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ファンの心を揺さぶる『新サクラ大戦』はどこが新しく、何が懐かしいのか

ファンの心を揺さぶる『新サクラ大戦』はどこが新しく、何が懐かしいのか

筆者は麗しいヒロインたちが戦い、歌い踊る”帝国華撃団”にすっかりやられてしまったひとり。学生時代はグッズを集めたり、イベントを見に行ったりしたものだ。スピンアウト作品も随分と遊んだし、『サクラ大戦』モデルのドリームキャストは今でも大事に保管している。しかし、それだけ好きだった『サクラ大戦』は続編の気配もなく、自分のなかで思い出の作品となりつつあった。他のゲームにコラボ出演した際はちらほらと見てきたが、続編については音沙汰なしの10年が横たわっていたからだ。
実際にはこの10年の間にもセガ社内では新作の企画は何度かあったようで、商業的な事情などもあってか”不採用”となったとか。ギャルゲーが売れるかどうかわからない時代、『サクラ大戦』だから必ず成功するというわけではない。しかし、シリーズファンの声がセガフェスなどのイベント等を通じてセガを揺さぶり、ついに待望の新作が発売されることとなった。第一報を聞いたときはとても嬉しかったが、その新作がひと目でわかるほど”全く新しい”ものだったことに驚いた。クリエイター陣は大きく変わり、ストーリー構成は『428 ~封鎖された渋谷で~』の総監督であるイシイジロウ氏、キャラクターデザインは大人気漫画『BLEACH』の作者である久保帯人氏という布陣。とても魅力的だが、”これは『サクラ大戦』なのか”という疑問をずっと抱えたまま発売日を迎えたことは確かだ。今回の記事では、そんな気持ちを抱えながら遊び始めた『新サクラ大戦』のプレイフィールを語る。

文 / 浅葉たいが


やっぱりこれは『サクラ大戦』だ

本作のストーリーは、シリーズファンにとっては衝撃的な展開からスタートする。なんと本作の舞台は、過去作の中心人物たちが所属していた “帝国華撃団”や “巴里華撃団”が “降魔大戦”で消滅した太正29年だというのだ。プレイヤーは新しい主人公である神山誠十郎となって、新生 “帝国華撃団・花組”を率いて帝都を守ることになる。こうした設定面だけを並べると過去作がないがしろにされていると感じる方もいるかもしれないが、そんなことは全くなかった。『新サクラ大戦』の世界には過去作のヒロインたち、真宮寺さくらたちがいた気配がはっきりと感じられる。“現在”の花組の総司令が神崎すみれというのも驚きであり、シリーズファンにとっては嬉しいところだろう。彼女がヒロインのひとりだった頃から作中では10年の時が経過しているわけだが、見た目の変化に違和感はない。本作から遊び始めても十分楽しめる新作でありながら、過去作との関係性を強引に絶つようなことはしていないということが数十分遊んだだけでもわかるはずだ。

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▲『新サクラ大戦』の主人公・神山誠十郎。プレイヤーは帝国華撃団・花組を立て直すために奔走する彼の視点で物語に触れることになる

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▲帝国華撃団・花組に所属する天宮さくら。過去作品のヒロインである真宮寺さくらに憧れている

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▲初代『サクラ大戦』にも登場した神崎すみれ。現在は帝国華撃団・花組の総司令を務める

現在の花組は過去の栄光もむなしく、“落ちこぼれ”とみなされている。かつての“帝国華撃団・花組”といえば、真宮寺さくらや神崎すみれといった“スタァ”たちが所属する華やかで有名なチームだった。しかし彼女たちが現役を退き、一部のメンバーが姿を消したあとの花組は演目では失敗が続き、帝都を守るための戦闘でも他国の華撃団に頼り続けている。神山に与えられたミッションは “帝国華撃団・花組”にかつてのような栄光を取り戻し、みんなから愛される存在へと変えること。天宮さくら、東雲初穂、クラリスといった花組の仲間たちと、不器用ながら熱く正直に成長していく姿が描かれる。

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▲帝国華撃団・花組は神山の元で徐々に力をつけていく。また、神山も花組のメンバーたちの行動に心動かされ、共に成長していくのだ

