Review

注目のVR脱出ゲーム『ラストラビリンス』恐怖と絶望が心を翻弄しまくる

注目のVR脱出ゲーム『ラストラビリンス』恐怖と絶望が心を翻弄しまくる

『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』は、あまた株式会社が贈るVR専用の脱出ゲーム。数々のヒット作を手掛けたゲームクリエイターたちが集結したプロジェクトです。見知らぬ館のなか、車イスに拘束された状態で気がついたプレイヤーは、目のまえに現れた幼き少女と行動をともにすることになります。少女は何者でどうして協力してくれるのか、なぜ自分が囚われたのかもわからぬままですが、とにもかくにもこの身を解放するには館を脱出するしかないようです。プレイヤーは彼女に指示を出しながら部屋に張り巡らされた謎を解いていきますが、仕掛けはどれも手強く、一歩間違えれば命を失うことにもなります。そのうえ謎の仮面の人物がふたりを狙って屋敷をうろついているようで……? 本作はさまざまなヘッドマウントディスプレイに対応していますが(対応機器はオフィシャルサイトを確認)、ここではPlayStation®4版をプレイ。PlayStation®VRとPlayStation®Moveのコントローラーを2本使用しました。
今回、脱出ゲームに腕の覚えありと乗り込み、なんとか一番いいと思われるエンディングを見届けた筆者でしたが、本作の難解かつ恐ろしい仕掛けに幾度もズタボロにされました。記事では本作がどういう作品かをお伝えするため事例としてあるステージで起きたことを紹介していますので、ネタバレを含みますがパズルの解きかたは避けております。

文 / 小泉お梅


これぞVRの真骨頂! “頭を使う”謎解き

ゲームは暗い部屋から始まります。目のまえにはぽつんとスタンドライトがあるだけ。PlayStation®Moveのボタンを押して出た、赤いレーザー光線をスタンドのコードに当ててみると……。暗闇からスゥっと白い手が伸びて、コードを引きます。光に照らされて浮かび上がったのは、まだあどけない少女でした。不思議そうにこちらを見て話しかけてきますが、彼女の言葉は聞いたことのないような響きです。ゲーム開発陣のコメントによれば、非言語的コミュニケーションを図るため、どこの世界の言語でもない本作独自の言語を用いているのだとか。実際、少女が何を言っているのかまったくわからないので、じつはエンドロールを見るまで彼女の名前を知る機会もありませんでした。オフィシャルサイトでは“カティア”という名であると公表されていますので、以後はカティアと呼びます。

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー
Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲メインビジュアルよりも幼く見えるカティア。でもこの子、どうしてこんな真っ暗な部屋にいたのかしら?

コチラを覗き込んでくるカティアの目線を追うと自分の手脚が視界に入り、車イスに鎖と枷でがんじがらめにされていることがわかります。頑丈そうな拘束具は幼いカティアには外せなさそう……。でも! 私の手のなかには先ほどのレーザーを放ったポインターがあります。自分の意志を伝え、カティアを導くであろう心強いギア。平たく言えば頭と指先しか動かせない状態なので、実際はカティアにおんぶに抱っこなわけですが……。レーザーの方向はPlayStation®Moveで動かすのではなく、ヘッドマウントディスプレイ、つまり頭部を動かすことで操作します。指し示したいものを目で捉えて、手元のボタンを押してレーザーを照射、といった具合ですね。

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲PlayStation®Moveを振れば手首につけられた鈴が鳴り、それを聴いたカティアがこちらへ来てくれます

試しにドアにレーザーを当ててみると、カティアが「これ?」という身振りで確認してきます。「うん」と頭を振ってうなずいてみせると、カティアが「わかった」という反応を返し、ドアを開いてくれました。おおお、言葉が通じなくてもちゃんと意思疎通ができている! この頭を振る動作で肯定・否定の意思表示ができるわけですが、通じた喜びとカティアの素直さになんだか気持ちがホワッと温かくなりました。彼女が背後に回り、車イスを押してくれるのがわかって「いい子だなあ」なんて思ったり。

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲カティアの確認のおかげで、押し間違いが起こりにくくなっています。ここで顔を横に振ればキャンセルも可能。ちなみにコチラに尋ねる言葉が空耳で「ウソ?」とか、「エロ?」と聞こえるんですけど、そのたびに「うん、エロ!」とうなずいてしまうのは私だけでしょうか

