『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』特集  vol. 3

Interview

劇場版3部作がファン絶賛の好スタート。『PSYCHO-PASS サイコパス』塩谷直義監督に訊く新プロジェクトの狙い、2Dアクションアニメへの尋常ならざるこだわり

劇場版3部作がファン絶賛の好スタート。『PSYCHO-PASS サイコパス』塩谷直義監督に訊く新プロジェクトの狙い、2Dアクションアニメへの尋常ならざるこだわり

どこまで気づける!? 3部作の随所に張り巡らされた“伏線”

『Case.1 罪と罰』より

その他に、『SS』シリーズで監督がこだわったことは?

塩谷 何度か観るうちに「あれ?もしかして」と気づく人がいたらいいなという、細かい部分での整合性ですね。例えば『Case.1 罪と罰』では……最終的に霜月が“あること”に気づく人物がいるのですが、その人の行動に途中から、よくよく観ているとちょっと違和感を覚えるような、伏線をあえて入れています。もちろんそれに気づかなくても成立する話にはしていますが。

『Case.2 First Guardian』も同じですね。ある人物が“何か”に気づいたからこそ、事件は悲劇的な深まりを見せるのですが……そのキッカケを直接は描いていませんが、行動を遡ると「もしかしたら、あの時かな?」と思わせる発言はたしかにさせています。気づく人には気づく伏線を、きちんと入れ込んでいくことにはこだわりました。

それはTVシリーズ第一期から続く、『PSYCHO-PASS サイコパス』らしさでもありますね。ファンが様々な謎解き、考察をしたくなる。

『Case.3 恩讐の彼方に__』より

塩谷 そうですね。その意味では、狡噛編(『Case.3 恩讐の彼方に__』)はまだ公開前ですが、ネタバレにならなさそうなシーンでいうと……狡噛が新聞を読むシーンには、注目いただきたいですね。その新聞記事に、狡噛が遭遇する今回の事件のバックグラウンドが記載してあります。ただ、短いカットなので読めるかは……難しいですが。

え? 言ってしまって大丈夫ですか!?

塩谷 おそらく大丈夫かな。なぜなら、それって英字新聞なんですよ(笑)。しかも、映るのはわずか3秒ほどなので……(苦笑)。

なるほど!(笑) 詳しく読み解きたい方は、劇場に何度も通っていただければと。それにしても、そんな細かいところにも伏線が張り巡らされているんですね。

塩谷 僕がそういった作品が好きなんです。何度も見て、作品の中に深く潜ってみると新しい発見ができ、監督の意図を自分で見つけるのって楽しいじゃないですか。なので絵コンテを作るタイミングで、かなり広範囲まで設定を全部決めました。それを登場人物や美術設定などに反映する。そうすれば揺るがない世界観が生まれると信じています。

そうするとシーンやカットの画に必要な重みや、色が出てくるんですよね。ぼんやりした状態で「なんとかなる」ドラマの流れは、好きじゃないんです。物語上のクエスチョンがあったら、アンサーはどこかに入れておきたいんです。ただし、今アンサーを出す必要のないものは入れていません。もしそんな箇所を作中で感じたら、それは未来に繋がるキーワードなのかもしれませんね♪

これまでメインではなかったキャラたちを掘り下げた意欲作『Case.2 First Guardian』

では、公開直前となる『Case.2 First Guardian』についてもご紹介ください。主人公として、須郷と征陸をチョイスしたのは、なぜでしたか?

