Interview

Kalafina、石川智晶、天野月子…中国出身のアニソンシンガーが本気で選んだ“闇寄り”の20曲がすごい。暁月凛×DJ和 コラボ対談

Kalafina、石川智晶、天野月子…中国出身のアニソンシンガーが本気で選んだ“闇寄り”の20曲がすごい。暁月凛×DJ和 コラボ対談

中国出身のアニソンシンガー・暁月凛(あかつき りん)。『コードギアス 反逆のルルーシュ』にハマったことをきっかけに熱烈なアニメファンとなった彼女は、2016年に『金田一少年の事件簿R』EDテーマ「決意の翼」でアーティストデビュー。以降もコンスタントにリリースやライブ活動を重ねてきた。

そんな彼女の新作は、DJ和とのタッグにより、こだわりのアニソンカバーを詰め込んだコンピレーションアルバムだった。今回はアルバム制作秘話はもちろん、このふたりだからこそ語れる日中のアニソンシーンの違いや特徴など、幅広い話題について語ってもらった。

取材・文 / 須永兼次 撮影 / 草刈雅之


デビュー前からの念願叶ったアニソンカバーアルバムが完成!

アニメファンならば誰もが知るであろうアンセム的な楽曲から、彼女ならではのニクいチョイスまで含めた全20曲。暁月 凛『没入time mixed by DJ和』、まずはその収録ラインナップをご覧いただきたい。

1.oblivious/Kalafina
2.アンインストール/石川智晶
3.Re-sublimity/KOTOKO
4.深愛/水樹奈々
5.アイリス/藍井エイル
6.WILL/米倉千尋
7.夢想歌/Suara
8.まどろみの輪廻/河井英里
9.掌 -show-/喜多村英梨
10.美しき残酷な世界/日笠陽子
11.蝶/天野月子
12.最高の片想い/タイナカサチ
13.ツキアカリ/Rie fu
14.深い森/Do As Infinity
15.いつか溶ける涙/savage genius
16.夜明け生まれ来る少女/高橋洋子
17.Shangri-La/angela
18.Paradise Lost/茅原実里
19.Paradisus-Paradoxum/MYTH & ROID
20.コノ手デ/暁月凛

この楽曲選曲やMIXの監修に携わったのは、『ラブとポップ~好きだった人を思い出す歌がある~』でロングヒットを飛ばし、『J-アニソン神曲祭り』シリーズも手掛けたりアニソンフェスでのDJプレイを行ったりとアニソンへの造詣も深いDJ和だ。

暁月凛 エンタメステーションインタビュー

暁月凛

まず、今回タッグを組まれたきっかけからお教えください。

暁月凛 私、デビュー前からずっとカバーアルバムを出したいと言い続けていたんです。それがアニソンで実現することになったので、「アニソンカバーだったらMIX。だったら、お願いするなら和さんしかいない!」みたいな流れでお願いすることに決めました。

長年の念願かなった1枚なんですね。

暁月 はい。収録曲も、私が子供の頃からずっと聴いてきた曲ばかりで。私がずっと聴いてきて歌いたかった曲もたくさん入ってるんですけど、和さんが私の世界感に寄り添って提案してくださった曲も結構あるので、私の精神世界をすごくよく表した1枚になったんじゃないでしょうか。

DJ和 エンタメステーションインタビュー

DJ和

ということは、ラインナップについてはお互いにいろいろ提案された。

DJ和 はい。最初にリストをいただいたんですけど、基本的に歌いたい曲は歌ってもらいたいといいますか……別に僕には何も権限はないんですけどね(笑)。でも、僕もご本人が歌いたいとおっしゃっている曲を聴いてみたいし、もちろんそれはファンの方たちも絶対聴きたいだろうし。それが、いちばん重要なことだと思いましたね。そのうえで、「さらにこういう曲もあったら、面白いんじゃないかな」みたいな提案をしていきました。

暁月 実際に、私から提案させてもらった曲のほうが多く収録されているんですよ。

DJ和 ただ、最初のリストの時点で僕自身が元々イメージしていたようなものだったので、「話が早い!」みたいな感じもしました(笑)。情報はもちろんいただいていたんですけど、話すなかで基本的には“闇寄り”だなってわかってたんで(笑)。

暁月 そうなんです(笑)。

DJ和 そうなると、選曲やアルバム全体の雰囲気を司るものは、だいたい見えたような感じでしたね。

そのなかで、和さんが提案された曲は?

