今までにない手応えと興奮を覚えた「エックス」と「ふたり」
今回、「なくなってしまったもの」、「過ぎ去ってしまったこと」を歌のモチーフにしている曲が多いのは?
川辺 元々そういう時間で変化するものをモチーフに歌詞をつくることが好きで、今回はそれを多用したところがあって、1曲目の「ディレイ」から全開ですね。
「エスパー」でも、〈季節をいくつも通り過ぎて〉とすでに時間の経過を感じさせていましたね。
川辺 そうなんですよね。アルバムの出発点の曲でもあったので、その傾向に拍車がかかったかもしれない。
SF小説を思わせる「エックス」のポツンと孤独な風景も印象的ですが、ハープにも似た美しい音色が幻想的な空間をつくりだしていますね。
川辺 「エックス」と「ふたり」は、今回のアルバムの中で今までにない手応えがありましたね。アレンジの段階で不思議なムードにはなっていたけど。レコーディングが終わって、出来上がった瞬間にみんなで興奮したほど。
大竹 この2曲は途中までどうなるのか分からなくて、デモの段階では「なんだ、これ?」って謎が多かったんですけど、レコーディングでだんだん輪郭が見えて来て、音色は結果的に自分たちでも新鮮に思える満足のいく感じに出来たかなと思います。
川辺 「ふたり」の歌詞は人類愛的な視点がありつつロマンチックな感じもあり、曲はややソウルフルで、自分からこういうムードが出てくるとは思わなかったので、書けてうれしかったですね。

「ふたり」のギターのアンサンブルも素晴らしい。
須田 大竹くんのギターのダビングを聴いて、蟻の大群が迫ってくるような興奮を覚えました(笑)。音の一粒一粒が細かくリアルに伝わってくる。
中盤で静かな興奮を喚起して、「セダン」に繋ぐ場面の転換もいいですね。
川辺 ポップな「エスパー」で入ってくれた人も、この2曲でミツメのDOPEなどろどろした新しい世界を味わってもらえたら。
須田 今まで聴いたことのない面白い、新しいアレンジができたと思います。そこはいつもやったことがないことをやりたくなるバンドらしいのかなと。
川辺 それで、ポップな「セダン」でまた戻って来る。「セダン」は海の怖さを描いたところもあったので、アルバムのテーマとも通じるんですよ。
再評価世代ならではの80’sニューウェイブ、ファンクの影響
「なめらかな日々」のややトロピカルなテイストと軽快なリズムも新鮮ですね。
須田 アルバムのリードトラックになった曲で、イントロ、1番、間奏、2番、アウトロ、お終い、みたいな(笑)。
川辺 これはアルバムの全体像が見えた最後の方にできた曲で、あまり力を入れない状態でアレンジも歌詞もすーっと決まったんですよ。
大竹 他の曲に比べて、そんなに悩まずスムーズに出来たんですが、面白い仕上がりになりましたね。
須田 この曲はバンドでアフロ・ファンク寄りの、マッチョ過ぎないファンキーなイメージを試してみたかったんですよ。こういう細かいリズムで踊れるような曲はなかったし。
Nakayaan そう。ライブで演奏して楽しいということを意識して。
川辺 ガチでファンキーないわゆるファンク的な音楽をやってるバンドとはまた違った質感にはなった。
須田 リスナーとしてはソウルやファンクも好きなんですけど、僕らが演奏すると不思議なマッチングになる。その面白さを味わってもらえればとつくっていて感じました。
「クロール」は、結成10年になるバンドならではの安定感がありますね。
川辺 今までミツメでやってきたことが結集されて出来たような曲ですね。20代のほとんどをこのバンドでやっているんで、自ずとそれが出てくるんだと思います。
須田 今回、80年代愛が出ているのはこの曲くらいかもれないですね。80年代の音楽から過剰さだけを取り除いたみたいな感じというか。僕らは後追いなんですけど、80年代のニューウェイブやそこから派生したファンクの影響はありますね。
ニューウェイブの実験精神や異種交配の先駆性がミツメの世代に隔世遺伝している感がありますね。ライブの出囃子がドゥルッティ・コラムだったり。
須田 僕らの世代には、新しい音楽として響くんですよ。ドゥルッティ・コラムは好きな人がすごく反応してくれて。
川辺 ウルフルズのジョン・Bさんにも「この曲、好きなんだよねー」ってライブ後に声をかけて頂いて(笑)。
それも意外ですね。
須田 僕らのように後追いだと、その当時どんな風に聴かれていたか知る術がないんですよね。
川辺 そうだね。僕らは再評価のタイミングで聴いているから。もろに借りてくるのはアレですけど、滲み出て来る部分で反応してもらえるのは嬉しいですね。
今までのミツメを意識せずに、思い込みから解放されたアルバム『Ghosts』
「タイム」も時の流れによって失われるものがテーマになっていますね。
川辺 時間をモチーフにしたのは僕の個人的な指向なんですが、これから得るものに眼差しを向けるより、なくしたものの方がイメージしやすいというのはありますね。不変に憧れつつも、どこか信用できない感覚というか。
大人になってゆく、時間が経過してゆく過程での喪失感やそれに伴う痛みや切なさは普遍的なものでもあるし。
川辺 そうですね。「川辺くんは30、40になったとき、どういう歌詞を書くんだろうね?」と言われたことがあって、今はスタイルに縛られずに、そのときに書きたいことを書けばいいと思うようになってきましたね。それでいうと、今回は今までのミツメをことさら意識せずに書けたと思います。
「ターミナル」では〈永遠に果たされない想い〉を淡々と歌いながら、後半、静かにエモくなってゆく。
川辺 「ターミナル」はミツメ史上最長の6分超え。元々シングルで出したいと思っていた曲なんですけど、ゆっくりしたテンポにしたら、結果長尺になって。
大竹 後半は色々重ねましたね。
川辺 クライマックスに向かってエモくなるんですが、いわゆる共感を求めるようなエモさではなく、一人で部屋で聴いて「オッー!」と熱くなるような感じがいいなと。
『Ghosts』は、ミツメにしか描けない世界をより深く浸透させたアルバムになったのでは?
