Interview

ASKA 10年ぶりに発表されるシングル作品。壮大なMVの映像とともに届く「歌になりたい」という想い

ASKA 10年ぶりに発表されるシングル作品。壮大なMVの映像とともに届く「歌になりたい」という想い

新曲「歌になりたい」のMV撮影のため、アイスランドへ旅だったASKA。今も地球創造の生々しい姿を留めるといわれるあの国で撮られた映像は、ここ数年、J-POPシーンにおいて制作されたすべてのMVのなかでも特に印象に残る一編となった。ではさっそく、ASKAが持ち帰ってくれた土産話から、じっくり聞いてみることにしよう。

取材・文 / 小貫信昭


荒涼たる風景とあの岩は、もはや“これだけでも成立する”と思えるくらいでした

前回のエンタメステーションの取材が、まさに旅立つ直前だったわけですが…。

ASKA あの時、“監督の頭のなかにある映像を信じて行くしかない”みたいなことを言ったと思うんですが、実際のところ、まさにそんな感じだったんです。で、まずは首都のレイキャビックへ着いて、そのままロケハンに出掛けたのかな? とはいえ依然として、僕自身はどういう映像になるのか想像もつかなかった。でも、MVを観て頂けると分かるんですが、メインとなる荒涼とした風景があって、そこに出掛けた時にね、初めて自分の中にもイメージが湧きましたよ。“ここでこういう風に歌えば、この背景とともにこんな画になるだろう”ということが。

オープニングでASKAさんが溶岩に耳を傾けるシーンからして、実に印象的でした。まさにこの地球の胎動に耳を傾けているようで…。

ASKA 実はあれを撮ったのは、すべてがアップする間際だったんです。監督から「最後にあの岩のところで…」と指をさされまして、その時、僕が「ここで耳を澄ませたいんだけど」と言うと、「それ! それを撮りたいんです!」ってなってね。つまり、まったく同じことを考えていたんです。もちろん全体としては、他にも様々な場所でロケしたものも使ってますが、荒涼たる風景とあの岩は、もはや“これだけでも成立する”と思えるくらいでした。

確かに全体としては、ASKAさんのアップから俯瞰の絵柄、歌唱のみならず歩いて行くシーンなど、視点も多彩でしたね。

ASKA 近くで撮る時は、そこに監督とカメラを導くアシスタントがいましたけど、ドローンを飛ばしている時は、そばにいて映ってはいけないわけじゃないですか? なのでその場は僕だけになるんですが、「じゃあ、リップシックはどうするんだ?」ってなったわけです。そこでiPhoneをポケットに入れて、その音を流して歌うことにしたんですけどね。ただ、離れた場所にいる撮影チームは、曲のどの部分を歌っているかまでは分からない。とはいえ、最終的には上手く繋がるもんなんだなぁって思いましたけど。実はその時、iPhoneのバッテリーが途中で切れてね。あれは参りましたけど(笑)。

滲みながらもクッキリしてた。太陽が、すぐ近くにあるような気もしました

実際の撮影以外で、アイスランドで印象に残ったものというと、どんなことでしょうか…。

ASKA 以前、CHAGE and ASKAの「BIG TREE」のMVをオーストラリアのブロークンヒルで撮影したことがありまして、あの時に見た太陽は、アフリカで見た太陽に凄く近かったわけなんです。同じ南半球ってこともあるんでしょうけど。でもアイスランドで見た太陽は、それともまた違ってて、とても印象に残りました。

どう違ったんですか?

ASKA 目に見える大きさ、スケール感こそは似ていたんですけど、今回見たものは、滲みながらもクッキリしてた。太陽が、すぐ近くにあるような気もしましたね。

滲みながらもクッキリ、というのは、相反するようにも思われますが…。

ASKA 相反するんだけど、こんな表現しか出来ないんです。滲んで溶けて没ちてくんじゃなく、滲みながらも輪郭がハッキリしていた。

ここからは新曲「歌になりたい」について、具体的なことを伺います。でも今回の曲って、気づけば思わず、サビを一緒に口ずさんでました。

ASKA キーでいうと、サビのところは普通に女性が朗々と歌える高さになってます。じゃあ男性はどうなのかというと、低すぎて鼻歌程度の歌にしかならない。でも、それは楽器でいうところの「ベース」のような響きになりますので、一緒に歌うと成立するんですよね。コンサートではそうやって、みんなで歌ってもらえると思うんです。

そのサビと、他の部分との関係はどうなんですか?

