es執筆陣が独断で選ぶ2019年 BEST MUSIC  vol. 4

Column

さまざまなエポックがあった2019年のベストライブ

さまざまなエポックがあった2019年のベストライブ

2019年も日本全体のライブ動員は右肩上がり。さまざまなエポックがあった。今年のオリンピックに向けて完全建て替えで復活したLINE CUBE SHIBUYA(ex.渋谷公会堂)の一方で、夏は多くの会場がライブに使えないため、これまでとは異なる“ライブ出世コース”が誕生しそうな気配がある。そんな2019年のライブシーンを振り返ってみよう。

文 / 平山雄一


『MISIA 平成武道館 LIFE IS GOING ON AND ON』
4月27日 日本武道館

元号が平成から令和に変わる直前に、MISIAは武道館3DAYSライブを敢行した。彼女にとって武道館は思い出の会場だ。初めて立ったのは、デビュー9カ月後の1998年。広いステージを完璧に把握したパフォーマンスは圧巻で、僕は武道館ライブをこれまで200回ほど見ているが、こと“初武道館”に関してはMISIAがナンバーワンだと思う。

そんな武道館に感謝を捧げるように、ビートルズなど武道館でライブを行なったアーティストの映像をふんだんに使った演出が印象的だった。またQUEENの「We Are The Champions」をカバーするなど、スペシャルな内容で心に残った。

ユニコーン100周年ツアー“百が如く”
10月5日 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール

撮影 / 三浦憲治・チームライトサム

モロモロ足して100周年というUNICORN らしいアニバーサリー・ツアーの後半初日は、前半とはセットリストを変えてさらにパワーアップ。「すばらしい日々」などのキラーチューンを連発して盛り上げる。特に30周年となるアルバム『服部』からのメドレーが秀逸で、いつものユーモアも忘れない。また『UC100V』と『UC100W』のアルバム2枚をリリースするなど、このバンドのシーンにおける存在感の大きさを改めて感じさせられた1年だった。

King Gnu Live Tour 2019 AW
11月26日 Zepp Tokyo

撮影 / 小杉歩

今年は、最も活躍したニューカマーKing Gnuから目が離せない1年だった。1月にメジャー・デビューアルバム『Sympa』をリリース。直後のKing Gnu One-Man Live Tour 2019“Sympa”の初日とファイナルを新木場STUDIO COASTで観たが、その成長ぶりは凄かった。猛スピードで勢力を拡大するバンドに追いつきたいというオーディエンスたちの期待が、開演前の怒号のような歓声に表れていた。そして秋のツアー(King Gnu Live Tour 2019 AW)ファイナルでは、それを上回る大歓声。ライブはその大歓声に見事に応えるものだった。その10日後に観た常田大希によるプロジェクト“millennium parade”(12月5日 新木場STUDIO COAST)のライブは3D映像を駆使したもので、このバンドのスケールと可能性の大きさを実感。来年も彼らの動向に注目したい。


その他、2019年のライブシーンを振り返ってみる。

まず正月気分を吹き飛ばしてくれたのは、ベテランパンクバンド“亜無亜危異”とThe Birthdayの対バン(2月5日 TSUTAYA O-EAST)だった。2020年にデビュー40周年を迎える亜無亜危異のエナジーは落ちておらず、対するThe Birthdayは超アグレッシヴなセットリストで迎え撃って、テンションの高いイベントになった。 

YMOに影響を受けたアーティストが結集したイベント“Yellow Magic Children”(3月14日 新宿文化センター大ホール)も楽しかった。高野寛がハウスバンドを率いて、野宮真貴、DAOKO+片寄明人、宮沢和史らがゲストボーカルとして出演。YMOから派生した音楽が、現在のJ-POPやJ-ROCKの礎を築いたことを確信するライブだった。なおこのライブを収めたアルバム『Yellow Magic Children #01』/YMCが年末にリリースされた。

毎年恒例の“忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー”(5月4日 日比谷野音)では、清志郎の盟友・金子マリが「恩赦」を歌った。この歌は元号の変わり目に行なわれる恩赦という不思議な制度を、改めて考えさせてくれた。さすが昭和生まれのアーティストと思わせる、問題意識とタフさを伝えてくれた。

コンサート・プロモーターHOT STUFF PROMOTIONの40周年記念イベント“Music Supreme”(6月23日 片柳アリーナ)では松任谷由実とCharが対バンを果たした。二人は40年前にリリースされた松任谷のアルバム『流線型’80』の名曲「Corvett 1954」をデュエットし、さらにはCharがギターソロを弾く。単なる“記念”ではなく、楽曲をアップデートしようという強い意志が感じられて、名演となった。

超ベテランシンガー倍賞千恵子の“バースデイコンサート2019 with 小六禮次郎”(7月6日 サントリーホール)は、歌の表現の本質を問うものだった。女優としてのセリフ回しの上手さに加えて、歌の正確さ、特に人生経験の豊かさがいかに歌に影響するか。「愛の讃歌」は、抜群の説得力でオーディエンスを魅了していた。

HOT STUFF PROMOTION40周年記念イベントのひとつ“HEADZ-Beggars Banquet-”(7月13日 Zepp TOKYO)では、SuchmosとCKBの“横浜対バン”が実現。東京とは異なる音楽文化を持つ横浜のこだわりが炸裂。キーワードはファンキーなダンス・ミュージックで、2大巨頭がオーディエンスの“腰”を集中的に攻めていたのが面白かった。

夏の盛りはFUJI ROCK FESTIVAL’19(7月26日 苗場スキー場)に参戦。FIELD OF HEAVENで観た韓国のダブバンド“NST & THE SOUL SAUCE MEETS KIM YULHEE”には驚かされた。パンソリの名手KIM YULHEEはチマチョゴリを着て、日本語をひと言も発さずにひたすら歌いまくる。ヘビーなビートと民俗歌謡が絡んで、唯一無二の世界観を現出させていた。その後にRED MARQUEEで見たORIGINAL LOVEも凄かった。スウィートな「接吻」を期待していたオーディエンスを裏切って、爆音で勝負する。オルタナ・ロックのヒーローとして、この日の話題をさらって行った。

シアトリアルなライブにチャレンジした藤井フミヤのツアー“十音楽団”(8月25日 サントリーホール)は興味深かった。自ら構成したというストーリー性のあるライブが新鮮だった。本当に多彩なボーカリストだ。

同じく80年代前半デビューの吉川晃司35周年記念ツアーのファイナル(9月8日 幕張メッセ国際展示場4~6ホール)もエネルギッシュだった。台風の迫る中、「にくまれそうなNEWフェイス」などシングルヒットを立て続けに歌って、現在の音楽活動の充実を伝えていた。

カルチャーイベント“カーニバル00 in 高知”(11月3日 西敷地広場)で観た切腹ピストルズは強烈だった。太鼓や笛や三味線など、お囃子楽器を奏でながら練り歩くスタイルは、日本のお祭りミュージックの猥雑なパワーを見事に体現して、観客を熱狂に巻き込んでいた。

この原稿を書いている時点ではカーリングシトーンズのツアー初日(12月23日 国際フォーラムA)はまだ行なわれていないが、きっと素晴らしいライブになるに違いない。

2020年もライブ行脚を続けるつもり。どんなライブに出会えるか、今から楽しみでならない。

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