黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 25

Interview

ゲームプロデュースの最先端 齊藤陽介氏(下)スクエニファン以外にリーチしたかった

ゲームプロデュースの最先端 齊藤陽介氏(下)スクエニファン以外にリーチしたかった

もっと学べる可能性があるんだったら、ほかへ行ってやるべきだと思っています

それは社内のほかのプロジェクトに行く、という意味ですか?

齊藤 そうです。過渡期になってくると人が欲しいってことで、社内公募みたいなのがあるんですよ。そのときに自分の次のキャリアパスを考えてっていうのならね。俺はココに行ってこういうことを学びたいとか、こういうことをやってみたいとか、コンシューマーじゃなくてスマートフォンのゲームを作りたいとか。そういった理由みたいなものがあるんだったら、穴が空くのは大変なんですけど止めないです。

それが本人のためになるのなら、と。

齊藤 (スタッフを)囲いたくなる人の気持ちは分かるんですよ。でも、若いときに積む経験って、やっぱりすごく重要だと思うんです。もちろん、ひとつのタイトルに長い時間いることで学べることはいっぱいありますけど、もっと学べる可能性があるんだったら、どんどんほかへ行ってやるべきだと思っています。その点ではプロデューサーは複数のタイトルを同時に担当できるジョブなので恵まれていますよね。プログラマーだと、なかなかそうはいかないですから。もちろん、空いた穴は全力で埋めるのは私の仕事ですが。

齊藤さんがエニックスに入られた頃は、多分なんでもやらなきゃいけなかったと思うんですよ。グラフィックだ、デザインだ、もしくはプロモーションだと、すべてをおやりになったと思うんです。でも、今はこれだけ会社も大きくなりましたから、そういったことはできにくくなっていますよね。これは御社に限った話ではないと思います。

齊藤 スクウェア・エニックスって応募がすごい多いので、新卒で入るのは大変なんですよ。今年もそれなりに採ってはいますけど、それでもやっぱりすごい倍率ですから。そうした中で、スクウェア・エニックスへの入り方の抜け道をもし言うとすれば、ほかの会社で活躍することです。それは大小関係ありません。小さいディベロッパーでも、俺はこれをやったっていうものがあればけっこう入れますよ。新卒に比べれば圧倒的に入りやすいです(笑)。

そういう方はけっこういらっしゃいますよね。

齊藤 います、います。でも、私なんかは今会社を辞めて何かやるとなったら、自分で会社を作るとかではなくて、小さいディベロッパーのプロデューサーをやりたいですね。

やっぱり目が届くからですか?

齊藤 いや、なんかワチャワチャして楽しそう(笑)。

なるほど、いい表現ですね。

齊藤 これも正解じゃないとは思うんですけど、私はプロジェクトの単位というか、人の面倒を見られる限界値っていうのは40人ぐらいだと思っているんです。学校のクラスが40人っていうのはすごく合理的なんですよね。今は少子化だからもっと少ないのかもしれないですけど、顔と名前をちゃんと覚えて、ひとりひとりにアドバイスや評価ができる人数って30人から40人ぐらいだと思うんです。だから、1プロジェクトの適正単位って私は40人ぐらいがいいなあと。40人ぐらいのディベロッパーで何かやれたら楽しそうですね。もし、それ以上いるのだったら40人のグループを複数作って、その上に校長先生みたいな立ち位置の人がいるというのがいい構造なんだろうなと思います。

ちなみに、独立しようと考えたられたことはないですか?

齊藤 昔はありました。独立といいますか、ほかの会社に行ってみたいと。ほかの会社も見てみたいなっていうのはありましたね。そうした機会も何度かあったんですけど、会社がヒマにさせてくれなかったので、そんな余裕がなかったというか、今抜けたらキリがよくないというか。その連続でチャンスを逸しちゃいました。

でも、今はそれでよかったと思われませんか?

齊藤 分かんないです。ただ、ここまでうまくはいかなかったと思いますね。『NieR』の成功とかもそうですけど、いろんな意味でできすぎだなと思っているので。20歳のピチピチしていた頃に戻って、また同じ結果を出せるかっていったら、そんなこと多分ないだろうなって思っています。

『ドラゴンクエストX』のプロモーションで新宿駅の早朝

人生何が起きるか分からないので、諦めないで頑張りましょう!

できそうな感じもしますけどね。齊藤さんはどこに行ってもできるような気がします。

齊藤 ハハハ、どうでしょうねえ。分かんないですね、こればかりは。

ありがとうございました。新作を楽しみにしています。

齊藤 また新しいことをやっていますんで。

常にやっておられますね。まだまだやり足りない感じですか?

齊藤 やり足りないというか、まあ……やり足りないのかもしれないですね。面白そうと思えることがまだあるんですよね、ハイ。

素晴らしいですね。

齊藤 素晴らしいのかな。もうちょっと緩やかな生活をする年齢な気もするんですけど。

でも、テンションとか全然変わらないですよね。

齊藤 そこはあまり変わらないですけど、でもやっぱり徹夜とかもう無理ですね。昔は何日だって起きていられたんですけど。

そこは無理ですか(笑)。最初におっしゃられていた喘息はもう全然ないんですよね。

齊藤 なくなったんですよ。ホントにある日突然だったんですよね。「あれ?なんか大丈夫じゃん?」みたいな。

そういうものですか。

齊藤 小児喘息はだいたい大人になるタイミングで治るんです。でも、先ほど言ったように私は治らなかったですからね。仕事を始めてからも常に吸入器を持っていたので、もうホントに薬漬けでした。そんなに使っちゃいけないんですけど、頻繁に使っていましたから。もう一生付き合っていくのかなと思っていたんですが、そうしたら治ったんです。何がきっかけだったのか、全然分からないですけど。人生何が起きるか分からないので、アトピーの人や喘息の人の気持ちはすごく分かるので、諦めないで頑張りましょう!

今日は本当にありがとうございました。

齊藤 ありがとうございました。

撮影 / 北岡一浩 取材協力 / 仁志睦


著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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