モリコメンド 一本釣り  vol. 149

Column

川嶋志乃舞 三味線とポップス。際立つハイブリッド感覚で国境を超える逸材

川嶋志乃舞 三味線とポップス。際立つハイブリッド感覚で国境を超える逸材

幼少期に和楽器を習い始め、これまでに数多くの賞を獲得。その後、自身でポップスを学び、現在は「三味線と歌で“日本”を表現する伝統芸能ポップアーティスト」として活動し、国内外で高い評価を得ている川嶋志乃舞。つまりは日本の伝統楽器である三味線と現代的なポップスを結びつけているアーティストなのだが、百聞は一見に如かず、まずは彼女の楽曲「Jump up!!!」を観てほしい。中心にあるのは間違いなく“三味線と歌”。さらにディスコ、ファンク、ソウルのテイストをアレンジに加えることで、現在進行形のダンスチューンに仕上がっている。これまでにも三味線を弾き、自分で歌う女性アーティストは存在したが、彼女のハイブリッド感覚は完全に際立っていると思う。

3歳のときに津軽三味線奏者の佐々木光儀師に弟子入りし、お囃子の太鼓や当り鉦、鈴を習いながら、民謡を覚えたという彼女は、5歳で本格的に津軽三味線を習い始めた。小学校に上がると同時に津軽三味線全国大会に出場し、数々の大会で入賞。テレビ番組『おはスタ』などで“天才三味線少女”と紹介されると、瞬く間に注目度がアップ。三味線の実力も着実に上がり、これまでに日本一の座を4度獲得したほか、海外文化交流使節団として海外公演も経験した。

このまま伝統的な音楽の道を極める……と思いきや、その後、彼女はポップスの世界に近づいていく。最初のきっかけになったのは、中学のときに経験したダンスの授業(←ちょうどダンスが必修科目になった時期です)。高校ではダンス部に所属し、踊ることでR&B、ヒップホップ、ハウスなどを好んで聴くようになったという。三味線×ポップスという彼女のスタイルの萌芽は、この時期に芽生えたと言っていいだろう。

その後、東京藝術大学に進学するために音楽理論を学び(←ここ重要。彼女のハイブリッドなセンスは、音楽理論に裏打ちされているのだ)、大学では長唄三味線を専攻。独学でポップスの作詞・作曲を研究し、独自の音楽スタイルを構築し始める。最初に出来た曲は、「遊廓ディスコ」。“花魁のディスコパーティー”をテーマにしたこの曲は、シティポップ風のサウンドと三味線の音色が融合し、不思議なオリエンタリズムを醸し出している。長唄をモチーフにした歌詞を含め、現在の川嶋志乃舞の原点と言える楽曲だ。この楽曲は後に音源化され、2016年にリリースされたアルバム『ファンタスティック七変化』に収録。彼女の代表曲の一つとなっている。

2016年にスペイン バルセロナで行われた「MATSURI JAPAN- バルセロナ祭りプロジェクト -」、2017年にはスリランカ コロンボで開催された「JAPAN EXPO Premier Sri Lanka 2017」に参加。2018年には氷川きよしが歌うアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』ED曲「ゲゲゲの鬼太郎/見えんけれども おるんだよ」に津軽三味線と長唄三味線で参加するなど、活動の幅を拡大。三味線、長唄三味線に代表される日本の伝統音楽に敬意を払い、演奏者としての技術を高めながら、モダンなポップス、ダンスミュージックの要素を加えることで、斬新にしてトラディショナルな音楽を体現する——そのスタンスは、2019年10月に2作同時リリースされた初の全国流通盤アルバム(伝統芸能ポップ盤『SUKEROKU GIRL』、完全民謡盤『光櫻 -MITSUSAKURA-』)にも明確に表れている。

「Jump up!!!」を含む『SUKEROKU GIRL』には、カラフルなポップミュージックの要素が反映されている。ギターロック系のバンドサウンドとJ-POP直系のドラマティックなメロディが一つになった「たのしい四捨五入」、現在進行形のR&Bのフレイバーを散りばめたトラック、ブラックミュージックを経由したボーカルが溶け合う「Not575」、伝統音楽に根差した「津軽じょんがら節」、シティポップ風のアレンジとスカのビートを融合させた「おしゃれなふたり」。さらに自由度を高めたポップセンス、そして、幅広いサウンドを自在に乗りこし、奔放に跳ね回るボーカルをたっぷりと楽しむことができる。

『光櫻 -MITSUSAKURA-』は“完全民謡盤”という冠が示す通り、「津軽あいや節」「ソーラン節」「花笠音頭」などの民謡を収録。10代の頃から数々の賞を受賞し、伝統芸能の世界で高く評価されてきた彼女の三味線と歌を満喫できる1枚だ。華やかさ、力強さ、美しさを併せ持った演奏によって、民謡の奥深い魅力にはじめて触れるリスナーも多いだろう。

2020年4月30日には渋谷WWWで川嶋志乃舞企画「ハイカラハーバー」の開催が決定。“懐かしくて新しい”彼女のポップミュージックはジャンル、国境を越え、さらに強く波及していくはずだ。

文 / 森朋之

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オフィシャルサイト
https://www.shinobu-kawashima.com

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