは思いつく。プレイ時間は100時間に近づいているが、“遊びつくした”とはまだ全然言えない状況である。年末の休みはやり残したことと新しいことを探して、再び『シェンムーIII』の世界を歩いてみようと思う。

©Ys Net Original Game ©SEGA Published 2019 by Deep Silver, a Division of Koch Media GmbH, Austria.


『DEATH STRANDING』の開発期間に驚く

ソニー・インタラクティブエンタテインメント / PlayStation®4 / アクション

オフィシャルサイト

『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』は、KONAMIから独立した小島秀夫監督が結成したコジマプロダクションの作品として2016年のE3で発表された。正直、僕はこのゲームが完成するにはもっとたくさんの時間が必要だろうと思っていた。こちらも乱暴な言いかたをすると『シェンムーIII』と漕ぎ出しかたは変わらないように見えた。ゼロからチームを立ち上げ、海外のビッグタイトルと並ぶ規模のゲームを作り上げる。しかも小島監督は『メタルギア』シリーズという偉大な作品のキーマンであり、ユーザーとしてはその事実を基準に作品のスケールを予測する。発表からしばらくは作っている気配は伝わってきたものの、2019年5月になって発売日が2019年11月と発表されたときは、ちょっと早すぎるのではないかとさえ思った。この作品はプロモーションの方法も独特で、2019年になるまでは“どのようなゲームなのか”という具体的な情報もあえて発信しなかった。「本当にできているのか」と疑うのも無理はなかったのだと言い訳をしておく。

DEATH STRANDING エンタメステーションレビュー

▲本作は発売直前まで“どんなゲームなのか”を多く伝えなかった

実際に本作を遊んだ感想は、本サイトのレビュー記事に書かせてもらったとおりだ。“初めて”に満ちたゲーム体験とプレイしている自分自身の思考が混ざり合い、オリジナルのゲーム体験が生まれる。ゲームの主人公であるサム・ポーター・ブリッジズを操作し、“配達人”としていろいろな荷物をあちこちに届ける。その荷物の始点と終点には必ず“人の想い”が何らかの形で絡んでくる。どういった経緯でその荷物を運ぶことを願ったのか、またはなぜ受け取ることを願ったのか。そして、その荷物によって何が成されるのか。そういったドラマを配達のなかで見つけていき、プレイヤー自身が頭のなかで繋ぎ合わせていく。そうすることで初めて荒廃した世界に何が起きたのか、その世界はどこに向かっているのか、作中の登場人物たちが口にする“アメリカを繋ぎなおす”とはどういうことなのかがわかってくる。
物語を自分で拾い集めていくようなプレイフィールはもちろん、ゲームとして“楽しませてくれる要素”もすこぶる良かった。サムの持てる荷物の量が徐々に増え、移動のためのツールやガジェットが増えていくとRPGのレベルアップのような快感がある。その結果、移動のルートが増え、たどり着ける場所も増えていく。成長によって世界が拡張されていくバランス感覚が絶妙で、気づけばプレイヤーが“配達依存症”のようになっている。僕がこのゲームをプレイしているのを見ていた友人は、「そのゲーム、戦闘とかメインじゃないけど面白いの?」と聞いてきた。この質問は無理もないことで、見ているだけではわからないタイプのエンタテインメントなのだ。その後、数日遅れで本作を買ったその友人とは『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』トークでとても盛り上がった。「買って良かったよ。ムキになってトロフィーコンプリートまでやってしまった」と自慢されたのはちょっと悔しかったけれど。

DEATH STRANDING エンタメステーションレビュー

▲最初のほうはわけもわからず荷物を運ぶだけだが、慣れてくると“癖になる”瞬間が訪れる

©2019 Sony Interactive Entertainment Inc. Created and developed by KOJIMA PRODUCTIONS.


“ラスト”を裏返した『メモリーズオフ -Innocent Fille- for Dearest』

5pb / PlayStation®4、PlayStation®Vita、Nintendo Switch™、PC / 恋愛アドベンチャー

オフィシャルサイト

3作目は先に挙げた2作とは毛色の異なる作品だが、ギャルゲーの『メモリーズオフ -Innocent Fille- for Dearest』の話をしたい。これは『メモリーズオフ』(以下、『メモオフ』)シリーズのフラグシップタイトルである『メモリーズオフ -Innocent Fille-』のファンディスク的な作品である。

メモリーズオフ -Innocent Fille- for Dearest エンタメステーションレビュー

▲『メモリーズオフ -Innocent Fille- for Dearest』はファンディスク的な位置づけで、ヒロインたちと結ばれてからの後日談を楽しむ作品。このファンディスクが、シリーズに大きな希望をもたらしてくれたのだ