DJ和 たとえば「WILL」かな? ダークな曲や、ちょっと和風とか民族っぽい雰囲気を持った曲が合うと思っていたので、そういうコーナーを作ったりしました。

暁月 「WILL」は和さんに提案していただいて初めて聴いて、「あ、この曲めっちゃいい」ってあらたに発見した曲のひとつなんです。で、「この曲歌うんだけど」みたいな話をオタクの友達にしたら「この曲めっちゃいいよ!」ってびっくりされました(笑)。

「WILL」も、リリースから20年経ちましたね。

DJ和 そうかぁ……でも僕、最初から年代の幅は取りたいなと思っていました。新しい曲だけにしても面白くないし、逆に少し懐かしい曲だけでも今の若いファンを置いてっちゃうよなぁと思ったので、そこのバランスは僕の方で取れればと思って。逆に「Paradisus-Paradoxum」とか「アイリス」あたりが、最新ぐらいの曲ですね。

ただ、原曲のシンガーの方の声質が、暁月さんから少し遠い場合もあるじゃないですか? そういう曲では、どんなことを大事に歌われたのでしょう?

暁月 「もしこの曲を、最初から私が歌っていたらどうなってるんだろう」っていう想像から入りました。もちろん自信がない部分もありましたけど、制作を通じて歌うことの楽しさを思い出したり、この曲がなんで好きだったのかを再認識できたので、それぞれの歌を自分色に染められたんじゃないかなと思います。

まっさらな状態で完成音源に触れて探った、20曲によるベストな道

ちなみに、曲順はすんなり決まりましたか?

DJ和 曲順はほぼ僕が決めたんですけど、今回の場合は全部暁月さんが歌っているおかげで、あまりオリジナルの楽曲の年代を気にする必要もなかったんですよ。しかも、アレンジも新しく今っぽくもなってるから、10年以上経ったような曲から新しめの曲につなげてもそんなに違和感がなかったんです。なので、あとはリスナーがよりこのアルバムに“没入”できる流れを作るために、20曲ある中のどういう道を辿ろうかなっていうところだけを考えていましたね。

20曲の、ベストな道を探すというか。

DJ和 そうですね。DJの仕事ってたぶん半分ぐらいは曲順を決めるというところになると思うんですけど、やっぱりそこは悩みどころですし、人によっても全然違うものになると思います。正解がないので。だから、自分としての暁月凛さんワールドに入れるいちばんのおすすめの流れを提案するために、試行錯誤しました。でもその曲順は、全部歌っていただいた音源をもとに組んでみました。

レコーディングは曲順を決める前だったんですね。

暁月 そうなんです。レコーディングしてから、曲順を組んでいただいたんですよ。たしかに、音源を実際に聴かないとわからない部分もありますよね。

DJ和 そうなんですよ。アレンジがオリジナルから少し変わっているものもあるので。ただ、僕は曲目が決まった段階で、聴きすぎないように注意しながら原曲のほうでなんとなくだけイメージはしていて。そのあと、出来上がった音源を聴かせてもらってから決めていったんです。

暁月凛 DJ和 エンタメステーションインタビュー

ということは、レコーディングにも立ち会ったりはしていない。

DJ和 はい。僕は暁月さんの歌った「これだ!」というものをいただいてそれをつなげたかったので、「どういう“新カバー”が来るのかな?」ってわくわくしながらいちリスナーとして待っていました。それに、そういうまっさらな状態のほうがストレートに聴けるんですよ。制作段階から立ち会ってると左脳を使っちゃうというか……一発目は、右脳で聴きたいんですよね。理性的にいろいろ考え始めるのは、そのあとで。

一方、暁月さんはご自身の曲以外19曲をレコーディングされていったわけですが、どんなペースでどう録っていかれたんでしょう?

