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事件を紐解き浮かび上がる人間ドラマ。松下優也&青野紗穂ら出演の音楽劇「ロード・エルメロイII世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」幕開け

事件を紐解き浮かび上がる人間ドラマ。松下優也&青野紗穂ら出演の音楽劇「ロード・エルメロイII世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」幕開け

音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」の東京公演が12月19日(木)よりなかのZERO 大ホールにて開幕した。それに先駆けるかたちで、12月15日(日)に市川市文化会館 大ホールにてプレビュー公演を実施。数奇な剥離城を舞台に織りなされる魔術の世界の全貌が明らかになった。ここでは、プレビュー公演前に行われたゲネプロをもとに、音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」の魅力を紹介する。

取材・文 / 横川良明 撮影 / 増田慶


「ホワイダニット」の答えが見えたとき、観客は慟哭に震える

「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」は魔術ミステリーだ。次々と起こる不可思議な事件や騒動の真相を、ロード・エルメロイⅡ世と内弟子のグレイが解き明かし、ファンからの人気を集めてきた。

けれど、いわゆる一般的なミステリーの焦点が“犯人は誰か”ということであるならば、「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」の趣は少し違う。「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」で主眼が置かれているのは、事件の裏側にある人の業。劇中の台詞を借りるなら、「フーダニット(誰がやったか)」ではなく、「ホワイダニット(どうしてやったか)」。事件の動機を紐解くことで浮かび上がる人間ドラマこそが、「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」の魅力だ。

それは、今回の舞台でも変わらない。

音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」 エンタメステーションレポート

まず目を奪われるのが、荘厳な舞台美術。中世の古城のような剥離城アドラの内景を、柱の細かい細工まで精緻につくりこまれた舞台装置で見事に再現。天井に描き出された天使の肖像など宗教要素の強いデザインは見ているだけでうっとりする出来栄え。隅々にまでエイジングが効いており、客席に足を踏み込んだ瞬間、まるで自らも堅牢なる剥離城の門をくぐった感覚になる。

音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」 エンタメステーションレポート

繰り出される魔術の数々はマジックやイリュージョン、映像を使って巧みに表現。言ってしまえば、現代社会を生きる観客にとって、魔術は“ファンタジー”という嘘の世界だ。その嘘を3次元というリアルな空間でどれだけ違和感なく見せてくれるかで、観客の没入感は一変する。音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」は大きな嘘を遊び心溢れるギミックで舞台上に立ち上げ、最初の難関を乗り越えた。

音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」 エンタメステーションレポート

そのうえで見せてくれたのが、混沌たる人間ドラマだ。因縁の剥離城を舞台に繰り広げられる殺人事件。魔術刻印の修復師ゲリュオン・アッシュボーンの遺産をめぐる謎解きゲームは、やがてまったく違う様相をあらわにしていく。

最初は曲者だらけだと思っていた招待者たちが、次々と別の顔を見せる。そして、そのたびにバラバラに散らばっていた点と点がつながり、まるで魔法円を描くように、ひとつの物語が表出する。真実へと近づく高揚感。ピースをひとつ埋めていくたびに感じる人間の欲深さ、罪深さ。そして最後のピースをはめた瞬間、明らかになる醜く歪んだ感情とは対極の、汚れなき愛。相反するいくつもの感情が一気に押し寄せてくる後半は、まさに煮えたぎる坩堝の中にいるかのよう。「ホワイダニット(どうしてやったか)」の答えを、最後まで存分に楽しんで欲しい。

松下優也が演じるロード・エルメロイⅡ世の葛藤

そして、そんなミステリーと同時進行で紡がれるのが、ロード・エルメロイⅡ世のドラマだ。彼がただの探偵役で終わらないのは、彼自身もまた過ちを犯した過去を持つ人間だからだろう。その罪と後悔を背負い、ロード・エルメロイⅡ世は今日まで生きてきた。次々と目の前に現れる天才たちへの嫉妬。認めてもらえない悔しさ。そして、消えることない若さゆえの過ち。決して下ろすことのできない十字架が、ロード・エルメロイⅡ世という人間をより魅力的なものにしている。

音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」 エンタメステーションレポート

そんなロード・エルメロイⅡ世の不完全な魅力が爆発するのが、第2幕。松下優也がその演技力と歌唱力でロード・エルメロイⅡ世の複雑な葛藤を鮮烈に体現する。精神世界の中で交錯する劣等感と憧憬。まさにこの音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」を人間ドラマたらしめる名場面だ。きっと多くの原作ファンの胸に熱いものがこみ上げてくるだろう。

音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」 エンタメステーションレポート

灰色のフードを目深にかぶったグレイ(青野紗穂)は立ち姿がまさに観客のイメージするグレイそのもの。「拙」という一人称からか細い話し声までどれをとってもグレイらしくて、ロード・エルメロイⅡ世の後ろにぴたりとついている姿に、いとおしさがこみ上げてくる。

松下優也、青野紗穂、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト 役の玉置成実、化野菱理 役の壮 一帆と、歌えるキャストが充実していたことも、音楽劇としての満足感を一段上に引き上げる。和田俊輔のつくる楽曲はクラシカルかつメロディアスで、その旋律から剥離城アドラの世界を築き上げた。

納谷 健、伊崎龍次郎、百名ヒロキ、木戸邑弥ら若手俳優が躍動!

