モリコメンド 一本釣り  vol. 151

Column

立花綾香 凛とした意志。エモーショナルな表現。彼女が真っ直ぐに伝えたいこととは?

立花綾香 凛とした意志。エモーショナルな表現。彼女が真っ直ぐに伝えたいこととは?

リアルな感情を反映させた歌詞、凛とした意志を感じさせるボーカル、エモーショナルな響きをたたえたサウンドメイク。そして何より、“どうしてもこの思いを伝えたい”という力強いモチベーションが真っ直ぐに伝わることが、彼女の最大の魅力だろう。立花綾香。2019年11月にミニアルバム『HELLO』でメジャーデビューを果たしたシンガーソングライターだ。

小学校のときにピアノを習い始めた彼女は、決まった譜面を演奏するクラシックではなく、自分の感情を素直に表現できるシンガーソングライターのスタイルに移行。高校2年のときに地元・熊本のライブハウスに出演するようになり、カバー曲(MONGOLO800から昭和の歌謡曲まで、幅広い楽曲を弾き語りしていたという)を経て、オリジナルの楽曲を書くようになった。

2010年から本格的な活動をスタート。同年、熊本市のイメージソング「ときめいて・くまもと」を担当した彼女は、2011年にYAMAHA主催のオーディション『The 5th Music Revolution』九州ファイナルでグランプリ、ジャパンファイナルで奨励賞を受賞した。さらにTVアニメ『灰と幻想のグリムガル』『サクラクエスト』などの楽曲を手がけるユニット(K)NoW_NAME(ノウネーム)に参加し、TVアニメ『Fairy gone』オープニング&エンディングテーマ「KNOCK on the CORE/Ash-like Snow」を歌唱するなど、活動の幅を徐々に広げてきた。また、昨年8月21日には、福岡ヤフオクドーム!ドームのソフトバンク・オリックス戦で国家独唱を行い、スポーツ紙などで取り上げられ大きな注目を集めた。

シンガーソングライターとして様々な経験を重ねるなかで、培われてきた表現力、独特の視点に貫かれた歌詞の世界は、メジャーデビュー作『HELLO』にも強く反映されている。1曲目は先行配信された「最初はハロー」。ブラス・ロックのテイストを取り入れた力強いナンバー。どこまでもパワフルに響くメロディとともに描かれるのは、直接的なコミュニケーションを望む姿勢だ。SNSの普及により、(主に)スマホの画面を介した疑似的なコミュニケーションが当たり前になった現代。人と人の関係は情報として扱われる(人のことを“スペックが高い”などと評するようになったのは、いつ頃からだったろう?)風潮に対して彼女は、“生身のままで/最初から始めましょう”というフレーズを叩きつける。メディアの情報だけで分かった気にならず、しっかりと対面したうえで評価してほしいーー「最初はハロー」はメジャーデビューのタイミングに相応しい楽曲であることはもちろん、彼女自身の生き方、考え方にも直結しているのだと思う。

2曲目の「Eyes」は、“右目に映るは、1つの希望/左目に映るは、100の絶望”というラインから始まる。どんなに絶望的な状況だったとしても、先の見通しがつかなくても、目にしたい光景がある限り、前に進んでいきたいーーそんな生々しい思いが描かれているのだ。具体的なエピソードではなく、きわめて詩的な表現で綴られているのだが(そのことによってリスナーは、さまざまな想像を巡らすことができる)、ここに込められた感情はおそらく彼女自身の体験に裏打ちされているのだと思う。活動スタートからメジャーデビューまでの9年という時間は決して短くなく、その間に数多くの葛藤や悩みを経験したことは想像に難くない。「Eyes」から伝わってくる歌の説得力は、高い壁を乗り越えてきた彼女の経験値に裏付けされているのだ。EDMテイストのアレンジを施し、あくまでもポップに昇華されていることもこの曲の魅力だろう。

もう1曲、本作の最後を飾るバラードナンバー「ハルノセ」について触れておきたい。

ドラマティックなメロディライン、生楽器の響きを活かしたオーガニックなサウンドのなかで彼女は、“さよなら私 さあはじめよう/まだ見ぬ私の手を今とるよ”と謳っている。人生とは、と大上段に構えなくても、日々の生活で我々は少しずつ変わっていく。周囲から心のない言葉によって心が折れそうになる日もあれば、しっかりと自分を抱き締め、前に進みたいと強く願う日もある。大事なのは、未来の自分を信じ、歩き続けることだというメッセージを含んだ「ハルノセ」はこの先、多くのリスナーの感情に寄り添う普遍的な楽曲として広まっていくことになりそうだ。

2019年12月7日の渋谷duo MUSIC EXCHANGE公演に続き、2020年1月23日(木)には大阪・Shangri-La、25日(土)には福岡・ROOMSで本作『HELLO』のリリース・ワンマンライブを開催する立花綾香。オーセンティックな魅力を持った彼女の歌の世界をぜひ、体感してほしい。そのときあなたは、自分の感情が少しだけ解放され、自分自身を肯定できていることに気づくはずだ。

文 / 森朋之

その他の立花綾香の作品はこちらへ。

オフィシャルサイト
https://www.tachibanaayaka.com

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