暁月 最初は「4日で全部録ろう」っていう話になったんですけど、途中ちょっと体調を崩してしまったりもして、結局2日追加してなんとか……(笑)。

ただ、それでも1日平均3曲以上録ってるということに……。

暁月 そうなんですよ。ハーフサイズの曲もあるので理論上はできなくはないんですけど、フルサイズ1曲とハーフサイズ2曲を比べると、ハーフサイズのほうがメロディも変わるし感情の調整もしなきゃいけないので、予想以上に時間はかかりました。

雰囲気の似た曲を、続けて録っていったりしたんですか?

暁月 いや、もう本当にシャッフルで。歌いやすい曲から録るというか、「今日は何からやる?」みたいな感じでしたね。5分~10分ぐらいあれば切り替えられるんですけど、それでもやはりハーフ2曲はフル1曲より、大変な部分はありましたね。

リード曲「蝶」は、彼女の好む世界の理想像を体現した曲

歌っていったなかで、特に印象に残っている曲はありますか?

暁月 本当にたくさんあるんですけど、なかでも「深愛」は、ほかの闇を感じたり哲学性のある曲とは違って恋愛の曲なので……いきなり女になる、といいますか(笑)。表情を変えることで雰囲気を出せるようにしたんですよ。

DJ和 女の表情に変えて(笑)。

暁月 はい。自分にできる、最大の恋愛っぽさを出しました。しかもなんか、結構具体的な想像をしてて。クリスマスにデートをするんだけど、彼氏が違う女と歩いてるのを見て。それでも好き……みたいな。

つらい……。

暁月 でも私は、やっぱりつらさが愛だと思うんですよ。それに、歌に限らず元々悲劇が大好きなので、どうしてもそういう妄想をしちゃうんですよ。……しません?

DJ和 ……そうでもないかな(笑)。

暁月 えー!? 味方してくださいよ(笑)。

暁月凛 DJ和 エンタメステーションインタビュー

DJ和 あはは(笑)。でも、僕が面白さを感じたのはこういうところで。アニメ好きと一口に言っても、そもそもみんな「どんな作品が好き」なのかが違うじゃないですか? 暁月さんもいい意味で僕と違うから、「そういう角度で作品を見てるんだな」っていう面白さを感じたんです。だから、「今までにあまりないカバーアルバムを作れるな」とも思ったんですよね。

暁月 今回の曲は、やっぱりちょっと負の感情が入ってる歌詞が多いですよね(笑)。

DJ和 曲調的にもダークなものが多いので、やっぱり昼よりかは夜だし、太陽じゃなくて月だよなっていう感じがします。だから、出来上がってきた音源を聴いたときもすごくしっくりきたというか。それに、アレンジが変わったことによって曲のイメージもちょっと変わりましたし、暁月さんの声になることによって歌もいい意味で変わって聴こえるから、ちょっと新曲っぽく聴こえるというか……もちろん知ってる曲なんですけどね。なので、そこの良さを曲順で引き出してあげたいなと思いました。

本当に序盤から名曲ばかりがどんどん出てくるので、アニソンファンは一気に掴まれますよね。

DJ和 そうですね。踏み絵じゃないですけど、これが刺さるかどうかで本当にオタクかどうかある程度選別ができると思います(笑)。

暁月 あはは(笑)。たしかに。

暁月凛 エンタメステーションインタビュー

そのなかで、ひとつ気になっているのがリード曲になっている天野月子(※現:天野月)さんの「蝶」です。これだけはゲームの曲だと思うんですが、暁月さんはまずこの曲をどう知ったんですか?

