LIVE SHUTTLE  vol. 382

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SYNC-BEATからsync paradeへの進化――。accessが全国ツアーで魅せた光輝く音のパレードをリポート。

SYNC-BEATからsync paradeへの進化――。accessが全国ツアーで魅せた光輝く音のパレードをリポート。

access TOUR 2019 sync parade
2019年11月23日 舞浜アンフィシアター

堅苦しいだけではなく、かといって単なるパーティーだけでもない、痛みも幸せもある、挫折も希望もある、パレード

平成から令和への改元を跨いだ春ツアーが〈ELECTRIC NIGHT 2019〉。続く秋のホールツアー〈sync parade〉は、いわばaccess令和宣言。それは新時代へ、新世界へ、飛び出そう! というメッセージ。新しい明日におびえて立ちすくむより、さあ、飛び出そう! きっと未来は、両手を広げ、君を待っている! そう伝えたかったのではないだろうか。

LEDスクリーンの中、騎士団が掲げるような旗が揺れる。行軍(騎士団のパレード)の絵が浮かぶマーチングドラムが響く。そう、この日のライブは、シンク・キングダムとも言うべき空間。城門が開き、パレードを先導するべく赤と青、二人の王子が登場!

赤は深紅、深紅はsync、ということか、浅倉大介。一方のSCANDALOUSなBLUEが貴水博之。1曲目は「Winter Ring Affair」。寒いのに熱い曲。寒い季節の熱いラブストーリーだ。オリジナルアレンジより粉雪度は控えめ、情熱度が高めに聴こえた。「CATCH THE RAINBOW」では、浅倉の指が鍵盤を叩くと、シンセサウンドが炸裂。まるで指先がスパークしているようだ。貴水は歌いながらもスマートに体をひるがえらせる。浅倉が放つ音の隙間を軽やかに縫う。まるで流星群を軽々とすり抜けて飛ぶモビルスーツ。そして、浅倉から放たれ、貴水がすり抜けた音の流星たちを、観客がひとつひとつキャッチし、客席は七色の光で輝く。これまさにCATCH THE RAINBOWそのもの。

挨拶をはさみ、音のモザイクともいえる「Crack Boy」へ。浅倉により削り出された音の破片たちが、浅倉により組み合わせられ、未来的な光景を描き出す。曲中の浅倉のソロは、シンセサイザーでしか鳴らせない音。自然界には存在しない音。オーディエンスの脳の中枢に刺さるよう精製されている音。快感ホルモンことドーパミンが噴き出す。

かつてシンセサイザーの音は、機械的で冷たいからと、拒む音楽家もいた。しかし、今や皆無だ。もしもこの時代にそんなことを真顔で言う音楽家がいたら、化石扱いか、類人猿扱いされる。大事なのは、ギターやドラムなど、古い音が幅を利かせていた昭和から、浅倉は令和の現在を予見していた事実。シンセサイザーに迷いなく没頭していた現実。つまり、彼の慧眼は、疑う余地がないということ。ゆえに現在、彼が見ている未来の精度は高い。その未来予見図を音で描いてみせてくれているのである。深紅のプリンスは、電気仕掛けの預言者だ。

「瞳ノ翼」「SENSUAL GLIDE」を続ける。1曲ずつ、感情をコントロールし、丁寧に歌う貴水が印象的。春恒例のELECTRIC NIGHTツアーでは、ぶちかます!勢いを前面に押し出していたが、この秋ツアーは、どこかに余裕を秘め、自らを制御している。クラブツアーは実験場、ホールツアーはショー、この違いを体現しているといってもいい。クラブツアーは混沌の美、ホールツアーは均衡の美ということかもしれない。

また、「SENSUAL GLIDE」は、今回のセットリスト中、浅倉がもっとも多くの時間を費やした曲の中の1曲だそうだ。こんな場面を目撃した。終演後、浅倉の楽屋前。あるシンセサイザーマニアが熱く言った。「5曲目のキックが今日イチで刺さりました」。浅倉が笑顔で応じた。「あの曲、今回、結構大事だったんだよね」。ことほどさように、浅倉は煌びやかな音や華やかなパフォーマンスの裏に、マニア同士でしか通じない隠語にも似た音を忍ばせている。だから、accessは誰もが自分なりに楽しめる。掘れば掘るだけ楽しめる。

