黒選!メディアコンテンツ研究家・黒川文雄がテーマで選ぶ 3+1  vol. 53

Column

平成の家庭用ゲーム機・ハードウェアを振り返り未来を予測する 3+1選

平成の家庭用ゲーム機・ハードウェアを振り返り未来を予測する 3+1選

64ビットの時代を先駆けた任天堂

1996年6月23日に任天堂より発売された「ニンテンドー64」。構想発表当初は「プロジェクトリアリティ」というコードネームで呼ばれていました。

セガとSCEが32ビット次世代機戦争を繰り広げている中、任天堂はさらに上の64ビットCPUを搭載して、ゲーム機市場に挑もうとしていました。

「ニンテンドー64」

1994年頃までのゲーム機市場の有力な次世代機の姿は「映像と音楽」だと言われていました。
その為、CD-ROMによる大容量が必要になるといわれており、それを生かすために動画圧縮技術と高速な32ビットCPUという強力なハードスペックが必要条件と言われていたのです。

90年代に「マルチメディア」という単語が様々な所で使われていたと思いますが、それは「動画、静止画、音楽」などを扱える媒体やハードを指していたのです。その為、「セガサターン」や「プレイステーション」などはそういう方向性も持ち合わせていました。実際に「プレイステーション」はDVD再生機としての需要も高く、付加価値として高く評価されていました。しかし、マルチメディア的な機能はほとんど活用されず、3DCGのゲームマシンへ特化していったのです。

任天堂が目指す新たなゲームマシンは全く違う方向性を持っていました。

「ニンテンドー64」が示したのは、実写映像やアニメーションと言った方向性ではなく、真にゲームという遊びに対しての技術的挑戦でした。

これまでのドット絵を表現するために作られたゲームシステムは採用せず、シリコングラフィックス社と提携して「R4300カスタム 64ビット RISC CPU」を搭載することで、3DCGに特化したハードウェア設計をしていたのです。

当時、実写映像やアニメーション、そしてポリゴン技術など、どれが決定打になるのか…?、業界関係者が暗中模索をする中、任天堂はただ一人3DCGの時代が到来する事を予測していたかのようなゲームを投入します。
それが『スーパーマリオ64』でした。

快適な視点移動、十字キーとアナログコントローラーによる操作性、Zトリガーボタンの採用など、従来の操作性から発展した次世代ゲームで遊ぶための操作方法がすでに設計されていました。

そうして、練りに練って開発されたゲームが『ゼルダの伝説 時のオカリナ』でした。

【参考映像】ゼルダの伝説 時のオカリナ プレイ映像

シリーズで初、世界の全てを3DCGで構築され、キャラクターストーリー、マップ、ゲーム性、すべてをまとめ上げた傑作として未だに評価の高いソフトです。

「ニンテンドー64」は非常に高価な開発環境が必要とされ、サードパーティの参入が困難でした。そのため、大手メーカーが中心となってゲーム開発を行いました。結果的に、質の高いゲームを提供できましたが、ソフトの数で勝る「プレイステーション」の快進撃に歯止めをかける事は出来ませんでした。

しかし、一人でゲームをする事が定着しはじめていた時代に、『マリオパーティ』や『マリオカート64』、そして『大乱闘スマッシュブラザーズ』などが発売され、友達や家族でワイワイと遊ぶ娯楽は健在であることを示しました。まさにコミュニケーションの時代を先取りしていたのは任天堂の慧眼なのではないでしょうか。

この「ニンテンドー64」の伸び悩みを機に、任天堂の新たな挑戦がはじまる事となります。失敗を活かし次のステップに進むというターニングポイントになったハードウェアとソフトの時代だったのです。

© Nintendo

< 1 2 3 4 >
vol.52
vol.53
vol.54