いざ、扉の向こうへ……と場面が切り替わるとき、突如としてたくさんのモニターが並ぶ光景が広がりました。映っているのはカティアと車イスで運ばれている自分!? どうやら監視カメラの映像らしく、何者かが私たちを見張っているようです。「おっ、この事態を仕組んだ黒幕がさっそく登場か!?」と思ったのも束の間、監視部屋を自分視点として見回していることに気づきました。「カメラに映っているのは私、でも監視しているのも私?」困惑していると、またカティアと私のサイドへ視点が戻ります。

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲監視部屋は特に操作できるものはないようです。しかし、不気味ですね

モヤモヤはひとまず脇へ置いておいて、新たな部屋を調べてみることにしました。部屋には鉄道模型とスイッチがふたつ。とりあえず、カティアに壁のスイッチを押してもらうことにしました。すると天井の一部が開き、タライがカティアの頭を直撃! カティアはしゃがみ込んだものの無事のようです。よかった……。まだ出会って間もないのにカティアへの親近感というか、身内感がかなり高くなっていることに自分でも少し驚きました。

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー
Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲「これ、ドリフのやつ!!」とわかった方は昭和生まれですね

もうひとつの鉄道模型側のスイッチを押すと、ミニチュア列車と連動してドアが開きました。「なーんだ、意外とほのぼのゲームなのかな?」と気持ちがいくぶん軽くなった私は、そのままカティアとつぎの部屋へ進むことに。先ほど調べたタライのドアも気になりますが、どちらかに進んだら引き返せない仕組みのようです。これがルート分岐となっているんですね。
つぎなるステージは床一面にレールが敷き詰められた“鉄部屋”でした。「これはレールの分岐点を変えて、走る列車を導くヤツね!」と、ミニゲームでもプレイするような気軽な感覚で手近なスイッチを押してみることにしました。するとミニチュア列車が出発進行! さて、このあとどうしようかと思った矢先、スイッチを押した直後のカティアの上にストンと何かが落ちました。それは枷で、彼女の首と腕を固定しています。もがくカティアですが、その場から動けずに脚をジタバタするばかり。そのあいだにも列車はどんどん進んでいきます。頭はもうパニックで、とにかく良くない状況だということしかわかりません。なす術もなく走り続ける列車をぼんやり見ていると、ここでようやく列車に十字槍のような刃物がつけられていて、張られたロープをいままさに切ろうとしていることに気づきました。

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲何かしようにもカティアは動けない、私も動けない。見ているだけがこんなに辛いとは……

ギリッギリッと刃物とロープが擦れる音。つぎの瞬間、ロープから解き放たれ、スラリと降りてくる大きな刃が視界に入りました。ぐったりと動かなくなったカティア。彼女が首を突っ込んでいたのは、ギロチンでした。「守れなかった、何もできなかった」と悔やむ間も与えず、列車はまた別のロープに差し掛かります。木枠が私を挟むように倒れてきて、その溝を伝って一直線に枷が落ちてきます。そして、金属が滑るような音が勢いよく近づいてきて……。思わず身を固くし、目をつぶってしまいました。
ここで画面も暗転するのですが、ゲームオーバーというより一巻の終わりという言いかたがしっくり来る感じで、脱力感のあまりにしばらく呆然としてしまいました。画面にまた例の監視部屋が映し出されましたが、映像には血のように赤い液体が注がれる器が。これが一体何を意味するのか、気になるところではありますが……?

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー
Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲写真の器は赤い液体が何度も注がれた時点のもの。つまり、ステージでの失敗を重ねた状態です。器がいっぱいに満たされたらどうなるのでしょうか

