HEATWAVE結成40周年企画  vol. 4

Interview

HEATWAVEが結成40年目に見た風景。一瞬の瞬きの中に凝縮された現在過去未来を貫いて届けられるメッセージ。ロックの原点と究極が詰まったアルバムについて山口洋に聞く。

HEATWAVEが結成40年目に見た風景。一瞬の瞬きの中に凝縮された現在過去未来を貫いて届けられるメッセージ。ロックの原点と究極が詰まったアルバムについて山口洋に聞く。

このアルバムは長谷川博一さんに捧げたというか、「あなたのおかげだよ」っていう

HEATWAVE 山口洋 エンタメステーションインタビュー

アルバムタイトル曲の「Blink」は?

アルバムにどうしても1曲足りないと思ってて、コンセプチュアルに作った。長谷川博一さんっていう俺の友だちが亡くなってしまった。彼は病気だったんだけど、それでも“善きこと”のために生涯を生きたという感じがあって。それが彼と俺が仲が良かったいちばんの理由だった。そのことを、40年が一瞬だったってことも含めて伝えたくて、2、3日で作って、パッと録音した。やっぱり、彼が死んじゃったっていうのは相当デカかったな……。「ウソだろ?」みたいな。俺は2週間ぐらい狼狽してたからね。「え?」みたいな気持ちと、「ふざけんじゃねえよ!」って半分怒ってる感じ(苦笑)。一緒にバンドをやってたわけじゃないけど、でもホントにバンドのメンバー並みに一緒に音楽をやってきた気持ちがあったから、彼がいない世界を想像したことがなかったので、ちょっとビックリした。このアルバムは長谷川博一さんに捧げたというか、「あなたのおかげだよ」っていう。彼がやりたかったことを、勝手に引き継いだというか。

「俺はこういうふうに死にたい」ということをキチッと伝えておくこと、それは今一瞬をちゃんと生きるということだから

HEATWAVE 山口洋 エンタメステーションインタビュー

3曲目の「Brotherhood」は?

これは細かくは語りたくないけど、まあブラザーフッドですよ。

そういう意味では長谷川くんにすごく近い?

長谷川さんでもいいし、渡辺(圭一)でもいいし。ホント、「お前らふざけんなよ!」って(苦笑)。まあ、俺の愛だと思ってくれれば。

4曲目の「Heavenly」は、アルバムの中でサウンド的にいちばんキレイだと思った。

それはねえ、グロッケンがどうしても頭の中で鳴ってたから、Amazonで子どものおもちゃのグロッケンを買って。あれを入れた瞬間に「あ、出来た」って思ったの。

5曲目の「君を超えて」は?

とにかくロニー・レインが草原で演奏してるみたいなイメージがあって。ここに出てくる人はホントにひどい人なんだけど、それを朗らかに歌ってる。悩まずにとにかく家にある弦楽器を全部弾き倒した。そしたらメンバーが完成品を聴いて、「こんな曲を演奏した覚えはない!」って言ってた(笑)。

後からマンドリンとかいろんな楽器をダビングしてったってこと?

そうそう、考えずにガンガン入れて「いったい何本、弦が鳴ってるの?」みたいな(笑)。ホントは別々の人が弾いてくれるのに越したことはないんだけど、そんな人がいなかったから、弾く人の性格を変えて録っていった感じ。

そして「私がこの世から消える日」は? 

これは1行目の♪私がこの世から消える日♪の詞とメロディが、もう何年も前から共にあって。♪東京シティヒエラルキー♪みたいにね。「そんな辛気くさいことを歌ってどうなるんだろう」って思ってたんだけど、あまりにも頭から消えないので、「もういいじゃん!」と思って、「よし、作ろう!」って。俺の中では、この1行目がある時点でもう曲は出来てたんだけど、でも仕舞いまでやってなかった。で、いろんな人が亡くなっていくというのが続いていて、「これはちゃんと作ろう」と思った。「俺はこういうふうに死にたい」ということをキチッと伝えておくということ、それは今一瞬をちゃんと生きるということだから。
これをライブでやったときに、「こういうテーマなのでアルバムに入れるか入れないか迷ってる」って言ったら、ライブを観てた人からたっくさんメールがきて、「入れてください」という意見が圧倒的で、「よぉし、わかったよ」って。

いいアクションをする人たちだねえ。

うん。

池畑さんを中心にバンドが成り立ってる。彼も魚ちゃんも国内では最高レベルの人たちだから

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7曲目の「ぜんぶイチからやり直せ」は?