本作の成長物語は過去の『サクラ大戦』と重なる部分もある。過去作のヒロインたちも最初から輝かしいスタァだったわけではないのだ。スタァとして大成するまでに、さまざまな葛藤を抱えながらもより良い自分になるための努力を重ねてきた。天宮さくらたちもまた形こそ違えど、原石を磨きながら輝くスタァへの階段を上っていく。序盤では落ちこぼれであるさくらがライバルに馬鹿にされ、ずたぼろにされるシーンが描かれるのだが、ここで彼女はとにかく頑固に諦めない。勝てる戦略も逆転の目もなく、助けが来ることすらも期待できない状況なのに彼女は「参りました」と言わない。今の時代にしては馬鹿正直で熱すぎるちょっと古臭いヒロインなのに、彼女のことが大好きになってしまった。『サクラ大戦』シリーズの持つ“熱さ”が彼女のなかに色濃く受け継がれていることがわかってしまったからだ。このゲームはクリエイターやキャラクターが変わっても、やっぱり『サクラ大戦』なのだ。

ふたつのパートが生み出す心地よいメリハリ

本作はアドベンチャーパートとバトルパートから構成されている。アドベンチャーパートでは、3Dグラフィックで描かれる大帝国劇場や銀座の街を探索して、ヒロインたちとの交流やストーリーに関わるイベントなどを楽しむことができる。『サクラ大戦』シリーズおなじみのLIPS(時間制限式選択肢)も健在で、選択肢によって会話相手の反応や信頼度が変化する。このLIPSの特徴としては、答えずに時間切れになった場合は“失敗”ではなく、「迷った結果答えられなかった」という意思表示など選択のひとつとしてみなされる。ときには“あえて選ばない”ことで、ユニークな反応を引き出せる可能性もあるのだ。アドベンチャーパートは、『サクラ大戦』らしさ満載の遊びやすいパートになっている。おまけ要素的な“こいこい”を楽しむミニゲーム、登場人物や過去作のブロマイドを集めるコレクション要素などもこのパートで楽しめる。筆者はつい“こいこい”にムキになってしまい、日曜の一日はひたすらこのミニゲームを遊んでいた。花札を遊んだことがある人ならすんなりと遊べるうえ、初心者の人にもわかりやすいシンプルなルールになっており、一度始めると止めどきがわからなくなってしまう不思議な魅力がある。

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▲『サクラ大戦』シリーズおなじみのLIPS(時間制限式選択肢)。あえて答えないのも選択のひとつだ

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▲こいこいが楽しめる“世界こいこい大戦”。物語の進行には関係ないが、歯ごたえのあるミニゲームとなっている

『サクラ大戦』シリーズといえばシミュレーションRPG風のバトルが持ち味のひとつだったが、本作のバトルパートはアクションへと変更された。神山や天宮さくらたちは”霊子戦闘機”と呼ばれるロボットのようなものに搭乗し、“降魔”という帝都を脅かす存在を打ち倒していく。スピーディなダッシュと派手な攻撃が飛び交うアクションは爽快感抜群。広いエリアを探索しつつ道中の小型・中型降魔を一掃し、最深部にいるボスを打倒することでステージクリアとなる。

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▲主人公たちが搭乗する霊子戦闘機。神山のものは“無限”と呼ばれる機体

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▲バトルパートはアクション。過去シリーズとはプレイフィールが大きく異なるが、テンポが良く遊びやすい

本作のバトルの多くはペアを組んで出撃することになる。キャラクターによって搭乗する霊子戦闘機が異なり、霊子戦闘機ごとに動きの性質も変わるため、個性を活かした攻略や新鮮なプレイフィールを求めてキャラクターを変更するということも可能だ。本作のアクションの難度はそれほど高くないが、ステージによっては空中を飛んでいる敵が多数出現する場所などがあり、近接攻撃中心の霊子戦闘機では厳しい闘いを強いられる。こういった状態では魔法攻撃を得意とするクラリスなどを編成しておけば、近接キャラクターよりも楽に敵を倒すことができるというわけだ。逆に地上の敵がわらわらと湧いてくる場所では、近接攻撃の威力の高さを活かして敵をなぎ倒していくというのも立派な戦術となる。
過去の『サクラ大戦』シリーズのシミュレーションパートは“共闘感”を味わえるのが醍醐味のひとつであった。タクティクスRPGというには随分シンプルなバトルだったが、さまざまなキャラクターを操作して戦術を成立させるのを楽しんだ人も多いはず。これがアクションとなると出撃していないキャラクターに目がいくのは当然で、共闘感はやや薄れているように思われる。しかし、テンポの面では実に小気味よく、個人的にはアクションにしたのは英断なのではと思っている。
筆者が『サクラ大戦』の何を一番に楽しみにしているかというと、物語の先を見ることとヒロインたちとの交流。過去作でもシミュレーションパートが冗長に感じてしまうことも少なくなかった。アクションならクリアまでがスピーディかつ画面を見ているだけの時間も少ないので、その先にあるご褒美を目指すような感覚で気楽にプレイできる。

