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令和元年を締めくくる美しきゲーム『十三機兵防衛圏』唯一無二のアドベンチャー

令和元年を締めくくる美しきゲーム『十三機兵防衛圏』唯一無二のアドベンチャー

『十三機兵防衛圏』はとても美しいゲームだ。ただ“グラフィックが美麗”というわけではない。画面から伝わってくる情報のひとつひとつが実に細やかで、プレイヤーがどう受け止めるかまで計算し尽くしているかのような迫力があるのだ。初めて遊ぶはずのゲームなのにこういう絵が見たかったというシーンが次々と目のまえに現れ、気がつけば物語にどっぷりと浸かっている。正直、最初の5時間くらいはまだ見ぬ美しさを求めて“意味もわからず”本作のプレイを進めた。そして途中で、断片的に描かれる物語のピースが自分の思い描き始めた枠のなかに納まりはじめるとき、“これはとてつもないゲームだ”ということに気づかされた。
今回の記事では、2019年も終わろうというこのタイミングで現れた『十三機兵防衛圏』という奇跡のゲームについて語る。最初に言っておこう。本作の“雰囲気”に少しでも心惹かれたら、絶対に遊んだほうがいい。

文 / 浅葉たいが


アドベンチャーとバトルが融合した美しい物語

本作はざっくり分けると、アドベンチャーパートとバトルパートから構成されている。序盤はアドベンチャーパートとバトルパートが交互に進んでいくので、チュートリアルも兼ねつつこれらのパートを遊ぶことになる。アドベンチャーパートでは、左右に広がる美麗な2D風グラフィックが目を引く。序文で語った本作の“美しさ”はこのパートに集約されており、シーンごとの光と影のコントラストにぐっとくるプレイヤーも多いはずだ。教室の窓から差し込む光、土手から見下ろす街の陰から広がる光、崩壊した街にぞっとするようなコントラストをもたらす夕陽。こうした情景を見ているだけで、ほかの情報が一切なくとも視覚から『十三機兵防衛圏』の世界設定が突き刺さるように飛び込んでくる。そこに登場人物となる13人の少年少女たちの語りがしっとりと乗っかっているのだからたまらない。ただ最初に述べたように、プレイ開始後からしばらくの間は本作がどのような“物語”なのかわからないまま進んでいく。

十三機兵防衛圏 エンタメステーションレビュー

▲アドベンチャーパートで描かれる放課後の教室。光と影の表現が実に美しく、まだ物語が始まったばかりの序盤であるにも関わらず、切なさや儚さといった要素さえ想像してしまう

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▲美しい背景のなかをキャラクターやオブジェクトが軽やかに動いていく。制作を務めたヴァニラウェアの表現力の真骨頂が見られる

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▲アドベンチャーパートでは、“クラウドシンク”という選択肢のようなものが発生することも。なかには物語中の小さな分岐に関わるものもあるが、基本的には“すべての可能性を見る”という方針になる

最初、どのような物語かわからないといったのは、本作があえて時系列をばらばらに描いた作品だからだ。ネタバレを避けてざっくり説明すると、物語の中心となる13人の少年少女たちは“時代を超えてきた”存在であり、世界を襲う謎の怪獣たちと戦いを繰り広げている。ある者はハイテク技術が当たり前になった未来から、ある者は戦時中のような苛烈な過去から、自分の意思もしくは大きな何かに運命を動かされる形でひとつの時代に集まってくる。ゲーム開始時点では彼らそれぞれの視点から時代別、状況別のエピソードを断片的に見ていくため“こういうことが起こっている”ということは理解できても、どのような流れのなかにそのエピソードが納められるのか想像することが難しい。そう、本作において13人の少年少女たちは皆“主人公”として選ぶことが可能であり、全員のエピソードを見終えることで『十三機兵防衛圏』の物語が美しくまとまるのだ。つまり本作におけるクリアーとは、“すべての主人公の物語を見る”ことを示す。

