山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 74

Column

2019年、響いてきたものたち

2019年、響いてきたものたち

バンド結成40年という節目の年、これまで以上に“バンド”を意識して全力疾走してきたHEATWAVE山口洋から今年最後のメッセージ。
“Blink”ツアーファイナル、日本橋三井ホールも目前。
日々の生活の中に、自身の中に、過去と未来の一瞬を繋いで響き続ける音楽、映画たちは、22日のステージにも光の粒となって降り注ぐだろう。


編集部からのリクエスト、「2019年、僕に響いてきたものたち」。

今年はどんな一年でしたか?僕はバンドを結成して40年目だったこともあり、ひたすら走り続けた一年でした。音楽に没入できることに、月並みですが、感謝の気持ちしか湧いてきません。そんな日々に響いていたものを紹介します。

1.Keith Jarrett / The Melody At Night, With You (アナログ)

元からこのアルバムがとても好きでした。リビングのCDプレイヤーの脇にいつも置いてあります。でも、アナログで聞くことができたら、もっと素晴らしいに違いないのに、といつも思っていました。きっと僕のような人間が世界中にいたんでしょう。今年になってECMレーベルが突然アナログ化。

想像を超える素晴らしさ。このアルバムに針を落とすと部屋の空気が変わります。風が吹いてくるようで、空気の雫が見えてきて、そこには自分の心象が映しだされるのです。

自分を取り戻すための1枚。

2.Paul Simon / Still Crazy After All These Years(アナログ)

ずいぶん前にCDで聞いていたのです。

でも今年になってMさんにアナログ盤をプレゼントされ、聞いて悶絶。こんなに素晴らしいアルバムだったのか、と。曲も歌唱もアレンジも素晴らしいけれど、ミュージシャンたちの演奏がまた素晴らしい。スティーヴ・ガットのドラムだけで、アイリッシュ・ウイスキーを3杯は飲めます。

芳醇って言葉はこのアルバムのために。ぜひ、アナログで聞いてみてください。

余談ですが、ジャケットのポール・サイモンのいでたちがひどすぎて、1回転して好きです。このスボンとベルトは……。うーん。

3.Marvin Gaye / Greatest Hits 24 (アナログ)

旅の途中、確か四国で。信じられないくらい安価で売られていたので、僕が救出しました。

しかし、中身がマーヴィン・ゲイであることに代わりはなく。日曜日の朝に針を落とすと、1日が絶妙にグルーヴし始めます。気がつくと、いつも一人で踊っているのです。そんな朝ってよくないですか?

リズムだけでコーヒー5杯は飲めます。

善きことのために1日をスタートさせるための1枚。

4.The Replacements / Dead Man’s Pop(アナログ&CD)

80年代の最後にリリースされた名盤「Don’t Tell A Soul」はメンバーの意思に反し、レコード会社が勝手にエンジニアを変え、ミックスし直してリリースしたもの。30年の時を経て、今年。ようやくメンバーが望むミックスがマット・ウォレスの手に委ねられて、リリースされました。

ザ・リプレイスメンツという僕が愛したバンドの真骨頂。当然こちらの方が、混沌も含め表現されています。

ザ・リプレイスメンツ。気になった人はアルバム「All Shook Down」から聞いてみることをお勧めします。

ロックンロール!

5.リッキー・リー・ジョーンズ@NHKホール(大阪)

ギタリストとドラマー、そしてリッキー。たった3人で行われたコンサートは今年のベスト・ライヴでした。

スカスカな音で足りないものをオーディエンスに想像させる。引き算の音楽は僕が目指していた地平とほぼ同じだったからです。

誰かのライヴに行って、がっかりすることもあるけれど、忘れられない瞬間に出会うこともある。だから、面倒がらずに直感に訴えかけるものには会いに行こうと思うのです。

2019年のWe Belong Together / リッキー・リー・ジョーンズ

2019年のWe Belong Together / リッキー・リー・ジョーンズ

2019.06.08

6.Ian Smith / Last Call

第二の故郷、アイルランド・ドニゴール在住の友人、イアン・スミスから送られてきたアルバム。

いつも車に載っています。

疲れたときに聞くと、あのドニゴールの風景が目の前に拡がります。荒涼、荒漠。なにもないけれど、なにもかもがある。

あの風景をこころが求めている人におすすめします。

7.ニュー・シネマ・パラダイス

居間に100インチのスクリーンがあって、ときどきこの映画を見ます。

何度見ても、こころの深いところから洗われるような気持ちになるのはどうしてだろう?