さらに、張りつめたミステリーの中で一服の清涼剤となっていたのが、フラット・エスカルドス(納谷 健)とスヴィン・グラシュエート(伊崎龍次郎)のふたり。ふたりがわちゃわちゃと喋っているのを聞いているだけで、ほっとひと息つきながらもなんだか楽しい気持ちに。

音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」 エンタメステーションレポート

納谷 健はアニメ版でフラット・エスカルドスのCVを務めた松岡禎丞に限りなく声色を近づけ、2.5次元俳優の真髄を発揮。だが、単なる声真似に終わらず、随所でスヴィン・グラシュエートにちょっかいをかけたり、舞台上で気ままに立ち回れるところは、彼のポテンシャルの高さがあってこそ。短パン姿もよく似合っていて、イキイキとした演技でアニメファンを舞台の世界へ引き寄せた。

伊崎龍次郎も優等生的な雰囲気を醸しつつ、グレイのことになると見境がなくなるキャラ崩壊ぶりをわかりやすく表現。「グレイたん」と暴走する様は実にコミカルで、その二面性がいいギャップを生んでいた。持ち前の日本人離れした彫刻的な顔立ちと、ウェーブのかかった金髪は相性抜群。見とれるほどに美しく、絵に描いたような金髪の美少年姿が観客を歓喜させた。

音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」 エンタメステーションレポート

また、ハイネ・イスタリ 役の百名ヒロキのジェントルな立ち居振る舞いも好印象。変わり者揃いの招待者の中でまた違う存在感を示すことで、のちのドラマに向けて、その務めを果たした。時任次郎坊清玄 役の木戸邑弥も27歳ながらすっかりベテランのような安定感。関西弁を巧みに操り、陽気で軽薄なキャラクターを嬉々と演じ上げた。いつもながら声の通りも良く、シリアスシーンも迫力の演技。10年以上にわたって様々な舞台に立ち続けるその実力の高さを改めて再確認した思いだった。

音楽劇「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」 エンタメステーションレポート

東京公演が2019年12月23日(月)までなかのZERO 大ホールにて上演され、大阪、福岡と上演したのち、2020年1月17日(金)から19日(日)まで新宿文化センター 大ホールにて再び東京公演が行われる。

音楽劇「ロード・エルメロイII世の事件簿 -case.剥離城アドラ-」

プレビュー公演:2019年12月15日(日)市川市文化会館 大ホール *公演終了
東京公演:2019年12月19日(木)~12月23日(月)なかのZERO 大ホール
大阪公演:2019年12月26日(木)~12月28日(土)サンケイホールブリーゼ
福岡公演:2020年1月11日(土)〜1月12日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール
東京凱旋公演:2020年1月17日(金)~1月19日(日)新宿文化センター 大ホール

【INTRODUCTION】
とある極東の地方都市にて行われた魔術儀式・聖杯戦争。
あらゆる願いを叶えると言われる万能の願望機・聖杯を巡って行われたその戦いを、征服王イスカンダルとともに駆け抜けた少年がいた。その名はウェイバー・ベルベット。
時を経て少年は青年となり、かつての師が冠したロード・エルメロイの名を受け継ぐこととなる。
魔術師たちの総本山・時計塔で、「ロード・エルメロイⅡ世」として教鞭を執る彼の元に舞い込む様々な事件。
現代の常識でははかり知れない、魔術の世界で引き起こされる出来事に、内弟子の「グレイ」とともに立ち向かっていく――。

原作:三田誠/TYPE-MOON
キャラクター原案:坂本みねぢ
総合演出:ウォーリー木下
脚本:斎藤栄作
演出:元吉庸泰

出演:
ロード・エルメロイⅡ世 役:松下優也
グレイ 役:青野紗穂

フラット・エスカルドス 役:納谷 健(劇団Patch)
スヴィン・グラシュエート 役:伊崎龍次郎
ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ 役:浜崎香帆(東京パフォーマンスドール)

ハイネ・イスタリ 役:百名ヒロキ
時任次郎坊清玄 役:木戸邑弥

フリューガー役:松田慎也
少年従者 役:木村風太
ロザリンド・イスタリ 役:種村梨白花・ソニア(Wキャスト)

ウェイバー・ベルベット 役:植田慎一郎

ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト 役:玉置成実
オルロック・シザームンド 役:花王おさむ

化野菱理 役:壮 一帆

主催:アニプレックス/キューブ/サンライズプロモーション東京/ノーツ

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@elmelloi_stage)

©三田誠・TYPE-MOON / LEM STAGE PROJECT