es執筆陣が独断で選ぶ2019年 BEST MUSIC  vol. 1

Column

2019年、死ぬほど聴いた個人的至極のポップス3+1曲

2019年、死ぬほど聴いた個人的至極のポップス3+1曲

プレイリストの一部を紹介するようなものです。2019年に発表された楽曲の中で聴いた回数がダントツに多い3曲。共通しているのは、新鋭からベテランアーティストまでの“極上のポップス”だということ。

文 / 田中久勝


「惑星」/Omoinotake

島根県松江市出身の藤井レオ(Key,Vo)、福島智朗(Ba,Cho)、冨田洋之進(Dr)の3ピースバンド。2018年に発表した 2ndミニアルバム『Street Light』を聴いて、心をわしづかみにされ、今年初めて観たライヴで完全に心を打ち抜かれた。ブラックミュージックをベースに様々な音楽が、抜群のセンスで昇華され、メロディは一度聴くと忘れられない親近感があって、それを藤井のボーカルが強く、繊細に聴き手に届けてくれる。せつなくてノレる。そしてライヴが素晴らしい。彼らは渋谷でストリートでライヴを重ね、それが評判となり広がっていった。当然、道行く人たちに“届ける”ために、メロディ、ひとつひとつのフレーズの音は磨き上げられ、とにかく“強い”。冨田と福島の強力リズム隊と、藤井のキーボード、そしてボーカルが相まって、極上のグルーヴが生まれる。そこにサポートのサックス、パーカッションが加わると、なんとも多幸感あふれる時間と空間を作ってくれる。そんな彼らの初の配信シングル「惑星」(7月31日リリース)は一体何回聴いたことだろう。今年前半は彼らのこれも名曲、「Stand Alone」ばかり聴いていたが、「惑星」がその回数を超えた。ドラマティックな構成の楽曲だけど、人懐っこいメロディと、人肌感を感じさせてくれるグッとくる歌詞、藤井のファルセットが、聴き手にそっと寄り添ってくれるような世界観を作り上げている。この後に配信リリースした「Blanco」も◎。2020年、大きな躍進を確信させてくれるバンドだ。

「killer tune kills me(feat. YonYon)」/KIRINJI 

2018年メジャーデビュー20周年を迎えたKIRINJI。2019年第一弾シングル「killer tune kills me(feat. YonYon)」も、病みつきになる一曲だ。2018年に発表したアルバム『愛をあるだけ、すべて』で見せた、R&B、ヒップホップなどのクラブミュージックへのアプローチを感じさせてくれる。打ち込みと生音がボーダレスになっているサウンドは、心地いいリズムと重厚感あるベースとが相まって中毒性が高く、KIRINJIの音楽は更に進化していると感じさせてくれる。シングル曲としては初メインボーカルとなる弓木英梨乃の、どこか気だるくキュートな薫りを醸し出すボーカルが、終わってしまった恋を「音楽=キラーチューン」に例えた女性の切ない心情の歌詞を、さらに切なく伝えてくれる。そしてソウル生まれ・東京育ちの DJ/シンガー・ソングライターYonYonの、韓国語のラップと日本語の歌が、サウンドと弓木の声との相性が素晴らしく、何度も聴きたくなる抜群の肌触り。極上のポップスに仕上がっている。これまでKIRINJIのコラボというと、RHYMESTERや、いつか(Charisma.com)を始め、音楽性が違うアーティストとの化学反応を楽しみながら、独自の最新型のポップスを作り上げている。

「私はピアノ」/田中裕梨(『CITY LIGHTS  2nd Season』より)

全くタイプが違うが、卓越したテクニックとボーカルパワー、表現力を兼ね備えた、とにかく“歌える”女性ボーカルとして個人的に敬愛しているのが、畠山美由紀とaiko、そして田中裕梨だ。田中はBLU-SWINGのボーカリストで、ソロとして70〜80年代のJ-POPの名曲の数々のカバーした『CITY LIGHTS』を2016年に発表しているが、そのシリーズ第2弾、『CITY LIGHTS  2nd Season』を今年1月23日に発売。このシリーズは選曲の妙に唸らされるが、今回も「プラスティック・ラブ」(竹内まりや)、「スカイレストラン」(ハイファイセット)、「東京ららばい」(中原理恵)他、誰もが知る名曲、知る人ぞ知る名曲が10曲。その中でもオリジナルはサザンオールスターズで、高田みずえがカバーし、大ヒットした「私はピアノ」は、特に田中の透明感と色気を感じさせてくれる声が際立っていたように感じる。桑田佳祐が作る、情緒を感じさせてくれるメロディと、田中の声質がベストマッチ。高田みずえバージョンよりも、原由子がボーカルをとっているサザンのオリジナルバージョンの質感。アレンジもオリジナルに近く、ひとつひとつの歌詞を大切に伝えようとする田中の、この曲をリスペクトする気持ちも伝わってきて、まさに名演だと思う。改めて曲の良さ、田中のシンガーとしての素晴らしさに感動。

<+1>「Night Distance」/I love you Orchestra Swing Style & mahina

インストバンドI love you Orchestraから派生した“ilyoss”ことI love you Orchestra Swing Styleが、初めてのボーカル曲として女性シンガーmahinaをフィーチャーした「Night Distance」も、ハマった一曲。Mahinaの、ややスモーキーで、心地いい“揺らぎ”感じさせてくれる低めのボーカルは、曲のひと言目、一音目から聴き手をその世界に引き込む力がある。その歌と、鳥肌モノの演奏が交錯し、メロウで切なくて、クールで甘い雰囲気を作りあげている。ギターが歌に寄り添い、時に引っ張り、曲の空間を上品な質感に仕立てている。一つひとつの楽器が歌を引き立てながらも、しっかり自己主張していて、でも抜群のバランスで絡み、繰り返し聴きたくなる。MUSIC VIDEOも◎。

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