黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 24

Interview

「サバイバルホラー」の始祖 三上真司氏(上)父の恐怖から逃れる日々

「サバイバルホラー」の始祖 三上真司氏(上)父の恐怖から逃れる日々

オカンにもっとアドバイスしてもらっときゃよかった

はあ~~(呆然)。

三上 (部屋にも)だいたい何も言わないで突然入って来くるんですよ。後ろに気配がしたと思ったら入ってきてバーンです。部屋で寝ていると「なんで勉強してない!」って殴られて蹴られて起こされてとか。でも、僕は殴られるより勉強のほうがイヤなんです。殴られるほうがマシなんですけど、でも殴られるのもイヤじゃないですか。だから、寝ていても親父がダッダッダッダッダッて来たら、その足音で目が覚めるようになったんです。ところが、ドアの上の部分がすりガラスになっていて、ベッドから机に直接行くと、そこに映っちゃうんですよ。だから、映らないように腰を落として前転で移動し机に座るんです。

やっぱりそうなるんですね。

三上 そうです。音を立てずに前転して、オレ今勉強してるぜっていう体勢に入るわけです。で、今日もうまくいったぜって思っていたら、親父の顔がすぐ横にきて、次の瞬間思いっ切りバーンってやられていました。「あれ、完璧なはずなのに、なんで?」ってなりましたね。で、「なんでバレたんやろ?」って、あとでオカンに聞いたら「アンタ、寝起きは目が赤いで」って。

幼少期のころ

アハハハハハ(一同爆笑)

三上 それでバレたんですよ。すぐ横にいたのは目を見ていたんやと。目を見て「こいつ寝起きや、勉強やってへんな」っていう。うわ~オカンやっぱりすごいわ、オカンにもっとアドバイスしてもらっときゃよかったって思いましたね(笑)。

大変ですね。でも、お母さまは優しかったんですね。

三上 オカンは割と優しめでしたね。でも、それが日常だったから、特にどうこうみたいなのはなかったですよ。中学ぐらいから、親父が帰ってきたら「殿が帰った」って兄貴と陰口叩いていましたしね。

中高6年間、無遅刻無欠席の理由は家にいたくなかったから

すごい環境でしたね。

三上 だから僕は中学、高校の6年間皆勤だったりするんですよね。無遅刻無欠席です。理由は簡単ですよ、家にいたくないから。家にいたら昼に親父がメシを食いに帰ってくるんですよ。そうしたら空気が凍るじゃないですか。

ああ~そうか、そうか。もう家にいたくないと。

三上 だから大学に行った理由も、まず「家を出たい」でした。

でも、高校生ぐらいになると、ある程度お父様と対峙できるようになりますよね。

三上 高校では無理でしたね。ただ、高2あたりから殴られる回数は激減しました。ムチャクチャ減りましたね、やっぱり。

それは、ある程度大人になったからということでしょうか。

三上 僕のほうが大人になったんでしょうね。そこらあたりからなんとなく親父のことを理解……まあまあ怖いのは刷り込まれているんで、そんなに変わらないですけど、理解はできるようになりましたね。それまでは理解できなかったです。だって説教が禅問答なんですよ、殴った理由も言わないし。だから小さい頃はなんで殴られたか分かんなかったです。うん、全然分かんなかった。

親父が帰ったとき、家にいなかったらマズイんですよ

なんだかエンタテインメントに無縁な話ばかりになってしまいましたが、その時期に触れたものは何かおありになるんですか?

三上 いや、普通の遊びはよくしていましたよ。鬼ごっこしたり、かくれんぼしたりっていう。正月前後になったら1カ月ぐらいずっとコマ回をしていたし、チャリンコ乗り回して秘密基地を作ったりとか、落とし穴作って人を落としたりとか。昔はよくありましたよね。

幼少期の定番ですよね。

三上 そういうのは普通にやっていましたね。あのときはドッジボールが流行っていたのかな。野球もたまにソフトボールで。だから、わりと一般的な遊びをしていたけど、唯一違うのが、親父が帰宅するときです。親父が仕事から戻る夕方6時過ぎ前後が、ちょっと危険なゾーンになるんです。

アハハハ

三上 親父が帰ったとき、家にいなかったらマズイんですよ。だから、公園で遊んでいても、もう遅いからオレんちの近所で遊ぼうって友達に言うんです。必ずそうでしたね。でも、親父の車が曲がり角を曲がって来た時点で家に入ると、もう間に合わないんです。じゃあ、どうするかっていうと、車庫入れのときと同じでエンジン音で聞き分けるわけです。で、親父の車の音が聞こえてきたら、「あ、親父帰ってきた! ゴメン、もう今日は終わり! みんな解散!」って言って、バーッて家に入って、何もなかったかのように「あ、おかえり」みたいな。それが日常ですよ。

日常ですか……。

三上 うん、だからテレビを見て「ギャハハー」って笑っていても、親父の車のエンジン音が聞こえてきたら、プッて切って「見てないよ?」みたいな。

先ほどおっしゃられていましたが、早く家から出たかったということで同志社大学に入られるわけですよね。

三上 極端な話、家から離れたところだったらどこでもよかったんです。そりゃ欲はありましたよ。いい大学のほうが、やっぱりいいじゃないですか。

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