どんとさんが昔、俺と一緒にやってくれた曲で、♪全部イチからやり直せ 生きるということを♪っていう、「あたたかい方へ」っていう名曲があるんだけど、それがずっと俺の中にあって。グジグジ言ってる連中に、「そんなにグジグジ言うヒマがあったら、イチからやり直しゃいいじゃん!」って俺は思ってて(苦笑)。それは、曲にしてお伝えしたほうがラクだなと。「やり直しなさいよ。遅すぎることなんかないよ」という。後悔するぐらいだったらやればいいじゃんって俺は思うのね。それをやってみせるっていうことが、俺に求められてることだと思うから。俺、ショーン・ペンの映画の音楽を作りたくて、今一生懸命アプローチしてる。届くかどうかわかんないけど、アプローチしなきゃ何も起きないわけだから。

僕はこの「ぜんぶイチからやり直せ」のドラムがいちばん好き。

池畑さん、また最近音数減ったからね。全然叩かないもんね。

叩かないドラマー(笑)。

(笑)みんな、勘違いしてるの。あの人は力まかせにぶっ叩いてるイメージがあると思うけど、あの人がスティック折ったのを1回も見たことない。ヘッドを破ったのも1回も見たことがない。全然力が入ってないから、しなやかなんだよね。池畑さんを中心にバンドが成り立ってる。あの人はステージで鳴ってる音を身体で感じて、瞬時に反応してるわけ。彼も魚ちゃんもそういう意味で言うと、国内では最高レベルの人たちだから。

8曲目の「コンプライアンス」は、コータローさんが「この曲のギターソロが好き」って言ってた。

あれは魚ちゃんが「弾きなさい」って。詞がシリアスなんだけど、それを表現するときにシリアスにやるのはヤダなあと思ってたら、何故か頭の中にキューバ音楽が鳴ってて。それで池畑さんに「これ、キューバなんですけど」って言ったら、笑ってたけど、ちゃんとクラベス(注:拍子木のようなパーカッション)を入れてくれた。

あのクラベスが、メチャ効いてる。

キューバ音楽は、クラベスの人が楽団のマスターなんだって。池畑さんが、「とにかくこれに合わせろ」って。池畑さんは俺がギター弾くとき、いろいろ言わないんだけど、この曲だけは「ギターはこういうふうに弾け」ってサジェスチョンがあった。彼、キューバに行ってたことがあるから。これは完全に似非キューバ音楽だけど(笑)、歌詞とのバランスが取れた。

生まれてきたってことには必ず役目があると思っていて、その役目に取り組めばいいじゃんって思う。結果なんかわからないけど、単にそれだけでいいじゃん

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9曲目の「Nothing or Empty」が、いちばん哲学的だった。

それはねえ、いろんな苦労をした宗教者の友だちが、nothingとemptyの違いについて俺に教えてくれたんだよね。

禅の世界だね。

そう。“無”と“空”は違うって。俺はずっと無に向けて来たんだけど、彼が空という概念を教えてくれたときに、「ワオ!」って思ったわけ。無なのか空なのか、そこを突き詰めると相当広大な視野が広がるっていう。俺はずっと無だと思ってたんだけど、「あ、違うんだ、emptyだ」って。

今、言ってる無は、パンクに近い。

そうだね。

10曲目の「Open」は?

家族って何なんだろうね。失ってみても、いまだにわからない。願わくば、自分が父と母の愛の産物であったらいいなと思うぐらいかな。家族を作るっていう意味がわからないからね。55歳だよ、俺。ははは! 早い話が子孫を残さないと、人としてダメだって言う人もいるけど、俺はそんなことじゃないっていう人生は送ってるわけだからさ。考えてるけど、いまだにわからない。後戻りするつもりもないしね。 

そして最後の曲「夢に取り組んでみよう」は?

生まれてきたっていうことには必ず役目があると俺は思っていて、その役目に取り組めばいいじゃんって思う。「取り組めよ! 俺もやるから!」って。結果なんかわからないけど、単にそれだけでいいじゃん。で、今も取り組んでるわけだけど。

それがウケるとかウケないとか、評価されるとかされないとかではないなっていう。

うん。自己憐憫の中にいる必要はないし、依存する必要もない。簡単なことだと思う。でもすごく責任もあるし、大変なことではあるんだけど、いつもそこに戻ってくる。♪夢に取り組んでみよう♪ってライブで歌ってて、「何、言ってんだ、お前」っていう“もうひとりの自分”がいるんだけど(笑)。

ははは! それはいたほうがいいよ。それがいなくなると、かなり危ないことになっちゃうんで。

危ないよね(笑)。ちゃんともうひとりの俺が聴いてて、「お前、大丈夫か?」ってバランス取ってる。でも、「それでいいじゃん」って言ってる自分もいる。なんか不思議な感じ。「なんでそんなこと歌ってるの?」っていう、両方だね。

作ったばっかりなのに、「いや、まだ死ねない」と思ったから。まだ行けるという感触が非常にあるので、とことんまで行ってみようとは思ってて

HEATWAVE 山口洋 エンタメステーションインタビュー

メッセンジャーらしいアルバムだね。

今、生きてていろんなものを受け取って、それをひとつの形にはするけど、俺が何かを作ってるわけではない。ただ編集してるだけ。で、幸いにしてギターを弾く能力には長けてるから、琵琶法師みたいにベロベロッと出てくるだけで(笑)。そんな感じかなあ。そんなに大したものを作ってるっていう気もないし。

そうすると、このアルバム自体がBlinkのようなものだったんだね、きっと。

んー、でもねえ、まだ出たばっかりなのに、これじゃ満足できないから次に行くと思う(笑)。

あはは!