塩谷 『Case.2 First Guardian』は、主人公である須郷が潜在犯に落ちる話です。その事件の捜査をするのが征陸です。この須郷と征陸、接点がなかった二人だから描きたかったという理由はあります。とくに須郷は、今まで自分自身のことを喋らない人物でしたし。

須郷徹平という人は、設定上でも作中でも、潜在犯落ちをした理由や自己犠牲を厭わないという性格について、あまり深く描いていません。TVシリーズを見た方も何かあったんだろうな、という程度で影の薄い人物の印象だと思います。でも、今までスポットを当ててない人物だからこそ、そこがとても魅力的に映っていて。いつか彼の背景を描きたいと、常々気になっていたんです。そして、須郷が何に影響を受けて、あんな人物になったのか? なぜ刑事になったのか? を掘り下げていくと、征陸という人間がすごくハマったんです。今回のエピソードが、彼らの後ろにあったら素敵だなという想いで作っちゃいましたね(笑)。

舞台が沖縄というのも、元軍人の須郷、沖縄に縁の深い征陸ということで、ベストマッチでした。絵コンテ作業に入る前、沖縄にもロケハンに行きました。実際にある場所をかなり作中に登場させていますので、探してみるのも面白いと思います。

『Case.2 First Guardian』より

先ほどもお話がありましたが、『Case.2 First Guardian』はミリタリーアクションにも注力されていますね。

塩谷 『Case.2 First Guardian』で一番注意したのは、須郷がドローンパイロットだったという事実です。現場で本人が直接、手を下さない状況でのアクションシーンを作りたかったんです。だから、リアルには描きますが、いわゆる戦争映画のような生々しさは、ありすぎてはいけない。須郷自身も、戦闘に参加していながら、戦場を客観視した状態で戦っている。そんな彼が作戦に準じると、スイッチひとつで多くの人を殺してしまう。その怖さを描きたかったです。

「First Guardian」というサブタイトルの意味も、観ていて「これか!」と納得しました。

塩谷 『Case.1 罪と罰』も『Case.3 恩讐の彼方に__』も、サブタイトルと主人公を観れば、内容はなんとなく予想できますよね? でも『Case.2 First Guardian』は、絶対に想像できないはず。実際『Case.2』はそうしたかったんです(笑)。

また、「First Guardian」という言葉も、劇中で明らかに語られている意味だけでなく、「須郷の中に生まれた核となる人物像」に対する掛詞にもなっています。それは征陸を意味しますし、他の人間を意味することでもある。『Case.2 First Guardian』は、僕の中ではかなり渋くマニアックな作品に仕上げました。3部作だからこそ作ることができた物語だと思います。

『Case.2 First Guardian』より

常守朱が着任する以前の話ということで、懐かしい面々が登場するのも、ファンには嬉しいですね。

塩谷 そこもぜひ注目いただきたいですね。宜野座は昔の姿で登場するので、『Case.1 罪と罰』と比較するのも楽しいでしょうし。昔の面々、狡噛・縢・青柳は、この機会にしか描けない。もう一度、彼らを描きたいという気持ちも、『Case.2 First Guardian』にはありました。

3月の『Case.3 恩讐の彼方に__』に関しては、『SS』として描くべき物語ではあるけれど、自分自身の中の狡噛に対する葛藤もあり、ずっと悩み続けてきました。実は僕はこれまで狡噛を描く時に、朱の立ち位置で彼を表現していました。後ろから追いかける存在として描いてきたんです。それは言いかえると……狡噛本人と向き合っていなかったと思いました。だからこそ、今回『Case.3 恩讐の彼方に__』で狡噛だけと向き合うと決めました。それについては今作で答えが出せたと思う話です。

3部作すべてがそうなのですが、今、この時でしか描けないエピソードになりました。彼らのその後にも、想像が膨らむ『PSYCHO-PASS サイコパスSinners of the System』になりますので、ぜひ全てご覧いただけたら嬉しいです。

劇場用アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』

2019年1月25日(金)より連続公開

【キャスト】
野島健児 佐倉綾音 / 東地宏樹 有本欽隆 / 関智一

【スタッフ】
SSストーリー原案・監督:塩谷直義
脚本:吉上亮(Case.1)、深見真(Case.2,3)
キャラクターデザイン:恩田尚之、浅野恭司、阿部恒、青木康浩
音楽:菅野祐悟
音響監督:岩浪美和
主題歌: abnormalize /凛として時雨 -Remixed by 中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)
アニメーション制作:Production I.G 制作:サイコパス製作委員会 
配給:東宝映像事業部

©サイコパス製作委員会

オフィシャルサイト

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