サザンオールスターズと昭和・平成・令和元年  vol. 17

Column

10周年のメンバー再結集を叶え、総てのファンへと響き渡った「みんなのうた」

10周年のメンバー再結集を叶え、総てのファンへと響き渡った「みんなのうた」

2018年にデビュー40周年を迎えたサザンオールスターズのバンド・ヒストリーを、彼らが生み出した数々の作品から改めて見つめていく。音楽評論家・小貫信昭が独自に紐解く、サザンオールスターズの魅力──。


『KAMAKURA』(85年9月)というアルバムには、2枚組という物量ゆえに滲み出た彼らのミュージシャンとしての本音が響いた。このアルバムは、同時代を生きる他のアーティストからも一目置かれるものになる。前回も触れたが、アルバム完成直後に会った桑田の表情には、すべて出し切った充実感が滲み出ていた。

なお、1985年のことでもうひとつ書いておきたい。彼らがこの年の秋、パリで活躍していたセネガル出身のグループ、トゥレ・クンダと共演したことである。アフリカのグループとツアーした日本の人気バンドというのは、サザンオールスターズが最初で最後だったかもしれない。

ところで『KAMAKURA』以降、彼らは何をしたのだろう? それぞれが、自分を見つめる“旅”に出た。関口和之は『砂金』(86年2月)をリリース。多才な彼だけに、エッセイなど含むボックス仕様だった。野沢秀行はJ.E.Fを始動させ(4月)、洋楽へのマニアックな愛情、さらに、楽曲に対する独自の解釈が光った。

桑田と松田はKUWATA BANDとして、みなさんお馴染みの大活躍を果たす。英語詞による充実のアルバム(7月)と、大々的なツアー。シングルも大ヒット連発で、シーンを席巻する。原由子も、産休期間を経て、再びミュージシャンとしての活動を始めるのだ。

次にサザンオールスタ−ズが姿を現わしたのは、1988年になってからである。思えばバンドは10周年の区切りを迎えていた。実はこの年の7月。桑田は初のソロ・アルバム『Keisuke Kuwata』をリリースする。その2週間ほど前に出たのが、バンドの3年ぶりのシングル「みんなのうた」だ。

その際、桑田のソロに参加したキーボードの小林武史が、バンドとともに編曲を担当している。彼はその後もスタジオの作業やライブにおいて、サザンオールスターズをサポートしていくこととなる。

当時、桑田は久々のシングルを制作するにあたり、まずタイトルを思い浮かべたという。「再び(メンバー)みんなが集まってきたんだぞ、これは“みんなのうた”なんだぞ」ということを、ハッキリ示しておきたかったのである。また、『KAMAKURA』が曲ごとにバンド・アンサンブルを煮詰めていくスタイルだったのとは対照的に、今回は「メンバーひとりひとりの運動量が見える」感じを目指したという(発言はともに、雑誌『FMステーション』1988年No.14での取材より)。

いったいそれは、どんな作品だったのか。まず、テンポは早く感じた。情緒というより明快さで勝負するものに思えた。でも、明快だけど、飽きがこないものでもあった。テンポに関しては、実際のRPM的な数値がどうの、というのもあるが、この曲が♪ンチャッンチャッというスカ・ビートに聞こえたこともあった。ただ、このビートは律儀にやり過ぎると、前傾姿勢になり過ぎてせわしなさだけ聴き手に与えることにもなりかねない。

しかしこの作品は、普通のエイトのロックの推進力も併せ持つ演奏になっていて、さらにサビのところなど、初めて聞いたヒトも大まかな歌詞さえ分かれば一緒に歌える譜割りの明快さを有していた。まさにタイトル通り、これは生まれるべくして生まれた“みんな”の歌だった。

この歌が素直で明快な印象なのは、楽曲のキーに拠るところもある。Cのメジャー・キーだ。これまでのサザンオールスターズのアップ・テンポの楽曲といえば「勝手にシンドバッド」や「ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)」などあったが、それらは元気にはっちゃける中、哀愁も備えていた。それらと較べて「みんなのうた」は、“言わば僕たち、再始動にあたって隠し事はございません”みたいな正々堂々たる印象をファンに与えたのである。その意味でも、このタイミングに適したものだったと言えるのだ。

でもこの作品は、素直で明快なだけじゃなく、聞き飽きないものだった。特に[この胸に]から[抱いてた]、[ひそやかな]、[悲しみさえ]へと到る、自分は自分のままだけど、そこにある内なる感情がもりもり育っていくかのような独特の聴き心地は、まさに最高だった。

改めて、この曲がリリースされた日付を記しておく。1988年6月25日である。彼らは「みんなのうた」で、“おーい、サザンは再び動き始めたぞー”と、僕らに向かって手を振った。しかしそれは、過去の実績で踏み固められた場所からではなく、新たな場所からだった。

文 / 小貫信昭

SINGLE「みんなのうた」
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