
2019年4月より放送スタートとなるオリジナルTVアニメーション『Fairy gone フェアリーゴーン』。『ジョジョの奇妙な冒険』や『はたらく細胞』で知られる鈴木健一監督のもと、制作を手がけるのはP.A.WORKS。それぞれに異なる能力を宿す妖精を操り戦う“妖精兵”と呼ばれる人間たちの抗争を描いた本作は、ファンタジー要素とシリアスな人間ドラマを併せ持った、新感覚のアニメーション作品といえよう。
原作を持たないオリジナル作品ゆえ、キャスト陣も「先々のストーリーを知らない」と語る本作。ここでは、メインキャストをつとめる市ノ瀬加那(マーリヤ・ノエル役)、前野智昭(フリー・アンダーバー役)、福原綾香(ヴェロニカ・ソーン役)、細谷佳正(ウルフラン・ロウ役)の4名に、作品序盤のアフレコを経た率直な思いを語ってもらった。独特な世界観のなか、物語が進むにつれて次々と明かされる真実に彼らも一喜一憂しているようだ。
取材・文 / とみたまい 撮影 / 樋口 涼
“妖精兵”というファンタジー要素を含んだ、これまでにない物語

妖精を兵器として操る“妖精兵”など、独特な世界観が展開されるオリジナルアニメ『Fairy gone フェアリーゴーン』ですが、物語についてどのような印象を抱いていますか?
市ノ瀬加那 1話ずつ台本をいただくので、まだ序盤しかストーリーを知らないのですが……毎回なにかしらの伏線が散りばめられている作品なので、最後のほうでそれらが回収された瞬間ってすごく面白いんだろうなと、今からワクワクしています。
妖精と人間の2人1組で戦うというのが今までにない感じで新しいと思いますし、色々なタイプの妖精がいて、その個性に応じて戦い方も変わってくるのが面白いですよね。「こんな戦い方があるんだ!」ってビックリするような戦い方も今後出てくると思います。
根本的にはシリアスな物語ではありますが、戦争が終結した後のことを描いているので、日常のシーンではコミカルな会話もあって。シリアスとコミカルの両方を楽しんでいただける作品だと思います。
前野智昭 最初は「妖精というファンタジー要素を含んだ西部劇」のような印象を持ちましたが、実は人間関係が非常に多面的に絡み合っていて、話が進むにつれてキャラクター同士の関係性が徐々に明らかになっていく展開だと知って、人間ドラマとしても非常に見応えがある作品だなと思いました。
妖精を駆使して戦うというのも、これまでになかったジャンルの物語だと思いますし、新しい可能性を『Fairy gone フェアリーゴーン』という作品に僕は見出した感じがしました。

福原綾香 ファンタジー要素と、戦争や復讐、政府とテロリストといったリアリティのあるクライムサスペンス要素が組み合わさっていて、それがギャップとしての魅力に繋がっていたり、いい具合に調和していたりと、初めて触れたような新しいタイプの脚本だと感じました。新鮮な魅力もありましたし、「こういう作品があってほしかった」と、シナリオを読んで思いました。
オーディションの段階から、ヴェロニカの凄惨な過去についてはある程度伺っていたので……オリジナル作品なのでこの先ヴェロニカがどうなるのかはまだわかりませんが、どうか幸せになってほしいなと心から思いました。
細谷佳正 実際に自分たちが生きているこの世界で過去に起こっていた“世界大戦”のような戦争が、この物語のなかでも起こっていて、本編はその後の世界を描いていくんだろうなと思いました。
“妖精兵”については、“一発で全てを破壊できる”威力はないけれど、それを持てば戦争が有利になる強力な兵器なのだなという印象です。

マーリヤ・ノエル
市ノ瀬さんは違法妖精取締機関“ドロテア”の新入隊員マーリヤ、前野さんはドロテア第一部隊隊長代理のフリー、福原さんは暗殺者のヴェロニカ、細谷さんはテロリストのウルフランという役柄ですが、それぞれどのような人物だと感じましたか?
市ノ瀬 マーリヤは非常に辛く重たい過去を持っている子で、それを踏まえたうえで演じると根本的に暗い子になってしまいがちなんですが、本来のマーリヤは根っこが明るい子なので、「日常会話では、ラフでくだけた感じを出してもいいんだ」って思いました。
でも、重たい過去があることで、“いつバランスが崩れてしまうかわからない、危うさを持ち合わせた子”というのも自分のなかにちゃんと置いておきたいとも思っています。