自分の安易な指示でカティアを犠牲にしてしまった……。よく見ればスイッチの周囲には血の跡があり、危険であることも気づけたはずなのに。これは考えすぎかもしれませんが、ゲーマーがかかりやすい罠にも思えました。というのも、こういったダークなテイストのゲームでは背景を血痕などで汚していることが多いですよね。それに慣れてしまったがゆえに血も装飾の一部と思い、注意を払わなくなったのではないでしょうか。もうひとつ、列車の進行に合わせてレールをつぎつぎ置いていくパズルゲームだと早とちりする罠。今回、私が「とりあえず動かしてみよう」と思ったのもこれが原因でした。本作がギミックを正しくセットしてから、仕上げにドアスイッチを押すスタイルなのだと理解できただけ収穫かもしれません。
また、ここは本作の仕掛けの恐ろしさをまざまざと見せつけられたステージでもありました。カティアがギロチンの枷に囚われてからすぐに刃が落とされては、プレイヤーとしても何が起こったのかわからないままだと思うのですが、列車の走行時間が状況を理解する時間として設けられているんですよね。これから起ころうとしている惨劇を想像して、さらに不安と恐怖が募ります。そのうえで、プレイヤーがカティアなしでは何もできない絶望を植えつける。しかも先に彼女の最期を見せられることで、自分がどう処刑されるのかを理解させる……。何重にも張り巡らされた恐怖のための段取りが恐ろしい! 
さて、リトライではひとつまえの分岐部屋が選べたので、気を取り直して今度はタライで開いたドアからつぎの部屋へ向かってみることにしました。この部屋にはボタンの並ぶ台座がふたつ。「ははーん、壁の絵と同じところを点灯させればいいのね」と、さっそくカティアに指示を出します。

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲視点での操作は細かい部分を指定できて便利!

そうしてパパパッと並びを揃えて自信満々になっていると、ゴゴゴゴゴと音を立てて奥の天井からトゲトゲつきの分厚い鉄板がつぎつぎに落下! 1枚1枚、こちらに迫るように落ちてきます。叫び、必死に逃れようとするカティアを見ても「うそ、どうして!」と状況に頭が追いついていきません。そうこうしているうちにカティアの姿が視界から消え、悲鳴も聞こえなくなり、目のまえが鉄の塊で塞がれます。自分の頭上を見上げると、トゲの1本1本がよく見えました。「わあ、ドリル状だったんだね」なんて、あまりにも絶望的な光景にそんなことしか考えられなくて……。これはあとからですが、直前の部屋でのタライはこれを暗示していたのだと気づきました。

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー Last Labyrinth エンタメステーションレビュー
Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲もっと慎重になればよかったと、またもや自責の念に駆られつつリトライ。ちなみに部屋はスケッチブック風のメニューから選べます

先ほどの反省を活かし、トゲトゲ部屋を突破……したのですが、直前まで正解かどうか不安にさせる演出にタダでは通さないぞという開発陣の執念を感じました。これは誉め言葉ですが、人が悪いなあと。そんな思いをして抜けた扉の先は、美しい海岸でした。

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲切り立った断崖ですが、青い空と海は解放感たっぷり!

しかし、これはエンディングではなく単なる到達点。理屈はわかりませんが、またカティアとともに館の同じようで異なる部屋に飛ばされ、再び脱出を試みることになります。ループとは少し異なりますが、さまざまな部屋を通過し、断崖に出て……というサイクルをくり返すことになるのです。ちなみにこの崖のシーンはひとつではありません。ここで起こる出来事は予想だにしないことばかりで、まさかカティアがあんなことをするなんて……と、いろいろな感情が渦巻く場面でもあり、何を信じたらいいのかわからなくなることもありました。
それとはまた別に、部屋を突破し続けた先である条件を満たすと見られる、いわゆるノーマルエンドのなかにはさらに困惑する場面もあり……。先ほどの血の器や監視部屋なども含め、謎が散りばめられているのも本作がプレイヤーを惹きつける要素のひとつですね。ほかにも誰かとあれこれ考察を話し合いたくなるシーンがたくさんありました。

誰かに話したくなる謎と巧妙な恐怖演出

謎といえばゲームを進めると登場する、正体不明の仮面の人物“ファントム”も気になる存在です。素顔を隠しているうえに何もしゃべらないので表情や目的などは一切わかりませんが、どうやらプレイヤーとカティアを敵視しているようです。ファントムはたびたびプレイヤーのまえに現れ、ときには勝負を強要することも。

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲ファントムの異様な佇まいに「ヒッ」と声をあげてしまいました……

とある場面では強制的に“どうぶつしょうぎ”をさせられます。操作は駒をレーザーで指定してから置くマスを示すだけで、実際に動かすのは相手がやってくれます。ここでの勝敗がカティアやプレイヤーの運命を左右することに……!? ちなみに、どうぶつしょうぎは子どもや初心者の将棋入門として、女流棋士の北尾まどか氏によってルールが考案され、元女流棋士の藤田麻衣子氏によってデザインされたものです。今回、本作とのコラボが実現しました。もともと私は将棋が指せないうえ、どうぶつしょうぎも本作で初めて触れたのですが、これがとっても楽しかった……! 駒の動ける方向が目で見てわかるし、マス目も少ないのでとっつきやすい。でも、やっぱり王将であるライオンを捕まえるのは一筋縄ではいかないところが、将棋を指していると実感できてイイんですよね。これがこんなにヤバい勝負でなければなあと何度思ったことか。盤の左手に見える注射には何が入っているのでしょうね……?