川辺 そうですね。そんな表現ができるようになったのは10年続けてきたからだと思います。結成当時から制作の基本的なスタイルは変わらないんですけど、じょじょに沢山の人に聴いてもらえるようになって、「エスパー」や「セダン」のようなポップな曲を出しても受けとめてくれて、正直ホッとしたところはありました。そこで、ミツメらしさとは何かを考えなくてはいけないみたいな思い込みからも解放されたのは大きいかもしれない。
クラスの隅っこ者同士みたいな親近感があるスカートとトリプルファイヤー
今年に入ってからもライブはコンスタントに続けていますね。主催イベント“WWMM”(わくわくミツメまつり)は、スカートや台湾のdeca joins、Lampが出演して盛況だったとか。
須田 今年で4回目になるんですが、2月の“WWMM”ではスカートとはお互いの曲を一緒に共演しました。
川辺 一発勝負のライブにチャレンジすることに怖がらなくなってきた。スカート、トリプルファイヤーには同期の感覚があるし、「一緒に頑張ろう」というほど意識が高い3組じゃないですけど、クラスの隅っこ者同士みたいな親近感はある(笑)。
東京インディー御三家と呼ばれたこともある3組ですね。
川辺 彼らが良いアルバムつくったりするとやっぱり、励みになるし、スカートの澤部(渡)くんとは毎日のようにLINEしているし(笑)。
この春にはイベントにも多数参加しますね。フィッシュマンズのトリビュート・ライブを行うイベントにも出演するそうですが?
須田 フィッシュマンズは、ミツメのメンバーと大学時代にサークルでコピーしたことがあるし、大好きなバンドなので楽しみにしています。僕らが大学の頃はクラムボンを経由してフィッシュマンズを知った人も多かった。
川辺 僕らが大学生の2009年頃、佐藤伸治さんの没後10年くらいに再評価の動きがあったのかな? 僕ら以外のバンドもフィッシュマンズのカヴァーをやるので、どの曲をカヴァーするかは当日のお楽しみなんですが。
夏には自身のツアーに加え、台湾、中国、香港ツアーも控えています。
須田 2年前に初めて中国をツアーして、去年、上海でワンマンをしたらソールドアウトになったので、今回はワンマンでツアーすることになったんです。また、過酷な日程ではあるんですが、2年前のツアーで自分たちのブレーキを壊してくれた感覚があるので、これを乗り越えられたら……
川辺 また、ワンステップ上がれるか? ちょっと変われるか自分たちでも楽しみにしているんですけどね。先ずは、今までミツメを知らなかった人にもこのアルバム『Ghosts』を聴いてもらいたいです。
その他のミツメの作品はこちらへ。
ライブ情報
4月20日(土)CRAFTROCK CIRCUIT ’19
5月18日(土)CROSSING CARNIVAL ’19
5月19日(日)Feelin’fellows 2019
mitsume tour Ghosts 2019
5月26日(日)北海道・札幌Bessie Hall
6月8日(土)台湾・台北Legacy
6月15日(土)福岡・福岡INSA
6月22日(土)宮城・仙台enn2nd
6月29日(土)愛知・名古屋CLUB UPSET
6月30日(日)大阪・大阪TRAD
7月10日(水)東京・恵比寿リキッドルーム
7月13日(土)Hangzhou MAO LIVEHOUSE
7月14日(日)Shanghai MAO LIVEHOUSE
7月16日(火)Chengdu NU SPACE
7月17日(水)Beijing OMNI SPACE
7月19日(金)Wuhan VOX LIVEHOUSE
7月20日(土)Shenzhen B10 LIVE
7月21(日)Hong Kong
ミツメ
2009年、東京にて結成。川辺素(Vo/Gt )、大竹雅生(Gt,Syn)、nakayaan(B)、須田洋次郎(Dr)の4人組。2011年に1stアルバム『ミツメ』を発表。以降、『eye』(2012年)、『ささやき』(2014年)、『A Long Day』(2016年)を発表。オーソドックスなバンド編成ながら、各々が担当のパートにとらわれずに自由な楽曲を発表し続けている。国内のほか、インドネシア、中国、台湾、韓国、アメリカなど海外ツアーを行い、活動の場を拡げている。
オフィシャルサイト
http://mitsume.me/