フリー・アンダーバー
前野 フリーは底が見えないキャラクターだと思いますね。レッドフッドという妖精を駆使して戦う、戦闘能力に長けているキャラクターですし、器も大きく、ピンチをピンチと感じさせない大人の余裕も持っていて。ギャップが多いキャラクターなので、演じていてすごく楽しいですね。
日常のフランクなシーンでは飄々とした“いいお兄さん”的な雰囲気で、戦闘になったら狼のような荒々しさがある。そういった多面性を持つキャラクターですから、いろんな振り幅でお芝居のアプローチができますし、毎週新しい発見があるキャラクターなので、僕もフリーに引っ張ってもらっているような感覚です。

ヴェロニカ・ソーン
福原 ヴェロニカは凄惨な過去を持っていますが、いまは暗殺者として復讐のためだけに生きているので、悲しさなどの感情を外に出さなくなっているんじゃないかなと思うんです。怒りや悲しみを抱えていても、表現として出てくるのはほんの少しだろうなと。その塩梅が毎回とても難しいと感じています。
でも、そうやって少しだけ見える感情があるからこそ、ヴェロニカという存在の深さが伝わるんじゃないかなと思っているので、ミニマムな表現で、どうやったらヴェロニカ・ソーンという人物の深いところまでを作っていけるか、毎回模索しながら演じています。

ウルフラン・ロウ
細谷 ウルフランについては、これからご覧いただく方に自由に想像してもらいたいので、ここで僕が何かを言うことを避けたいと思っています。僕が思っていることを発言することで“ウルフランはこういうキャラクター”という思い込みをする人も出てくると思うので。
原作のないオリジナル作品だからこそ、先入観なく見て欲しいですし、種明かしをしてそれをなくすことをしたくないと思っています。監督も“ウルフランのキャラクターを掴ませたくない”と言っていたので、ここでは控えさせてください。
“前説”や“キャラクター相関図”。役者のことを第一に考える、鈴木健一監督の現場
キャラクターもたくさん出てくる作品ということで、現場の雰囲気はいかがでしょう?
前野 和気あいあいとしていますね。
細谷 スタジオ内は静かで、ロビーは賑やかな印象です。
市ノ瀬 人数が多いので、賑やかだなとは思いますね。
福原 ベテランの方というか……兵士(役)の方がとても多くいらっしゃるので(笑)。
前野 たくさんのキャラクターの中に、たくさんの“ラスボス候補”がいますね(笑)。
市ノ瀬・福原 あははは(笑)!
前野 「この人がラスボスかな? あ、この人もラスボスかな?」みたいな方がたくさんいらっしゃるので、読めないです。

市ノ瀬加那
演じていらっしゃるみなさんも、まだ物語の先がわからないですからね。
市ノ瀬 本当にわからないんです(笑)。
前野 ベテランの先輩方がたくさんいらっしゃる現場なので、いい緊張感もありつつ、休憩時にはみなさんとフランクにお話しさせていただいて、非常に良いバランスで挑めている現場だと思います。
鈴木健一監督とのお仕事で、特徴的な点などはありますか?
細谷 アフレコが始まる前に、監督が物語の説明をしてくれるんですけど、それが面白い例えを使って話してくださるところが、これまではあまり経験がなかったなと思いました。
市ノ瀬 1話ごと、アフレコが始まる前にキャラクターの説明を詳しくしてくださるんですよね。

前野智昭
前野 その監督の事前説明を、略して“前説”と僕らは言っていますが……監督はいつも前説で初登場のキャラクターについて「このキャラクターとこういった関係性で」とかって深く教えてくださるんです。「実はこの人悪い人です」みたいなことをポロっと……。
市ノ瀬・福原・細谷 (笑)。
前野 言ってくださるときもありますが(笑)、表現するにあたってのヒントをたくさんくださるので、僕らとしては本当に助かっていますね。
オリジナル作品ということで僕らも先がまだ読めないですし、監督も最後の着地点をまだ練っていらっしゃる状況ですが、それでも「こういうふうになっていくはずです」と道を示してくださるので、非常に作っていきやすいなと感じています。
福原 そうですね。そういったことを含めて“監督と一緒に作っている感覚”がとても強いです。みんなで横一列に並んで、隣を見ながら少しずつ前に進んでいる感じがして、ものすごくアットホームな雰囲気も感じます。
今ここには資料として“キャラクター相関図”も用意していただいていますが、これも監督が作られたそうで。
市ノ瀬 そうなんです! 監督に「相関図があったほうがわかりやすいですか?」と聞かれて、「可能ならば、ぜひお願いします」ってお話ししたら、用意してくださったんです。
前野 そうそう。お話しした翌週に、相関図をいただけて。
市ノ瀬 これがあることによって、私たちは本当に助かっております(笑)。
前野 我々演者のことを第一に考えてくださっている監督だなあと感じますし、そういった監督の気概を受けて、僕らもお芝居にも気合が入りますよね。