暁月 実は「蝶」は中国で大人気の曲で、天野さんの世界観自体も私はずっと大好きなんです。初めて聴いたときに、幻想的でちょっと闇が入っている部分に魅力を感じて、最初はてっきりアニソンだと思ってたんですよ。でも、調べてみたら『零~紅い蝶~』というゲームの曲だとわかって……それで、ゲームもプレイし始めたんです。もちろんアニソンは大好きなんですけど、ゲームも自分が操作してその世界に入り込めるので、ひとつのいい題材だなと思いますね。

ゲームソングでありながらも今回リード曲になっているというのは、それだけ思いが強いのかなと気になっていました。

暁月 私の好きな世界の、いちばん理想的な形かもしれないです。「蝶」の中の世界やゲーム自体も割と闇深いので(笑)。

“暁月凛”という人間が伝わり、様々な場所へと繋がる1枚に

さて、暁月さんはご出身が中国ですし、和さんも中国をはじめ海外でのDJ経験も多いと思います。そこで、おふたりの感じる中国と日本の音楽や、アニメ・アニソンシーンの違いがあればお教えいただきたいのですが。

暁月 中国のほうがたぶん、同じ曲をずっと10年も20年もリピートする人が多いように思います。私の年代では子供の頃にそんなにネットが発達してなかったのもあって、情報は雑誌とか友達経由のことが多くて。曲も1曲好きになったら次の好きな曲が見つかるまで日本よりは時間が空いていたと思うんです。今では割とリアルタイムで、中国にも情報が伝わるようにはなったと思うんですけど。

DJ和 たしかに。僕も中国とかでDJやらせてもらうこともあって、情報自体はほぼほぼ同時に伝わって感じられているように思うんです。ただ、発信源から離れれば離れるほど、中心のところの熱量とか「どういうものなのか」っていうことが、ちょっとずつ伝わりづらくはなってくると思うんですよね。そこの実体験というか、リアルなものが。それは当たり前のことだと思います。

DJ和 エンタメステーションインタビュー

国境をまたいだり距離が出てくると、それは当然かもしれないですね。

DJ和 でも、そのうえで日本のアニメをいろんな国の人が楽しんだり意見が出ていたりするのって、すごく面白いことですよね。同じ好きな作品で国境を超えられるのって、本当にアニメのようなものじゃないとなかなかできないよな……とも感じます。

暁月 本当に、アニメに対する愛とか素敵なものを発見したときの感動は、国をまたいでも一緒だと思います。私のまわりも、中学生のときはまだ気軽に海外に行けるような環境ではなかったのにみんな頑張って海外の情報を入手していたし、お金持ちのオタク友達は日本にいる親戚経由で「Newtype」(雑誌)を買ったりしてたんですよ。

DJ和 直輸入しちゃうんだ(笑)。でもみんな情熱があるとその発信源に近づきたいし、情報をすぐキャッチしたいと思う。その欲求と熱意って、やっぱりすごいですよね。

では最後に、改めて読者の皆さんにリリースにあたってのメッセージや、聴きどころについてひと言ずついただけますか?

DJ和 僕が言うのもなんですが……(笑)。僕もいちリスナーとして冷静に聴かせてもらったなかで、「暁月凛ってこういう人なんだな」という、彼女の世界観が1枚を通してとても伝わるものになったように思います。このアルバムを通じて、オリジナル曲を聴いてもらったり、暁月さんの持ち歌を聴くきっかけになったりと何かに繋がっていってくれたらいいなと思うので……原曲を知らない人にもぜひ聴いてもらいたいですね。

暁月 今まではオリジナル曲では、“自分が客体としてどう見られるのか”と、“暁月凛としてどう存在すべきなのか”を考えることが多かったんですけど、今回は自分が好きなものや愛するものを人々に伝えることがメインなので、違う角度から“暁月凛”という人間を表現できた1枚になったと思います。和さんがおっしゃるように、私のカバーがきっかけで原曲を聴かれる方もいるかもしれませんし、逆に原曲が好きで私のカバーを聴いてくださる方もたくさんいるのかなと思うので、そういう世の中のつながりや愛を感じながら、音楽の素晴らしさも再認識できる1枚になりました。ぜひこのアルバムに、“没入”してみてください。

フォトギャラリー

暁月凛オフィシャルサイト