ASKA Aメロに関しては、かつてボブ・ディランがやってたみたいに、字余りも字足らずも気にせずにフェイクも含めて歌う感覚になってます。サビはいま言った感じであって、2番になると、再びAメロは崩して…、みたいな構成です。でもそうなると、ちゃんと自分が“不動のもの”として歌っていなくてはならない部分も必要になってきて、それが間奏あけのメロディだったりもするんです。それがあってこそ、崩す部分も活きるわけですから。このあたりの全体の構成は、もちろん曲を作る際に考えたことですけど。

仰々しいお膳立てはなく、ふと歌が立ち上がってくるみたいな冒頭からして、意図的なんですね。

ASKA もちろんです。シンセのパッド(和音を静かにストリングス的に響かす部分)だけがあって、そこにアコースティック・ギターが鳴って、それを支えるようにエレキが単音でリズムをキープして、敢えてそれ以外はなくしつつ、1A(Aメロを繰り返しつつ歌詞は発展させた部分)になって初めて、2A(2回目のAメロ)でリズムが入ってくる。なので冒頭は、歌詞の言葉で聴く人に興味をもってもらう意味で重要なので、この形にしました。[天の色]を見た人はいないのだろうかという、そんな問い掛けなんですが、そもそも天界なんて、実際に見たことがある人はいないわけですよ。ただ、興味は持ってもらえるかな、ということで、こういう書き方にしてます。

「歌になりたい」という想いが、自分だけではだめだった。他の人も含め、その想いを歌いたい

そもそも「歌になりたい」って、どういうことなのでしょうか。聴いた人がそれぞれ感じることであって、ASKAさんに解説してもらうことでもないんですかね? ヘンな質問の仕方になってますが(笑)。

ASKA この“歌になりたい”という言葉自体は日本語としてややおかしなところもあるんです。ただ単に、“もし僕に役目があるのなら歌になりたい”なら、自らの意志ですし、それでいいわけですが、この歌では[もし僕に もし君に]って歌っているでしょ? その時点で、既におかしいんです。自らの意志に、他の人も含めているのだから…。そこは非常に悩んだ部分だったんですよ。でもそれでも、「歌になりたい」という想いが、自分だけではだめだった。他の人も含め、その想いを歌いたい。なので[もし君に]も入れたんです。もし日本語として正しいものにしたいなら、曲のタイトルを「歌になりたい」ではなく、(君への同意を求める)「歌になりたいよね?」にしないとだめなんですよね。歌詞にはありませんが「もし僕にもし君に役目があるのなら、(僕は)この地上の」と、受け取っていただければ成立します。

なるほど、そういうことですね。

ASKA おそらく言いたいことは、「UNI-VERSE」から繋がってますね。“UNI”は“1”で“VERSE”は英語ではAメロを指すけど、言葉をもっと深掘りしていくと、“VERSE”は“歌そのもの”のことでもある。なので“歌でひとつになる”という意味が、あのタイトルにはあったし、今回は「歌になりたい」ですし、二つはどこかで繋がってます。

まず配信して(11月6日)、そのあとシングルCDをリリースする(11月20日)わけですが、そもそもシングルCDというもの自体、約10年ぶりだそうですね。

ASKA まずシングルCDを出して、ある程度、それが行き渡ってから配信も、というのが普通の考えのようでいて、でも以前から、僕は「違う」と思ってたんです。なので最近はアルバムでも、まず2週間前に配信して、それからCDを出すことにしています。

理由としては?

ASKA 自分としても自信のある、本当に良い作品なら、まずはコアなファンの人達が配信で聴いてくださって、聴いた感想をSNSなどで広めてくれると思ったからなんです。楽曲のプロモーションという意味でも、これからはこの順番なんだろうし、さらにシングルCDを出すこと自体も、今後は他のアーティストも含め、とても大切になっていく筈ですよ。このあたりの具体的な理由は、おいおいお伝えします。今はまだ明かせません。

2020年のオリンピックが東京に決まった瞬間(2013年9月)に、自分への記念として作り始めたのがこの曲です

カップリングの「Breath of Bless 〜すべてのアスリートたちへ」は、歌のないインストゥルメンタルですが、この曲についても教えてください。

ASKA 2020年のオリンピックが東京に決まった瞬間(2013年9月)に、自分への記念として作り始めたのがこの曲です。あくまで僕が、勝手につくるテーマ曲ですけど…。制作初期段階はかなりケルト・ミュージック寄りだったのですが、構築していくうちにどんどん変化して行きました。共同制作者の「矢賀部竜成(やかべたつなり)」が、サンプル・ボイスを曲の頭に加えてみたりしたら、楽曲の「顔」が変わりましたね。それによって、後半は大合唱にすることを思いついたりもしました。

オリンピックの私的なテーマ曲を、なぜケルト・ミュージックで作ろうとしたんですか?

