2019年1月12日(土)より全国ロードショーとなる“劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅱ.lost butterfly”(以下[HF]第二章)。昨年に公開された[HF]第一章は三部作の前哨戦であるにもかかわらず、その圧倒的映像美や物語の構成に度肝を抜かれた人も多かったことだろう。
それゆえ[HF]第二章への期待が高まり、公開が待ちきれないというファンのために今一度[HF]第一章を振り返ってみようと思う。
取材・文 / 古瀬敏之
一瞬も見逃せない桜の生々しさ、妖艶さ、女の子らしさ
[HF]は通称桜ルートと呼ばれ、[Fate](セイバールート)、[Unlimited Blade Works](凛ルート)に続く最後のルートとして描かれている。[HF]は最後のルートにふさわしく、“なぜ聖杯戦争というものが必要だったのか”という物語の軸が語られる。
[Fate] [Unlimited Blade Works] でももちろん桜は登場するのだが、桜はあくまで日常を象徴するキャラクターとして学校、食卓に登場していた。しかし、本作では今まで描かれなかった彼女の内面や、暗い過去が描かれる。
そんなこともあり[HF]第一章では序盤から彼女の中学生時代、士郎との出会いのシーンから丁寧に描写されており、須藤監督の桜への愛がひしひしと伝わる。特に、どこか虚ろな状態から家事を覚えていき、徐々に彼女の目にハイライトが戻ってくる様は、桜にとって士郎が世界を一変させてくれたことをわかりやすく体現している。
そして士郎との出会いから1年半。桜が髪をかきあげる姿や、考えているときに頭のリボンをいじる様、彼女の一挙手一投足からは、とても色気を感じる。
また、本作の桜の表情も見逃せない点だ。士郎と喋っている時の桜の感情の変化も細かく描かれている。特に学校の廊下で凛の名前を聞いた時の表情も細かい。
セイバーや凛など、本作には精神的に強い女性キャラクターが多く登場する。それゆえ、そういった感情を表に出してしまう桜が相対的にか弱い女の子に映るよう感じる。しかし、それは人間らしい生々しい欲望である。ある意味で桜は作中で一番普通の女の子らしいキャラクターなのかもしれない。
原作ではそんな桜の士郎に対する感情が後々の物語に大きな影響を及ぼすのだが、劇場版ではどのように描かれるのだろうか……。TVアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』を観たという人は、ぜひ表情も感情も一層豊かになった劇場版の桜に注目してみてほしい。
月が示す重要なメッセージとは?
TYPE-MOON作品において“月”は非常に重要なキーワードを持つ。本作に初めて月が登場し、その月が雲に隠れるシーンでは真アサシンが衝撃的な登場をした。
もうひとつ、士郎と桜が土蔵で語り合うシーンでは月は完全に隠れてしまっている。ここで士郎が直したはずのストーブが壊れ、そして桜の口から語られる「もしわたしが悪い人になったら許せませんか?」という言葉。再び夜が訪れ“影”が動き出す。
月とその後の出来事はセットになっているよう感じる。[HF]第二章でも月が映し出されるとしたら一体どんな様子なのかはぜひ注目してもらいたい点だ。
劇場版ならではのイリヤとの邂逅
イリヤと士郎がふと夜に出会うシーンで、原作ではその場で「早く呼び出さないと死んじゃうよお兄ちゃん」と助言されるのだが、本作では夜にイリヤと出会い、パトカーが通り過ぎるとイリヤが消え、士郎の夢の中に彼女が現れて「早く呼び出さないと死んじゃうよお兄ちゃん」と言われる異なった演出に変わっている。
この演出に対して須藤監督は、前者のままだとあまりにファンタジー寄りになりすぎるとのことであえて変更したのだそう。こういった劇場版ならではの細かい変更点も注目だ。