Review

過去から紡がれた物語の行く末『シェンムーIII』では何が体験できたのか!?

過去から紡がれた物語の行く末『シェンムーIII』では何が体験できたのか!?

2019年11月19日に発売されたアクションアドベンチャーゲーム『シェンムーIII』。未完の大作と呼ばれた本作は、世界各国に存在する熱烈なファンがバッカーとして支援したクラウドファンディングにより、18年という月日を経て堂々と完成した。前回の記事では、これまでのシリーズから変更された箇所や追加された要素をピックアップして紹介。続く今回は、ファンが待ち続けたストーリーの行方をネタバレにならない範囲内で触れ、主人公・芭月涼がどのような旅を続けていくのか伝えたい。

文 / クドータクヤ


父がここにいた証を辿る旅

「最期は武術家らしく死なせてやる」と目の前で父・巌を殺めた謎の男・藍帝への敵討ちを決心して幕を開けた涼の物語。壮大なストーリーは横須賀を飛び出し、香港や九龍城、そして岩山や大河といった自然が広がる中国・桂林に移り変わっていったが、『シェンムーIII』では小さな集落が連なる白鹿村(はっかそん)が舞台となる。涼からすればたった一日だが、我々プレイヤーにとっては18年ぶりに進み出す新章は、「私の役目は終わった」という置き手紙を残して行方不明となったヒロイン・莎花の父親探しからスタートする。一方、平和で穏やかな村には似つかわしくない“ゴロツキ”たちが姿を表すようになったと同時に、莎花の父と同じ石彫師たちが次々と襲撃されていることを知った涼は、村人たちに話を聞き、その糸口をつかんでいく。序盤は買い物や薬草集め、道場での修行、薪割りのアルバイトやギャンブルといったお金稼ぎなど、進行に沿う形で『シェンムーIII』のチュートリアルが設けられているため行動範囲も狭く限られている。しかし、情報探索を進めていくなかで徐々に展開は広がっていくので、まずは焦らずに「シェンムー」の世界にゆっくりと浸ってみてほしい。

シェンムーIII エンタメステーションレビュー
シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲突如として現れたゴロツキたちからの襲撃、いちゃもんに手を焼く村の人々。さながら刑事ドラマのような聞き込みを続け、核心に迫っていく緊迫感と演出もシリーズの醍醐味だ

シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲横須賀でも近所の子どもたちから”涼兄ちゃん“と親しまれていたが、懐かれやすいのは異国の地でも相変わらず。しかし、ときには大きなヒントへの手がかりに繋がることも

「シェンムー」シリーズといえば、街や村の人々から情報を集めていくのが基本的な流れとなっているが、涼に大きな手がかりを与える重要人物との出会いも欠かせないファクターだ。なかでも巌や鏡のことを知る人物と出会うことで伏線が回収される演出は、線で繋がれた点と点が大きな絵となって浮かび上がるような期待を持たせてくれる。芭月家に隠されていた“龍と鳳凰の鏡”には清王朝の財宝に至る手がかりが秘められていることや、藍帝が巌を手にかけた理由も涼と同じ“復讐”だということが明かされたが、特に『シェンムーIII』ではこれまで以上に”巌の過去“に触れるシーンが多く、巌のことを知る武術家や拳法家に対して「親父を知っているんですか?!」と涼が発するたびに、ついついこちらも嬉しくなってしまう。いまは亡き遠い存在となった父の知られざる一面を涼とともに追体験することで”たしかにそこにいた”という、時代を超えたつながりを目のあたりにできるだろう。

シェンムーIII エンタメステーションレビュー
シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲樹木についた拳の跡や多くの武術家が足を運ぶというお寺で、かつて巌がこの地に訪れていた証を目にする。絵馬に書かれた茜という名前はいったい?

シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲古めかしい写真のなかに、龍と鳳凰の紋章を見つける涼。写っている人物の衣装を見るかぎり、最近のものとは思えないが……

シェンムーIII エンタメステーションレビュー
シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲巌のことを直接知る拳法家たちとの出会いは父の過去を知るだけではなく、”武術家としてあるべき姿“や技の伝授など多岐にわたる

シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲涼にクンフーを積ませるため、シナリオにはいわゆる負けイベントも用意されているほか、敗北時には「道場で修業してくるんだな」と敵から気遣われる(?)ひと言が余計に悔しさを募らせる

再会が織りなす物語

『シェンムー 一章 横須賀』ではストリートギャングのマッドエンジェルス、『シェンムーII』ではチャイニーズマフィアの黄天会を相手にしてきたが、本作ではレッドスネークと呼ばれる一味を追う涼。ストーリー中盤からは、歴史を感じさせる建物の数々が大河に面した港町・鳥舞(ちょうぶ)の地に足を踏み入れる。屋台や商店がズラリと並んだ通りの奥には勾配の激しい岩山を切り開いて作られた街も繋がっており、見た目以上の密度と広大さに驚かされる。のどかな田舎だった白鹿村から一変、どんな出会いと発見が待ち受けているのか……。見知らぬ地を進む不安よりも、華やかな街並みに寄せる期待が押し寄せてくる。
鳥舞は賑やかな街ゆえ”誘惑”も多く、どちらかといえばストーリーよりも“「シェンムー」における遊びの幅“を広げるために用意されたような印象を受けた。ざっと挙げるだけでも、白鹿村のゲームセンターでは稼働していなかったビデオゲーム、街中に点在するスマートボール屋、無数に並ぶ屋台での買い物、アヒルの手づかみといったアルバイトなどがそれにあたる。アルバイトといえば、『シェンムーII』では残念ながらオミットされてしまったフォークリフトでの荷物運びが復活したことを触れないわけにはいかない。荷物を指定の箇所に運んで下ろすだけの単純なものだが、”ゲームのなかでフォークリフトを操縦するアルバイト“という内容は「シェンムー」における語り草のひとつとなっている。資金に困った際は、未経験者でもOKなアルバイトにチャレンジしてほしい。

シェンムーIII エンタメステーションレビュー
シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲白鹿村を離れ、船に乗ってはるばるやってきた鳥舞の街。夜になると星空と夜景が相まって、より一層輝かしく見える

シェンムーIII エンタメステーションレビュー
シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲本編そっちのけで働き詰めの日々を送りながら、新横須賀港で過ごした日々を思い出しているプレイヤーも少なくないだろうフォークリフトのアルバイト。募集チラシを見た涼の反応も心なしか嬉しそう?

シェンムーIII エンタメステーションレビュー
シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲制限時間内に放し飼いのアヒル10羽を手づかみで捕獲するアルバイトは、画面に表示されたボタンを入力する”QTE(クイックタイムイベント)“の練習にもなる

シェンムーIII エンタメステーションレビュー
シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲鳥舞のゲームセンターでは、「シェンムー」シリーズのディレクター・鈴木 裕氏が手がけた対戦格闘ゲーム『バーチャファイター2』をコミカルにオマージュした『チョウブファイター』なるゲームもプレイ可能。「10年早いんだよ!」というボイスが聞こえてきそうだ

シェンムーIII エンタメステーションレビュー
シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲白鹿村以上に多く設置されているグルッパ(ガチャガチャ)の数々。各種類をセットで集めると、質屋で高額買取してもらえるが、涼のクンフーにつながる技書と交換することもできるのでついつい熱中してしまいがちだ