そして見るたびに印象が変わるのはどうしてだろう?

あまりにベタだと言われても、墓場に1本と言われたら、ショーン・ペンの「インディアン・ランナー」を抜いて、この映画を選びます。

今の自分がどうしてここに立っていられるのか。憧れたこと。愛したこと。手渡されたもの。これから手渡していくもの。

忘れたくないのです。

8.The Rolling Stones / Some Girls

HEATWAVEの40周年アルバム『Blink』を制作する上で、常に念頭に置いていたのはこのアルバムでした。

高校時代からいったい何回聞いたのかわからないけれど、簡潔で、小気味よくて、タイトで、グルーヴィーで格好良くて、深刻じゃない。そこが好きです。

46分テープのカセットに収まる長さ。それも重要なポイントでした。

9.NEW ACOUSTIC CAMP

ほんとうに最高のフェス(キャンプ)でした。自然に自分から音楽が湧き出てくる感じ。詳細は原稿を読んでください。

New Acoustic Camp 2019 / より善きことのために

New Acoustic Camp 2019 / より善きことのために

2019.09.28

来年が素晴らしい年になりますように。

感謝を込めて。


Keith Jarrett『The Melody At Night, With You』(輸入盤)

慢性疲労症候群という難病のため、しばらく活動を休止していたキース・ジャレットが1998年12月に自宅のスタジオで録音し、完全復活を遂げた作品。6曲目のメドレーの後半に自作を配している以外はすべてスタンダード&トラッドのラヴソングで、長年の闘病を支えた妻、ローズ・アン・ジャレットに捧げたと言われている。シンプルにメロディの美しさを伝えることに心血を注いでいるかのようなピアノの音色には敬虔ささえ漂う。

ポール・サイモン『時の流れに』
Paul Simon / Still Crazy After All These Years

SICP-5275 ¥1,000+税 ソニー・ミュージックより発売中

スティーヴ・ガッド(ds)、マイケル・ブレッカー(ts)、ボブ・ジェイムス(key)、リチャード・ティー(p)らジャズ・ミュージシャンを多数起用し、フィル・ラモーンが共同プロデュースした5枚目のソロ・アルバム。「昔の恋人に偶然出逢い……」と歌う表題曲は、映画にインスパイアされ書かれたもの。サイモン&ガーファンクルを解散してから久しぶりにアート・ガーファンクルとデュエットした「マイ・リトル・タウン」や「恋人と別れる50の方法」など珠玉の名曲を収録。全米アルバム・チャート1位。翌年のグラミー賞で「アルバム・オブ・ザ・イヤー」など2部門を獲得した(1975年作品)。

MARVIN GAYE 『GREATEST HITS 24』

「INNER CITY BLUES」、「MERCY MERCY ME」、「WHAT’S GOING ON」、「I WANT YOU」等の名曲からサウンドトラック「TROUBLE MAN」までニュー・ソウルの黄金期をたっぷりと収録したベスト盤。見開きジャケット、2枚組。1976年作品。

The Replacements 『DEAD MAN’S POP』(輸入盤)

1979年結成の元祖オルタナティヴ・バンド、ザ・リプレイスメンツの通算6作目『DON’T TELL A SOUL』(1989年作品)が30年の時を経て制作時に目指していた「音像」を取り戻した。マット・ウォレスがプロデュース、その後クリス・ロード・アルジの手に委ねられて最終ミックスされたサウンドに当時彼ら自身は満足しておらず、今回、1988年当初のオリジナル・ミックスに基づいて新たに制作(CD1とアナログレコードに収録)。トム・ウェイツとのセッションを含む未発表/レア音源を収録した『We Know The Night: Rare & Unreleased』(CD2)、1989年6月2日ウィスコンシン大学ミルウォーキー校で行われたコンサートの未発表ライヴ音源を収録した『The Complete Inconcerated Live』(CD3〜4)に加え、初出写真やアルバムの詳細な解説などを掲載した本も付属されたボックス・セット(4CD+1LP)。