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▲13人の少年少女たちは全員が主人公。彼らの視点を通して、プレイヤーは本作の物語を眺めていくことになる

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▲謎の怪獣・怪物が出現し、世界は危機に瀕している。時間を超えるドラマのなかで、戦う理由なども明かされていく

最初のバトルパートはやや唐突に始まり、なぜ戦うのかは当分の間語られないが、“少年少女たちが戦わなければならないこと”はわかる。バトルパートはタワーディフェンスタイプのRTS(リアルタイムストラテジー)となっており、いろいろな方角から攻めてくる敵を少年少女たちの機兵で迎え撃つのが主な流れだ。わらわらと湧いてくる敵から、タイトルにもあるように拠点を“防衛”するのだ。主人公たちが乗る機兵にはいろいろな兵装が積まれており、一直線の長い射程を持つビームのようなもの、ある程度の範囲の敵を一気に殲滅できるロックオンミサイル、飛んでいる相手の動きを妨害するジャミングや威力の高い近接攻撃までさまざま。使い分けを意識することで、戦況を優位にできるのは言うまでもない。

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▲こちらがタワーディフェンス風のバトルパート。小型の敵は小さい粒のように表示される

上の画像を見てもらえばわかるように、本作のバトルパート画面は機兵や敵のデザインをくっきりと見せるタイプのものではなく、タワーディフェンス型の戦闘を前面に押し出したものになっている。この戦闘はバトルとして見せる方向に振りすぎていてちょっと味気なく感じるのではと思ったが、遊んでみると“敵を薙ぎ払う爽快感”がびりびりと伝わってくる。さらにはアドベンチャーパートで機兵や敵の姿をしっかりとプレイヤーに焼き付けてくるため、この画面でも不思議な没入感があるのだから驚きだ。
戦術の基礎もわからない序盤では機兵の圧倒的無双感に酔いしれることができ、ゲームに慣れてきた頃には戦術を考える面白さが出てくる。ゲーム的な歯ごたえとしては難度ノーマルでは爽快感に寄せているのか、それほど躓くところはなかった。ただ難度を上げると、敵の攻撃が一気に苛烈になる。タワーディフェンスとしてじっくり楽しみたいという方は、最大難度でプレイするといいだろう。個人的に難度以外の面でやや戸惑ったのは、ひとつひとつの機兵や敵の表示が小さいため、特定の攻撃をはねのける“バリア”を持つ敵が出てきたときは見落としが発生しやすくなること。このバリアを持つ敵を倒し損ねてしまうと一気に戦線が押し込まれてしまい、部隊がピンチになるということもあった。

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▲アドベンチャーパートで機兵の姿もしっかり描かれるため、バトルパートでもその迫力を想像しつつプレイが楽しめる

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▲広範囲を攻撃する兵装を使えば、画面上にダメージ表示が乱れ飛ぶ

物語を組み立てているかのような感覚の心地よさ

序盤のアドベンチャーパートとバトルパートが交互に発生する箇所を抜けると、追想編、崩壊編、究明編が解放される。追想編はアドベンチャーパート、崩壊編はバトルパートとなっており、究明編はTIPSなどを読めるパートになっている。この作品のユニークな部分は、この3つのパートが解放された時点から“どの主人公の物語を見るか”、“アドベンチャーとバトルどちらを遊ぶか”という選択がプレイヤーに委ねられるところだ。本作の全貌を知るためにはアドベンチャーもバトルも全てプレイすることが必要であり、すべての主人公の物語を見ることにもなるのだが、そこにプレイヤーが順序を与えることで自分で物語を作っていくような感覚になる。“とある出来事の裏で起こっていた事件を他の主人公の物語として知る”という流れも多い。物語の時系列をあえて分けた形で配置しつつも、読み進めていくうちにすんなりと物語の肝がわかってくるのは制作陣の作り込みの賜物だろう。

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▲ゲーム序盤をクリアすると、アドベンチャーとバトルのどちらを楽しむか選べるようになる