シリーズ3作目ともなれば新たな出会いだけではなく、香港で知り合った仲間との再会にも期待したいところだろう。特定名は伏せるが過去作を遊んだことがあるプレイヤーであれば、鳥舞に着いてからほどなくして「おぉっ!」と思うような人物が涼の眼前に現れる。江戸っ子のようなべらんめぇ口調は相変わらずで、龍と鳳凰の鏡には財宝の秘密があることを知った途端、”金の匂いがする“涼の行方を追ってきたようだ。かつて九龍城では敵の罠にかかってしまい、ふたりで手錠を繋がれたまま過ごした過去や、水と油のように相反する性格ゆえにガミガミとぶつかりあった日々を思い出しながらぜひ楽しみにしてほしい。また、涼が寝泊まりするホテルで売られている国際テレホンカードを購入・使用することで、横須賀や香港にいる知人・友人たちへ電話をかけて近況報告することも可能だ。声だけとはいえ、涼の旅に関わってきた人物たちと会えるのもファンにとっては嬉しいポイントだ。
ただし、再会のすべてが喜ばしいものではない。憎き藍帝もまた本編のどこかで相まみえることとなる。前作ではヘリコプターで逃げられてしまったが、今作ではその姿と対峙し、ついに一矢を報いることになるのだが……。その拳を正義のために振れる日が来るよう、日々の修行は怠らずに鍛練しておきたい。

シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲街中で暴れまわるレッドスネークたちに困惑している鳥舞の人々。いますぐ奴らに鉄拳制裁をお見舞いしたいところだが、まずは普段どこにいるのかを調査しなければ……

シェンムーIII エンタメステーションレビュー
シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲カナダへ旅立った同級生の原崎、一緒に横須賀から香港に来るはずだった燕青拳の使い手・貴章、香港で出会ったおせっかい焼きのジョイ、涼に恋心を抱くファンメイに電話で近況報告。変わらずに過ごしていることにホッとできるひとコマだ

シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲喜ばしくない再会となるのが、『シェンムー 一章 横須賀』で涼のことをさんざんつけ回してきたチャイ。不気味な風貌と「クケェー!」という口癖を見聞きした瞬間、「またお前か……」と思わずにはいられなかった

シェンムーIII エンタメステーションレビュー シェンムーIII エンタメステーションレビュー
シェンムーIII エンタメステーションレビュー

▲クライマックスには、チャイニーズマフィア・蚩尤門(しゆうもん)の面々が待ち構えるアジトに乗り込み、ついに藍帝と対峙! 涼の正義と復讐を含んだ戦いの結末やいかに……

18年ぶりに涼を動かせたことの感動、見知らぬ白鹿村や鳥舞の街を駆け抜けられたことに対する喜びに嘘偽りはない。ただエンディングに達したとき、ストーリーの進行度にやや物足りなさを感じてしまったのも事実だ。ディレクターの鈴木 裕氏は「『シェンムー』の物語は本作では完結しない」と公言しており、そして「ストーリーを追うだけが『シェンムー』ではない」とも述べている。クリアだけを目的にパパっと遊ぶだけではなく、時間をぜいたくに費やし用意されたさまざまなサブ要素も併せて楽しむことが、「シェンムー」という世界とゲームを余すことなく堪能できる術であることも重々承知している。そういった意味では、この『シェンムーIII』のデキになんら不満もない。ただ……しかしというべきかやはりというべきか、ストーリーなくして「シェンムー」に非ずという思いもついつい出てしまう。回想シーンは数あれど、過去2作で敷いた伏線は回収されていないものも多く、新たな出会いも”一時的なもの“に過ぎなかったように思う。そして全体を通し、涼自身の旅も大きな一歩と呼べるものではなかったのがただただ惜しい。また、手をかざすだけで咲き誇るタンポポの綿毛を飛ばすという魔法のような能力を見せたシェンファだが、今作では瞳の奥に秘められた何かを見せたことでゴロツキの人格を一変させた。しかし、その謎や能力がいったいどういうものであるのか、明かされることは一切なかった。しかし18年も待つことができたのだから、この夢の続きを『シェンムーIV』という形でまた見られる日が来ることを信じたい。

フォトギャラリー
シェンムーIII ロゴ

■タイトル:シェンムーIII
■メーカー:Deep Silver
■対応ハード:Play Station®4、PC
■ジャンル:アクションアドベンチャー
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2019年11月17日)
■価格:パッケージ版・ダウンロード版 各6,980円+税


『シェンムーIII』オフィシャルサイト

©Ys Net Original Game ©SEGA Published 2019 by Deep Silver, a Division of Koch Media GmbH, Austria.