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲命がけの緊迫した状況で、ほんわか可愛いイラストのどうぶつ将棋で戦うというギャップがすごい

本作の恐怖演出は、そのバリエーションの幅広さも目を見張るものがあります。痛いとか辛いとか、人間が嫌がるであろうことは本作でひと通り体験できるのではないかと思います。精神をえぐる系もお手の物で、ファントムとのどうぶつしょうぎ戦で負けたペナルティは本当に「無理、無理、勘弁してええ!」と半ベソでした。ファントムの近づきかたがまた怖いんです。仮面からの圧もすごくて……。これは奥行きを感じられるVRの強みをうまく活かしているとも言えますね。ほかにも高低差を意識させるステージなどもあり、さりげなくプレイヤーの感覚に訴えかけてくるのが巧みです。そのおかげかテレビモニターでプレイする一般的なゲームよりも、何倍も気力・体力が削られているような気がします。

Last Labyrinth エンタメステーションレビュー

▲足場が崩れてあわや! よく見るとプレイヤーの足下も格子状で下が透けて見え、底がうかがえない深さにゾッとします

ふと、演出が体に影響を与えるのなら、体のほうからもアプローチしたらどうだろうと考えた末、なんちゃって緊縛プレイを思いつきました。緊縛といってもズボンのベルトやヘアバンドなど、身の回りにあるもので軽く体を締めつける程度ですが、これがものすごい臨場感を生み出すのです。実際は全然動けるし、自分で簡単に外せるのですが「動けない!」と身をよじってしまう不思議。ちなみにおすすめの部位は両足の太もも、それと二の腕あたりから胸部をぐるっと1周するのもいいですね。メッシュタイプのベルトだと留める位置の調整がしやすいですよ。我が家では伸縮するランニングポーチなども使いました。ただし、転んだりしないよう座ってから装着するなど、安全には十分注意のうえ試してみてください。
話が少し脱線してしまいましたが、本作は全力でプレイするに値する一本です。振り返ってみると、謎解きは脱出ゲームに慣れた人でも苦戦するであろう高めの難度でした。難易度調整もできませんし、ヒント機能などもありません。また、プレイヤーがこんな状況に置かれたことや、カティアやファントムのことを知るには何度かプレイを重ね、ある条件を満たしていく必要があります。ですが、それでもプレイ中は「カティアを守りたい、その先にある物語の秘密を知りたい」と加速度的にのめり込んでしまいました。正直に言うとマルチエンディングのなかで自分にとって一番いいと思われるエンディングを迎えても、自分のなかで答えが見つかっていない謎がいくつかありました。ゲームとしても「これはこう」とハッキリ明言しているわけではないので、プレイヤーそれぞれの解釈でいいのだと思います。ただ、本当に最後まで驚きを用意してくれているゲームでした。一番いいと思われるエンディングでしたが「えっ!?」という衝撃は、皆さんの目と耳と体で確かめていただきたい……! 事の詳細をお伝えできない代わりに、プレイの3つのポイントを伝えて締めくくりたいと思います。
体力・精神が削られたら無理せず休憩すること、休憩がてら仕掛けをメモに書いたりして考えてみること、休みつつも何度も勝負を挑んでみること。これらを少し気に留めていただきつつ、驚きのエンディングを目指してみてはいかがでしょうか。

フォトギャラリー
Last Labyrinth ロゴ

■タイトル:Last Labyrinth(ラストラビリンス)
■メーカー:あまた株式会社
■対応ハード:PlayStation®VR、HTC Vive、Oculus、Windows Mixed Reality Headset、VALVE INDEX
■ジャンル:VR脱出アドベンチャーゲーム
■対象年齢:17歳以上
■発売日:発売中(2019年11月13日)
■価格:ダウンロード版 3,980円+税~ ※配信ストアによって異なります

『Last Labyrinth』オフィシャルサイト

©2016 AMATA K.K. / LL Project