『ニュー・シネマ・パラダイス』(伊: Nuovo Cinema Paradiso)

1988年に公開されたジュゼッペ・トルナトーレ監督によるイタリア映画。中年を迎えた映画監督が、映画に魅せられた少年時代の出来事と青年時代の恋愛を回想する物語で、かけがえのない思い出、感傷と郷愁、映画への愛情が瑞々しい感性で描かれる。エンニオ・モリコーネの音楽と相まって日本でも銀座の映画館に長蛇の列ができる大ヒットとなった。

ザ・ローリング・ストーンズ『女たち』 
THE ROLLING STONES/SOME GIRLS

SHM-CD UICY-20196 ¥2,305(税込)ユニバーサル・ミュージックより発売中

ローリング・ストーンズ・レーベルからのスタジオ第6弾。パンク・ムーヴメントに呼応した性急なロック・ナンバーを数多く含みつつ、ディスコ・ビートを大胆に取り入れた大ヒット曲「ミス・ユー」や傑作バラード「ビースト・オブ・バーデン」を収録し、その懐の深さを見せつけた。1978年リリース(全英2位。全米1位)。2009年リマスタリング、2011年再リリース。アルバムの収録曲はすべて、後にライヴで演奏されている(他には『スティッキー・フィンガーズ』と『ブラック・アンド・ブルー』だけ)。

Photo by Mariko Miura

著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。90年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』に収録された「満月の夕」は阪神・淡路大震災後に作られた楽曲で、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。“ミュージシャンズ・ミュージシャン”としてその名を挙げるアーティストも多く、近年は野外フェスやR&Rイベントへの出演も多い。バンド結成40周年となる今年12月、スタジオ・アルバムとしては2年ぶりとなる新作『Blink』をリリース。11月10日高松オリーブホールからスタートした全国ツアーも盛況のうちにファイナルの12月22日東京 日本橋三井ホールを残すのみとなった。2020年1月28日浜松 窓枠を皮切りに古市コータロー(コレクターズ)とのユニット“50/50”によるfirst tour 2020『俺たちの場所』をスタートするのに加え、2月16日青森県弘前市 Robbin’s Nest (ロビンズネスト)から山口洋 (HEATWAVE) solo tour『Blink 40』の開催が決定した。2月8日には佐野元春の名盤『Café Bohemia』を複数のミュージシャンで演奏するイベントにも出演する。

オフィシャルサイト
http://no-regrets.jp/index.html

ライブ情報

HEATWAVE 40th Anniversary Tour 2019
12月22日(日)東京 日本橋三井ホール
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50/50 (山口洋&古市コータロー) first tour 2020『俺たちの場所』

1月28日(火) 浜松 窓枠
2月4日(火) 神戸 VARIT.
2月14日(金) 仙台 CLUB JUNK BOX
2月19日(水) いわき club SONIC iwaki
3月5日(木)吉祥寺 STAR PINE’S CAFÉ
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新日本製薬 presents SONGS&FRIENDS 佐野元春『Café Bohemia』*イベント出演

2020年2月8日(土)LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
【出演】佐野元春
GLIM SPANKY、小坂忠、田中和将(GRAPEVINE)、堂島孝平、中村一義、山口洋(HEATWAVE)、山中さわお(the pillows)、RHYMESTER、LOVE PSYCHEDELICO ※五十音順
THE HOBO KING BAND <古田たかし(Dr)、井上富雄(B)、Dr.kyOn(Key)、長田進(G)、山本拓夫(Sax)>
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山口洋 (HEATWAVE) solo tour『Blink 40』

2020年2月16日(日) 青森県弘前市 Robbin’s Nest (ロビンズネスト) 2月24日(月・祝) 千葉県千葉市 Live House ANGA (アンガ) 2月27日(木) 静岡県静岡市 LIVE HOUSE UHU(ウーフー) 2月29日(土) 岡山県岡山市 BLUE BLUES (ブルーブルース) 3月3日(火) 愛知県名古屋市 TOKUZO 3月14日(土) 茨城県水戸市 Jazz Bar Bluemoods (ブルームーズ)
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