es執筆陣が独断で選ぶ2019年 BEST MUSIC  vol. 3

Column

2019年に30周年を迎えたアーティストTOP3

2019年に30周年を迎えたアーティストTOP3

元号が「平成」から「令和」に変わった2019年、30周年を迎えたアーティストたちは、言うならば「平成」をサヴァイヴしたことになる。60年以上続いた「昭和」と比べることはできないが、聴取方法がレコードやカセットからCDへ、さらにはデータからストリーミングへと変化した「平成」の音楽シーンもまた激動の時代であった。そんな目まぐるしく移り変わる音楽の世界で、いまもバリバリ現役で活躍を続けている脂の乗りきった30周年組の3組を取りあげてみたい。

文 / 佐野郷子


東京スカパラダイスオーケストラ

東京スカパラダイスオーケストラがインディーズのファイルレコードからアナログ盤『東京スカパラダイスオーケストラ』でデビューしたのは1989年11月。1985年にASA-CHANGを中心に結成されたスカパラは、デビュー前から東京のクラブシーンではすでに噂のバンドだった。翌1990年にはメジャー・デビューを果たし、1stアルバム『スカパラ登場』はオリコン初登場10位をマーク。30周年アニバーサリーの2019年、日本国内のみならず世界に配信された初期の音源を聴くと、ジャマイカ生まれのスカを“トーキョースカ”として独自のセンスで昇華した洒脱な音楽性はいまなお新鮮で躍動感に溢れていることが分かる。その頃のライブは常に会場が揺れるほどの興奮の坩堝と化していたが、インストバンドながら30年前にあれほど支持を集めたのは、当時の若いリスナーがいかに熱心に新しい音楽の刺激を求めていたかを物語っている。

同じ年にデビューしたフリッパーズ・ギターやこの年に結成された電気グルーヴそうだったが、従来の邦楽ロック/ポップとは一線を画し、新たな音楽を目指すバンドやアーティストが、アンダーグラウンドで熟成され、表舞台に出て来たのが1990年前後だった。後に「渋谷系」と呼ばれるようになるムーブメントは、こうして着実に浸透していったのだ。以降も幾度かメンバーチェンジを重ねながら、精力的なライブとリリースを継続。奥田民生、チバユウスケ、甲本ヒロト、宮本浩次、桜井和寿らをゲストボーカリストに迎えた話題曲を発表する一方で、世界を股にかけた活躍を見せているのは頼もしい限りだ。

アルバム『東京スカパラダイスオーケストラ』

真心ブラザーズ

そのスカパラも参加した30周年アニヴァーサリー・アルバム『トランタン』を発表した真心ブラザーズは、1989年に9月にシングル「うみ」でデビューした。大学在学中に音楽サークルの先輩=YO-KINGと後輩=桜井秀俊の二人は、テレビのバラエティ番組の「勝抜きフォーク合戦」に出場。10週連続で勝ち抜いたことをきっかけにデビューのチャンスを掴んだ。同時期には、アマチュアのバンドコンテスト番組『三宅裕司のいかすバンド天国』こと「イカ天」が放映され、多くのバンドがこぞってデビューしたが、90年代に入るとバンドバブルは終焉。そんな移ろいやすい空気の中、真心ブラザーズは当初のフォーク・スタイルからポップ/ロックに舵を切り、おおいなる躍進を続けた。

最初は大学生のほんのお遊びで始まった活動だったかもしれないが、「サマー・ヌード」、「拝啓、ジョン・レノン」など数々の名曲を送り出し、実力と実績を積み上げながら30年歩んできた。飄々と見えて(見せて?)、時には辛辣に、時には極上のソウル・ミュージックを奏でながら、誰にも真似のできない音楽と歌を届けることを身上にして。一時の活動休止を挟んでの30周年ではあるが、ふざけているのか本気なのか掴みきれなかったデビュー当初の彼らを思い出すと、ファン投票によって選ばれた曲をセルフ・カバーしたアルバム『トランタン』の時代に押し流されない真心の曲の強さをあらためて感じる。

アルバム『トランタン』

RHYMESTER

2019年11月27日に、“岡村靖幸さらにライムスター”として「マクガフィン」を配信リリースしたRHYMESTERも結成30周年を迎えた。早稲田大学の音楽系サークル「GALAXY」で出会った宇多丸とMummy-DがRHYMESTERを結成した1989年は、日本語のラップ/ヒップホップ・カルチャーはまだ黎明期。かつて日本語のロックがそうであったように、日本語でラップをする方法や曲作りは、その道を志す者が自ら手探りで切り開いてゆくしかなかった。

1993年に『俺に言わせりゃ』でスカパラと同じくファイルレコードからデビュー。当初はなかなか注目されず試行錯誤を重ねたが、1998年に発表した「B-BOYイズム」の核心を突いたリリックで熱い支持を獲得。2001年のメジャー・デビュー以降は着実にアルバムをリリースし、人気・実力共に不動の地位を築く。また、忌野清志郎、ゴスペラーズ、KIRINJI、Base Ball Bearなどフィーチャリング参加も多く、ジャンルを横断した客演でも大活躍。椎名林檎トリビュート・アルバムの「本能」も話題を呼んだ。2015年から主宰している野外音楽フェスティバル『人間交差点』も、彼らの柔軟な姿勢と幅広い人脈に寄るところが大きい。

精力的なライブ活動によって、「キング・オブ・ステージ」を名乗る彼らは、現在、長期に及ぶ47都道府県ツアー中だが、ラジオパーソナリティ、役者など多彩な活動を続けながら、日本のヒップホップ・シーンを牽引してきた。フリースタイルラップがブームとなり、普通の中高生たちもラップを始めるようになったいま、RHYMESTERは信頼に足るパイセン以上の役割を担っている。

シングル「マクガフィン」/岡村靖幸さらにライムスター

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