『レディ・プレイヤー1』を誰か作ってくれないかなって思っていますね
ゲームハードの変遷やオンラインの登場、スマホへのシフトなどを長きにわたってご覧になってきたわけですが、これからのエンターテインメントはどのように変わっていくと思われますか。もしくは、その中でどんなものを作りたいですか。
齊藤 『レディ・プレイヤー1』(注37)を誰か作ってくれないかなって思っていますね。
注37:「オアシス」と呼ばれるVRのオンライン世界を舞台にした、2018年公開のスピルバーグ監督のSF映画。70~80年代の大衆文化へのオマージュが多数盛り込まれており、テレビゲームネタも非常に多い。
それはVRでということですか?
齊藤 VRというか、あの世界をです。自分で作ったら楽しめないじゃないですか。あれを誰かが作ってくれたらもうなんか……ゲームを作っている人たちの理想の最終形は多分あそこにあるんじゃないかなって思います。オンラインゲームに興味のない人は違うかもしれないですけど。
それはよく分かる気がします。
齊藤 ただ、『レディ・プレイヤー1』のひとつ目の鍵のクエスト。アレを映画館で見たときには、こんなもん5年も誰も解けないわけねえだろとは思いましたけどね(注38)。こんなギミック一晩だろって、ハハハハ。
注38:映画では「オアシス」の創始者がVR世界に隠した、彼の遺産を手に入れるための3つの鍵を探していくことになるのだが、ひとつめの鍵の謎はゲームには非常にありがちなもので、「なぜそれが見つけられない」と多くのゲームファンから突っ込まれていた。
アハハハハハ、そこは浅いなと。
齊藤 そうそうそう。それぐらいです、文句があったのは。オンラインゲームを作っていて、あのギミックが5年解かれないんだったら、どれだけ楽かって話です。あんなの3時間とかで攻略されますよ(笑)。

すぎやま先生と
クリエイターとしての目指すべきところ、何がしたいかっていうところをちゃんと考えておいたほうがいいんじゃないか
そうですよね。なるほど、面白いなあ。最後にクリエイティブを目指す人に齊藤さんの考えるプロデューサー像とか、もしくはこういう気持ちでやったらいいんじゃないかみたいなアドバイスをいただけますでしょうか。
齊藤 少なくともゲームという業界に入りたいと思っていて、いきなりプロデューサーを目指すなんて言ったら「バカか、お前は」と思われます。やっぱり自分で作りたいものを作れる立場。それはデザイナーであればアートディレクターかもしれないですし、プランナーやゲームデザイナーだったらディレクターかもしれないですし、プログラマーだったらテクニカルディレクターかもしれないですが、そういうポジションをまずは目指すべきで、その過程の中で「こいつらは自分よりも面白いものを作れるな」っていうのが出てきたら製作、プロデューサー側に来るのもアリなんじゃないですかと思いますね。プロデューサーはクリエイターではないと私は思っているんで。もちろん、すべての仕事にクリエイティビティは必要だと思いますが、クリエイターという枠組みの中にプロデューサーはいないと思っています。だから、まずはクリエイターとしての目指すべきところ、何がしたいかっていうところをちゃんと考えておいたほうがいいんじゃないかとは思います。そこまで聞いてもプロデューサーから入りたいって人は止めません(笑。
ただ、僕は一点懸念がありまして、この何年か超大作主義になって、ゲームステージ内の木だけ植えている人とか、一部のあるシーンだけを作っているとか、ゲーム業界の中の分業がさらに先鋭化していると思うんです。そのため、何かを作りたくても、なかなかそこまでたどり着けないという人が多いんじゃないかと思うんですが、これだけのミリオンタイトルをお持ちの会社にいらっしゃる立場として、そうしたことに対して感じるものはありますか?
齊藤 あります。やっぱりジョブローテーションとかプロジェクトローテーションみたいなことを、ちゃんとやってあげるべきだと思っています。もちろん大作は大作で学ぶことはいっぱいあるし、そこに優秀なクリエイターがいれば勉強できることもたくさんあると思います。でも、小人数でやると縦割りじゃなくて、たとえばお前はデザイナーかもしれないけど、ここのプランニングをしろとかね。さすがにプログラムを書けとまでは言わないですけど、できることをみんなでやるっていう。そういう環境もやっぱりすごく勉強になると思います。だから、私は出ていく人は止めないんですよ。