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新海誠監督の映像世界を彩る音楽たち。RADWIMPSの『第70回NHK紅白歌合戦』でのパフォーマンスにも期待

新海誠監督の映像世界を彩る音楽たち。RADWIMPSの『第70回NHK紅白歌合戦』でのパフォーマンスにも期待

RADWIMPSが『第70回NHK紅白歌合戦』に出演することが決定。映画『天気の子』に提供した楽曲を『紅白』だけの特別バージョンで披露することが発表された。記録的ヒットとなった映画『君の名は。』に続き、RADWIMPSと新海誠監督のコラボが実現した映画『天気の子』は、2019年のエンタテインメントの話題の中心。NHK紅白歌合戦でのRADWIMPSのパフォーマンスも当然、大きな注目を集めるはずだ。
このコラムでは、新海誠監督のフィルモグラフィーを辿りながら、その映像の世界を彩る音楽について紹介したい。


1999年に発表された初の自主制作アニメーション『彼女と彼女の猫』、新海誠監督の評価を高めた『ほしのこえ』、初の長編作品『雲の向こう、約束の場所』、3編の短編からなる『秒速5センチメートル』、ファンタジー色の強い『星を追う子ども』の劇伴を手がけたのは、天門。新海監督と天門はゲーム会社の日本ファルコンに在籍していて、ゲームのオープニング映像を制作。その縁もあって、映画でもタッグを組んだとうわけだ。『ほしのこえ』の主題歌「THROUGH THE YEARS AND FAR AWAY(HELLO, LITTLE STAR)」)の歌唱を担当した“みずさわゆうき”(Low名義)も同じゲーム会社時代の同僚。初期の新海作品には、ゲーム会社時代のチームワークが作用していると言えるだろう。

『秒速5センチメートル』の主題歌は、山崎まさよしの「One more time,One more chance」。いまは会えなくなってしまった大切な人に対する思いをエモーショナルに描いたこの曲は、『秒速5センチメートル』のテーマとも強く重なっていた。エンドロールなどで流すのではなく、ストーリーのなかでフル尺を使うという演出も話題に。テーマ曲を物語の中に組み込み、映像と音楽の相乗効果をさらに上げる手法は、この映画から始まっていたのだ。

新海誠監督が影響を受けてきたアニメーションを意識して制作されたという『星を追う子ども』の音楽は、異世界を旅するストーリーに合わせ、壮大なオーケストレーションが中心だ。主題歌「Hello Goodbye & Hello」はシンガーソングライターの熊木杏里が担当。楽曲のメロディが劇中でも使われるなど、この作品でも音楽と物語が密接に関わっている。

『言の葉の庭』の劇伴は、それまで担当していた天門ではなく、KASIWA Daisukeが担当。その経緯はホームページにも文章で残されているが(「言の葉の庭」の音楽について)、『秒速5センチメートル』のファンだったKASIWAが、自身のピアノ楽曲を収めたアルバム『88』を新海監督に送ったことが、このコラボレーションのきっかけ。雨のシーンが印象的な『言の葉の庭』の世界観を端正なピアノの音色が見事に彩っている。エンディングテーマの「Rain」は大江千里による原曲を秦基博がカバーした楽曲。秦はイメージソング「言の葉の庭」を制作し、MVは新海監督が担当した。

2016年に公開された6作目の長編アニメーション『君の名は。』は、東京に暮らす少年・瀧と飛騨の山奥で生活する少女・三葉を主人公にした作品。プロデューサーに川村元気が参加した本作は、興行収入250億円を突破し、記録的なヒットとなった。それまでに培ってきた新海ワールドがより多くの観客に届いた本作の軸になっていたのが、RADWIMPSが手がけた音楽だ。

もともとRADWIMPSのファンだったという新海監督は、川村元気を介し、この映画の楽曲をオファー。『君の名は。』の世界観、ストーリーを色濃く反映させた「前前前世」「スパークル」「なんでもないや」などの楽曲は、映画の反響とともに大きな話題を集め、大ヒットを記録した。本作によって“新海誠×RADWIMPS”のタッグは社会現象を生み出したと言っていいだろう。また、初めて本格的な劇伴を手がけたことにより、RADWIMPS自体の音楽性が大きく広がったことも、この映画の大きな成果だったと思う。

そして2019年夏、映画『天気の子』で再び、新海誠とRADWIMPSのコラボが実現。

離島から東京に家出してきた男子高校生・帆高と、祈るだけで晴れにできる不思議な力を持つ少女・陽菜との出会い、自らの意思で人生を選び取る姿を描いたこの作品も『君の名は。』同様、エンタテインメント・シーンの大きな話題を集めた。主題歌「愛にできることはまだあるかい」は、映画のメッセージ性を象徴する楽曲として支持を集め、大ヒット。今年のSUMMER SONICに出演した際も最後に演奏され、スタジアムを巻き込む大合唱が生まれるなど、早くもRADWIMPSの新たなアンセムとして認知されている。劇伴もさらに進化。東京の街をリアルに描きながら、登場人物たちの心情を生々しく反映させた映像、そして、各シーンの意図とイメージを汲み取りながら制作された音楽が生み出すケミストリーはさらに進化したと言っていい。

映像と音楽の密接な関係性、まるでMVのような主題歌の使い方など、“新海誠×RADWIMPS“が生み出した表現は、既に多くの作品に影響を与えている。日本のエンタテインメントの在り方に大きな変革をもたらした新海誠の映画と音楽は、2020年以降も間違いなく注目を集め続けるはず。NHK紅白歌合戦のRADWIMPSのステージにも大いに期待したい。

文 / 森朋之