モリコメンド 一本釣り  vol. 150

Column

The Songbards UKロックに憧れ自らの音楽を構築。耳に残る詩情豊かな歌とオーガニックで生々しいバンドサウンド

The Songbards UKロックに憧れ自らの音楽を構築。耳に残る詩情豊かな歌とオーガニックで生々しいバンドサウンド

エド・シーランが出演したことでも話題を集めた映画『イエスタデイ』は、“もし、自分以外の人がザ・ビートルズを知らなかったら”というSF的な設定の作品。主人公のジャック(売れないシンガーソングライター)は記憶を頼りにビートルズの名曲——「イエスタデイ」「ヘルプ!」「ノルウェーの森」「バック・イン・ザ・U.S.S.R.」など——を自ら演奏し、瞬く間にスターになっていくというストーリーなのだが、この映画のなかではザ・ビートルズだけではく、UKロックを代表するオアシスも存在しないことになっている。オアシスはザ・ビートルズの影響を強烈に受けているバンドなので、ザ・ビートルズがいなければ、オアシスも存在しないというわけだ(だとしたら、ギャラガー兄弟は飲んだくれのフーリガンなのだろうか?)。

この映画を観ていて思ったのは、“ザ・ビートルズがいなければ存在しなかった”バンドやアーティストは無数にあるということ。日本で言えば奥田民生、斉藤和義、もしかしたらMr.Childrenだっていなかったかもしれない(少なくとも「Tomorrow Never Knows」というタイトルの曲は生まれなかったはず)。そして今回紹介するThe Songbardsも、ザ・ビートルズに憧れ、強く影響されながら自らの音楽を形作ってきたバンドだ。

2017年3月にメンバーの地元・神戸を中心に活動をスタートさせた4ピースバンド、The Songbards。バンド名は“Songbird=さえずる鳥”と“bard=吟遊詩人”を掛け合わせたもので、彼らの音楽性——親しみやすいポップネスと豊かな詩的表現を共存させた——をしっかりと反映している。そのルーツはザ・ビートルズをはじめとするUKロック。ツインボーカル、ツインギターの片翼を担う上野皓平(Vo,Gt)は小学校の頃、サッカーの試合の送り迎えの車のなかで(友達の父親が流していた)ザ・ビートルズの楽曲を聴き、YouTubeで「ヘルプ!」のMVを観たことをきっかけにのめり込み、一方の松原有志(Gt,Vo)はまずマイケル・ジャクソンを好きになり、彼がカバーしていた「Come Together」やポール・マッカートニーとのコラボ曲「Say Say Say」などを通しザ・ビートルズを認識したという。ストリーミングやYouTubeで音楽の知識を深めているのは、まさしく今どきである。

上野、松原がバンドを結成、何度かのメンバーチェンジを経て、柴田淳史(B&Cho)、岩田栄秀(Dr&Cho)が合流し、現在のラインナップに。ロックンロール、フォーク、ブルース、サイケデリックなどのテイストを奔放に取り入れた音楽性、シンプルにして詩情豊かな歌、オーガニックで生々しいバンドサウンドを少しずつ磨き上げ、自らのオリジナリティを獲得していった。

関西のバンドシーンで知名度を上げ、2018年の夏にはイギリス・リバプールで行われたザ・ビートルズのイベント『International Beatle Week』に参加し、初期のザ・ビートルズが出演していたことで有名なThe Cavern Clubのステージに上がるなど、バンドとしての経験値を上げてきた4人。メジャーデビュー作にして最初のフルアルバム『CHOOSE LIFE』は、ルーツミュージックから受けた影響をしっかりと昇華し、バンドとしての独創性を提示した作品に仕上がっている。

“人生を自分で選び取る”という意思を込めたアルバム『CHOOSE LIFE』はアップテンポのロックンロール・ナンバー「ストリートアレイ」から始まる。有機的な響きを備えたサウンドメイク、憂いと解放感を併せ持ったメロディライン、ふくよかなハーモニーが一つになったこの曲は、The Songbardsのもっともベーシックなスタイルと言っていいだろう。青春の終わりの時期を迎え、それでも憧れを持ち続けながら生きていく決意を綴った歌詞も秀逸。ロックンロールは本来、10代のための音楽だと思うが、彼らの楽曲にはリスナーの年齢を問わない普遍性が確かに備わっている。

「マジック」はこのバンドのポップネスが明確に示された楽曲だ。60年代あたりの古き良きポップソングの香りを感じさせるアレンジ、どこかノスタルジックな響きを持ったメロディ、恋の魔法をテーマにした歌詞が一つになったこの曲は、ふだんはJ-POPに親しんでいるオーディエンスにも十分にアピールするはずだ。

もう1曲、「グッドラック・ドリー」にも触れておきたい。ファンクネスをたたえたベースライン、ソウルミュージック経由のギターカッティングを軸にしたこの曲は、ここ数年のソウル・リバイバルともリンクしたダンサブルなナンバー。ザ・ビートルズもそうであったように、The Songbardsはブラックミュージックの要素を自らの音楽に取り込むことで、より肉体的なグルーヴを目指しているのだと思う。

2020年1月23日からは、地元の神戸を皮切りにアルバムのリリースツアー“CHOOSE LIFE Release Tour”がスタート。オーセンティックな魅力に溢れた彼らのバンドマジックをぜひ、たっぷりと味わってほしいと思う。

文 / 森朋之

その他のThe Songbardsの作品はこちらへ。

オフィシャルサイト
https://thesongbards.com

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