まずはこのタイトルの話をするまえに、『メモリーズオフ -Innocent Fille-』のことを説明しよう。『メモリーズオフ -Innocent Fille-』は長く続いてきた『メモオフ』シリーズのフラグシップではあるが、前作の『メモリーズオフ ゆびきりの記憶』から約8年の時を置いて発売された。実はこの8年の空白期間に続編の構想が生まれてはいたものの、近年の日本マーケットにおける”コンシューマギャルゲー”の売り上げを懸念され凍結されていた。
それを開発陣があの手この手をつかい、マネタイズのプランを立ち上げ発売にこぎつけたのが『メモリーズオフ -Innocent Fille-』だ。それでも当時のギャルゲーの状況ときたら相当に厳しかったようで、この作品のキャッチコピーは”ラストメモリーズ”となった。ユーザーを集めての”卒業式イベント”が開催されたことも考えると、これはメーカーからの“最後ですよ”というメッセージだったのだろう。しかし、そこで“ラスト”とはならなかった。2018年末にまさかのファンディスク『メモリーズオフ -Innocent Fille- for Dearest』が発売されることとなったからだ。国内だけでなくアジア圏の他の国での好評を受けて、シリーズでは”お約束”となったファンディスクの制作を決めたという。

メモリーズオフ -Innocent Fille- for Dearest エンタメステーションレビュー

▲東京都で行われた『メモオフ』の卒業式。ギャルゲーでリアルな卒業式をやってしまう『メモオフ』制作陣の作品愛はホンモノ。筆者もファンのひとりとして参加した

卒業式までやってしまったギャルゲーが、次なるリアルイベントとして打ち出してきたのは“謝恩会”イベントだった。このステージではシリーズプロデューサーの市川和弘氏によって、「新作の可能性もある」ということまで発信された。「“ラスト”と言いながらファンディスクを作って、それでまた次のフラグシップを出すのってなんかズルいような気もするので、少しは寝かせたほうがいいのかもしれませんね」という、ファンにとっては嬉しい悩みまで吐露された。どうしてファンディスクを出すことになり、その続編までも浮上してきたのかということを聞いたとき、市川氏からは、開発が諦めずに出す方法を探ってくれたこと、ユーザーの皆さんの後押しが会社にも届いたこと、そして結果につなげられたことで“次”の話も出ていることが語られた。終わるはずだったIPが、開発陣とファンの熱意に押されてまた動き出す。こんなに嬉しいことはない。
この作品をベストに推した理由はもうひとつある。それは、本作が『メモオフ』という固定ファンを多く抱える作品でありながら、シナリオにおいて”勇敢な冒険”をしてきたことだ。学園モノ、切ないラブストーリー、可愛いヒロインたちとのギャルゲーとシリーズのお約束は押さえているが、”ヒロインに対してそこまでやってしまっていいのか”という大ネタが用意されている。ある意味サスペンスともいえる本作の制作を引っ張ったのは、プロデューサーの柴田太郎氏、ディレクターの相澤こたろー氏。歴代シリーズを作り手として、ときには大ファンとして見つめてきたクリエイター陣の描く『メモオフ』は、古くからのファンを驚かせながらも納得させ、新しいファンを作り出す魅力に満ちた作品となった。ちなみに、 “フラグシップタイトルのどこから始めても楽しめる”のもこのシリーズの寛容なところ。興味が湧いた方は本作から『メモオフ』道に踏み込んでみてほしい。

メモリーズオフ -Innocent Fille- for Dearest エンタメステーションレビュー

▲『メモオフ』シリーズフラグシップはどこから遊んでも安心。可愛いと思ったヒロインがいる作品から遊ぶのもいいだろう。ファンディスクからプレイしないようにだけ気をつけよう

©MAGES./5pb.


以上が2019年の「発売されてよかった!」と感じたゲームになる。作品としての面白さだけでいくと、これらの作品に肩を並べるようなものもゴロゴロあったと付け加えておく。また、この記事を書いている12月13日、The Game Awards 2019の発表が行われた。そこでゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞したのはフロム・ソフトウェアの『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』。これだけでなく複数の日本メーカーの作品が部門別でアワード選出されていた。それを見ていて、まだまだ日本のゲームは元気だと再確認できたことはとても嬉しかった。これらの作品の面白さが日本国内でもより多くのプレイヤーに伝わることを願っている。
広い視点でゲームシーンを見たとき、今年もやはりeスポーツの盛り上がりが大きかった。メーカー協賛を集めて開催された大規模な大会はもちろん、地方でのeスポーツが芽を出してきた印象がある。地方から強豪プレイヤーが出てきて、全国的にこの勢いが広がっていくことを期待したい。ただしゲームで競うということになると、いくらオンライン対戦で腕を磨ける時代であるとはいえ、オフラインでの対戦経験がものをいうタイトルも多い。そこで勝つためには“東京に出る”というのも現在のeスポーツの取り組みかたのひとつになっている。そんな状況で地方のeスポーツがどのように伸びていくのか、伸ばしていくつもりなのかは来年以降も楽しみな見どころになるだろう。
2020年といういかにも節目を感じさせる数字並びの年に、PlayStation®とXboxの新型が発売されるという話がある。これはどちらも非常に楽しみだ。PlayStation®4とXbox One発売の際、日本では発売日が米国等に比べて遅かったため、少し寂しかったことを思い出す。できれば全世界で最速くらいの勢いで、この2台の新ハードを日本でも展開してほしいと思っているのだが、はたしてどうなるか。

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