
自分が何のために生きているかを考えたほうがいい
橋本 今でも食事会は多いよね。以前はコンシューマー系とかメディア系の人なんかが相手だったんだけど、最近はIT系の若い経営者の人たちが多いね。
ちょっとお話ししにくければ遠慮しますけど、お子さんにキャラクターの名前を付けられたりしていますよね。すごく愛情注いでいられるように見えますが。

橋本 それ、みんな誤解してる。長男がセイヤっていうんで、『聖闘士星矢』からと思われちゃっているんだけど、違うんだよ。親父の名前から取ったんだよ。親父が「誠」に「二」で「誠二」なの。で、銀行マンだった親父のように尊敬できる人にっていうことで、「誠」の字をもらって「誠也(セイヤ)」って名付けたんだよ。それで、次男は僕の真司の真をあげて、真也にしようと思ったんだけど、母親のほうから止められちゃって。亡くなられたプロレスラーの方と同姓同名になっちゃうって。
バンダイ→キャラクター→星矢さんなのかと思っていました。誤解なんですね。
橋本 そうです。広島カープの鈴木誠也でもない。みんな誤解しているんだよ。
これを機会に正しましょう。もう大きくなられたんですよね。
橋本 次男は大学3年生で来年ゲーム業界を受けようと思っているみたい。
やっぱりそれはお父さんを見ていたからですかね。
橋本 そうそうそう。お父さんの仕事が次男の憧れね。
やっぱりこちら(スクウェア・エニックス)が第一志望なんですか?
橋本 ここが理想だけど、さすがにちょっと難しいかなと思ってる。正社員になるのはものすごい倍率なんで、受けてもダメだと思うけど、それはそれでしょうがない。自分の人生は自分でこれから作っていかなきゃ。

施工したばかりの東京タワーで母と
自分の生きてきた履歴をちゃんと人に紹介できるようにしなさい
最後にクリエイティブを目指す人たちにアドバイスをいただけますか。
橋本 そうだなあ、自分が何のために生きているかを考えたほうがいいかな。何のために生きて、何をしたいかっていうのを冷静に考えたほうがいいと思う。もちろん、それは銀行マンでもいいし、ゲームクリエイターでもいい。ただ、人に言われたからやったっていう人生だけはやめたほうがいいと思っていて。
誰かに言われたからこれを僕はやってきたではダメだと。
橋本 自分の幹にならないから。自分の幹、コアを太くしていかないと人生はつまらないんで、そこだけは自分で決めなさいと。それは息子にも言っているから。
自分がやりたいこと、やるべきことは自分で決めて生きろと。

橋本 うん。親だから基本助けはするんだけど、いずれ親はいなくなるわけだから。世間は誰も助けてくれない前提で考えなさい、自分でちゃんと生きていくことを考えなさいと。
素晴らしい……。
橋本 社員にも言っているんだけどね。会社が儲からなくなったときに、なんで会社は守ってくれないんだって言う人がけっこう多いんだけど、いやいや何を言っているんだと。会社に期待なんかしていなかったじゃんって。会社の悪口言うのは簡単だけど、それよりも会社との雇用形態のディール(契約)の中で仕事をキチっとやって自分の幹を太くしなさいと。それが自信に繋がるから。自分の生きてきた履歴をちゃんと人に紹介できるようにしなさいって言っているのよ。
ありがとうございました、感動しました。
橋本 ホントかよ?(笑)。
ウソじゃないですよ。
橋本 まあ、そうじゃないと、あの時代のデジキューブを乗り切れないよな。バラを咥えていたんだからね。だから僕はクロちゃんを「初代バチェラー」(注45)って呼んでいるんだよ。
注45:Amazonプライムビデオで配信されている恋愛リアリティ番組『バチェラー・ジャパン』で、バチェラー役の男性が次のステージに残す女性にバラを送ることにちなんでいる。
あれは仕事でやっていただけですから! 橋本さんの赤いメガネと同じですよ。僕は普通にふつうに生きてきたつもりですからね!
橋本 ハッハッハ。

『FF』30周年記念コンサート ロンドンアルバートホールにて
撮影 / 北岡一浩 取材協力 / 仁志睦

著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】
くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。