LIVE SHUTTLE  vol. 385

Report

Nulbarich 音楽の力でオーディエンスと繋がるスタンス。Nulbarichらしいライブという空間を紐解く。

Nulbarich 音楽の力でオーディエンスと繋がるスタンス。Nulbarichらしいライブという空間を紐解く。

『Nulbarich ONE MAN LIVE -A STORY-』
2019年12月1日 さいたまスーパーアリーナ

Nulbarichが12月1日(日)に初となるさいたまスーパーアリーナでのワンマン・ライブ『Nulbarich ONE MAN LIVE -A STORY-』を開催した。ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン進出を目標に掲げ、2016年の始動から着実に成長を遂げてきた彼らは、2018年11月に行った武道館公演の経験をサードアルバム『Blank Envelope』に投影した後、さいたまスーパーアリーナに向けてバンドをビルドアップ。さらに、11月リリースの最新ミニアルバム『2ND GALAXY』では大会場を想定した壮大なスケールの楽曲を制作。作品とライブの密接な相関関係は、スタジオワークに根ざしたプロジェクトとして始まったNulbarichにとって、次第になくてはならない原動力になっていった。

Nulbarich エンタメステーションライブレポート

バンドにとって過去最大規模の15,000人のオーディエンスを前に、果たして彼らはどんな進化を遂げるのか。暗転したステージにシルエットとして映し出されたのは、2人のドラマーを含む7人のバンドメンバーたち。オープニングナンバーは新作から新機軸となるエレクトロポップ色を打ち出した「Rock Me Now」だ。照明のモダンな演出のもと、演奏に徹する彼らはツインドラムの編成が生み出す厚く揺るぎない低音にオーディエンスを乗せ、広大な音楽の宇宙へと誘う。そして、映画の世界に没入するように、起伏に富んだ楽曲のストーリー性を楽しませてくれた前半を経て、ステージが明転した5曲目の「ain’t on the map yet」ではフロントマンのJQが花道を歩きながら会場と気持ちを通わせ合い、ライブは大きく動き始めた。

「Nulbarichで曲を作る感じをお見せしたい」というJQのMCを呼び水に始まった7曲目は“ご褒美タイム”と称するセッションタイム。JQがサンプラーを叩いてループさせたボーカル/サウンドフレーズをベースに、JQ以外の6人を2つに分け、ステージ向かって左のギター/ベース/ドラム・チームがアグレッシヴなロック的な演奏、右のギター/キーボード/ドラム・チームがジャジーなヒップホップ的な演奏をそれぞれ重ねた後、その2つを魔法のように1曲に昇華。JQの投げかけたアイデアに、それぞれのメンバーが呼応することによって、ジャンルを自在に横断する楽曲を生み出すNulbarichの秘密の一端が気前よく明かされた。

Nulbarich エンタメステーションライブレポート Nulbarich エンタメステーションライブレポート

そして、会場から大歓声が上がった代表曲「NEW ERA」をはじめとする中盤は、ヒップホップソウル、ダンスミュージック色が色濃いセクション。洗練されたキャッチーなメロディと心地良いグルーヴが一体となったソングライティングとアレンジメントはNulbarichの最大の魅力だ。新作から演奏された「Kiss Me」では、オーディエンスの振る手が波のようにうねった。さらに「Kiss You Back」から「Ordinary」、「Follow Me」という大会場に映えるダンスナンバーを経て、再び新作から新機軸の「Look Up」。瞬くミラーボールと共に高まっていくゴスペルのあたたかいフィーリングがオーディエンスを一つにまとめ上げると、JQは「みんな、ここまで連れてきてくれてありがとう。やってみるもんです。証明してますよ。夢は語るべきです。だが、まだ終わっちゃいない。僕たちが購入したこの片道切符がどこにつながっているのか分かりませんが、この列車が止まるまで見ていたいでしょ?」と客席に語りかけた。

その言葉に導かれ、2019年に発表した2作『Black Envelope』、『2ND GALAXY』からの楽曲で固められた後半に突入。メランコリックなメロディが広がる「Almost There」からアコースティックギターをフィーチャーしたロックアンセム「Silent Wonderland」、地球の映像とLEDリストバンドの光に彩られた壮大なバラード「Lost Game」という大きな流れのなかで感情のピークに到達すると、「Get Ready」からそのままなだれ込むようにアッパーなダンストラックが次から次に披露された。爽快さが際立った「Twilight」から曲中でメンバーがソロを披露しながらボルテージを上げていく「Super Sonic」、そして、オーディエンスのシンガロングとハンドクラップが巻き起こった「Stop Us Dreaming」でNulbarichにとって大きな節目となる大切な夜は大団円を迎えた。

Nulbarich エンタメステーションライブレポート

この夜、強く印象に残ったのは、歌ったり踊ったり、はたまたじっくり聴き込んだり、その演奏を自由に楽しめるステージと客席のほどよい距離感、関係性だ。ライブというのは、会場が大きくなればなるほど、客席を惹きつけようとするあまり、音楽に付随する音楽以外のエンタテインメント要素の比重が高くなってしまいがちだが、JQは強引に客席を扇動することがなかったし、MCで無理矢理そのキャラクターを前面に押し出して音楽の熱を冷ましてしまうこともなく、あくまで音楽の力だけでオーディエンスと繋がろうという意図が強く感じられた。そのスタンスは、特定のバンドの形態にこだわらず、最高の音楽を届けることを第一に考えているNulbarichの音楽至上主義的発想そのものであって、作品とライブ、その規模に左右されることのない活動の軸、その絶対的な信頼感がバンドとリスナーを分かちがたく結びつけているのだろう。そして、JQがステージ上で深めた音楽やリスナーに対する確信が次の作品に反映され、Nulbarichをさらなる飛躍へと導くはずだ。

文 / 小野田雄
撮影 / 岸田哲平、本田裕二

『Nulbarich ONE MAN LIVE -A STORY-』
2019年12月1日 さいたまスーパーアリーナ

セットリスト
1.Rock Me Now
2.Zero Gravity
3.Focus On Me
4.Lipstick
5.ain’t on the map yet
6.It’s Who We Are
7.SESSION
8.NEW ERA
9.Kiss Me
10.Sweet and Sour
11.Kiss You Back
12.Ordinary
13.Follow Me
14.Look Up
15.Almost There
16.Silent Wonderland
17.Lost Game
18.Get Ready
19.VOICE
20.Twilight
21.Super Sonic
22.Stop Us Dreaming

Nulbarich

シンガー・ソングライターのJQ (Vo.) がトータルプロデュースするNulbarich。2016年10月、1st ALBUM『Guess Who?』リリース。その後わずか2年で武道館ライブを達成。即ソールドアウト。日本はもとより中国、韓国、台湾など国内外のフェスは既に50ステージを超えた。生演奏、またそれらをサンプリングし組み上げるという、ビートメーカー出身のJQらしいスタイルから生まれるグルーヴィーな音は、バイリンガルなボーカルと溶け合い、エモーショナルでポップなオリジナルサウンドへと昇華する。「Null(何もない)」けど「Rich(満たされている)」。バンド名にも、そんなアンビバレントなスタイルへのJQの想いが込められている。

オフィシャルサイト
http://nulbarich.com

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