ASKA そこはイマジネーションですよ。アンマッチングのマッチングというか、相乗効果ですかね。今となっては、すべてが上手くいったと思ってます。

12月10日から「ASKA premium ensemble concert -higher ground-」もスタートしますね。

ASKA バンドと15人のストリングスでやるんですが、今回はストリングスの一人一人にピックアップ・マイクをつけてもらいます。でも彼ら、やったことないと思うんですよね。普段は吊られたマイクまでの空気を、いかに上手に振わすかが勝負なんでしょうし。でも今回は、それだとバンド・サウンドにかき消されるだけなんです。でもピックアップをつければ、例えばバイオリンなら、普段は繊細に鳴るところが♪ピックアップにより強い繊細を表現できます。こういうステージやったのは、過去にELOくらいだし、やってみないと分かりません。もしかして、リハの段階で、“目が点”状態になるかもしれませんし。

「剣道に少しでも興味を持って頂けたら」という想いでやってることなんです

いやいやASKAさんの創意工夫と行動力があるなら、“目が点”ではなくメガトン級の感動を呼び起こすことでしょう。最後に音楽から離れまして、剣道です。こないだもニュース・ワイドを見てたら、ASKAさんの剣道大会での勇姿が報じられていたわけですが…。

ASKA これはですね、「剣道に少しでも興味を持って頂けたら」という想いでやってることなんです。でも僕が、東京・北区の大会で優勝し、シニアの大会に出たことは、いま言ってくださったとおり、様々なニュースで取り上げてくれましたね。おそらくその流れもあり、同じ「剣道」というのもあって、今年の全国選抜(日本一を決める大会)の優勝者も、初めて一般のニュースで取り上げられたんです。なので少しずつですが、役目は果せているかな、という喜びはあるんですが。

ASKAさんは音楽と剣道の二刀流、という言われ方もあるようですが、ふたつの関係ってどうなんですか。剣道の試合中、メロディが浮かんだり、とかは?

ASKA このふたつはまったく別です。試合中にメロディは浮かびません(笑)。マスコミの方々には“二刀流”と呼んで頂いてますが、そもそも僕は、前から音楽では“四刀流”ですので。作詞やって、作曲やって、アレンジもやり、歌うんですから。で、そこに剣道が加わるなら「五刀流」です。

た、確かに(笑)。

その他のASKAの作品はこちらへ。

ライブ情報

ASKA premium ensemble concert -higher ground-
<2019年>
12月10日(火)京都コンサートホール 大ホール
12月11日(水)愛知県芸術劇場 大ホール
12月20日(金)兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
12月27日(金)東京エレクトロンホール宮城 大ホール
<2020年>
1月3日(金)福岡サンパレス ホテル&ホール
1月6日(月)フェスティバルホール
1月9日(木)東京国際フォーラム ホールA
1月11日(土)札幌文化芸術劇場 hitaru
1月15日(水)LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
1月18日(土)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
2月2日(日)高崎芸術劇場 大劇場
2月9日(日)神奈川県民ホール 大ホール
【特別公演】
3月20日(金・祝)熊本城ホール メインホール

ASKA

1979年CHAGE and ASKAとして「ひとり咲き」でデビュー。「SAY YES」「YAH YAH YAH」「めぐり逢い」など、数々のミリオンヒット曲を世に送り出す。音楽家として楽曲提供も行う傍ら、ソロ活動も並行し、1991年にリリースされた「はじまりはいつも雨」が、ミリオン・セールスを記録。同年のアルバム「SCENEⅡ」がベストセラーとなり、1999年には、ベスト・アルバム『ASKA the BEST』をリリース。また、アジアのミュージシャンとしては初となる「MTV Unplugged」へも出演するなど、国内外からも多くの支持を得る。2017年には、自主レーベル「DADA label」を立ち上げ、アルバム2枚をリリース。また、2019年にはバンドツアー「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA-40年のありったけ-」を開催し、今年12月からは、バンドとストリングスとの融合「ASKA premium ensemble concert -higher ground-」がスタート。精力的な活動を行う。

オフィシャルサイト
https://www.fellows.tokyo