作ったばっかりなのに、「いや、まだ死ねない」と思ったから。まだ行けると思うし、まだパフォーマンスは落ちてないって自分で思ってるから、引退するときではないと思う。まだ行けるという感触が非常にあるので、とことんまで行ってみようとは思ってて。

今、ライブは本当にすごいクオリティでやれてる。俺たちが積み上げてきたものは伊達じゃないよっていう(笑)

HEATWAVE 山口洋 エンタメステーションインタビュー

最後に、ツアー前半が終わりましたが、後半に向かっては?

今回のツアーは、ステージに上がった瞬間の期待感というのが、もう全然今までと違っていて。

お客さんの期待感?

うん。なんかねえ、「ついにイリオモテヤマネコ見たぞ!」みたいな、そんな感じがあるね(笑)。このアルバムを予約してくれた人に全部、宛名書いたから、これだけいろんな名前があって、ひとつひとつの名前には両親の気持ちがこもってて、ひょんなことで俺たちの音楽を聴いてくれて、人生に必要不可欠なものになっていて。しかも「ありがとう」って言われて。だからホントに感動した。俺もひとつひとつ手書きで宛名を書くということで、偉大なアマチュアに戻った感じがした。昔、DMとか自分たちでやってたからね。その感じを30年経ってもう一回やってみて、すっごい良かったですよ。
今、ライブは本当にすごいクオリティでやれてる。だからHEATWAVEを「10年観てない」とか「15年観てない」とか、そういう人に是非、騙されたと思って来なさいと言いたい。俺たちが積み上げてきたものは伊達じゃないよっていう(笑)。ホントに伊達ではないところまで行けているので、こんな演奏をするロックバンドはこの国においてはいないと思うし。はっはっは!(笑)ホントに来てほしいっすね。良くも悪くも、来てくれた人の人生に、何らかの変化というか、何かのヒントになると思う。

どうもありがとうございました!

ありがとう!

HEATWAVE 山口洋 エンタメステーションインタビュー

HEATWAVE OFFICIAL SHOP
https://heatwaveshop.stores.jp

ライブ情報

HEATWAVE 40th Anniversary Tour 2019

12月6日(金)  福岡 Drum Be-1
12月13日(金) 大阪 バナナホール
12月22日(日)東京 日本橋三井ホール

詳細はこちら
http://no-regrets.jp/news/2019/1110_tour_hw/


SMILEY’S CONNECTION~ノイズホテル TOKYO~

出演:フルノイズ(from 福岡)、山口洋(HEATWAVE)、百々和宏 with有江嘉典
12月8日(日)渋谷 LOFT HEAVEN

詳細はこちら
http://no-regrets.jp/news/2019/1208_live_loft/

50/50(山口洋+古市コータロー)
first tour 2020『俺たちの場所』

1月28日(火) 浜松 窓枠
2月4日(火) 神戸 VARIT.
2月14日(金) 仙台 CLUB JUNK BOX
2月19日(水) いわき club SONIC iwaki

詳細はこちら
http://no-regrets.jp/news/2020/0128_tour_5050/

HEATWAVE

山口洋(vocal,guitar)、細海魚(keyboard)、池畑潤二(drums)。1979年、福岡にて山口洋を中心に結成。以来アルバム14枚、ミニアルバム3枚、ベスト盤1タイトル、セルフカヴァー・アルバム1タイトル、BOXセット3タイトル、ライヴ盤7枚を発表。1995年発表のアルバム『1995』には、阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。2018年3月に渡辺圭一が脱退し、その後3人で新生HEATWAVEとしての活動を開始。バンド結成40周年となる今年、これまで以上に精力的に活動を行っており、11月10日高松からスタートしたHEATWAVE 40th Anniversary Tour 2019の前半戦が好評のうちに終了し、12月6日(金)福岡DRUM Be-1から後半戦がスタート。同会場から、スタジオ・アルバムとしては2年ぶりとなる新作『Blink』をいよいよリリース。ツアーファイナルは、12月22日(日)東京 日本橋三井ホール。山口洋は、来年1月28日から、古市コータローとのユニット50/50でツアーが決定している。

オフィシャルサイト
http://no-regrets.jp/index.html

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