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▲シナリオにはアンロックする必要があるものも。このアンロックによってある程度物語の流れがコントロールされるため、話のつながりがわからないという事態にはならない

13人の少年少女たちはとても魅力的で、誰にスポットを当てても感情移入ができてしまう。最初に筆者は「このヒロインが可愛い」と思ったキャラクターのルートを進めることに躍起になっていたが、遊んでいるうちに全員のことが好きになってしまった。彼らが抱える思春期の悩みや過去の深いトラウマ、若者とは思えない悲壮な決意、そしてキャラクター同士の間にゆるく、しかし確実に存在している恋愛感情はコントローラーを握るプレイヤーの心を揺さぶり続ける。謎の生命体の脅威に晒され、そして機兵に乗ることそのものがリスクという未来の見えない状況でも、彼ら一人ひとりの奥底にある魂はとても美しい。

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▲一人ひとりの主人公が抱える過去やトラウマが、プレイヤーにチクリと刺さる

『十三機兵防衛圏』の素晴らしいところは、ヴァニラウェアにしか作れないものを渾身の出来栄えで出してきたことに尽きると思う。同社の作品となる『朧村正』、『オーディンスフィア』、『ドラゴンズクラウン』。僕はどれも大好きな作品で、楽しくプレイさせてもらった。僕にとってはこれらの作品はアクションゲームとしての面白さもさることながら、“記憶に焼き付くようなシーン”が用意されているのが最大の魅力だった。ゲームの記憶を思い出すときに、ヴァニラウェアの作品ほど強烈に“ワンシーン”を思い浮かべるものはほかにない。冒頭でも書いたように解像度が高いとか、そこに使われているのが最新の技術だとかいうことではなく、ヴァニラウェアの作り出す表現が美しいのだ。
『十三機兵防衛圏』でそんな唯一無二ともいえる表現力を最大限に用いて、最高に美しい作品を作り上げた。少年少女のジュブナイルと、それを照らすさまざまな光と影。このグラフィックスを作り上げられるのは世界中を探してもほかにないだろう。そして、もし『十三機兵防衛圏』が今までのヴァニラウェアの多くの作品のように横スクロールアクションだったとしたらどうだろうか。それではいささかミスマッチのように感じるのは間違いではないだろう。“地球が謎の生命体の群れにより危機にさらされている”という状況がシンプルに爽快に伝わってくるのは、やはりこのタワーディフェンスこそがふさわしいと思える。また、これは個人の好みの問題だが、本作のバトルパートが単純明快であることは非常に良かった。というのもアドベンチャーパートの合間にバトルパートが入るタイプのゲームは、さじ加減を間違えるとバトルそのものがストレスになる。早く物語を楽しみたいのに、冗長なバトルをプレイさせられるというのはあまり幸せな結果にならない。本作はこの点を思い切ったスピーディーなタワーディフェンスと読み応えのあるストーリー、どちらをプレイするかある程度選択できるシステムの導入でストレスフリーなものに仕上げている。だいぶ話を読んだしそろそろバトルをしてみるか、という気分でクリアまでプレイできたのは嬉しかった。
とにかく不思議なプレイフィールの作品で、プレイ後は「よくこんなゲームを作り出せたな」と驚愕してしまった。13人の少年少女のシナリオを過去と未来を行き交う複雑な構成のなかで成立させる。これを制作するのがどれだけ大変だったかを想像すると開発陣への敬意すら湧いてくる。驚天動地のどんでん返しに満ちたシナリオというわけではないが、物語のなかに丁寧に収められた美しいシーンが強く記憶に刻まれるのは間違いないだろう。

フォトギャラリー
十三機兵防衛圏 ロゴ

■タイトル:十三機兵防衛圏
■発売元:アトラス
■対応ハード:PlayStation®4
■ジャンル:ドラマチックアドベンチャー
■対象年齢:15歳以上
■発売日:発売中(2019年11月28日)
■価格:通常パッケージ版・ダウンロード版 8,980円+税


『十三機兵防衛圏』オフィシャルサイト 

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