黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 26

Interview

稀代のゲームプロデューサー「シブサワ・コウ」襟川陽一氏(下)次の世代へのメッセージ

稀代のゲームプロデューサー「シブサワ・コウ」襟川陽一氏(下)次の世代へのメッセージ

変化する市場環境への対応とMR技術への注目

なるほど。ただ、一方で家庭用パッケージゲームは年々数字を落としていますよね。反面、オンラインやスマートフォンのパイが大きくなってきていますが、そうした状況について何かお考えはございますか?

襟川 ゲームの産業自体は1980年代以降ずっと右肩上がりですからね。中身に関しては業務用のゲームがだんだん減りつつあり、パソコンのゲームも80年代は隆盛だったんですけど、それ以降どんどんパイが小さくなっていました。ところが、eスポーツが盛んになってきて、また欧米でパソコンのゲームが伸び始めているんですね。特に、ヨーロッパはパソコンゲームのシェアが20%を超えています。家庭用のゲームは世界的にみるとずっと安定成長しています。今は御存知のようにスマホのゲームが非常に盛んですが、時代とともに栄枯盛衰があり、またプラットフォームや形態は変わっていくと思います。ですから、それに合わせた形でクリエイティビティを発揮して、面白いゲームをどんどん作っていく。プラットフォームが変わっても、その根本は変わらないです。

確かに、そこは変わらないですよね。

襟川 ええ。私が今一番注目しているのはMR(複合現実)ですね。今はまだデバイスが高額ですけど、安くなったらあれは画期的なエンターテイメントになりますね。

もうそこに注目されているんですね。確かに今はまだちょっと高いですよね。

襟川 そうですね、何10万もしますからね。でも、実際やってみて、『HoloLens』(注24)はすっごい面白かったです。

注24:マイクロソフトが開発したMR用ヘッドマウントディスプレイ。

普通のメガネ状になったらいいですよね。

襟川 たぶんなるでしょうね。そうなったら、ものすごく面白いゲームができると思います。

コーエーテクモとしても取り組むべきテーマのひとつになっているわけですね。

襟川 ええ、VRやMR分野への挑戦も積極的にやっていきたいと思います。でも、VRもMRもまだまだ値段が高いですよね。もっともっと一般的になって生産ベースが上がれば、値段も下がると思うんですけどね。

41才のとき 株式を公開

2020年には新社屋になるわけですけど、大学時代を過ごされ、これだけの規模にまで会社を育てた場所である日吉を離れるというのは、かなり英断だったのではないでしょうか。

襟川 現実問題としてもう社員が入りきらなくなってきているんですね。本当にもうギチギチなんです。それで、なんとかしなくちゃいけないということになりまして、みなとみらいの土地が手に入るというので、そこに本社を建てようということになりました。2020年の3月に完成しますので、それまでは現在のオフィスで頑張って、2020年になったら半分ぐらいは向こうに移ることになります。だから、全部が日吉から移るわけじゃないんです。

世界のゲームマーケットにチャレンジするために必要なこと

全部じゃないんですか。

襟川 ええ。というのも、コーエーテクモゲームスの社長の鯉沼が社員を5000人ぐらいにしたいと言っていまして(笑)。

5000人!?

襟川 そうでないと、もう3年先、5年先ぐらいのプロジェクトをやっていけないと。特にAAA級のゲームですね。世界で500万本以上売れるゲームは予算規模も50億から100億ぐらいになりますので、やっぱり500人とか1000人とか、そのぐらいの人数を注ぎ込まないと開発できないんです。

42才のとき 北京光栄のオープニングセレモニーにて

そうですね。

襟川 ゲームの仕事を始めたからには、やっぱり世界中の人たちに楽しんでいただけるゲームを作っていきたいですし、世界のマーケットにチャレンジしていかないと、会社は伸びなくなります。それには、どうしても人数が必要なんですね。今のままでは現状からちょっと上ぐらいのところまでが限界なんです。開発資金にしても以前は数千万でできたスマホ向けのゲームが、今は開発費10億から20億が当たり前になっています。ですから、開発資金もオフィスももっと必要ですし、何より開発するクリエイターが不足している状態なんです。

みなとみらいを本社にすると打ち出したときには、まだそこまでは考えていなかったのですが、最近また中期の3年計画を作り直しまして。その先の4年先、5年先を考えていくと、新本社ビルもいっぱいになっちゃうんですね。ですから、日吉の社屋も引き続き活用していきます。ただ、2020年から23年ぐらいまでは大丈夫なんですけど、25年ぐらいには両方ともいっぱいになってしまうので、また新しいところをということで、会長が今一生懸命探しています(笑)。

すごいですね、もうそこまでなんですね。

襟川 今は大作になると開発期間が3年ぐらいかかりますから、先々まで見ていかないと。もちろん、そのタイトルがどれだけ売れるかとか、どれだけ課金されるかとか、そういった読みも大切ですけれども、それを実現する人たち、クリエイターが圧倒的に足りていないので、これからも積極的に採用していこうと思っています。今年は4月に新卒の社員が95人入ってくるのですが、来年は最低でも200人は採用したいですね。

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