LIVE SHUTTLE  vol. 386

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UNICORN 今年の流行語大賞の“ワンチーム”は彼らのために!? と思わせるひとつになったツアー。100分のステージを振り返る。

UNICORN 今年の流行語大賞の“ワンチーム”は彼らのために!? と思わせるひとつになったツアー。100分のステージを振り返る。

UNICORN 100周年ツアー“百が如く”
2019年12月4日 中野サンプラザホール

さすがUNICORNの100周年らしく、アニバーサリー・イヤーの今年は『UC100V』と『UC100W』のアルバム2枚をリリース。春と秋で全50本に渡るツアーも敢行。ついにそれも最終盤に入った。この周年を祝うに当たってUNICORNが掲げたスローガンは「働き方改楽 -なぜ俺たちは楽しいんだろう-」。果たしてメンバーは今年、楽しく働いてきたのだろうか。その成果を確かめようと、オーディエンスたちは中野サンプラザに詰めかけたのだった。

この5人のメンバーになって作り上げた傑作『服部』から30年、ドラムの川西幸一が生まれて60年、奇跡の再始動から10年、合わせて100年というかなり強引な足し算だが、それもまたUNICORNならでは。ファンはもちろん、音楽シーンがそれを歓迎するのは、前述のとおり周りを明るく照らす元気ぶりと、問題提起の鋭さのせいだ。

配信の時代になっても変わらぬ精力的なアルバム制作とライブ展開は、同じミュージシャンたちや音楽ファンにさまざまなことを投げかけた。たとえばこの夏、UNICORNはフェスに出なかった。それは今、本当にバンドと音楽ファンにとってフェスが必要なのかを問いかけるものだった。また100分間でライブを完結するという画期的なアイデアは、長々とライブを行なうアーティストが増えてきた昨今、その意味を問うものだった。UNICORNが再始動した際、久々に組まれたツアーのタイトルは「蘇える勤労」だった。その言葉と「働き方改楽」は無関係ではないだろう。常にシーンの一歩先を行くUNICORNの、2019年を締めくくるツアー終盤のライブが間もなく始まる。

オープニング・ナンバーは、ニューアルバム『UC100W』の1曲目「M&W」だ。ちなみに春のツアーは、『UC100V』の1曲目「10Nuts」から始まった。ツアーの合間に仕上げたアルバムがあるからこその、豪華なセットリスト・チェンジというわけだ。ここからピッタリ100分のライブがスタートする。よく見ると、川西のドラムセットの色が真っ赤だ。川西が還暦の誕生日を迎えた10月20日の尼崎“あましんアルカイックホール”のライブから、このセットに変わったのだという。ドラムに合わせてコスチュームも真っ赤なのが、なんともメデたい。

「M&W」が終わると、間髪入れずに奥田民生とABEDONがギターを弾き始めた。「すばらしい日々」のイントロに、サンプラザが「オーッ!!」っと沸く。いきなりの名曲に、オーディエンスは大喜びだ。途中、ABEDONは右手を伸ばしてオルガンも弾く。ギターにキーボードにハーモニー・ボーカルに、大活躍だ。エンディングで川西がドラムをいつものように「ドパーン!」と豪快に叩き、すぐにハイハットで次の曲のカウントを出す。始まったのは「おかしな二人」で、キラーチューンの惜しげもない連発に会場は大騒ぎになった。ハンドマイクで歌う奥田は、途中でシンセドラムを叩く。ギター・ソロを弾く手島いさむの隣で腰を振る。こちらも大活躍だ。

「こんばんは、UNICORNです」と大歓声の中、奥田が挨拶。続いてメンバーもひと言ずつ挨拶する。「“百が如く”というツアーを今月いっぱいやってます。100分のライブをお楽しみください。バシッと終わりますので。では、てっしーの登場です」。ここからは、リードボーカルが次々に替わる。まずはオーセンティックなハードロック・テイストの「That’s Life」を手島が歌う。テンポがだんだん速くなるというユニークなアイデアの曲で、中盤からは怒濤の速さに遅れまいとメンバーの動きが激しくなる。ラストは奥田と手島のギター・バトルで締めた。

「それでは続きまして、還暦になりました川西さんが歌います」と奥田が紹介。川西がドラムを叩きながら歌う「GoodTimeバレンタイン」だ。川西以外の4人がステージ前に横並びになり、ABEDONはショルダー・キーボードを持って、全員でネックを左右に振って川西を応援する。またこの4人は、追っかけコーラスでも本領を発揮。リードボーカルを盛り立てる。途中、ブレイクすると、川西がスティックで客席を指し、オーディエンスをキャーキャー言わせたのだった。

「では、続きまして、EBI!」と奥田。EBIが「Lake Placid Blue」という曲名の元になった青いフェンダー・プレシジョンベースを弾きながら歌う。軽快なロックンロールに会場が揺れる。オーディエンスを笑顔にして、EBIのコーナーが終わった。

全員が曲を書き、全員が歌うUNICORNならではのステージングだ。今年の流行語大賞の“ワンチーム”という言葉は、このバンドのためにあるのかと思わせるほど、それぞれの役割をまっとうしてひとつになっていた。

「続きまして、新しい曲の中から、てっしーと私が共作した曲をやってみましょう」と奥田。「7th Ave.」は、漫才コンビ“千鳥”の番組『相席食堂』のために二人が書き下ろした曲。奥田と手島はかなり早い時期から千鳥に注目していた。ABEDONの吹くハーモニカが、古き良きリバプール・サウンドを彷彿とさせて、「Lake Placid Blue」に続いて会場を和ませる。

