ソムリエ推薦! アニメ原作マンガ  vol. 1

Review

2020冬クールアニメの原作マンガを読む! 予測不能の展開が待ち受ける3作品

2020冬クールアニメの原作マンガを読む! 予測不能の展開が待ち受ける3作品

毎クール、膨大な本数が放送されるテレビアニメ。何を観ようか迷ったときには……「マンガ原作」のアニメに絞って観るのもいいんじゃない!?
映像化によって膨らむ魅力を楽しんだり、あるいは原作に戻って、マンガならではの魅力を再発見したり。
これから放送される期待の作品を、「マンガソムリエ」・兎来栄寿が解説!

文 / 兎来栄寿


至高のセンスが生み出す造形美と予測不能の混沌

©林田 球/小学館

『ドロヘドロ』(作:林田 球)

現在連載中の『大ダーク』でもその溢れ出るセンスを存分に発揮している林田 球先生。その林田先生の代表作が『ドロヘドロ』です。こういう作品があるからマンガは素晴らしいとすら思える、研ぎ澄まされたセンスによる独特の美点がたっぷりと詰まった作品です。

まず何と言っても荒々しくも魅力溢れる絵の素晴らしさ。ラフな描線ですがそれが雑・汚いといった印象にはならず、純粋に味わい深く芸術的に見える絵の巧さが秀逸です。カラーページも含め、アナログ作画の真髄を堪能できるのは原作ならではの魅力でしょう。細かく描き込まれた背景や小物の中に潜む遊び心を見付けるのも楽しみの一つです。

一方で、アニメで更に映えるのはそのデザインセンスと世界観。林田 球先生は『AKIRA』、『ジョジョの奇妙な冒険』、士郎正宗作品などに影響を受けているといいますが、それに加えて海外映画やコミックの影響も色濃く感じるパンキッシュかつゴアな独特の雰囲気に惹き込まれます。

外見はかなりハードに見えながら、所々で肩の力が抜けるギャグ要素も盛り込まれているギャップもまた妙味。主人公のカイマンやニカイドウたちは勿論のこと、煙ファミリーや十字目の組織といった他の陣営のキャラクターたち一人一人も残虐な部分は残虐な一方、かわいい部分や人間臭い部分も随所で描かれ非常に愛着が湧きます。またキーアイテムである大葉ギョーザを始めとして食事シーンが随所で描かれることで、異質な世界でありながらも現実と地続きの感覚や共感を覚えさせられます。

そして何と言っても『ドロヘドロ』最大の美点は予測不能の混沌とした展開。爬虫類の頭にされてしまった主人公・カイマンはなぜ記憶を失っているのか。失われた記憶とは何なのか。爬虫類頭の口の中にいる男は一体何者で、誰を探しているのか……謎が謎を呼ぶとは『ドロヘドロ』を形容するためにあるような言葉です。読み始めたら止まらない吸引力と中毒性をぜひご堪能あれ。

アニメ『ドロヘドロ』オフィシャルサイト
https://dorohedoro.net/

試し読みはこちら(小学館eコミックストア)
https://csbs.shogakukan.co.jp/book?book_group_id=634

“数字”に支配された過酷な世界に潜む謎とは?

©水無月すう/KADOKAWA

『プランダラ』(作:水無月すう)

『そらのおとしもの』に続いてアニメ化となった、水無月すう先生原作のコミック。メインヴィジュアルを一見した時の印象からは非常に想像し難い、怒涛の展開が待ち受けているのも『そらのおとしもの』と共通の特徴です。

『プランダラ』の世界では、すべての人が何かをカウントすることを義務付けられています。そのカウントは体に刻まれており常に増減します。ヒロインの陽菜は「歩いた距離」が固有のカウントである少女。100km歩くごとに1しかカウントされないという過酷な条件にも関わらず、陽菜のカウントは何と441。彼女は母親の遺言に従い形見を抱いて、かつて起きた「廃棄戦争」時代に活躍した伝説の英雄「撃墜王」を探し求めて4万km以上、地球一周分以上も歩いて旅をしていました。そして、陽菜が遂に撃墜王を名乗る男性と出逢うところから物語は動き出します。