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▲各ステージにはボスが配置されている。大型の敵は強力な攻撃を繰り出してくるので、ヒット&アウェー的な戦術を取る必要がある

これはファンに刺さる『サクラ大戦』だ

やや粗削りな部分も確かにある。本作はフルボイスではなく、一部シーンでボイスがなくなるパートボイスタイプのゲームとなっている。この形式になった理由は想像することしかできないが、これだけ豪華な世界設定を組み上げシリーズの集大成として世に出すのであれば、ここはフルボイスであることを期待した人も多いだろう。筆者はゲームにフルボイスであることを求めないプレイヤーだ。序盤を遊んでキャラクターたちのボイスをなんとなく覚えたら、そこからはスキップなども使ってゲームを進めるタイプなのだが、本作の場合は序盤のとても早いシーンでパートボイスであることが判明して驚いた(天宮さくらが初めて演技を披露するというシーンだったので、ボイスに期待していたのだ)。
アクションパートの難度はそれほど高くないものの“ロックオン”がないことで、倒すのにひと手間かかる敵がいるのも気になった。苦戦するというのではなく、負ける要素のない雑魚を倒すのに余計な手間がかかるというのはあまり好ましいことだとは思えない。特に近接攻撃が当たりにくい位置に出現する敵と戦った際は、敵の倒し残しにストレスを感じることも少なくなかった。機体をプレイヤーが選べる場合はいいのだが、ゲーム側で指定されているミッションなどは敵の倒し残しに随分と苦しめられた。この手の敵がわらわらと出てくるタイプのアクションゲームは著名な良作が多いため、つい比較してしまうのだ。

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▲せっかくの超大作なのだから、できればフルボイスにしてほしかった。DLC(ダウンロードコンテンツ)などでもいいので、補完してくれると嬉しい

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▲バトルパートでは、操る機体によっては倒すのが面倒な敵も。難しいぶんには大歓迎だが、攻撃が当たりにくく倒しにくい敵はテンポを損ねる

ただ、こうした弱点を認識しているとしても、『サクラ大戦』ファンには間違いなく最高の作品のひとつだろう。作中の物語や設定、そしてキャラクターデザインの落とし込みにおいて“裏切られた”と感じたことはひとつもなかった。過去作のキャラクターが登場する際も安易に使われていると感じることはなく、リスペクトがはっきりとある。昔『サクラ大戦』を遊んだ&好きだったという方は、ぜひ本作を手にとってもらいたい。キャラクターを愛おしいと感じるほどの、熱くて可憐でときにちょっとご都合主義なところもある物語はやっぱりファンたちの心を打つのだ。
先にも書いたように、シリーズを知らなくても十分に楽しめる作品となっている。『新サクラ大戦』を遊べば、このシリーズに夢中になるファンが多くいるのも理解してもらえるかもしれない。『サクラ大戦』が続くためには古くからのファンはもちろん、新しいファンが欠かせない。復活してくれたこの熱いシリーズを絶やさないために、みんなで応援していければ幸いだ。

フォトギャラリー
新サクラ大戦 ロゴ

■タイトル:新サクラ大戦
■発売元:セガゲームス
■対応ハード:PlayStation®4
■ジャンル:ドラマチック3Dアクションアドベンチャー
■対象年齢:15歳以上
■発売日:発売中(2019年12月12日)
■価格:通常パッケージ版・ダウンロード版 各8,800円+税


『新サクラ大戦』オフィシャルサイト

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