「次は川西さんと私が共作した曲で、時代劇映画のテーマになってます。では、川西さん、曲紹介をどうぞ!」と奥田が振ると、川西が「『でんでん』でござるよ」と紹介。ミディアムテンポのロックを、堂々と披露したのだった。

もうお気づきのことと思うが、ここまで奥田のMCは必要最小限。さくさくとライブが進んで行く。100分という縛りの中でつかんだペースが、これなのだろう。MCが必要最小限の分だけ、歌と演奏は凝縮され、1曲1曲が充実している。スピーディ展開して来たライブが、ここで一つの山場を迎える。

「UNICORNは30年前に『服部』というアルバムを出して、一気にスターダムというか(笑)、のし上がって行きました。みなさん、『服部』を覚えているでしょうか? 僕らもウル覚えです。たぶんこんなアルバムだったんじゃないかな」と奥田。ここからは「服部メドレー」だ。めちゃめちゃ演歌っぽく歌ったり、印象的なパートをほんの少しだけ演奏したり、そんじょそこらのメドレーではない。音楽的ユーモアをちりばめたスペシャルなUNICORN流『服部』メドレーに、会場は笑ったり、ジーンと来たり。ラストをバシッと締めた瞬間、ステージ背後の大きなスクリーンに、アルバムジャケットの“服部のおじさん”が大写しになって、会場は爆笑の渦になった。さらに奥田が畳みかける。「たぶん『服部』はこんな感じだったはずです。帰って聴いてみてください」。

30年前の『服部』を祝った後、今度は川西の還暦の番だ。川西は以前、「還暦よりも、自分が45年間、ドラムを叩き続けてきたことが大事」と語っていた。それを体現する曲「BLUES」で、川西は真っ赤なラメの入ったヘルメットをかぶってラップする。オリジナリティの高いラップは、バンドに命を賭けてきた男のつぶやきとして、胸に迫るものがあった。

終盤は、再始動後のナンバーが並ぶ。再始動した2009年にリリースされた「半世紀少年」では、ラッパーと化した川西とEBIをバックアップするように、奥田と手島が大きなフラッグを捧げ持つ。奥田と手島は「今回のツアーは、この曲がいちばんしんどい」と肉体の酷使を訴えていた。さもありなん、左右に走るは、フラッグを振り回すはの大車輪の活躍だ。続く「チラーRhythm」は今年出した『UC100W』からのディスコ・ナンバーで、メンバーにはユニークな振り付けがほどこされている。「Boys & Girls」では小旗を元気よく振ったり、とにかく終盤はアクティブなシーンが多く、“全力の100分”に会場は最後まで沸きに沸いたのだった。

本編が終わってもメンバーが袖に引っ込まない。すると、アンコールの拍手が起こる。オーディエンスも時間がもったいないと分かっているからだ。

ABEDONのピアノが「HELLO」のイントロを奏でる。再始動アルバム『シャンブル』のラストを飾った曲だ。それをアンコールに持ってくるとは。スクリーンには『シャンブル』のジャケットの映像が映し出される。歌が始まると、この10年間の「HELLO」のライブ映像が流れ、今、目の前で演奏する現在のメンバーの姿と交錯する。その時空を超えた演出は、UNICORNが100年後も聴かれ続けることを暗示しているように見えた。

「HELLO」は20時44分に終わった。始まったのが19時7分だったから、残りは3分。

ABEDONが犬の形のバルーンを持ってステージに現われ、「まだ時間があるので、他愛のない話をしますよ~」と言った瞬間、「ダダーン!!」と終了の合図の音が鳴った。

「100分、経ったので、コンサートはこれで終わりです!」とABEDONが宣言。名残り惜しかったが、オーディエンスの身体にはこの日のライブの余熱が残っていて、みんな満足そうだった。もしかすると、この余熱が100分ライブの魅力なのかもしれない。UNICORNは見事に100分を使い切って、音楽のいちばん大事なものをオーディエンスにプレゼントしたのだった。

「働き方改楽」は、大成功に終わった。さて来年のUNICORNは、どんな楽しいことをやってくれるのだろう。

文 / 平山雄一
撮影 / 三浦憲治 / チームライトサム

UNICORN 100周年ツアー“百が如く”
2019年12月4日 中野サンプラザホール

セットリスト
1.M&W
2.すばらしい日々
3.おかしな2人
4.That’s Life
5.GoodTimeバレンタイン
6.Lake Placid Blue
7.7th Ave.
8.でんでん
9.「服部」メドレー
10.BLUES
11.4EAE
12.55
13.半世紀少年
14.チラーRhythm
15.Boys & Girls
16.Feel So Moon
17.ZERO
18.HELLO

UNICORN

1986年に広島で結成。翌1987年にメジャーデビュー。1989年のアルバム「服部」でABEDONが正式加入してからは、全員が楽曲制作に携わりボーカルも取るようになる。また、担当以外の様々な楽器も使いこなすフレキシブルなスタイルで、独自の路線を突き進む。「大迷惑」「働く男」「雪が降る町」「すばらしい日々」など、名作と呼ばれつつもイマイチ売上に繋がらなかった数々の曲を残して1993年9月に解散。解散後は、バンドやソロでそれぞれが活動していたが、2009年年始に突如、再始動を発表。シングル「WAO!」で鮮烈な復活を果たし、名作アルバム「シャンブル」を発表、大成功をおさめた。その後も、アルバムリリースや全国ツアーなど、コンスタントに活動。再始動10周年。ライブでは、圧巻のステージを見せたかと思えば、独特の寸劇が始まったりするなど、個性豊かな5人の異才達からなる、日本を代表する唯一無二のロックバンドである。

オフィシャルサイト
https://www.unicorn.jp

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