この世界ではカウントが多い人間の命令に対して、カウントが少ない人間は絶対服従せねばなりません。ただし、カウントが低い人間はカウントが高い人間に「星奪戦」を挑み勝利することでカウントを奪うこともできます。しかしながら、カウントが0になってしまうと異形の存在により「アビス」へと送られてしまうという非常に重いペナルティも存在します。

これら独特の世界設定による緊張感、陽菜が持つ「バロット」というアイテムの謎、「撃墜王」や「廃棄戦争」の謎、そして世界のシステムの謎……様々な謎が絡み合い、引きとして機能し先を読みたい欲求に強く駆られます。

『そらのおとしもの』では原作からアニメになるにあたり諸々の変更点がありましたが、『プランダラ』でも同様のことが起こる可能性があります。それ故、原作とアニメ両方に触れると一番楽しめるのではないかと思います。個人的には原作はまず最低2巻、できれば5巻までは一気に読んでみて欲しいです。序盤からはまず予想できない展開に私は驚愕し、『プランダラ』という世界の虜になりました。

アニメ『プランダラ』オフィシャルサイト
http://plunderer-info.com/

試し読みはこちら(ComicWalker)
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_KS01000024010000_68/

ベストバウト続出! “最強”を巡る漢たちの闘い

©サンドロビッチ・ヤバ子、だろめおん/小学館

『ケンガンアシュラ』(原作:サンドロビッチ・ヤバ子、作画:だろめおん)

「格闘マンガ史上で最高傑作は何か?」というテーマを語れば、ほぼ確実に名前が上がるのが『グラップラー刃牙』でしょう。刃牙シリーズの中でも文句なしに評価が高いのが「地下闘技場最大トーナメント編」ですが、それに匹敵する面白さがあるのが『ケンガンアシュラ』の「拳願絶命トーナメント」です。

現在は続編の『ケンガンオメガ』も連載中ですが、ケンガンシリーズは間違いなく2010年代を代表する最上級の格闘マンガです。古武術、古代相撲、柔道、合気道、ボクシング、キックボクシング、プロレス、ムエタイ、バリツ、総合格闘技、逮捕術、軍隊式格闘術、中国武術、ストリートファイト、暗殺術……あらゆるジャンルのとびきり強い猛者たちが集まって、ただ一つの頂点の座を目指して鎬を削る様には問答無用の昂揚感があります。一人一人のキャラクターも非常に濃く、きっと一人はお気に入りの闘士が見付かることでしょう。

『グラップラー刃牙』の最大トーナメントと同様に、非常に面白いのは「どちらが勝つか全く判らない」という戦いの連続であること。連載時は毎話手に汗握り、凄まじい迫力のバトルシーンを興奮しながら読んでいました。そして、トーナメントの上に行けば行くほどそれぞれのキャラの描写も深まっていき、面白さもどんどん増していきます。

また、盤外の争いも『ケンガンアシュラ』の見所。拳願絶命トーナメントは企業・団体同士の実利とプライドを賭けた勝負でもあるため、スポンサードされた闘士たちの仕合はもちろんのこと、蠢く大人たちの策謀・戦いもドラスティックに描かれます。企業・団体の雇い主もまた海千山千の曲者揃いで、それぞれが雇用する闘士たちとの多種多様な関係性にも注目です。

なお、1月からテレビシリーズとして放送が始まるアニメ版ですが、Netflixではすでに24話まで配信済となっています。マンガ版には、アニメでは尺の関係でカットされてしまったエピソードや、個性豊かなキャラクターたちが更に掘り下げられる描き下ろし、またコラボマンガなどおまけも豊富に収録。アニメでハマった方はぜひ原作も読んでみて下さい。

アニメ『ケンガンアシュラ』オフィシャルサイト
http://kengan.net/

試し読みはこちら(小学館eコミックストア)
https://csbs.shogakukan.co.jp/book?book_group_id=6529

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