早くも9月5日よりデジタル配信が決定した『攻殻機動隊 新劇場版』。既に配信中の『攻殻機動隊ARISE』に続き、攻殻機動隊の誕生と草薙素子のルーツに迫るこの作品の魅力や制作秘話について、総監督とキャラクターデザインを手掛けた黄瀬和哉が語る。
インタビュー・文:藤井浩
撮影:増田慶
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』に始まる 黄瀬和哉とProduction I.Gの20年
攻殻機動隊」の映像化作品を一貫して手掛けられていて黄瀬さんご自身も、いくつかの作品に参加されていますが、まずは原点を振り返っていただけますでしょうか。
黄瀬和哉(以下、黄瀬) やはり最初は押井守監督ですね。押井さんが士郎正宗さんの原作をProduction I.G社長の石川(光久)に持ち込んだのが全ての始まりです。
押井監督の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』で黄瀬さんが手がけられたのは?
黄瀬 作画監督ですね。絵だけ描いてました(笑)。
当時、絵作りについては押井監督からなにか指示や提案はあったのでしょうか。
黄瀬 いえ、特には。キャラクターデザインを担当した沖浦(啓之)くんにはあったのかもしれませんが。沖浦くんから原作とまったく違う絵が上がってきたので、ああこういう方向性でいくのね、と。
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の草薙素子は今見るとかなりマッチョですよね。
黄瀬 ゴツいですよね。「筋肉表現」をやりたいという狙いがありましたので。だから作画資料として女性ボディビルダーの写真集を取り寄せた憶えがあります。まあ、エロくはないですよね(笑)。男女を超越した存在というか。
そこから20年に渡ってProduction I.Gは「攻殻機動隊」に関わり続けていくわけですが、ここまで支持を集めるコンテンツになるという予感はありましたか?
黄瀬 いやあ、誰にもなかったと思いますよ。押井さん自身もこんなことになるとは考えてもみなかったって言ってましたし(笑)。
では、なぜここまで続いてきたとお考えですか?
黄瀬 「よくわかんない」からじゃないですかね。わからないからこそ何度も観られる。あまりわかりやすいと一度で納得して終わっちゃいますから。
「だまされて」引き受けた総監督? 本音トークで語る制作の裏側
それでは2002年から始まったテレビシリーズの『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』では黄瀬さんはどのような役割を?
黄瀬 僕はあれにはほとんど関わっていないんです。助っ人的にちょっと原画を手伝ったくらいで。『攻殻機動隊ARISE』をやることになった時、周りのスタッフには「昔の攻殻は観なくていいよ」って言ってたんですが、やっぱりみんな観てる(笑)。どうしてもイメージが囚われちゃうから、意識しないでね、と。そうしたら「無理です!」って(笑)。
『攻殻機動隊ARISE』の総監督を任じられた経緯についてですが、お受けになった時の第一印象は?
黄瀬 「だまされた!」ですね(笑)。石川から「何をやるか」という作品名については教えてもらえなかったんです。「やる」と言ったら教えると。それで、どんな仕事をやるのか知りたくてつい聞いちゃった。
そういう仕事の受け方というのはよくあることなんですか?
黄瀬 いや、初めてです(笑)。何をやるのか知りたい気持ちが勝ってしまいました。
「総監督」というお立場については?
黄瀬 総作画監督ならやったことあるんですが、総監督というのは初めてなので「何やるの?」と聞いたら「ジャッジすればいい。ハイハイ言っとけ」。じゃあハイハイと(笑)。
黄瀬さんに白羽の矢が立った理由については聞かれましたか?
黄瀬 押井守、神山健治と来て、その次に精神的に耐えられるのはお前しかいないだろう、ということだそうです(笑)。この二人の後でプレッシャーを感じない人間はそうそういないと。
精神的支柱というか。
黄瀬 ただ、僕自身はプレッシャーを感じて作品を作ったことはないですからね。「攻殻機動隊」には仕事として最初から関わってますし、ファンから入ったわけではないので。
『攻殻機動隊ARISE』は各エピソードごとに監督がいらっしゃいますが(border:1……むらた雅彦、border:2……竹内敦志、border:4……工藤進 border:3は黄瀬自身)、これらの方々やシリーズ構成・脚本の冲方丁さんなどのスタッフとのコミュニケーションはどのように取られていたのでしょうか。
黄瀬 脚本からどんな流れにしようか打ち合わせる時くらいしか顔を合わせることがないので、こちらからは特にないです。逆に、それぞれの監督が悩んだりすると僕に聞いてきて、そこでジャッジをすることはありました。
各監督の判断に任せる、と。
黄瀬 まあ「キャラクターの関係性については注意してください」とは言いました。「知り合い」だけどまだ「仲間」ではない、その距離感は保ってほしいと。
脚本を読まれた時の印象はいかがでしたか?
黄瀬 「しんどそう」と思いました(笑)。冲方さんの脚本の密度がとんでもないので、このまんまやると尺に収まりきらないんじゃないかと。そんな濃密な脚本が毎回上がってくる。まあ冲方さんに言わせると「あれを決定稿にするからですよ、削れと言われれば削りますよ」って(笑)。ただお話が面白ければそうしたことはこっちでするから、という流れで作ってました。
『攻殻機動隊 新劇場版』の野村和也監督に対しても黄瀬さん側からは特に指示はなかったのでしょうか。
黄瀬 そうですね。もちろんジャッジはしましたが、野村さんにとってはそれがかえって迷いにつながったところもあったみたいです。具体的に方向性を決めてもらったほうがやりやすいと。「いや、好きにやってください」って言ったら「それが一番困るんです」と(笑)。
各作品の監督からの相談としてはどういうものがあったのでしょうか。
黄瀬 素子のキャラクターの方向性について聞かれることが一番多かったですね。どうしてもこれまでの作品の素子のイメージがみんな強いので。「今回クールな感じはなしでいいですよ」って言うと「なし? どれくらいなし?」とか(笑)。
©士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
©士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊ARISE」製作委員会
→ 後編へつづく
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