黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 26

Interview

稀代のゲームプロデューサー「シブサワ・コウ」襟川陽一氏(下)次の世代へのメッセージ

稀代のゲームプロデューサー「シブサワ・コウ」襟川陽一氏(下)次の世代へのメッセージ

AI を活用した新しい分野のゲーム開発に注力

200人ですか!

襟川 ええ、そう思っています。

素晴らしいですね。AIの可能性についてはどうお考えですか? これまでAI的なものを使って数々のシミュレーションゲームを作られてきたわけですが、近年はAIがより現実的なものになりつつあります。そうしたAIを使って何かしようとか、ゲームに使おうとかいうお考えはありますか?

襟川 実は、AIをもっともっとフィーチャーした、より面白く遊べるようなゲームを開発しているんです。もちろん、『信長の野望』や『三國志』でもAIの活用をもっと増やしていって、より武将らしい、戦術・戦略を人間と競えるようなAIを実現しつつあります。そちらの研究開発もさらに深めていく予定ですが、今開発しているのはAIを活用した、まったく新しい分野のゲームなんです。はっきりしたことは言えませんが、今年の春か夏ぐらいには発表ができると思います。

それは楽しみですね。

襟川 初めてのゲームになるので私も非常に楽しみです。

現在、外部の会社様とのコラボが多数あって、それらが大変成功しています。自社のIPもしくはナレッジをより有効に活用するという部分で、会社の方針としてすごくプラスになっていると思うのですが、さらに積極的に進めていくという形になるのでしょうか。

襟川 ええ、会社と会社のノウハウを融合することで、新しい面白さを生み出そうという気持ちで取り組んできましたが、それが非常に高い成功率でできていますからね。今後は国内だけではなく、中国をはじめとするアジアだとか、アメリカ、ヨーロッパ。そういった会社のIPあるいはキャラクターとのコラボレーションを、どんどん積極的にやっていきたいと思っています。

開発を進める際には、そのキャラクターやIPにものすごい愛情を持っている人たちを集めてチームを編成しています。そうした開発の姿勢に、タッグを組んだ会社が共鳴してくれているんだと思いますね。私もたとえば『ドラクエ』『FF』や『ポケモン』『ゼルダ』は当たり前のようにやっていますから、コラボレーションや開発を担当することで、もっと面白いゲームを自分で作りたいとか思ったりします(笑)。そういうゲーム愛っていうんですかね。そのIPやキャラクターでいいゲームを作りたいという情熱を持っている人たちでチームを編成するという方式は、変えずにやっていきたいなと思っています。

『ザ・ブラックオニキス』にまつわる時代の裏話

これは私の個人的な興味なんですけど、ヘンク・ロジャースさん(注25)が関わられた『テトリス』についての書籍(注26)の中に『ザ・ブラックオニキス』を襟川社長と思われる人物のところに売り込みにいったということが書かれているんです。家族で経営している会社に持ち込んだところ、社長はすごく面白いと言ってくれたけど、奥様が出てきて「やりません」と言われたという話なんですが。

注25:オランダ出身のゲームクリエイター。長く日本に滞在していて株式会社BPSを創設。日本初のファンタジーRPGと言われる『ザ・ブラックオニキス』を手がけた。フルネームはヘンク・ブラウアー・ロジャース。

注26:『テトリス』の版権争奪戦の内幕を描いた『テトリス・エフェクト』(白揚社)のこと。

襟川 ええ~~(笑)。

詳しく言いますと、その社長は販促費や宣伝費は全部ウチが持つからアナタはこのソフトを完成させてくれればいいと言ってくれたんだけど、そうしたら奥様が出てきて、それはダメですと。払うのはロイヤリティーだけです、みたいなことを言われたというくだりがあるのですが、それは御記憶にありますか?

襟川 ヘンクがちょうどパソコンショップを始めた頃に、足利に来たことはありますね。

やっぱりそうなんですか。

襟川 ええ。よく覚えていないのですが、当社で売り出す予定だったんですけれどもビジネスのスキームで違いが出て(笑)。結局、ヘンクが自分でやりますっていうことになったんです。私の知らないところで会長も何か言っていたのかもしれませんが、まあ開発の過程ではよくあることです。きっちり契約したわけでもないですし。

いわゆる口頭ですか。

64才 リドにはよく行っていた

襟川 当時は外部の人にゲームソフトを作ってもらうということに対して契約書を作ったりしなかったんです。まだまだ幼い業界でした。

今、私は昔のビデオゲームに関わった人たちの取材をしているんですが、そうした中でこの書籍に出会いまして。読んでいて、これは多分陽一社長のお話なんじゃないかなと思ったものですから、私の個人的興味でうかがっただけなんですけど、そういう経緯は事実としてはあったんですね。

襟川 ええ、ありましたね。懐かしい話です。ヘンクは碁が好きなんですよね。任天堂の山内社長(注27)も碁が好きで、それで何か『テトリス』で……。

注27:任天堂3代目社長の山内溥氏のこと。一代で任天堂を世界的企業に押し上げた立志伝中の人物として知られる。2013年に死去。

その話もでてきます。それでヘンクさんが任天堂の代理としてロシアに行って『テトリス』の交渉をするっていう話なんですよ。

襟川 ヘンクは囲碁の有段者なんですよね。彼とも碁を打ちましたけど上手でした。私は2級とかなので、ハッハッハ。

好きなことを一生懸命やることがいいと思います

2年後に70歳になられますが、まだ現役でおやりになると思います。最後に今後クリエイティブを目指す若い人たちにアドバイスをいただけますか。

襟川 やっぱり好きなことを一生懸命やるのがいいと思います。ただ一生懸命なだけでは成就できないことであるとか、好きではないこともやらないと好きなことは貫徹できないとか、いろいろ思い通りにならないことも出てくるんですけどね(笑)。でも、基本はやっぱり好きなことをやっていくと。そうすれば必ず実現できると思います。

ありがとうございました。

撮影 / 北岡一浩 取材協力 / 仁志睦


著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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