孤島の収容所に収監された記憶喪失の青年・ハルトの謎に迫るガラス越しの体感恋愛アドベンチャーゲーム『囚われのパルマ』が舞台化される。舞台で描かれるのは、ゲーム内で口頭のみによって語られたハルトの過去。主人公・ハルト 役には、太田基裕が扮する。これまで数々の人気キャラクターを演じてきた太田だが、今度はどんな顔を見せてくれるのだろうか。今回は本作にちなんで、太田さん流のコミュニケーション術、そして“記憶”に関する話をたっぷり語ってもらった。
取材・文 / 横川良明 撮影 / 冨田望
心を閉ざしている人と仲良くなるのは、結構うまいと思います(笑)
舞台『囚われのパルマ -失われた記憶-』はゲームが原作ですが、舞台で描くのはプレイヤーである“あなた”と出会うまでのビハインドストーリー。これまでの原作モノとはまたちょっと感覚が違いそうですね。
そうなんですよ。普段はゲーム上での居方を見て、キャラクターの参考にしたりするんですけど、今回はゲームの前の話ですから、そこに至るまでの過程で人格がどうなっていったのかを自分で考えなくちゃいけない。そのあたりは結構難しいのかなと。

ゲームもとてもミステリアスな雰囲気です。
知り合いに原作がめちゃくちゃ好きな人がいるんですよ。その人からどんなゲームかいろいろ話を聞いているところです。あとは、何かヒントになればと思ってサントラを買いました。ここ数日、ずっと聴いているんですけど、すごく綺麗なメロディラインで。言葉にすると“繊細”という感じ。まずは曲から作品のイメージを膨らませています。
原作ではプレイヤーが相談員となってコミュニケーションを重ねながらハルトの心に近づいていきます。太田さんは、実際にハルトのような心を閉ざした人がいたら仲良くなれるタイプですか?
僕、意外に、うまいと思いますよ(笑)。
おお。それはどうして?
なんだろうな……わりとその人の気持ちがわかるというか。共感できるところを自分も持っているので、うまく寄り添っていけるんじゃないかなと。
ということは、太田さん自身も何かと壁をつくりがちなタイプ?
結構警戒心は強めです(笑)。だから同じように人や周りに対して警戒心が強めの方を見ると、自分を見ている感じがして。やっぱり心を閉ざしている人って、何かしら自分の中にコンプレックスとか弱い部分を抱えていると思うんですね。そこは自分も同じなので、どこか通じるところがあるんじゃないかという気がします。
じゃあ、そんな太田さん流の、心を閉ざしている人への攻略法を教えてください。
やっぱり大事なのは積み重ねですよね。ゲームでも差し入れをしたり、いろんなやり方で少しずつ近づいていきますけど、それと同じで。心を閉ざしている人って、きっと何か張りつめたものを持っている。そこを少しずつほぐしていくのが大事なのかなと思います。
どこまで踏み込んでいいのかラインは悩むところですよね。
そうですよね。やっぱり傷つけないようにしたいし。切り口とか、言葉のかけ方とか、あとはタイミングとかも結構重要。見切り発車にはならないようにいろいろ考えます。
人間関係ってどうなるかわからないし、でもそこが面白いところ
逆に太田さんがハルトのような立場だったらどうですか? 最初からそう簡単に心は開けないですか?
どうなんでしょうね。その相手の人の持っているオーラとかにもよると思いますけど。
どんな人だったら打ち解けやすいですか?
説明するのは難しいんですけど、優しさであったり、あるいは僕から見て何か認められるものを持っている人だったら意外といける気がします。
いきなりズカズカと踏み込まれてきたらアウト?
そこも人によりますね。鳥越(裕貴)とかは結構そういうタイプかも(笑)。
そうなんですね(笑)。太田さんと鳥越さんと言えば、舞台『弱虫ペダル』で共演。一緒に旅行に行ったりゴハンに行ったり、仲良しとして知られています。鳥越さん自身も自らのことを「誰とでもすぐに仲良くなれる」とおっしゃっていましたが、実際にそんな感じなんでしょうか?
彼は本当に初対面からガンガン入ってきます。ビックリしますよ(笑)。普通なら絶対仲良くなるタイプじゃない(笑)。でも、だからこそ仲良くなれたというか、あそこまでズカズカ踏み込まれると、一周まわって笑っちゃうというか。
そんなにズカズカなんですか。
そのくせ、ふとした瞬間に寂しい目をしたりするんですよ。で、そういうのを見ちゃうと思っちゃうんですよ、「あ、この人には明るいだけじゃない何かがあるんだ」って。
えー。その寂しい目はまさか鳥越さん流の計算!?
いや、絶対計算じゃないです。不意にそういう面を出してくるから、それがまた可愛くて、いいやつだなって思っちゃう(笑)。鳥越って基本的には明るいんですけど、そういうところを見ちゃうと、心配になるし、気になる存在になりますよね。ほんと不思議ですよね、まさかこんなに仲良くなれるなんて最初は思ってなかったから。人間関係ってどうなるかわからないし、でもそこが面白いところだなと思います。
僕の失いたい記憶は、本番中にチャックが開いていたこと(苦笑)
では今度は、記憶についてのお話を。太田さんにとって人生最初の記憶って何ですか?
僕、すぐに忘れちゃうんですよね。昔のこととか全然思い出せない(笑)。今言われて、唯一鮮明に覚えている記憶と言えば、幼稚園のとき。3歳とか4歳とか、その頃の記憶はほかにいっさいないんですけど。それを初恋と呼ぶのかわからないですけど、女の子にときめいた瞬間ははっきり覚えています。
おお。それはどんなシチュエーションだったんですか?
相手はほかのクラスの女の子で。僕が幼稚園のバスに乗っていたら、あとからその子が乗ってきたんですよ。もうひと目見た瞬間にビビッときて。べつにそのあと、何があったわけじゃないんですけど、その絵だけは今でも鮮明に覚えています。
では次に「失われた記憶」という副題にかけまして、太田さんができれば失いたい記憶を教えてください。
なんだろうなあ。やっぱり恥ずかしいこととかは忘れたいですけど。それこそデビュー当時は必死すぎて、稽古中にダメ出しをされてもテンパってしまって空回りすることが多かったんですよ。
空回りというと?
言われれば言われるほどできなくなるというか。ダメ出しをされまくって、もうわけがわからない状態。そのときの自分とか、たぶんすさまじい顔をしてたんだろうなって思います(笑)。かと言って、これは失いたいってわけでもないですけどね。それがあっての今だから。だったら、もっと小さいことかもしれないですよね……本番中にチャックが開いてたとか(苦笑)。
しかもそれがカッコいいシーンとかだったら笑えますね(笑)。
ん? 堂々とキメてみたあと、袖に戻ってみたら、チャックが開いてるみたいなことはありましたよ(笑)。