聖歌隊を思わせるコーラスに導かれて始まったのが「TRY AGAIN」。LEDスクリーンの中、希望と夢が昇天して行く。が、清らかな時間、美しいメロディー、それだけで終始しないのがaccess。サビ前から重低音が入る。脳を愛撫し、ドーパミンを噴出させる重低音だ。聖なる祈りのメロディーの底でそれは鳴る。さらに2コーラス目になると、貴水のボーカルと浅倉のシンセサイザーがデュエットを始める。それぞれのメロディーを歌い出す。一筋縄ではいかない。変幻自在である。

曲ごとに、幸せ、ヤル気、悲しみ……さまざまな色合いの濃淡をつけて歌っていた貴水が、「Fairy Snow」を淡い幸福色の声で歌う。貴水の声に呼応したのか、浅倉がキーボードで「ジングルベル」のメロディーを差し込んだ。Happy Xmas! 「DECADE&XXX」の貴水の声と表情は、華やかさを増した。切ないメロディーなのに、ここはあえての華やかさなのだろう。これもきっと冒頭に書いた宣言を伝えるためだ。「TEAR’S LIBERATION」では、1曲ごとに自分なりのテーマを持ち、それを表現する貴水の姿勢がさらに鮮明になる。

晴れ晴れと歌う。<歌う>より<謳う>のほうが似合っている。ショルダーキーボードでステージ上を駆け回る浅倉に駆け寄り、貴水から肩を組み、晴れ晴れとした表情で♪Open Your Heart! 新しい時代におびえて、立ちすくむことなく、飛び出す秘訣がここでも歌われていた。

前半の締めは「MOONSHINE DANCE」。accessのコンサートではお馴染みの1曲。サビで貴水が客席にマイクを向けると、♪MOONSHINE DANCE……シングアロング。浅倉のソロが始まると、貴水は軽やかに踵を返し、ステージ後方のギタリストに歩み寄る。ステージの主役を浅倉に委ねるわけだが、このときの後ろ姿が素晴らしくイカしていた。もしも筆者がビデオ監督だったら、ここでの貴水のバックショットは、絶対に使いたい。

メタリックシルバーのコートの裾を翻らせ、急ぐでもなく、踏みしめるでもなく、あるいはセンターを譲るという傲慢さは微塵もなく、ライトから隠れるというわざとらしさも一切なく、ましてや大きなアクションもなく、主役を浅倉にパスした。accessでしか見られない貴水だ。なぜなら、ソロの場合、常にセンターをキープしなければならないから。たとえ舞台脇に行こうが、後方に下がろうが、センターの意識をなくしてはならない。ところがaccessでは、お互いがお互いのサポートを務める瞬間がある。昨今、流行の言葉でいうなら、ONE TEAMの精神となるのだろうか。

中盤は、バラードの「grand muse」から。浅倉は、七色の音を操り、貴水は、この日初めてマイクスタンドを使った。バラードが続く。「Shadow over the world」。片や♪夜の闇に彷徨う舟……永く険しい夜明けの向こう……。片や♪飛び交う銃弾……愚かさを繰り返して……。どちらのバラードからも、もろ手を挙げ、現実を肯定しているわけではない言葉が聴こえてくる。それでも未来へ進む、それでも未来を信じると、音の隙間から、歌の合間から希望がにじみ出る2曲だ。

特に「Shadow over the world」は、LEDスクリーンの中、ロウソクの灯が揺れ、祈りのバイブレーションが強調されていた。重箱の隅かもしれないが、浅倉のキーボードだけで貴水が歌った1コーラス目のサビの冒頭、♪What‘s in your heartのさらに冒頭の<wha>、ここに奇跡を聴いた。苦しみの谷に張られた希望という名の綱を渡る声。枯れそうで枯れないギリギリの声。思うに、貴水自身が狙って再現できない声。しかし、一瞬で心を射抜かれる声。これぞライブの醍醐味のひとつだ。

バラードの余韻を浅倉のキーボードソロが受け継ぐ。新たなアイテムRoland GROOVEBOX MC-707を駆使し、リアルタイムでシーケンスを組み上げていく。浅倉のソロコンサートやaccessのステージでは、お馴染みの光景かもしれないが、我々は世界唯一の音楽パフォーマンスを目撃しているのである。贅沢であり、豪華である。アーティスティックであり、クリエイティヴである。脳の中にある、イマジネーションを司る前頭葉に直接電流を流される感覚だ。そこにある種の儀式性を重ねるなら、バラードから浅倉ソロまでの中盤は、シンク・キングダムの教会の場面だったのかもしれない、とイマジネーションが膨らむ。ならば、浅倉ソロでボコーダー(人間の声をシンセサイザーで加工するエフェクト)が使われた意味も自ずと見えてくるだろう。

このシリアスな時間からの『access Channel』。赤いマリオの衣装の浅倉と緑のルイージ衣装の貴水。この落差も彼らならでは。さまざまなスポーツ体験ができる施設を訪れ、バッティングセンターやボルダリングなどにチャレンジする二人がおかしい。

後半は、令和になって初めて作った曲「Sync Parade」。春ツアー終盤では、まだ歌詞がなく、ラララで披露されたが、舞浜アンフィシアター公演からは、歌詞入りで公開。「Heart Mining」は、唯一、二人の振り付けが決まっている曲。ダークなライティングの中、歌詞も鮮明に飛び込んでくる。♪争いや奪い合いで訪れる未来に明日はない……。これも冒頭に記したメッセージの一環に思えてくる。さらに妄想を加速させると、実はsync paradeツアーは、前年のHeart Miningツアーのシーズン2だったのかもしれない、とも思えてきたり……。

後半の山場は、「Vertical Innocence」「OZONE,IN THE NATIVE」「永遠dive」。貴水の特別なスイッチが入る。エモーショナルなボーカルを大解禁。客席もアドレナリンが大噴出。ステージ上も客席もひとつになるパレードだ。「OZONE~」では、ギターを抱えた浅倉がステージ中を駆け回る。「永遠~」では、イントロでキャノン砲。浅倉がレイヴ的なフレーズを連打。貴水がタオルを高速旋回。あまりの熱気に、曲の途中、浅倉が首元のリボンを解いて投げ捨て、シャツのボタンを胸元まで開けた。Wild & tough!!

貴水が「一緒に歌おう!」と呼びかけたのが本編ラストの「Grateful Circle」。♪Fly to the grateful world~。ここに冒頭に書いた宣言の精神が集約されている。シンク・キングダムのアンセムという位置づけか。この曲をめがけて進んできたパレード(コンサート)だったのだろう。

アンコールはMCから。舞浜は、場所柄、浅倉の「ソアリン(ファンタスティック・フライト)行った?」の問いかけからスタート。「行った!」と、何人かが答えると、「ざーけんなよー」と、悔しまぎれの返答(笑)。自分で聞いたのに……。しかし、夢の国にさほど興味のない貴水は、「何?ソア……」と、キョトン。浅倉と観客がスルーしかけても、食い下がる。「あ、あれね。スモール何とかみたいなやつ? ボートに乗って模型を見て回る」。この現実的な発言に、観客の半分以上が「あーあ」と、大きなため息。この「あーあ」の中には、それを言っちゃあおしまいよも、ディズニーマニアに叱られても知らないよ、いろいろな気持ちが含まれていて笑えた。というか、accessファンの反応がいい味を出していた。センスいい。

そして、「Life goes on」「S-MILE GENERATION」で締め。堅苦しいだけではなく、かといって単なるパーティーだけでもない、痛みも幸せもある、挫折も希望もある、パレードだった。これなら12月30日と31日の、豊洲PITでの追加公演も期待できる。令和元年を締める華やかかつ意味あるパレードになるだろう。

取材・文 / 藤井徹貫
撮影 / 田中和子(CAPS)
※写真は10月27日に行われた中野サンプラザ公演のもの。

access TOUR 2019 sync parade
2019年11月23日 舞浜アンフィシアター

セットリスト
1.Winter Ring Affair
2.CATCH THE RAINBOW
3.Crack Boy
4.瞳ノ翼
5.SENSUAL GLIDE
6.TRY AGAIN
7.Fairy Snow
8.DECADE & XXX
9.TEAR’S LIBERATION
10.MOONSHINE DANCE
11.grand muse
12.Shadow over the world
13.Keyboard Solo
14.Sync Parade
15.Heart Mining
16.Vertical Innocence
17.OZONE, IN THE NATIVE
18.永遠dive
19.Grateful Circle

EN1.Life goes on
EN2.S-MILE GENERATION

ライブ情報

access TOUR 2019 sync parade(追加公演)

12月30日(月)東京:豊洲PIT
12月31日(火)東京:豊洲PIT

access

浅倉大介(プロデューサー)/ 貴水博之(ボーカル)からなるユニット。1992年11月26日、「VIRGIN EMOTION」でデビュー以来、「MOONSHINE DANCE」「夢を見たいから」などヒット曲を連発。1994年には、3rdアルバム『DELICATE PLANET』でオリコン初登場1位を獲得し、その年の『NHK紅白歌合戦』にも出場する。1995年、一旦活動休止をするが、2002年、access再始動。以来、毎年全国ツアーを始め、シングルやアルバムもコンスタントにリリースするなど、精力的に活動している。

オフィシャルサイト
http://www.access-web.jp

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